損しないためのケータイ料金再入門

第4回:担当者に聞くNTTドコモの料金プラン


 ケータイの料金は、どのような仕組みなのか。また、キャリアはどのような方針に基づいて料金プランを作成しているのか。一見複雑な仕組みも、このような背景となる“考え方”が分かれば、理解が容易になるはずだ。そこで、今回は、3回に渡って続けてきた「損しないためのケータイ料金再入門」の特別編として、NTTドコモで料金サービスを担当する横山豪氏に、お話を伺った。

NTTドコモ マーケティング部 料金サービス担当 横山豪氏

――現状の料金プランの仕組みを、改めて教えてください。

横山氏
 携帯電話の場合、まずは基本料金を選んでいただき、それに対応する形で通話料の体系が決まります。そこに2年契約や1年契約をお約束いただくことによる割引の仕組みが入り、通話についても家族内の通話無料や指定割引を提供しています。これらに加え、最近はパケット通信を使うことがほとんどなので、「パケ・ホーダイ ダブル」などのパケット定額制があるという形です。

――ちなみに、現状のプランを利用しているユーザーはどの程度の割合になるのでしょうか。

横山氏
 FOMAに関しては、ほとんどの方が、我々が新料金プランと呼んでいる、2004年11月に入れたプランに移行しています。最近は端末の買い方に合わせてバリュープランを入れていますから、そこでのメリットも出るようになっています。

――話が若干それますが、いまだに“新”プランなのでしょうか?(笑)

横山氏
 正直なところ、いつ“新”を取るべきなのか悩んでいます(笑)。ただ、この新プランは、我々にとって非常にセンセーショナルでした。旧プランでは時間帯や曜日、かける相手によって、かなりきめ細かく料金が設定されていました。それを、お客さまに分かりやすくしようということで、今のプランから、どこにいつかけても同じ通話料になる“フラットレート”を導入しました。「(新)いちねん割引」と「ファミリー割引」を組み合わせて、10年以上使っている方が50%の割引を受けられるようになったのも、そのタイミングからです。

――あれからもう5年も経つんですね。その間に「ファミ割MAX50」も投入され、50%割引も当たり前になってしまいましたが、逆にファミリー割引は減っているのではないでしょうか。

横山氏
 10年を超えているお客さまはファミ割MAXが外れるようになっているので、お入りになる方がいる一方で、元のファミリー割引に回帰する方も増えています。もちろん、その両方を合わせれば、かなりの数になりますけどね。(ファミ割MAX50からファミリー割引への変更は)基本的にお客さまにデメリットになることはなく、無理に縛る必要もないので自動的に移行するようにしています。

――基本使用料の50%割引とバリューコースが始まったことで、基本使用料より無料通話分の方が多くなってしまいました。支払った金額より多く使えるという仕組みには、どのような考えがあるのでしょうか。

横山氏
 我々のなかでは“逆ザヤ”と呼んでいますが(笑)、基本的に基本使用料が高いプランほど、無料通話分も多くなるので、両者の差額も大きくなります。もちろん、お金をいただけるに越したことはありませんが、どちらかというと、基本使用料という形で固定的にお金を頂戴できることが大切だと考えています。かつ、我々の通信事業とは、一回設備を打ってしまうと、あとはいかに使っていただくかが重要になります。追加で発生するコストは限られているので、無料通信分を多くつけても成り立つというわけです。

――先に「これだけ払う」と約束できれば、その分、多く使えるというわけですね。では、実際のところ、もっとも選ばれている料金プランはどれになるのでしょう。

横山氏
 圧倒的に「タイプSS」です。やはり、携帯電話を少しでも安くというお客さまが多いようです。特に最近新規で加入するお客さまは、元々それほど携帯電話を使う方ではないので、一番下のプランの比率はどんどん高くなっています。

――個人的なイメージでは、ユーザーの皆さんはもう少し電話していると思っていました。タイプSSで、本当に最適なプランになっているのでしょうか。

横山氏
 合っている方がほとんどです。ただ、最初に契約されたときに、分からないからという理由でタイプSSを選んでおり、ほかのプランにした方が結果としてお得になるケースも確かにあります。請求書をご覧になって気づくことができればそれが一番ですが、ドコモショップでも料金のコンサルティングのようなことを行っていますので、ぜひ利用してみていただきたいですね。

