損しないためのケータイ料金再入門

第12回:海外パケット定額を実際に試した!!


 最近のケータイはほとんどが国際ローミングに対応しており、海外に持ち出してもそのまま利用できる。通話やメールのほか、iモードなどのサイト閲覧も可能だ。これはスマートフォンも同様で、多くが国際ローミングに対応している。慣れない土地だからこそ、いつもと同じ端末が使えるのが心強い。とは言え、国際ローミング時の料金は、国内では考えられないほど割高。普段と同じ感覚で利用していると、請求額が一気に跳ね上がる。クセモノなのがデータ通信で、通話とは課金の仕組みが異なり、時間ではなく量に応じて料金が決まる。特にスマートフォンは、データの通信量が大きくなりがち。注意しないと簡単に数十万円に達してしまう。

 こうした問題を解決するために、キャリアは国際ローミング時のデータ定額プランを開始した。先行したのはNTTドコモ。アライアンスを結んでいる海外キャリアでローミングすると、一定量までのデータが定額になるプランを開始した。ただし、これはあくまでデータの量に制限がある“準”定額。対象もスマートフォンやPCのみとなっていた。これに対して、ソフトバンクは海外で完全に定額となる、「海外パケットし放題」を開始した。ドコモもこの動きに追随し、「海外パケ・ホーダイ」を導入している。今回はこれらのプランを改めて解説するとともに、海外で必要となる設定や注意点をまとめた。

ソフトバンクの「海外パケットし放題」は1日1480円

 海外パケット定額プランの料金は、ドコモ、ソフトバンクともに1日1480円と打ち出されているが、詳細は異なる。まずは、ソフトバンクの海外パケットし放題から確認していこう。

海外パケットし放題は、二段階定額の形を採用しており、通常の3Gケータイなら286KB、iPhoneやiPad、Xシリーズなどのスマートフォンなら740KBで上限の1480円に達する。単価は前者が1KBあたり5円で、後者が1KBあたり2円。ただし、スマートフォンを除く3G端末での通信や、MMS(S!メール)にはミニマムチャージが発生し、接続1回ごとに10KBまで100円が課金される。11KBの通信を2回すると「100円+5円+100円+5円」で210円かかるが、1回で22KBだったら「100円+60円」で160円となる。これが積み重なり、1480円に達するとそれ以上料金がカウントされなくなるというわけだ。


海外パケットし放題の利用イメージ

 ちなみに、1480円はキャンペーン的な位置づけの価格で、期間は2011年6月30日まで。7月1日以降は、上限額が1980円になる予定だ。動画などを利用した場合は、1日2980円になる見込み。ただし、現時点では“動画など”に何が含まれるのか、そしてどうやってそれを判別するのかが発表されていない。今のところ、パソコンなどに接続しない限りは、1480円の範囲に収まると考えてよい。

 条件は、ソフトバンクの指定するキャリアに接続すること。「世界対応ケータイ」や「S!ベーシックパック」のほか、「パケットし放題」などのプランに加入している必要もある。ただし、11月30日までは、国内でパケット定額プランに非加入でも、海外パケットし放題が適用される予定だ。1日の基準は日本時間で、時差が大きいと、気づかないうち日付をまたいでしまうこともある。この点は十分注意したい。

ドコモの「海外パケ・ホーダイ」はPC接続も定額対象

 このプランに対抗したのがドコモで、9月1日から「海外パケ・ホーダイ」と呼ばれる、国際ローミング時のデータ定額サービスを始めた。料金は2011年3月31日まで、1日1480円。1パケットあたり0.2円となる。iモードの場合は、50パケットまで1回の接続ごとに50円のミニマムチャージが発生する。金額は違うが、先に解説したソフトバンクと仕組みはほぼ同じである。また、ドコモの発表によると、2011年4月1日には、上限額や仕組みが変わる見込みだ。4月1日以降の仕組みは少々複雑で、20万パケットまでの上限が1980円、20.5万パケット以降の上限が2980円となる。20万パケットを境にした三段階定額と考えれば、理解しやすいだろう。ソフトバンクが「動画など」としていたところを、ドコモが先んじて数値化したと見ることもできる。


