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ドコモ、5Gに向けた最先端の研究開発の成果を披露

六本木ヒルズではミリ波で2Gbps以上の通信に成功

 NTTドコモは、最新の研究開発の成果を展示・披露するイベント「DOCOMO R&D Open House 2015」を神奈川県横須賀市にあるNTTドコモR&Dセンタで開催している。11月26日、27日に開催されるイベントで、5Gの研究開発で連携する各社も参加している。

NTTドコモR&Dセンタで開催される「DOCOMO R&D Open House 2015」

 ドコモは5Gについて、これまでもさまざまな機会で要素技術を紹介している。現在は、世界の主要ベンダー各社と連携して研究開発を行っている5Gの要素技術の検証段階としており、2016年に入ると、5Gの標準化作業が本格化する見通し。ドコモでは2020年の商用化を予定している。

 5Gは、ミリ波帯の活用といったこれまでにないポイントがある一方、4GにおけるLTEのような、特定の通信方式に絞り込んだ紹介は現在までにされていない。これは標準化作業がこれから本格化するという面もあるが、自動車分野やIoT、端末間通信、それらを組み合わせた利用など、現在でも無線通信に求められる仕様は多岐にわたっており、5Gがターゲットとしている世界観は、こうした要求を包括して反映し「超大容量」「超多数端末」「超高速」「超低遅延」「低コスト・省消費電力」など、さまざまな仕様をカバーしている。ドコモでは、こうした多種多様なサービスをサポートする5Gの要素技術として、8つの技術をこれまでに紹介している。

 「DOCOMO R&D Open House 2015」では、こうした5Gに向けた取り組みや最新の成果が披露されているほか、5Gよりも早い段階の実用化を目指し、現在のLTEを発展させた新たな技術も披露されている。ほかにも、AIや、基地局と連携するビッグデータ解析といった、通信方式とは別に取り組んでいる先端技術も紹介されている。

 本稿では、5Gに向けた先端技術の研究開発成果を中心に紹介する。

70GHz帯、ビームフォーミングと追従、六本木ヒルズで2Gbps

 ノキアネットワークスとの共同実験は、ドコモが検討している中でも最も高周波数帯となる、ミリ波の70GHz帯(1GHz幅)が利用されている。ここでは、直進性が強く減衰も大きい高周波数帯において、電波を特定方向に集中させるビームの形成(ビームフォーミング)により、遠くまで電波を飛ばす技術が研究されている。端末の移動に合わせてビームの方向を変える技術も加えることで、基地局からの見通しの確保のしにくさや、エリアの狭さといった従来からある問題を解消し、ミリ波の移動通信への利用の可能性を高めたとしている。

 新たに、六本木ヒルズの森タワーでは、商業施設内で基地局と移動局を用いて実験が行われた。ビームフォーミングなどの技術により、複雑に反射が繰り返される環境でも、1台の端末に対し受信で2Gbpsを超えるデータの伝送に成功した。MIMOは利用されていない。イベントの展示コーナーでは、ヘッドマウントディスプレイを用いて、可視化されたビームや、ビームが移動する端末に追従する様子を仮想的に見られるようになっている。

28GHz帯、多数アンテナとビーム追従、時速60kmで2.5Gbps

 サムスン電子との共同実験では、韓国・水原市にあるサムスンデジタルシティ周辺の公道にて、自動車での高速移動時の高速データ伝送の実験結果が披露されている。

 実験では、28GHz帯(800MHz幅)で、96素子のアンテナを用いたビームフォーミング機能とビーム追従機能を駆使し、移動する自動車の中でも受信で2.5Gbpsを超えるデータ伝送に成功している。

 実験では、基地局はビルの屋上に設置され、端末はスマートフォンに搭載可能という小型アンテナを使用するなど、実際の利用環境を想定した内容。時速約60kmで移動する自動車に1台の端末が搭載され、MIMOは最大2ストリームで使用された。

 この実験は日本でも、必要な電波の免許を取得した後に屋外実験が開始される予定となっている。

15GHz帯、超多素子アンテナとマルチビームMIMOで10Gbps超

 エリクソンとの共同実験では、NTTドコモR&Dセンタ内の電波暗室内にて、マルチビームMIMOを使用した10Gbpsを超える高速データ伝送が実験された。

 今回披露されている実験結果はフェーズ2としており、15GHz帯(730MHz幅)にて、128素子の超多素子アンテナによるビームフォーミングと、同じ周波数帯で複数のビームを用いるマルチビームMIMOにより、10Gbpsを超えるデータ伝送に成功した。

 LTEベースのOFDMが上下ともに使用され、パケットサイズの変更でパラメータの最適化と低遅延化が行われている。端末側のアンテナでは、前後左右の4方向から到来する電波を受信できる。超多素子アンテナでは、ビーム追従のほかにも、複数基地局間協調ビームフォーミングや、高精度ビーム分離によるマルチユーザーMIMOが実現される。

4.65GHz帯、超高密度分散アンテナと協調技術で4端末合計が11Gbps

 富士通との共同実験では、小型基地局(分散アンテナユニット)の協調伝送技術により、単位面積あたりのシステム容量を増大させる検証が行われた。

 C-RAN構成での小型基地局の高密度な展開は、相互の干渉により、展開数に比例してシステム容量を増大させることが困難だった。実験では、高密度に配置された4台の基地局ユニット(RRH)が協調して伝送することで干渉の影響を緩和。4つの端末が同時に接続するマルチユーザーMIMOにより、合計で11Gbpsを超えるデータ伝送に成功している。協調制御を行わない場合は2Gbpsという結果と比較も行われている。