 実は、そこにはかなり力を入れていて、システム的に過去3カ月分の実績を見て、「このプランが最適でした」と出るようにしています。その結果に基づいて、今後どのように使うかをお話しさせていただいたうえでプランをご提案しています。新規でご契約した際はもちろんですが、端末を買い替えた際にも、ショップにお越しいただければ非常にありがたいですね。

――ドコモショップのみということでよろしいでしょうか。

横山氏
 現段階ではドコモショップだけです。やはり家電量販店は端末を売るということがメインになりますから、お客さまの囲い込み的なことはドコモショップでとなります。

――ある程度こちら側から将来的な使い方をお話ししたうえで、相談に乗っていただけるのでしょうか。

横山氏
 スタッフのスキルにもよりますが、基本的にこのプランだとどのくらい使えるかという知識はあるので、対応できると思います。月によって変動が大きい場合は、少し高めのプランを選んでおいていただければ、余った無料通信分を2カ月繰り越しますし、そのあと使いきれなかった分は家族に分けることができます。そういう意味では、下のプランで損をするよりは、柔軟に使っていただけるのかなと思います。

――では、次にパケット定額制に関してうかがいます。現状では、「パケ・ホーダイ」と「パケ・ホーダイ ダブル」の2つが共存していいますが、ダブルの比率は増えているのでしょうか。

横山氏
 当然変える人もいます。ただ、そこは皆さんよく分かっていて、どう考えても自分は天井までいってしまうという方は、以前のパケ・ホーダイをそのまま使っています。9月末時点で定額制は2152万契約ですが、その内、パケ・ホーダイ ダブルは937万契約で、43~4%という状況です。

――前のパケ・ホーダイを廃止にすることはあるのでしょうか。

横山氏
 それは考えていません。基本的な我々の料金のポリシーとして、既存のお客さまが使っている料金サービスを取り上げるような格好での巻取りはやらないようにしています。例えば、今パケ・ホーダイをお使いの方は、ちゃんとメリットを感じているからこそそのままにしていると思うので、それを無理やりパケ・ホーダイ ダブルにするということはしません。

 ただ、停波など、ネットワーク関係の理由でサービス自体がなくなれば、古いプランはそこで止めざるをえません。もしくは、古いプランより新しいプランが絶対的にメリットが出るようなら、一本化する可能性はあります。パケ・ホーダイとパケ・ホーダイ ダブルの場合だと、上限が同じになれば、両方残しておく必要はないですよね。ただ、常によりよいものを作っているつもりではあるので、できれば新しいプランに移っていただければという想いはあります。

――auやソフトバンクはパケット定額に複数選択肢がありますが、考え方に違いがあるのでしょうか。

横山氏
 できるだけ料金はシンプルでありたいという方針で、この何年間かやってきました。過去、「ドコモの料金は複雑で分かりにくい」といわれたこともあり、その反省を踏まえて今の料金体系を出しています。あとは他社だと、定額料の安いプランだと上り坂(パケット単価)が高いというものもありますが、我々は両方で勝負できているので、複数にする意味があまりないと考えています。最終的に到達するところは4410円なので、その下(パケット単価で変動する部分)をあえて複雑にする必要はないと思います。

――競争の結果、パケ・ホーダイ ダブルを導入してから、下限が何回か下がり390円になりましたが、ユーザーの動向は変わりましたか。

横山氏
 今までパケットパックなどを選ばれていた方は、パケ・ホーダイ ダブルに変えられています。単純に通信に使うだけなら、デメリットはないですからね。一番安いパケットパックでも1050円かかりますし、上り坂も0.105円ですが、一方のパケ・ホーダイ ダブルは、最低390円で上り坂も0.084円です。ただ、パケットで使い切れなかった無料通信分を通話料にも充てられるというのは、パケットパックの唯一のメリットですが、そこを加味して残している方もいるようです。

――一方で、スマートフォン向けの「Biz・ホーダイ ダブル」まで含めてしまうと、ちょっと体系が複雑なのかなという気もします。

横山氏
 使う端末が違うので、それに合わせた料金になっているというのが、1つの理由です。また、2段階制を導入する前にも、料金が分かれていて、それを引きずっているというのもあります。そういう意味では、同じものがいくつもあるというようにも見えるので、今後、検討していく必要があるかと思います。

