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「10年後に世界一を目指す」、世界に打って出たFREETELの戦略

 良い製品を、安く、アフターサポートもしっかりと。元気のない日本メーカーに代わって、世界市場に出ていく。「10年後に世界一を目指す」――「FREETEL」ブランドでMVNOによる通信サービスやSIMロックフリーのスマートフォンを展開するプラスワン・マーケティング 代表取締役の増田薫氏が訴えた内容を要約すると、上記のようになる。

プラスワン・マーケティング 代表取締役の増田薫氏(左)、取締役のIan Chapmen-Banks氏(右)

 10月27日に開催された発表会で登壇した増田氏は、「携帯端末」「通信」「店舗」の3点で、最新の取り組みを紹介した。

 なお、質疑応答の時間は設けられなかったが、囲み取材の模様は別記事で掲載する。

端末

 「Simple」が3時間で完売、「SAMURAI 雅(MIYABI)」は直販サイトで30分、家電量販店でも1日で完売と、まずは直近で大きく注目を集めた端末の売れ行きを報告する。「SAMURAI 雅」は想定外の売れ行きだったとし、年末商戦に向けて増産を決定していることも紹介した。

 発表会では、別記事で紹介しているように、「Priori 3 LTE」「SAMURAI 極」について、発売日がアナウンスされ、「SAMURAI 極」のカメラ機能のデモンストレーションも披露された。

通信

 MVNOによる格安SIMなどの拡大を受けて、FREETELも契約者数を大幅に伸ばしている。増田氏は、通信速度についてもIIJやOCN モバイル ONEなどと比較して高速であるとし、増速について継続的に取り組んでいる様子をアピールする。

 独自サービスとして取り上げるのは、App Storeにアクセスするパケット通信料を無料としたiPhone用SIMカード「FREETEL SIM for iPhone/iPad」だ。

 「L2接続は多くのMVNOにとってゴールかもしれないが、L2接続はスタートに過ぎない。その後のシステムへの投資をずっと行ってきた」と増田氏は語り、iPhone用だけにとどまらず、アプリと連動するサービスが続々追加予定とする。

 例えば、特定ユーザーのあるアプリのパケット代を無料にしたり、あるアプリの速度を最優先にしたり、ユーザーのポイントと連携したり、特定サービスと合算したりといった、さまざまな展開が考えられるという。その対象分野も、家電量販店、コンビニ、スーパー、銀行、自治体、電力、SNSなど、多岐に及ぶとした。

 加えて、プリペイド型のSIMカードのプランも、2015年の冬に追加予定であることを明らかにした。

店舗

 店舗展開は、家電量販店を中心に、カウンターの設置など比較的規模の大きな取り組みを継続中。この「FREETELコーナー」は、10月29日にヨドバシカメラ マルチメディア名古屋松坂屋店でもオープンするほか、11月4日にはティーガイアSmart Labo なんば戒橋店でも開設される。さらに、店頭で「FREETEL SIM」を購入したユーザーには、11月下旬より、利用方法の解説書「できるFREETEL SIM」(インプレス刊)がもれなくプレゼントされることも明らかにされた。

世界展開

 プラスワン・マーケティングは“日本メーカー”として世界に進出していくとし、世界販売の第1弾として、11月に、メキシコ、カンボジアで端末を提供することが発表された。メキシコでは大手販売店と提携して展開し、カンボジアでは現地の通信キャリアと提携し、販売を行っていく。

資本

 増田氏からはプレゼンテーションの前半に、経営資金についても触れられている。2015年の1~9月には21.3億円の第三者割当増資を実施し、資本金は11億7575万円、資本準備金が11億6575万円になっている。「3年目のスタートアップ企業だが、信用できるのかといった点について、資本金を整えて、しっかりと提供していく」(増田氏)という。

「FREETEL」が目指す世界とは

 同社は事業をはじめて3年目であり、日本国内でも、知名度を高めていくのはこれから。しかし増田氏は、第三者割当増資などで事業資金をしっかりと確保している点に言及しながら、信頼できない、頼りないといった疑念の払拭に努めている。同社はサポートセンターを外注ではなく社内に抱えており、増田氏は、サポート体制やユーザーとのコミュニケーションを密にとっている様子を訴える。

 同時に、人員をはじめとした同社自体の規模が急拡大していることも隠しておらず、端末などの研究開発部門を設け、生産設備なども「Made by Japan」の仕様にしていくという。

 製品開発部門などに、豊富に人材を確保している様子も垣間見せる。27日の発表会では、ソニーの商品設計などで35年、その後Foxconnでも8年の実務経験を持つという佐々木隆文氏がプラスワン・マーケティングのプロダクト部 執行役員として登壇し、「SAMURAI 極」の和柄のモデルを解説した。後述する取締役のIan Chapmen-Banks氏は、ゼロックス、アップル、マイクロソフト、モトローラなどに勤務し、デルではアジア太平洋・日本のジェネラルマネージャーを務めた人物だ。

 グローバル展開についても“本気度”のアピールに余念がない。プラスワン・マーケティングの取締役として登壇したIan Chapmen-Banks氏は、海外イベントさながらに英語で海外戦略を解説し、日本では、訪日外国人向けの新たな施策として、WeChatやFacebookなどSNSのパケット通信料が無料になるというSIMカードを提供すると発表。こちらは増田氏から、日本のユーザー向けの展開もあるとされた。

 11月からは、メキシコとカンボジアでFREETELブランドの端末が販売される。これを皮切りに、北米や中東でも展開する予定という。発表会では、来日した現地の通信キャリアの担当者や販売業者が登壇して祝辞を述べた。こうした現地の担当者がわざわざ日本の発表会に登場することで、グローバル展開がただの目標ではなく、すでに動き出しているリアルな事業であることを強く印象付けた。

 「SIMフリーキャリア」を標榜するように、増田氏からは、さまざまな比較でもって、大手通信キャリアや大手メーカーに対抗できることがアピールされ、「L2接続はスタートに過ぎない」と、サービス面でも独自色を強く打ち出せると自信を見せている。これらに加えてグローバル展開を進めることで、規模のメリットも享受し、自身が考える日本製のサービス・端末を広く普及させていきたいという意気込みが、ひしひしと感じられた。

太田 亮三