 分散アンテナユニットは1〜8ユニットまで、個々に配置したり結合したりして柔軟に構成でき、環境に応じて最適な構成を選べる。また、この技術を使い、通信品質のよい場所を動的に変化させる「ダイナミック仮想セル制御」も検討されている。

2.3GHz帯、24人同時接続の大規模マルチユーザーMIMOの実験

 ファーウェイとの共同実験では、中国・成都で実施された24人同時接続の大規模マルチユーザーMIMOの実験が報告されている。同様の実験は、フェーズ2として日本でも2016年に実施される予定。

 実験では、2.3GHz帯を用い、64素子のアンテナを搭載した基地局から、屋外の24台の端末の間でマルチユーザーMIMOの伝送が行われた。さらに、非線形演算処理を用いて干渉を抑える「非線形プリコーディング技術」を適用して通信品質を向上させ、セルあたりの周波数利用効率は43.9bps/Hzが達成されている。この利用効率は、2013年に行われたLTE-Advanced向けマルチユーザーMIMOの屋外実験と比較して、3.6倍の数値になっている。

日本初公開、LTEによる端末間通信「LTE Direct」のデモ

 「DOCOMO R&D Open House 2015」では、5Gに向けた取り組みとは別に、LTEによる端末間通信「LTE Direct」とその近接サービスのイメージがデモで披露されている。クアルコムが提供する、既存のスマートフォンをベースにした試験端末が用いられており、2.5GHz帯が使用されている。LTEによる近接通信はLTE Release 12に含まれており、すでに韓国ではパブリックセーフティ用途で実用化する方針が明らかになっている。

 「LTE Direct」は、BluetoothやWi-Fiを用いる端末間通信と比較して、より広い範囲での通信を実現するもの。周囲の端末で同じアプリやサービスを利用している人を発見する「近接端末発見」機能と、災害時などでも基地局が不要で周囲の人とトランシーバーのような通話が可能になるという「端末間直接通信」機能が想定されており、イベントでは「近接端末発見」機能とサービスイメージが紹介されている。

 「LTE Direct」ではまた、検出距離を任意に設定できるほか、瞬時に多数の端末を検出することも可能。

 Wi-Fi Directと比較して、検出できる範囲は郊外の見通し環境で550m(Wi-Fi Directは200m)、都市部の見通し環境で350m(150m)、都市部見通し外環境で170m(30m)と、いずれも2倍以上の広さを実現する。

 これにより、駅前やスタジアム内などの、これまでにない距離感で、集まっている人の傾向に最適化した広告を表示するといった利用が考えられるという。また、自動車事故や災害時などに、周囲の人に危険や重要な情報を知らせるといった利用も可能。会場のデモでは、現在地の周辺の人に対してタクシーの乗り合いを募るアプリで、実際に「LTE Direct」の通信デモを行っている。

三菱、NECとの各共同開発の展示

基地局データを活用「モバイル空間統計」が拡大、一部は商用化予定に

 「DOCOMO R&D Open House 2015」では、上記の「LTE Direct」のように、5Gに向けた取り組みとは別に、ビッグデータやクラウド、翻訳、センサーなどさまざまな分野の先端技術が紹介されている。

 このうち、基地局のデータを統計に活用する「モバイル空間統計」では、より細分化した開発が行われており、商用化予定とするサービスも紹介されている。

 モバイル空間統計は、ドコモの基地局のデータを活用し、特定の時間帯、特定エリアの昼間人口といったように、これまでにない切り口で人口統計を推計し、提示するもの。主に自治体などに向けての提供を想定しており、人口動態をより詳細に分析したい需要に応えるものとなっている。

 商用化予定として紹介されていたのは、ドコモのローミングイン情報と基地局データを基にした「外国人来訪者統計」で、外国人観光客が、入国してから何日目にどこにいるかが分かる、時間的・空間的な変動を継続的に捉えた統計になっている。最終的に政府が発行するデータを用いて推計するため、リアルタイムではなく、集計から3〜4カ月後に提供される。

 同じく商用化予定として紹介されているのは「人口流動統計」で、これは、2地点間の人口の流動を、24時間365日の情報として捉えられるもの。地点の単位は全国約1800の自治体になっている。「人口流動統計」により、ある自治体に対して流入・流出する人口が時間単位で把握でき、観光やまちづくり、防災計画、交通計画などの調査の補完や高度化ができるとする。

 モバイル空間統計の中でも開発中なのは、屋内の基地局データを活用する「屋内人口統計」で、地下街や高層ビル、大型商業施設などでの人口動態を継続的に把握できるようになる。

 また、モバイル空間統計で要望が多いというリアルタイム化も進められており、現在では、10分毎の人口を、約20〜30分程度で算出し情報として提供できるようになっている。これにより、例えば、入退場の場所が決まっていない花火大会において、比較的正確な集客状況をリアルタイムに捉えることが可能になるなど、人口動態の把握が迅速化・高度化できるようになっている。

 このほか、国内の人を対象にした「国内観光統計」も開発されている。これは、基地局データによる人口動態に、ドコモが保有するユーザーの居住地の情報を合わせ、国内観光客の流出入人口を把握するというもの。都市部では“観光客”の把握に課題もあるが、地方自治体や観光地向けとして開発されており、有用性が検証されていく予定。

(太田 亮三)