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軽量化された小型可搬型基地局をソフトバンクが公開、全国に10台を追加配備へ

有志社員による「災害時復旧要員」が設営する模様も披露

 ソフトバンクは、大規模災害時などに現地に運び設営する「可搬型基地局」について、従来より軽量化された衛星通信用アンテナを含む、最新の設備を公開した。合わせて、公募型で有志社員による災害時復旧要員の取り組みも紹介し、実際に設営する様子が披露された。

新型の小型可搬型基地局のパラボラアンテナ
小型可搬型基地局の一式とポータブル蓄電池
従来型の可搬型基地局
従来型の可搬型基地局をルーフキャリアで搭載したレンタカー

 ソフトバンクは通信設備が車両と一体となった移動基地局車100台のほかに、衛星通信用のパラボラアンテナや関連する設備を可搬型として分割し、車やヘリなどで運んで現地で設営する「可搬型基地局」も200台を配備している。可搬型基地局は、レンタカーのルーフに設置できる装備も用意しており、臨時の移動基地局車として運用することもできる。

 全国14カ所にはソフトバンクの災害対策倉庫が用意されており、上記のような通信関連の設備のほかに、被災地で活動をするためのさまざまな物資が、すぐに運び出せるコンテナに収納されて準備されている。

移動基地局車
災害対策倉庫に準備されている支援キット
コンテナに収納されすぐに運び出せるようになっている
筆談具など避難所などで利用する道具も
被災者向けの物資を消費しないように用意されている飲料水
大型の発電機も

 9日に報道陣向けに公開されたのは、3月に入って導入したばかりという新型の可搬型基地局で、地面への設置を前提とした設計が特徴。アンテナの色はグレーになっている。従来同様に設置後は自動で衛星を捕捉するシステムで、条件が良ければ最短5分で捕捉が完了するという。

 パラボラアンテナ本体や台座が、従来から運用してきたものより軽量になっており、アンテナ部分は「頑張ればひとりでも設営できるレベル」という。従来型は合計120kgだったが、新型の小型可搬型基地局は合計96kgで、アンテナ関連の設備は分割して3つの収納ケースで運べるようになっている。合わせて配備している1000Whの「蓄電池型ポータブルAC電源」により、発電機や発電機に使用するガソリンの供給が間に合わないケースでもすぐに稼働できるようにしている。

 衛星通信用アンテナと一緒に運んで設置されるユーザー向けのアンテナは、2.1GHz帯の3G(音声通話、データ通信)とPHSに対応する。既存の基地局設備の伝送路のみが被災している場合などは、可搬型基地局の衛星通信で伝送路のみを復旧させるとった使い方もできる。なお、車両と一体型の移動基地局車では、LTE対応の設備も用意されているが、可搬型基地局では音声通話のエリアの復旧を最優先として運用される。

 今回公開された新型の可搬型基地局は全国に合計10台が配備される。すでに配備されている移動基地局車や可搬型基地局と合わせて運用され、台風など予め被害が予想される場合は周辺から集めるなど適時移動も行う。

新型の小型可搬型基地局
ポータブル蓄電池
災害対策用の基地局について
大規模災害対策準備室 室長の黄木寛之氏
災害対策室運用管理課 課長の米原裕雄氏

有志社員による「災害時復旧要員」が設営

 可搬型基地局については、有志社員による「災害時復旧要員」で設営を行う模様も披露された。災害時復旧要員は、普段はソフトバンクの通常の業務に従事する社員や、グループ会社の社員からなる有志の組織。2011年の東日本大震災において、技術部門だけでは人員が足りず、有志の社員が復旧活動を支援したことをきっかけに構築された仕組み。東日本大震災の後にも、2011年8月の台風12号(和歌山県など)、2015年9月の関東東北豪雨(茨城県など)の災害で出動している。2012年から公募型で正式に組織されており、現在は240名が参加、年2回の定期訓練も行っている。

災害時復旧要員について

 この日設営にあたった6人のスタッフも、災害対策本部のスタッフに加えて、インフラ系から販売系まで幅広い部門から集まっていた。ソフトバンクではこうした社員向けに災害対策と支援のための即応マニュアルを配布しており、どこに向かうか、どう動くかといった共通の下地はできている状態とする。

 前述の可搬型基地局などでソフトバンクが採用している衛星通信用アンテナは、GPSなどで設置場所を把握した上で、モーターでアンテナの角度を調整し衛星を自動で捕捉するタイプ。通信技術の専門スタッフが時間をかけて衛星を捕捉・調整するといった手順が必要がないため、技術部門の人員ではない災害時復旧要員でも、可搬型基地局の設営といった復旧活動を行えるようになっている。

 新型の小型可搬型基地局は、アンテナと台座を地面に設置し、エンドユーザー向けのアンテナポールを別途設置する形。

新型の小型可搬型基地局と関連設備一式

 従来型の可搬型基地局は、アンテナを搭載するやぐらがアンテナポールの台座や制御ユニットを搭載できるようになっている。やぐらとアンテナは一体になって収納されており、これにアンテナポールなどを組み立てて設営していく。

 従来型の可搬型基地局ではまた、車載用としてルーフキャリアにアンテナが予め固定されたバージョンも用意されている。これはレンタカーなどに設置することを想定したもので、災害対策倉庫などの拠点でルーフキャリアを吊り上げ、レンタカーに固定し、通信設備は車内に積載して出動する。

従来型の可搬型基地局の設営の模様
従来型の可搬型基地局のレンタカーへの搭載
ケーブルをすこしたるませて、雨のしずくが車内の設備に伝わりにくくしている。説明しているのは大規模災害対策準備室の田中幸男氏

 いずれの設備や組織、運用方針も、機動性を高め、可能な限りはやく復旧させることを目的としている。新型の小型可搬型基地局は分割すれば宅配便など既存の物流でも移動できるサイズ・重量とのことで、災害対策の機動性をさらに高めるものになっている。

参考

NTTドコモの可搬型基地局。パラボラアンテナは組み立て式
自衛隊の可搬型の衛星通信用パラボラアンテナ

(太田 亮三)