「L-06A」レビュー

もう1つの“ケータイするGoogle”の実力


L-06A

 NTTドコモから発売された「L-06A」は、「Googleサービスキー」を搭載し、GmailやYouTubeといった、Googleの各種サービスへ素早くアクセスできるのが特徴だ。Googleとはいえ、Android OSなどを採用したスマートフォンとは異なり、あくまで“一般的なケータイ”で、使い勝手がほかの機種と大きく変わることはない。また、LGエレクトロニクス製の端末としては初のおサイフケータイ対応となる。今回は、そんなL-06Aの実力をチェックしていこう。

“日本のケータイ”らしい外観

 従来のLG製端末は、どちらかといえば“海外端末風”のデザインが売りだった。「L704i」「L705iX」「PRADA Phone by LG」「L-01A」などは、どれもグローバルで展開しているベースモデルが存在し、それを日本向けにカスタマイズしていたからだ。一方、今回のL-06Aは、型番やメーカー名を伏せていれば、一見、日本メーカー製の端末と思えるほど、“純和風”なデザインに仕上がっている。回転2軸ヒンジを採用したボディや、大きめのボタン、閉じたときにさり気なく点灯するサブディスプレイなどは、どれも従来のLG製端末にはなかったものだ。

 カラーは「Hyper Red」「Hyper Silver」「Hyper White」の3色で、ツートンカラーが採用されている。レビューで使用したHyper Redは、光沢のある黒のパーツとカーボンのような模様が組み合わさっており、その周囲を赤が縁取っている。赤の発色は朱色に近く、カーボン柄の質感は好みが分かれるところかもしれないが、全体としてのまとまりは悪くない。ちなみに、カーボン柄の部分は、カラーによって処理が異なる。Hyper Silverは金属調、Hyper Whiteはドットが目立つ柄のため、質感の違いは店頭でじっくり確認しておきたい。

 また、端末を開いたときのキー周辺には、さり気なくヘアライン処理が施されている。金属ではないが、一見しただけでは分からないほどだ。このような細部からも、L-06AにかけるLGのこだわりを感じる。とはいえ、メタリックなイメージが強かった従来のLG製端末とは異なり、全体から受ける印象はむしろポップで楽しげだ。従来からのLG端末ファンには違和感があるかもしれないが、日本のケータイに慣れたユーザーには、L-06Aの方が選択肢に入れやすいだろう。

タッチ操作に対応キー周辺はヘアライン処理

操作性や充実の基本機能

文字入力自体は問題ないが、動作速度が気になる

 次に、操作性を見ていこう。キーは1つ1つが大きく、非常に押しやすい。中央に向けて少しだけ盛り上がっているため、そこでキーの判別が可能だ。ただし、キー同士がギュッと詰まっており、急いで文字などを打つと、たまに間違えることはある。カーソルキーのクリック感はやや浅めで、慣れるまで時間がかかりそうだ。iモードキーやメニューキーとの距離も近すぎ、誤操作することもあった。ただ、これはあくまで厳しくジャッジするとであって、通常使用には十分満足できる押しやすさといえる。少なくとも、一般的な薄型ケータイよりは、はるかに操作しやすいという印象を受けた。

 一方で、動作速度は緩慢だ。特に、メニューを開く際に待たされる感じがするのと、カーソル移動がキーの連打に追従しない点が気にかかる。これは、文字入力時も同様。例えば、「お」と入力するために「1」を5回素早く押すと途中で文字送りが引っかかってしまった。「あ」と「い」ぐらいまではキーの押下に追いついているが、そのあとで一瞬文字送りが止まり、「う」から「お」までが一気に切り替わるといったこともしばしばあり、正直なところ快適とはいいづらい。以前のLG端末は、もう少し動作速度が速かったと記憶している。また、最近のドコモ端末は、動作速度の改善に力を入れているものが多いため、できればそれらと肩を並べてほしいところだ。

 PRIMEシリーズのため、機能は多彩だ。ディスプレイは480×800ドットのワイドVGA。多くのハイスペックモデルがフルワイドVGAであることを考えると、やや物足りないが、写真やサイトを見るには十分だ。外側カメラには、約510万画素のCMOSセンサーを採用している。もちろん、オートフォーカスにも対応。デジカメライクなインターフェイスとタッチパネルのお陰で、直感的に操作できる。フォトライトも完備しており、暗所での撮影もこなせる。さらに、ドルビーモバイルで、臨場感あふれるサウンドを実現。効果があるのは音楽再生時のみだが、音質にこだわるユーザーにはうれしい機能だ。

