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シャープ、経営難でFoxconnの子会社に

 シャープは、悪化していた経営の再建策として、台湾の鴻海精密工業(Foxconn)を中心とするグループに対し、第三者割当増資を行うと発表した。シャープから発表された増資が実行されると、株式の発行などによる鴻海からの調達額は約4890億円になり、筆頭株主と主要株主が異動し、シャープは鴻海の子会社になる。

経緯

 シャープによれば、弱体化した経営体質の改善策として同社は2013年に中期経営計画を策定し、強みのある分野への経営資源のシフトなどで経営の改善を図ったが、2014年度は大幅な赤字を計上した。

 その原因は、北米の液晶テレビでの競争激化、太陽電池パネルの需要低迷などエネルギーソリューション事業の環境の悪化、中小型液晶の市場で高精細化が進展しなかったことと価格下落への対応力の不足および在庫評価減、ソーラーパネル向けポリシリコンの長期契約での単価差の引当てなどによるもの。

 その後、同社は改めて「2015〜2017年度 中期経営計画」を策定し、事業ポートフォリオの再構築をはじめとした重点戦略を進めたが、中期経営計画の初年度にあたる2015年度の業績は、ディスプレイ事業において想定を上回る中国市場向けスマートフォン液晶の販売減や、競争激化による単価の下落が影響するなどし、2015年10月に業績予想を下方修正、第3四半期決算で累計1083億円の損失を計上していた。

 シャープは、自己資本比率の改善と財務の回復が必要な中で、確実・迅速に資金調達を行うため、新規株式発行による第三者割当で資金調達を行う方針を固め、2016年に入ると産業革新機構と鴻海の2社の提案に絞って協議を続けていた。

鴻海の提案を採用した理由

 シャープは、鴻海の提案を採用する理由について、1)調達した資金でディスプレイ事業の競争力を強化しながら、成長投資も賄え、財務体質も改善できる、2)鴻海は液晶事業で相互補完の関係にあり、鴻海の製造技術の活用で生産性・コスト競争力の強化も期待できるなど相乗効果が大きい、3)「シャープ」ブランドの継続使用を含めて、従業員や商品ラインナップの価値、エコシステム維持の意義に十分な理解が示されている、4)かねてからの取引や共同運営で信頼関係が構築されている、5)既存株主の利益にも配慮した条件になっている、6)鴻海の実行の確実性を高める義務に合意する予定、の6点を挙げている。

 シャープは、鴻海からの出資により財務体質が改善され、成長投資にも資金を充当できることで、「2015〜2017年度 中期経営計画」の業績目標の達成を目指すとしている。

スマホ向け有機EL事業に2000億円

 ディスプレイデバイス事業においては、有機EL(OLED)ディスプレイの事業化と技術開発投資、量産設備投資などに2000億円、中型液晶の高精細化や次世代技術開発投資などに1000億円と、大規模な投資が行われる。

 OLEDディスプレイの事業化については、液晶ディスプレイに続いて、スマートフォンや車載向けディスプレイ、薄型テレビ向けに期待される成長市場とした上で、IGZO技術とLTPS技術を組み合わせ、これまでのOLEDディスプレイでは実現できなかったさらなる低消費電力化を、低コストで実現可能としている。

 OLEDディスプレイの量産開始は2018年初頭を見込む。ラインは亀山工場内に立ち上げ、フレキシブルOLEDの量産も目指す。量産ラインへの投資により、2019年までに、5.5インチパネルで月産約1000万枚相当の生産能力を目指し、年間では5.5インチで約9000万枚相当のスマートフォン向けOLEDディスプレイを生産する計画。売上高の目標は年間2600億円。

 OLEDディスプレイと液晶ディスプレイは長期にわたって共存するとし、高価格帯のスマートフォンやタブレットではフレキシブルOLEDディスプレイが普及し、低〜中価格帯の携帯電話に液晶ディスプレイが使用されると見込む。

 中大型ディスプレイでもOLEDディスプレイを拡大させ、「世界の主要なOLEDディスプレイサプライヤーとなることを目指す」としている。

 液晶ディスプレイ事業は、スマートフォン向けの需給バランスの悪化や価格下落を受けて、パソコンやタブレット向けの中型液晶ディスプレイでシェア獲得を目指し、収益の安定やコスト競争力の強化を進める。

コンシューマーエレクトロニクスはIoTや新興国を強化

 スマートフォンの「AQUOS」をはじめとしたコンシューマーエレクトロニクスカンパニーの通信システム事業は、今回の発表で大きく触れられていない。

 家電や健康事業などを統合しているコンシューマーエレクトロニクスカンパニー全体としては、ハードウェアだけでなくクラウドサービスとセットにして、「人と家電の新たなつながり」を提案するという従来の方針が踏襲されており、今回の資金調達によりIoT分野や新興国への取り組みを強化していく方針が明らかになっている。

 広告宣伝についても、日本、アジア、中国を対象に、ブランド価値の向上のための取り組みが進められる。

(太田 亮三)