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トリニティ星川氏が語るアクセサリーメーカーがWindowsスマホを出す理由

 iPhone向けアクセサリーを中心に、さまざまな製品を手がけるトリニティが、Windows 10 Mobileスマートフォン「NuAns NEO(ニュアンス ネオ)」を2016年1月に発売する。価格が3万9800円(税抜)、そして外装カバーが1400円〜となり、スペックとしてもミドルクラスのWindows 10 Mobileスマートフォンとして仕上げられる。

 今回が初めてのスマートフォン開発となるトリニティが、なぜ新機種を発売することができたのか。そして「NuAns NEO」ではどんな特徴を持たせたのか。代表取締役社長の星川哲視氏が語った舞台裏とは。

トリニティの星川氏と、日本マイクロソフト執行役 コンシューマー&パートナーグループ ゼネラルマネージャーの高橋美波氏

スマホが広がった今だから

 トリニティは、8年にわたって、iPhoneやXperia向けにケースなどのアクセサリーを自社ブランドで展開してきた。星川氏は、スマートフォンがガジェットの1つとして「テクノロジー」「デジタル」といったワードで捉えられていたものの、普及していくに従って、どんどん生活の場に浸透していき、「リラックス」「ライフ」「フィーリング」といった言葉で表せるようなものに仕上げる必要が出てくるのではないかと考えたのだという。

 同社ではそこで今年4月、「NuAns(ニュアンス)」というブランドを設立。このネーミングは、感覚的な部分を訴求する“ニュアンス”と、新しい答えを提案する“ニューアンサー”といった意味が込められている。

 一方、同社が手がけるアクセサリーは主にiPhone向け。国内のスマートフォンは、iPhoneが多くを占めるものの、トリニティが提案する“ニューアンサー”は他のスマホユーザーに届いていない。では、そうしたiPhone以外の世界で、中心となるスマートフォンやデバイスがあるのか、と言えば、これもない。そこで「NuAns NEO」を出そうと考えた、と星川氏。

Windows 10 Mobileを採用した理由

 10月14日のマイクロソフトの発表会以降、Androidではなく、なぜWindowsなのか、とよく質問されたことを明らかにした星川氏は、Windows 10がリリースされマイクロソフトの歴史においても大きなマイルストーンになる節目であり、パソコン〜タブレット、そしてスマートフォンをカバーし、新しいライフスタイルを提案できると判断。セキュリティ面でも、Windowsはアドバンテージがあるとして、20代〜50代のビジネスパーソンが仕事でも使える機種として、AndroidではなくWindows 10 Mobileを採用したのだという。

短期間で発表にこぎつけた

 星川氏によると、「NuAns NEO」のプロジェクトが本格的にスタートしたのは今年5月。半年で発表にまでこぎつけることができた、その背景には、マイクロソフトの「チャイナ テクノロジー エコシステム(CTE)」がある。CTEは、マイクロソフトが台湾や中国のODMメーカーを支援して、Windowsデバイスを普及しやすくするための仕組みだ。

 星川氏は、ODMメーカーが用意するリファレンスモデルから選択して、自社ブランドの製品にする、という形になる場合、つまり開発に時間もリソースもかけなければ、安く仕上げることが可能になると説明。その場合、特徴は“ローンチまでのスピード”と“安さ”という2つになる。

 しかし、NuAnsでは、新しいライフスタイルを提案するというコンセプトを掲げており、安さをウリにするのでは意味がない。今回、大きな特徴として、好みのデザインにカスタマイズでき、なおかつ素材にこだわったケースが用意された。用意したリファレンスモデルではなく、独自性の強いケースに対応する機種へ取り組んでくれるODMメーカーとともに、他にはないスマートフォンを生み出したというのは、CTEの活用事例としては、グローバルでも例がないものだろう。