――スマートフォンでいうと、現状、家族内のメールが無料になりませんが、そこに手を入れる可能性はあるのでしょうか。

横山氏
 実際、お客さまからもそのような声はあがっています。ただ、iモードメールとスマートフォンのメールは、技術的な仕様も違います。スマートフォンはどうしてもパソコン的な動きをしており、メールもウェブもゴチャ混ぜなので、メールだけを特定してきれいに無料にするということができるのか、今検討しているところです。我々もスマートフォンをもっと使っていただきたいですからね。

――現状、パケ・ホーダイ ダブルでパソコンを接続すると、最大で1万3650円かかります。ケータイとパソコンという場合、2回線持った方が安くなりますが、これに関してはどのような意図があるのでしょうか。

横山氏
 どちらかというと、データ通信プランの競争が厳しく、そちらに注力したことが今の料金につながっています。パケ・ホーダイ ダブルのパソコン接続は、もちろん使っていただければありがたいですが、むしろ料金が高額になりすぎる課題に対する打ち手という部分が大きいです。

――とすると、考え方が少し違うということですね。

横山氏
 お客様の利用シーンを想定すると2回線に分けて持っていただくことが望ましいというのが、今の考えです。

――ただ、パケ・ホーダイ ダブルなどで5985円を超えると、パケットの単価が下がります。

横山氏
 そうですね。その意味で、パソコン向けの「定額データプラン」は、基本的に上限に達することが多いと想定しています。逆に、パケ・ホーダイ ダブルのパソコン接続は、ちょっとだけメールを見るような使い方を想定しています。

――ソフトバンクのiPhoneでは、パケット定額制が基本使用料とセットになっています。パケ・ホーダイ ダブルの下限が390円に下がった今なら、あえて定額制を別立てにする必要もないような気がしますが、その辺りはいかがでしょう。

横山氏
 料金には、今までの流れもありますから、いきなり体系を大幅に変えてしまうようなことはできません。対象のお客さまにきっちり説明しなければならないので、時間もかかりますからね。現状で何か決定したわけではありませんが、もし変えるとしたら、(LTEなどの)次のネットワークが導入されたタイミングかもしれません。

――他社では家族以外の音声定額も導入していますが、こういったプランに対してはどうお考えですか。

横山氏
 当然意識はしていますが、ドコモは契約者数のパイが大きいので、自社網での通話を無料にしてしまうと影響が大きいと考えています。無料通話分をそれなりに付けていて、実はそのなかで収まるケースも多いので、現時点では、それで受け入れてほしいという立場を取っています。

――「ゆうゆうコール」を定額にするというパターンも考えられますが。

横山氏
 そこを見直していくのか、新たなものを作るのかというのは悩ましいところです。

――コンテンツ利用料が高額になりすぎるというトラブルが起こっているようですが、何か制限を設けているのでしょうか。

横山氏
 iモードも初期の状態では10万円までとなっていますが、申告いただければ低くすることができます。また、リミット系のプラン(「タイプリミット」など)もコンテンツ利用料を含めた形で制限しています。

 ちなみに、ネットワークのリミット系料金に関しても、我々は力を入れています。ドコモではあらかじめ決めた料金を超過してから3時間で発信を止めています。実際はもっと早く止まりますが、遅延などもあるので、そこを盛り込んで3時間という言い方をしています。ただ、止まったあとも家族とは通話できます。その意味では、いざというときの通信手段は確保できるので、ぜひ使ってほしいですね。

――使いすぎを防ぐという観点では、プリペイドも有効な策だとは思いますが、現状だと他社も含め手薄になっている気がします。

横山氏
 不正が問題になったときの反響が大きく、そこで止めてしまったという理由があります。諸外国では本当に多いので、日本で改めてやっていく余地が全くないとは思っていません。

――ドコモの場合、月内で料金を変更できるのもメリットですね。

横山氏
 2回までは無料で、3回目から有料になります。元々の料金システムも、それに合わせて作り込んでいるので、利用量に合わせて変えてみてほしいですね。

――本日はどうもありがとうございました。

(石野 純也)

2009/11/27 11:00