意外なほど多彩な操作が可能なタッチパネル

待受画面からタッチで電話帳などを呼び出せる

 L-06Aは、感圧式のタッチパネルを搭載している。タッチ操作は、液晶面を表に出したときはもちろん、通常のスタイルで開いても有効だ。待受画面には、タッチ操作に適した4つのアイコンが置かれ、メニュー、電話、メール、アドレス帳を、指で触るだけで呼び出すことができる。さらに、メニューなどもタッチ対応だ。メールや撮った写真をチェックするという使い方なら、キーを触る必要すらない。

 残念ながら、iアプリはダイレクトな操作に非対応。プリインストールされているiアプリのゲームや後述する「モバイルGoogleマップ」も、キーで操作しなければならなかった(ただし、Mediaの中にあるネイティブのゲームはタッチで操作可能)。全てをタッチで操作するというより、場面場面でキーとタッチを使い分けることが必要となるだろう。ただし、タッチパネルの感度は良好だ。iPhoneなどに使われる静電容量式とは異なり、多少力を入れて押す必要はあるが、バイブレーションでタッチしたことが分かる仕様で、アイコンも大きく、誤操作の心配は少ない。

 ちなみに、L-06Aは、液晶を表に出した状態でも、ほぼ全ての操作をタッチで行える。文字入力にも対応し、例えば、閉じたままメール作成画面を開くと、画面下にソフトウェアのテンキーが出現する。画面の半分以上を占めてしまい、少々見づらいが、文字を打つことは可能だ。設定などの第2階層以下も1つ1つの項目が大きく、指で押しやすい。実用上、あえてこのスタイルで文字を打つことは少ないと思うが、ほぼ全ての操作を行えるという安心感はある。音楽や動画を再生したり、ワンセグや写真を見たりといったシーンで重宝するだろう。「モーションお絵かき」や「スケッチメモ」といった、タッチパネルを活かした機能が搭載されているのも、L-06Aならではだ。


メニューの項目が大きく、指で押しやすいアプリはタッチ操作できないが、内蔵ゲームはタッチ対応

GoogleサービスキーとHSUPAの実力

 L-06A最大の特徴が、Googleサービスキーだ。このキーはディスプレイ下とテンキーの下にそれぞれ搭載されており、前者がセンサーキー、後者が物理キーとなっている。ボタンを押すと、「検索」「YouTube」「写真」「地図」「Gmail」「ニュース」「乗換案内」「設定」のアイコンが現れ、ここからGoogleの各種サービスへアクセスできる。ちなみに、写真は「Picasa」、ニュースは「ニュース検索」、乗換案内は「Googleトランジット」と、それぞれのケータイ用サイトにつながる。地図のみ、iアプリの「モバイルGoogleマップ」が起動する仕組みだ。

 2カ所にキーがあるため、端末を開いたときはもちろん、液晶を表にしたまま閉じていても利用できる。タッチパネルでアイコンを触るだけでよいため、サッと必要な情報を調べることが可能だ。地図以外はケータイ向けサイトに接続することになるため、ブックマークと大きな違いはないが、わざわざフォルダ分けをする必要なく、Googleのサービスだけがあらかじめまとめられているというのは、やはり便利だ。


2カ所あるGoogleサービスキーボタン下部のほかディスプレイの下にも用意されている

 これらに加えて、撮った写真を、ワンボタンでオンラインアルバムサービス「Picasa」にアップできる機能が備わっている。手順は簡単で、まず写真を撮り、Picasaにログインしたあと、サイト上にあるアドレスをクリックしてメールで送信するだけだ。これで、Picasaの「ドロップボックス」に写真が蓄積されていく。事前にパソコンでアクセスして、「メールで写真をアップロード」をオンにしておく必要はあるが、Webサービスとケータイが有機的に連携している好例といえるだろう。同様に、動画はダイレクトにYouTubeへアップできる。アップロード用のアドレスを登録するという手間が省ける。


Googleの各サービスがまとめられているGmailなどはすべてケータイ用サイトにつながる撮影直後にPicasaへのアップロードが可能

 写真や動画のアップロードを支えるインフラが、この機種のもう1つの特徴であるHSUPAだ。HSUPAとは、HSDPAの上りを高速化した規格で、上り最大5.7Mbpsとなる。試しに3Mモードで撮った写真をメールで送信してみたところ、約11.5秒かかった。一方、HSDPAの機種(上りの通信は384Kbps)での送信時間は約23.8秒。倍以上のスピードで、データをアップロードできていることが分かる。HSUPAは6月に導入されたばかりの規格で、まだまだエリアは狭いが、2009年中には全国の県庁所在地クラスにまで広がる予定だ。高速化の恩恵は大きいため、都市部に住むユーザーなら試してみる価値はありそうだ。

初のおサイフケータイ対応の実力は?

