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i-dioのクルマ専門チャンネル「Amanek」が特徴や今後の展開を解説

カーナビ搭載で2020年に1000万台の普及を目指す

 アマネク・テレマティクスデザインは、マルチメディア放送サービスの「i-dio」で自動車向け専門チャンネルとして提供している「Amanekチャンネル」について、特徴や今後の展開を解説する発表会を開催した。

 「Amanekチャンネル」に対応する「i-dio」のチューナー数は、車載用チューナーの展開やカーナビゲーションシステムへの搭載で、2020年に1000万台の普及を目指す。発表会にデモカーを用意していたクラリオンは、1~2年後の発売をめどにカーナビへのチューナーの搭載を検討中としていた。

 コンシューマ向けの音楽チャンネルのほかにも、放送波でデータを送信する仕組みを活用したさまざまな展開が案内されたほか、「Amanekチャンネル」のプラットフォームを活用し、ペットボトルサイズで行政車両やバスへの搭載から家庭まで幅広く対応する防災ラジオ「GPS付移動体向け防災デジタルラジオ」も発表された。

 さらに研究段階として、ドローンの制御を放送波で行う仕組みや、APIを公開して車載用のパートナーロボットをユーザー参加型で開発していくといった取り組みも明らかにされている。

4月に発売される「車載対応TunerBox」のデモ
移動体向け防災デジタルラジオ

ホンダ「インターナビ」開発者が仕掛ける

アマネク・テレマティクスデザイン 代表取締役CEOの今井武氏

 アマネク・テレマティクスデザインが15日に都内で開催した説明会には、関係者も多数参加しており、7月からの本放送で提供する独自の取り組みに加えて、デジタルサイネージや広告プラットフォームとしての展開の説明にも多くの時間が割かれた。音楽チャンネルを中心としながら、GPS連動やデータの配信といった仕組みを活用し、プラットフォームとして展開が予定されている。

 アマネク・テレマティクスデザインは、エフエム東京やゼンリン、日本気象協会、大日本印刷、オリックスなど14社からなるジョイントベンチャー。Founder CEOの今井武氏は、本田技研工業(ホンダ)で「インターナビ」を立ち上げた人物で、ホンダ退職後に、庄司明弘氏(アマネク CMO)とともにアマネクを創設した。庄司氏は音楽制作会社やタワーレコードの副社長を務めるなど、音楽業界の出身。

スタジオの「Amanekモニタ」で詳細な予報を提供

アマネク テレマティクスデザインCMOの庄司明弘氏(左)と、日本気象協会の齊藤愛子氏

 「i-dio」のチャンネルとしてプレ放送で提供が開始されている「Amanekチャンネル」は、自動車のドライバー向けに特化したのが特徴の音楽チャンネル。日本気象協会と同じビルに設けられたスタジオには、15分先の気象予報が詳細に分かるモニターが用意されており、生放送の番組では、広域の予報、渋滞情報などが番組ナビゲーターから案内される。このモニター上では、著名な観光スポットやTwitterの情報も確認できるようになっている。

 一方、全国の気象情報は1kmメッシュで管理されており、「Amanekチャンネル」の特徴のひとつでもあるアプリのTTS(自動音声読み上げ)を使用し、GPSでユーザーの位置を判断して、市町村などのエリア単位の気象予報データがTTSで案内される。

 これにより、広域の予報は生放送などでナビゲーターが案内し、車両周辺の予報はTTSで提供されるなど、放送とデータ、IT技術を組み合わせたサービスになっている。

 GPSで位置を判断し、聴取者のエリアごとに配信する情報を変える仕組みはさまざまに応用される。アプリ上ではドライブスポットや観光情報などが位置情報に合わせて提供されるほか、大型の商業施設に近づくとトピックやイベント情報が配信されるといった取り組みも検討されている。気になる情報を聞いたらアプリなどの画面をタップするだけでブックマークできるという機能も準備されている。

 15日の説明の段階では「7月の本サービスの開始に向けて、これだけユニークなことができる、と分かるよう取り組んでいく」(庄司氏)と開発への意気込みが語られている。

普及を加速させ、放送・通信が融合したプラットフォームとして展開

アマネク・テレマティクスデザイン ビジネス・ディビジョン ゼネラル・マネージャーの田辺義仁氏

 アマネク・テレマティクスデザイン ビジネス・ディビジョン ゼネラル・マネージャーの田辺義仁氏からは、Amanekチャンネルに対応したチューナーの普及への取り組みや、その規模を活かす広告プラットフォームとしての取り組みが紹介された。

 「今後、市販のカーナビで某メーカーに採用される。さらにディーラーオプションやメーカーオプションとして採用され、2020年には1000万台を超える。以降、新車に年間400万台のペースで標準装備されていく」と田辺氏は今後の普及予測を示し、「聴取可能なクルマを加速度的に増やしていく」と意気込んだ。

 Amanekチャンネルで放送する広告にはすべてテキストデータを提供でき、アプリの画面では別のWebサイトや動画サイトへの誘導も可能。

 また、こうした広告は、チューナーのIDに対してピンポイントに広告を配信できる仕組みも用意されており、例えばAmanekチャンネル対応カーナビを搭載して販売した自動車のディーラーが、店舗の顧客だけに向けた広告を配信したり、特定の車種に絞って広告を配信したりすることも技術的に可能になっている。

 メディアとしての規模を実現するために、当面はチューナーの普及活動に力を入れていく方針だが、デジタルサイネージへのデータ配信など、一般ユーザー向けの音楽チャンネルとは別の展開も予定されている。

 アマネクは、V-Lowで「i-dio」に割り当てられている帯域のうち、2セグメントを使用してサービスを提供する。このうち1セグメントは、音楽チャンネルの「Amanekチャンネル」が中心で、もう1セグメントはBtoBやBtoBtoC向けとして、業務用車両でのテレマティクスサービスや、デジタルサイネージ向け、ドローン制御情報の放送波での送信(研究段階)など「Amanekコラボレーション」として利用される。

放送波で地図データを更新するカーナビ

 技術的に可能という取り組みでは、カーナビの更新用地図データを放送波で受信し、必要な差分データのみを更新していく仕組みも公開されている。「音楽を聞いている間にカーナビの地図を更新できる」などと謳うもので、更新対象になるエリアのメッシュを細かくしてデータを軽量化し、更新にかかる時間を早めていた。現在地周辺や、ルート検索の経路周辺のみの地図を更新するといったことが可能。

 Amanekチャンネルに対応するカーナビなどがソフトウェアを実装することで実現できる。ユーザーの料金負担のイメージは未定だが、技術的には、更新したデータの分だけを負担する従量課金も可能としている。

太田 亮三