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KDDI、月面探査プロジェクトにパートナー参加〜月での通信をサポート

 KDDIは、レース形式の月面探査プロジェクト「Google Lunar XPEIZE」に挑戦する月面探査チーム「HAKUTO」(ハクト)とオフィシャルパートナーシップ契約を締結した。2017年に探査機を月面に送り込み、月面映像の撮影を目指す。

 23日にKDDIの代表取締役社長 田中考司氏とHAKUTOの代表 袴田武史氏が登壇し、プロジェクトでの取り組みを紹介した。

KDDIの田中考司社長(左)と、HAKUTOの袴田武史代表(右)

 「Google Lunar XPEIZE」は、民間開発の無人探査機で月面の撮影を目指し、世界各国のチームが競い合う月面探査コンテスト。運営はXPRIZE財団。Googleがスポンサーとなっており、優勝チームには2000万ドルの賞金が付与される。現在16チームが参加している。

 「HAKUTO」は、日本から参加する唯一のチーム。運営は宇宙探査ベンチャー「ispace」。加えて、東北大学でロボット技術を研究する吉田研究室と、プロモーションやデザインなどをボランティアで担当する「プロボノメンバー」のスタッフで構成されている。

 「Google Lunar XPEIZE」プロジェクトでは、民間の資本で開発するルールがある。「HAKUTO」では、開発・打ち上げのコスト抑えるため、探査機を小型軽量化し、全て民生用の機器を利用して設計している。KDDIでは、資金面(金額は非開示)と技術面の両面で支援する。

月探査ロボット(ローバー)

 「HAKUTO」が挑戦する「Google Lunar XPEIZE」のミッションは、「無人探査機を月面に着陸させる」「探査ロボット(ローバー)を着陸地点から500メートル走行させる」「月面を撮影したHD動画を地球に送信する」という、大きく3つの段階に別れる。

 自前の発着陸設備を持たない「HAKUTO」は、アメリカのプロジェクトチーム「Astrobotic」の着陸船に相乗りして、SpaceX社のロケットで月へと旅立つ。月面では、探査ロボット(ローバー)を500m以上走行させて、動画や静止画を撮影する。そして、その映像を着陸船の通信設備から地球へと送信する。地球から月まで3日程度かけて送り込み。ロケット打ち上げから1週間程度で画像が送信される予定。ローバーは、使用できなくなるまで月面の情報を収集する。

 プロジェクトでは、地球からローバーを遠隔で操作して、画像を送信する必要がある。その鍵を握るのは、地球から月にいる着陸船へ、着陸船からローバーへの、2種類の無線通信だ。今回のパートナーシップ契約によって、KDDIとKDDI研究所が、その通信を技術面でサポートする。

 着陸船からローバーへの通信では、大容量の送信が可能だが、月面は遮蔽物が多く電波が遮断されやすい。また、覆われている砂に鉄分やガラス質などが含まれていた場合、干渉が発生する可能性があるという。

 干渉への対策として、着陸したローバーは、砂を巻き起こさないよう100メートルを1時間程度かけて走行する。月面での通信には900MHz帯と2.4GHz帯の2つの周波数帯を用いたモバイルデータ通信を利用する予定。さらに、KDDI研究所の電波無響室(電波暗室)にて、ローバーがどのような角度になっても安定して通信できるようなアンテナの配置を検討したという。

 地球から月の着陸船の通信は、着陸船側が提供する惑星間通信システムを利用する。このシステムでは利用できる帯域幅が非常に狭いため、田中社長によると「良くて100kbps程度」の低速での通信となるという。KDDI研究所では、月で撮影したHD映像を効率よく送信するため、動画の圧縮に使用するH.264エンコーダーを、コントラストが大きい月面映像に最適化させるほか、映像の送信時エラーを受信した地球側で補正し綺麗な映像に復元する技術を開発する。

 田中社長は発表会で、KDDIの宇宙通信への取り組みを紹介した。前身のKDDでは1963年に日本初の日米間衛星放送を開始したほか、現在でも南極観測隊に衛星通信技術者の派遣などの活動を行っている。

 「私は、技術者には夢を追いかけてほしい」という田中氏、HAKUTOとの取り組みについては「ビジネス的な面よりは、みんなで楽しんで取り組みにしたい。すでに社内でもワクワクしています」と話した。

 田中氏と袴田氏は、プロジェクトへの思いをフラッグに記し掲げた。このフラッグは打ち上げまでにスタッフ全員の意気込みが書き込まれ、管制センターに掲示されるという。

月面探査ロボット「ローバー」

 月面を探査する「ローバー」は、参加チームの中でも最小クラスのもの。砂ぼこりを立てないように車輪にはフィンを設置。実機には月の高温に耐えられるように銀蒸着とテフロン加工を施される。バッテリーのほか、ソーラーパネルも取り付ける予定。

 発表会ではタブレットで操作するデモンストレーションが実施されていたが、月面に送られる機体管制センターからコマンドで制御する。

当初、2輪型のローバーと4輪型のローバーをセットで運用する計画だったという

(石井 徹)