海外パケ・ホーダイの利用イメージ

 適用条件は指定したキャリアに接続することと、国内で定額プランに加入していること。「パケ・ホーダイ」「パケ・ホーダイ ダブル」「パケ・ホーダイ シンプル」「定額データプラン」などが対象だが、11月30日までは未加入でも適用される。国際ローミングをするための「WORLD WING」も必須だ。また、1日の基準はソフトバンクと同様、日本時間となっている。

 ソフトバンクと大きく異なるのは、ケータイ、スマートフォンに加え、PCでの通信も定額になる点。主にPC向けの定額データプランが含まれていることからも分かるように、海外パケ・ホダーイは通信するデバイスを制限していない。定額データプランのSIMカードを挿したモデムはもちろん、普段使っているiモード端末をPCに接続しても、1日1480円で使い放題だ。国内にはプリペイドのデータ定額プランがほとんどないため、結果として、1日単位での利用は、なぜか海外パケ・ホーダイの方が柔軟になってしまう。その是非はさておき、海外でデバイスを問わずに通信できるのは非常にうれしい。外出先ではケータイで、ホテルではPCでと、通信する端末をシーンに応じて使い分けることもできるだろう。

設定はキャリアを指定するだけでOK

iモード端末では国際ローミングの設定メニューなどでキャリアを固定できる

 これらのプランを利用するには、簡単な設定が必要だ。まずは、現地でのキャリアを固定する。通常、ここは「自動」や「オート」になっており、電波状況に応じて様々なキャリアとローミングするが、それだと知らないうちに定額が非適用になっている可能性も。定額対象キャリア以外にはつながいようにしておきたい。機種によって手順は異なるが、iモード端末の場合は、「設定」の「国際ローミング」などで固定できる。ソフトバンクの3G端末も、手順はほぼ同じと考えてよい。

 iPhone(3G、3GS、4)の場合は、「設定」から「キャリア」を選び、表示されたキャリア名を直接タップする。また、iPhoneのようなスマートフォンは、国際ローミングでデータ通信料が高額になることを防ぐために、あらかじめデータローミングがオフになっていることがほとんどだ。iPhoneでは、「設定」から「一般」を選び、「ネットワーク」の中にある「データローミング」をオンにしなければならない。Android端末も、同じようにデータローミングに制限がかかっているので、海外データ定額を利用する際はオンにしておこう。


iPhoneは設定メニューからキャリアを選ぶデータローミングはオンにこちらはXperaの設定画面

 接続先のキャリアが分からないときは、キャリアから届くメールを確認するとよい。ソフトバンクの場合、海外パケットし放題非対応のキャリアに接続すると、その旨を知らせるSMSが届く。ドコモは、接続キャリアや設定方法などを書いたページ(通信料無料)へのリンクが張られたSMSを送っているようだ。設定方法が分からなくなったら、これらを参考にしてみるとよい。


接続先キャリアはメールで確認

初めての人がつまづきそうなポイントは?

iPhone SMS/MMSの画面
XperiaのAPN画面

 実際に筆者も、iPhone、Xperia(定額データプラン契約)、L-04Bでこれらの海外パケット定額プランを使ってみた。簡単な設定をするだけでよく、ほとんどつまづくことはなかったが、いくつか注意すべき点も見つかった。

 1つ目が、iPhoneでのSMS。海外パケットし放題の適用対象はMMSのみで、SMSは1通100円となる。なぜこれが注意点かと言うと、iPhoneはSMSとMMSを自動的に切り替えており、どちらで送付するかをユーザー側に明示しないからだ。SMSの文字数範囲で画像を添付せず、タイトルを入れなければ、MMSにはならないようだが、これが少々分かりづらい。定額範囲だと思っていたら、SMSの代金が高額になっていたということも十分考えられる。SMS/MMSを利用する際は、必ずタイトルを入れるか、画像を添付するようにしたい。SMS/MMSの書式は、「設定」の「SMS/MMS」で変更できる。