プリインストールのICアプリは4本

 LG製初となるおサイフケータイも、見逃せないポイントだ。初期状態では、「マクドナルド トクするアプリ」「モバイルSuica登録用iアプリ」「DCMXクレジットアプリ」「iD設定アプリ」の4種類がプリインストールされている。もちろん、iモードサイトから、各種アプリをダウンロードして追加できる。また、「ICカードロック」の設定も用意されており、「電源ON時」と「電源OFF時」、それぞれの状態でロックをかけることが可能だ。

 おサイフケータイをリーダ・ライターにタッチすると、サブディスプレイ部分が点灯する。きちんとデータが読み取られているかどうかが、はっきりと分かるので使いやすい。設定さえしてしまえば、あとはタッチするだけのため、使い勝手もそのほかの機種とほぼ同じだ。FeliCaチップはカメラのレンズ付近に格納されているため、不自然な持ち方をする必要もない。

 ただし、残念ながら「iC送信」には非対応。アドレス帳や画像などのデータを、タッチで送受信することはできない。トルカなども利用できないようだ。とはいえ、決済などにはまったく問題ない。その意味では、おサイフケータイの基本機能だけをシンプルに使いたいというユーザーに向いているのかもしれない。

ユーザーインターフェイスへの挑戦

キャラがかわいらしい「ライブキャラパーク」

 ユーザーインターフェイスの面でも、L-06Aには新たなチャレンジが見られる。「L-04A」と共通の「ライブキャラパーク」がそれだ。この機能は、電話帳や発着信履歴などを、かわいらしい人間や動物に置き換えたもの。擬人化(擬動物化?)することで、無機質なデータにも何となく愛着がわく。各キャラクターのコミカルな動きも必見だ。電話やメールのボタンを押すだけと操作も単純。複数のユーザーにメールしたいときなどは、キャラクターを取り囲むように指をなぞるだけでよく、電話帳から1件1件メールアドレスを選択していくよりも簡単だ。本格的な電話帳代わりにはしづらいが、コミュニケーションを楽しみたいというユーザーには打ってつけといえるだろう。

“LGジャパンモデル”の本気が伝わる1台

 ここまで見てきたように、L-06Aは、単に海外モデルをローカライズしただけの端末とは一線を画している。LGがL-04AとL-06Aを「LGジャパンモデル」と称する所以は、まさにここにある。

 多くの海外のメーカーは、これまで“グローバルであること”を売りにしてきた。ただ、いちユーザーにとっては、それが世界で展開されている商品であるかどうかは、正直あまり関係がない。いくら商品が世界規模でも、あくまで使うのは日本に住む自分自身。ケータイは毎日必ずといっていいほど使うものだけに、操作性が今までの機種と大きく異なっていたり、必要十分な機能が備わっていなかったりといった“自分にとっての欠点”があれば、“グローバル”という理由だけで、わざわざそれに買い替えはしないだろう。結果として、販売が振るわず、いくつかの海外メーカーが、日本市場から撤退してしまったのは周知の事実だ。

 これに対し、L-06Aは、徹底的に日本人の好みを分析して作られているように感じる。端末の外観はもちろん、押しやすいテンキーや、十分な機能に加え、日本の日常風景になりつつあるおサイフケータイにも対応した。一見独自機能に思えるGoogleサービスキーも、実はGoogleのiモードサイトを1つのメニュー内にまとめただけのもの。その意味では、すでに存在していた日本のサービスを、LGが上手くまとめ上げて、端末の売りにつなげたといえるだろう。これらのベーシックなニーズを満たしつつ、タッチパネルに適したユーザーインターフェイスや、HSUPA対応、ライブキャラパークなどの独自機能もさり気なく投入している。

 ただし、動作速度の遅さは、日常使用でストレスになるレベルで、ソフトウェアアップデートの際などに、ぜひ改善してほしい。また、将来的には、おサイフケータイの機能強化も必須となるだろう。とはいえ、「LGジャパンモデル」はまだ第一歩を踏み出したばかり。同社が日本市場に送り出す、今後のジャパンモデルにも期待したい。

 



(石野 純也)

2009/10/21 12:21