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「4Gの60倍速くなる」、三菱が20Gbpsを実現する5G向け通信技術

 三菱電機は、第5世代(5G)の携帯電話用基地局向けに「マルチビーム多重技術」を開発した。数多くのアンテナ素子を使う技術と、干渉を除去する演算を組み合わせたもので現在の4Gと比べて、60倍となる20Gbpsという速度を実現できるという。

 三菱が開発した技術は、小型のアンテナ素子を多数備えて電波をビームのように制御できる「超多素子アダプティブフェイズドアレイアンテナ(APAA)」と、電波の発射前に干渉を抑える演算を行う「非線形多重対角化プリコーディング」を組み合わせたもの。駅前の繁華街といった場所での利用が想定されており、超多素子APAAで、最大16の端末へビームを送信しつつ、非線形多重対角化プリコーディングによって最も大きな電力となるビームとの干渉を検知して除去する。

 これまでも、超多素子APAAを使った通信技術の開発は進められていたが、端末同士の距離が近いと干渉が起きていた。そこで対角化プリコーディングという技術で干渉を抑えるため、出力を抑える手法を採ったが、出力を抑えると速度が落ちてしまう。三菱が行った実験では、端末同士がきちんと離れていれば、1つの基地局あたりの通信速度が20Gbpsだったところ、端末と端末が近づいて干渉が起きると速度が低下して17Gbpsを切る結果となった。そこで、非線形多重対角化プリコーディングで、干渉成分を検知してキャンセルする仕組みとしたところ、端末同士の距離が近くても、干渉を避けて、なおかつ速度が落ちずに済むようになった。

開発済の技術で干渉が起きなかった場合
干渉が起きた場合
新技術を使うと干渉が起きるような近距離(2cm程度まで対応)でも干渉を抑える
非線形多重対角化プリコーディングを採用した

5G標準目指す、フィールド実験は2018年度に

 説明を行った、三菱電機 情報技術総合研究所 無線通信技術部長の岡村敦氏は、通信トラフィックが毎年1.7倍〜2倍になっており、2024年には4Gは収容能力の限界を迎えるため、2020年の商用化をめざして、世界で5Gの開発が進められていると説明。5Gでは20Gbpsという速度を目指すこと、スピードアップや収容能力をアップさせるため空間多重といった仕組みで、電波を重ねて送る手法が採用されると語る。

4Gでの考え方
今後の展開

 現在、商用サービスになっている第4世代(4G)の技術では、1つの基地局で広いエリアをカバーするという考え方なのに対して、5Gではスポットをカバーする形になり、そのために小型アンテナ素子を6×6(36個)、あるいは8×8(64個)などと数多く並べて、電波の向かう先を調節してビームのように発射する仕組みを用いる方向で、技術開発が進められている。

 今回、三菱が開発した技術は、そうしたトレンドをもとに、さらなる進化を図るもの。21日には44GHz帯に対応した装置が展示されており、それより下の周波数帯であれば、すぐにサポートできるとのこと。5Gの仕様は現在策定中で、さらに5G用の電波がどの周波数帯になるか、2019年に国連の組織(ITU)で決められる。三菱では、5Gの仕様へ今回の技術が2016年〜2017年に盛り込まれるよう働きかける方針。さらに総務省が2018年度に実施する実験で、本技術をフィールド上で試していく。

(関口 聖)