 ドコモで定額データプランを利用する場合は、APNの設定に注意したい。というのも、定額データプランなどで接続する際に契約する専用APNが国際ローミングに対応しておらず、わざわざ(国内では)従量のものに変更しなければならないからだ。現地に到着してからだと混乱する恐れがあるため、あらかじめ、「mopera.net」などの従量APNを用意しておくようにしたい。また、設定をそのままにしておくと、日本に帰ったときに逆に国内での定額が適用されなくなる。APNは、絶対に元に戻すようにしたい。

 筆者のように、定額データプランのSIMカードをスマートフォンに挿しているイレギュラーなユーザーは、さらに慎重になる必要がある。スマートフォンは、自動的に通信を始める可能性があるからだ。従量APNのまま日本に帰って電源を入れたら、勝手に通信を始めてパケット代が高額に……ということにならないためにも、帰りの飛行機に乗る前に、あらかじめ定額用APNに戻しておくとよいだろう。これで、海外では通信しなくなり、日本では定額になる。

 また、これはドコモとソフトバンクに共通しているが、日本に戻ったら、キャリア設定を「自動」に戻しておこう。そのままだと、国内で電波をキャッチしなくなる。

 このように、気をつけるべきポイントはあるが、基本的には申し込みが必要なく、設定も簡単。現地のプリペイドSIMカード(がある場合)と比べると、料金こそ少々割高だが、手軽さは桁違いだ。いつもの電話番号を使えるのも、国際ローミングのメリットと言えるだろう。ドコモとソフトバンクには、ぜひ今後とも対象国を広げていってもらいたい。KDDIも10月12日に海外パケット定額サービスを発表しており、こちらもチェックしておきたいところだ。

 最後に、ドコモとソフトバンクの定額対象国を一覧にした。海外に出かける際には、プリントアウトを忘れずに!

 NTTドコモソフトバンクモバイル
アメリカ(本土)AT&TAT&T
アラスカAT&TAT&T
グアムDOCOMO PACIFICPulse Mobile
サイパンDOCOMO PACIFIC
ハワイAT&TAT&T
韓国KTSK Telecom
台湾FETChunghwa/Taiwan Mobile/VIBO
中国UNICOM 
香港3(2G)/3HKCSL
インドDLPHIN/CellOneAircel/Vodafone
インドネシアINDOSATXL
マレーシア Celcom
シンガポールSTARHUBSingTel
タイTRUEAIS
フィリピンSMARTGlobe Telecom
オーストラリアOptusVodafone/H3G Australia
ニュージーランド Vodafone
スリランカ Dialog
アイルランドO2-IRLVodafone
アゾレス諸島 Vodafone
アルバニア Vodafone
イギリスO2-UKVodafone
イタリア Vodafone
オランダ Vodafone
ギリシャ Vodafone
サンマリノ Vodafone
オーストリアTMA 
カナリア諸島movistar 
スペインmovistarVodafone
チェコO2-CZVodafone
ドイツTMO DVodafone
フランスBYTELSFR
トルコ Vodafone
バチカン Vodafone
ハンガリー Vodafone
ポルトガル Vodafone
マディラ諸島 Vodafone
マルタ Vodafone
モナコBYTELSFR
ルーマニア Vodafone
エジプト Vodafone
カナリア諸島 Vodafone
ブエルトリコAT&TAT&T
米領バージョン諸島AT&TAT&T
ブラジル TIM BRAZIL
※9月13日調べ。Vodafoneは地域名を省略。念のため国際ローミング利用時には、必ず各キャリアのサイトで定額対象キャリアの名称をご確認ください。

 



(石野 純也)

2010/10/13 12:34