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「Ingress」、新たなスポンサーはオートバックス

 米ナイアンティックは、現実世界を舞台に遊ぶスマートフォンゲーム「Ingress」の新たなスポンサー企業として、オートバックスセブンと提携した。27日、日本科学未来館で開催されたイベントにあわせて発表された。全国にあるオートバックスセブンの店舗がゲーム中に登場する。

 Ingressは、現実世界にあるアートや歴史的な場所、寺社などが「ポータル」として登録され、2つの陣営に分かれてポータルを取り合うスマートフォンゲーム。ナイアンティックでは「リアルワールドゲーム」と呼んでおり、これまでにローソンやソフトバンク、伊藤園、大日本印刷、三菱東京UFJ銀行がパートナー企業になっている。

 こうした企業がコラボする際には、ゲーム中の世界観にあわせたストーリーが紹介される。日本で6社目のスポンサー企業となるオートバックスは、ゲーム中に登場する謎の物質(エキゾチックマター、XM)を検出する車両の開発・改良に多大なる功績があり、海外のIngressのイベントに登場していた車両「NL-1331」を作り上げた。そしてオートバックスはNL-1331に用いた技術をさらに研究し続け、米国外でもNL-1331と同じような車両の投入の噂がある――という。

 実際のところは、オートバックスの役員にエージェント(Ingressのプレイヤー)がいるとのことで、その役員から担当者へ「オートバックスの店舗をポータルにできないのか」と無茶ぶりがあったのだという。オートバックス社内では若手社員を中心とした6名のプロジェクトチームを発足。担当者は「店舗のポータル化だけでは終わりません」と宣言して、今後の展開に期待を持たせた。

伊藤園、謎のマシンを開発

 昨年6月にIngressのスポンサー企業となった伊藤園。当時、イルミネーションに工夫を凝らした自販機を設置する計画を明らかにしていたが、発表から10カ月、今回ようやくその全貌が明らかにされた。

 会場で披露されたそのマシンは、「XM Profiler」と名付けられ、ゲーム中にもポータルとして登場する。そのポータルにエージェントがアクセスすると、その状況が現実の「XM Profiler」に反映される。IngressのAPIを活用した仕組みと見られ、ポータルのオーナー名などがマシンに表示されるほか、周辺の勢力状況にあわせた表示も楽しめるという。ちなみに飲料の販売機能は、Ingressの世界観にあわせるため、ばっさりカット。伊藤園のロゴも筐体には配されていない、という潔い仕様だ。東京・台場のビーナスフォートに5月14日14時から設置される。

7月、東京でイベント

 先の週末、ナイアンティックは東北でイベントを開催。ゲーム中で休止している、ポータル申請機能を、沿岸部周辺だけに限定する形で復活させた。この期間限定の復活は大型連休が明けるころまで続けられる予定だが、先のイベントでは7000件の申請(それ以前に1万件以上の申請)があった。重複も多いとのことだが、地元エージェントの助けも借りつつ、今後数週間でポータルが増えていくことにあるという。

 さらに今後のイベントとして、7月に東京で公式イベントが開催されることになった。米国本社から今回来日していた。創設者兼CEOのジョン・ハンケ氏は「私も興奮している」と述べて、7月のイベントに家族とともに訪れると約束。過去6カ月の間、東京でのイベントを検討してきたが、多くのエージェントが参加できる場所が見つかったとのことで、ようやく実施できることになったという。

ハンケ氏

 大きな揺れに見舞われた熊本地震についても、エージェントが関わる支援の動きがあったことを紹介(※関連記事)したハンケ氏は「貢献する動きがあったことを嬉しく思う」と述べていた。

 米国本社で勤務する日本人スタッフで、プロダクトマネージャーの河合敬一氏は、「手の平のちょっとしたデバイスを通じて、これだけの人と繋がれ、こんなに泣いて笑って…そんな風に楽しめることはあまりないな、と思う」と、押し寄せた約400人のエージェントを前に感慨深く語る。

河合氏

 昨夏、グーグルからスピンアウトしたタイミングでナイアンティックへ、グーグルから転職した河合氏は、「古い小さなビルで仕事をしている。やりたいこと全てができるわけじゃない。ひとつひとつ、皆さんからの声を受け止めながら何かひとつでも解決できればと思って動いている」と説明。

 また現在、Ingressがバージョン1.98.2となり、バージョン2が近づいていることについて「1.99が出たらどうしようかと思っている。2.0にはできないので何か考えます」と期待を持たせるコメント。この点についてハンケ氏も「2.0がどうなるか、今はまだまだ何も言えない」とするに留まった。

日本科学未来館にある球形の有機ELモニター「ジオ・コスモス」。27日のイベント限定でIngressのマップが表示された。ただしリアルタイムではなく3時間前のデータを元にしたもの
イベントにあわせたエージェント同士の戦い(アノマリー)は青のレジスタンス陣営が勝利。ジオ・コスモスのマップが真っ青に染まった。

関口 聖