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シャープのAQUOSは“不満解消”から“パートナー”へ

新世代の技術で窺う「人との共生」

 シャープは都内で記者向けに説明会を開催し、2015年秋以降に各キャリアから発売されるスマートフォンの新モデルやその戦略について説明を行った。

 シャープは6月の人事異動と10月の組織再編に伴って、新たな体制や戦略を打ち出している。10月6日にCEATECの会場で行われた発表会では、情報家電や通信システム事業を統合したコンシューマーエレクトロニクスカンパニーのトップである長谷川祥典氏から、今年度に入って強調している「人に一番近いシャープ」という方向性や、IoTに人工知能(AI)を組み合わせていく“AIoT”という新たなビジョンが示されている。

 21日の説明会に登壇したシャープ 執行役員 コンシューマーエレクトロニクスカンパニー カンパニーEVP兼通信システム事業本部長の川口登史氏は、先日の長谷川氏の示した内容などの、一連の方針を改めて紹介した上で、「スマートフォンのAQUOSのリブランディングに取り組んでいる」と、通信システム事業における具体的な取り組みに触れる。

シャープ 執行役員 コンシューマーエレクトロニクスカンパニー カンパニーEVP兼通信システム事業本部長の川口登史氏

AQUOSのリブランディング、“不満解消”から“パートナー”へ

 Androidスマートフォンの初期には多くの不満点があったとし、“不満解消”がAQUOSの大きなテーマだったという。川口氏は、導入期にあった不満はある程度解消されているとし、今後は「コミュニケーション」を軸にした方針にすることを明言。「AQUOSを使うことで、新たな会話や行動を生み出す。人に寄り添うパートナーに変わっていきたい」と、“不満解消”を脱した、新たにターゲットとするブランドポジションを示した。

 「人に寄り添うパートナー」というテーマは、同社が「エモパー」の搭載を表明した時からアピールされてきたもので、同社の説明会で初めて披露される考え方ではないが、エモパーよりも前となる約2年前から開発してきたという「RoBoHoN」(ロボホン)に代表されるように、人工知能とコミュニケーション、クラウドなどの技術・サービスが事業分野を超えて出揃ってきたことで、AQUOSの開発も大きな転換点を迎えていることが印象付けられた。

 ここでは、「活きる力を起動する AQUOS」という、ブランドのメインメッセージも新たに披露され、川口氏は「AQUOSは、人、モノ、心をつなぎ、生活に笑顔を広げていくパートナーになっていく」と述べて、端末や道具という枠にとどまらず、人の生活や楽しさといった部分にまで深く関わっていくという姿勢、ブランドとしての意気込みを示した。

エモパーに“生命感”、液晶・カメラも進化

 シャープ コンシューマーエレクトロニクスカンパニー 国内マーケティング統轄部 情報通信プロモーション部 部長の河内巌氏からは、スマートフォンのAQUOSのフラッグシップモデルで実現している開発コンセプトや、搭載されたエモパーの新バージョンなどが解説された。

シャープ コンシューマーエレクトロニクスカンパニー 国内マーケティング統轄部 情報通信プロモーション部 部長の河内巌氏

 メインメッセージとして打ち出された「活きる力を起動する AQUOS」に沿う形で、河内氏からはまず「デザインが生命感を起動する」というコンセプトが示される。

 これは、「AQUOS ZETA」などのフラッグシップモデルの金属やガラス素材、イルミネーション機能による光や音で、生命感を表したとするもので、イルミネーションでは発光パターンがエモパーの感情に連動して自動生成される仕組みも紹介された。

 そのエモパーは最新版のver.3.0が今冬に登場する。3つの進化ポイントとして、1)音声だけでなく端末全体で意思があるかのような表現を行い、アニメーションや音、光が連動する、2)センサーで周囲の変化を察知し、「まぶしい」といった会話ができる、3)音声認識によるメモ機能、が紹介された。

 特にメモ機能について河内氏は言及し、「うっかり忘れがちなこと、ちょっと覚えておいてほしいことを、代わりに覚えてもらう。“そろそろ”とか、“家に帰ってきたら”とか、スケジュール帳に入れにくい用事も、(端末の状態から)それを判断する。可愛いだけでなく、本当にデキるやつになってきた」と、成長している様子を語る。

 河内氏からは、エモパーが継続して30万人に利用されていることや、誕生日が11月14日であること、その技術が「RoBoHoN」にも展開されていることが明らかにされた。

 同氏からはこのほか、120Hz駆動のハイスピードIGZOがで残像感の少ない描写や操作を可能にし、液晶アイドリングストップ技術の進化で省電力駆動と両立していることや、カメラ機能で位相差とコントラストを組み合わせたハイスピードのオートフォーカスを実現した点、カメラのレンズを新規に開発し歪みや色収差のソフトウェア補正を不要としている点、ZETA/Xx2のインカメラは約100度(35mm判換算で18mm相当)の広角レンズでセルフィーに最適化されている点などが説明された。

 MVNOなどに向けてSIMロックフリーで提供されるモデルにも触れられ、前日の20日に発表した「AQUOS SH-M02」や、セブン-イレブンが販売することになった「エヴァンゲリオン スマートフォン」を紹介。「今後いろいろな人に使ってもらうために、もっといろいろなビジネス展開があるだろう。頑張っていきたい」と、幅広く展開していく方針。

 Androidをベースにフィーチャーフォンの使い勝手を再現した、同社が「新世代ケータイ」と呼ぶ端末は、ソフトバンクとY!mobileブランドから合計3機種が新モデルとして登場する。「新世代ケータイは、今年に入ってから6機種目。4つのキャリアで展開されており、要望に応えられるようにラインナップを広げていきたい」と、こちらもバリエーションを拡大させていく意向が示された。

会場の展示

AQUOS SH-M02
RoBoHoN

太田 亮三