 ちなみに「NuAns NEO」は、LTEバンドの1、3、8、9、19、29に対応。NTTドコモやソフトバンクのネットワークで利用可能だ。

独自仕様だからこそできたデザイン

 トリニティの「NuAns NEO」は、映画「マトリックス」のヒーロー(主人公)とヒロインの名前という組み合わせでもある。

 開発時には、アクセサリーメーカーだからこそのスタンスとして、製品作りにおいて、一度忘れよう、と考えたのが薄さ競争だったと星川氏は語る。厚みを許容することで、大容量バッテリーの搭載と、バッテリーの位置を下寄りにして、持ち心地にこだわることができた。内部設計においても、パーツ配置を調整して端子やスピーカー、ストラップホールの配置を揃えた。

 本体にはICカードを格納できるようになっている。本体に窪みがあり、ICカードを置いてカバーで覆うと、常にICカードを持ち歩ける。NFCのアンテナも配置されており、たとえば鉄道系ICカードの残高を読み取る、といった使い方になる見込み。

本物の素材を使ったカバー

 iPhone向けケースを手がけてきたなかで、手帳型と背面のみ覆うタイプのケースは、半々くらいの人気であることがわかってきた、と語る星川氏は、「NuAns NEO」でもそうしたニーズに対応するべく、背面カバーを用意した、とする。

 1つは、ツートンで、上下のカバーを自由にカスタマイズできるというもの。素材も塗装ではなく、本物を採用した。たとえば布素材ものはクラレのクラリーノで、起毛の布は東レのウルトラスエードだ。また、木製のケースは、ゼロワンプロダクツの「テナージュ」というシートを使った。これは0.3mmにスライスした木材を採用したもの。いずれも、インモールド成型によりプラスチック樹脂と素材が一体になっており、剥がれることはない。

 ケースの端は、アルファベットの“C”のような形になっていて、本体をパチンと挟み込むようにくっつく。このC型のケースは、側面まで全て素材にできるという大きなメリットがあるものの、インモールド成型であってもなかなか製造できなかったという。ひとまず中国で製造しようとしたものの、厳しかったため、国内のART&TECH社の特許技術で実現し、実際に栃木で製造しているのだという。木材は九州のものを用いており、東レやクラレの素材も含め、「メイド・イン・ジャパン」のケース、と星川氏は胸を張る。

 上下ともに8種類のケースを用意しており、あわせて64通りの組み合わせを楽しめる。ニーズが高いもう一方の手帳型ケースもクラリーノやウルトラスエードのものを展開し、スマートフォンスタンドとしての機能が用意される。

 このケースの活用の幅を拡げるため、準備が整い次第、トリニティではケースのCADデータを一般に公開する。他のアクセサリーメーカーが専用ケースを作ることも可能なほか、一般ユーザーが3Dプリンタでオリジナルケースを作ることもできる。

家電量販店では販売しない

 「NuAns NEO」は、Amazon.co.jpで販売される。実店舗では、いわゆるキャリアショップや家電量販店では扱われず、高級家具を扱うBALS、あるいはさまざまなアイテムを揃えるロフト、そして伊勢丹といったところで販売される。

 ただ、当初は販売店舗を絞って、ユーザーからの問い合わせ内容などを検証する考え。たとえば全国展開するロフトであっても、当初はスマートフォンに詳しいスタッフがいる店舗などに限り、徐々に拡大していく。

サポート体制は

 これまでもスマホアクセサリーメーカーとして、社内にサポート担当はいたが、「NuAns NEO」の発売にあわせ、トリニティでは専用コールセンターと契約した。Windows 10 Mobileに対応するコールセンターとなる。なお、独自の保証サービスなどは当初、用意されていない。

Continuum対応、法人向けにも

 チップセットは、ミドルクラスのチップとなるMSM8952(Snapdragon 617)を採用した。ハイエンドなものはコストがかかるため、スペックと価格のバランスから、Snapdragon 617が選ばれた。「NuAns NEO」では、今回、Continuum対応を明らかにした。一方、マイクロソフトとしては、Snapdragon 617でのContinuumが動作するかどうか、検証中とのこと。

 コンシューマー向けだけではなく、ダイワボウ情報システムズやソフトバンクC&S経由で、法人向けにも供給される。

(関口 聖)