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Bluetooth同士でつながり建物全体をカバーする「Bluetooth mesh」

Bluetoothの2016年ロードマップ

Bluetooth SIG 開発者プログラム ディレクター スティーブ・ヘーゲンデルファー氏

 Bluetooth規格を推進する団体Bluetooth SIGは30日、2016年のロードマップに関する記者説明会を開催した。Bluetooth SIG 開発者プログラム ディレクターのスティーブ・ヘーゲンデルファー氏が登壇し、Bluetooth技術の展望を示した。

 ヘーゲンデルファー氏は近未来の世界を、インターネットの登場、スマートフォンの登場に続く「第3の波」がやってくると表現。2020年には450億のIoTデバイスが稼働するという、AIGの予測を紹介した。その中でもBluetoothは約1/3の140億台のデバイスに搭載され、IoT時代の根幹を支える技術へと進化させていく方向性を示した。

 2016年のロードマップの主要ポイントは3種類。そのうち2つは「通信範囲の拡大」と「速度の高速化」というコアコンポーネントに属する技術の強化。ヘーゲンデルファー氏によると、この2つはBluetooth 4.2の次の仕様で盛り込まれ、2016年度中に提供される予定だという。

 そして3つ目は、Bluetooth Smart機器が相互に接続してネットワークを構成する「Bluetooth mesh」だ。

 従来のBluetoothは2つのノードがP2Pで接続する形態だが、「Bluetooth mesh」では、複数のBluetoothノードがそれぞれ相互接続することによって、ひとつの大きなネットワークを形成する。

 Bluetoothでは「ビーコン」として、建物の中で現在位置を把握する利用法があるが、このビーコン同士がネットワークを形成するようになると、コストをかけずに建物全体をカバーするネットワークが構成できる。メッシュネットワークには中心がないため、機器の柔軟な増設・置き換えが可能だ。

 例えば、「Bluetooth mesh」で構成される、ビル一棟を覆うようなネットワークは資産管理に活用できる。Bluetoothタグをビルのあらゆる家具や設備に貼り付けることによって、ビル内での現在位置も含めた資産の集中管理が可能になる。家庭では、Bluetooth meshに対応すると、電球1本からエアコンまで、あらゆる家電をスマートフォンからコントロールできるようになる。

 建物だけでなく、さまざまな産業分野での応用も可能。農業での利用例では、畑にBluetooth Smart対応の土壌センサーを設置。センサー同士でメッシュネットワークを形成することで、畑の酸性度や湿度の把握といったテクノロジーを、小規模な農家でも利用できるという。

 ヘーゲンデルファー氏によるとBluetooth SIGは「Bluetooth mesh」の仕様策定に向け、セキュリティの確保に関する認定制度を含め、検討している段階だという。

 そのほか、ビーコンを活用したナビゲーションの利用事例として、室内照明発電とBluetooth Low Energy(BLE)のビーコンを組み合わせて給電不要のガイドシステムを実現した成田空港の事例や、工場での人の動きの把握などにビーコンを活用する事例が紹介された。

 Bluetooth SIGでは、こういったソリューションの開発を支援するため、「Bluetooth Developer Studio」をはじめとした開発キットを提供している。Bluetoothセンサーをインターネットに接続するためのゲートウェイでは、ミニコンピューター「Raspberry Pi」で実行可能なスターターキットを提供している。

 会場では、Bluetooth SIGのパートナー各社が、Bluetoothを採用した製品や開発キットの展示を行っていた。

Nordic Semiconductor は、Bluetooth meshでのブロードキャスト配信(左)や、IPv6 over Bluetooth(右)の技術デモンストレーションを行っていた
ST マイクロエレクトロニクスは、最大で摂氏105度の環境で動作可能な自動車向けSoC(左)や、BLEでの音声通信デモンストレーション(右)を展示
クアルコムのBluetooth mesh対応のゲートウェイのリファレンス機(左)と開発キット(右)
シリコン・ラボラトリーズは、勤怠システムや測量機器などのBluetooth採用製品を並べていた
ASWY Electronicsは、電磁力で宙に浮くBluetoothスピーカーを展示

石井 徹