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損しないためのケータイ料金再入門

第13回:スマートフォン向けIP電話の料金を比較


 スマートフォンの普及に伴い、音声をデータ通信網に乗せる「IP電話」サービスが、多数登場している。売りは回線交換より安価な通話料で、サービスによっては海外でも国内と同等の金額で利用可能だ。また、必ずしも携帯電話会社が端末や回線とセットで提供されているわけではなく、“電話サービス”単体で契約できることもある。たとえば、NTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)のiPhone向けアプリ「050 plus」は、アプリをダウンロードして同社と直接契約するだけでよく、端末を開発したアップルや、回線を提供するソフトバンクモバイルとは、完全に独立している。

 一方で、データ通信が主流だったMVNOが、IP電話をセットにして、音声まで含めたトータルサービスに乗り出してきた。今回は、このようなサービスをパターン別に分け、一般的なケータイの料金と比べてどれだけ安いのかを浮き彫りにしていきたい。なお、本連載は焦点を料金に絞っているため、通話品質や使い勝手などの厳密な比較は行っていない。実際に利用する際は、この点にもご注意いただきたい。また、通話料は基本的に対ケータイを想定している。

アプリから即契約できる「050 plus」

 NTTコムの「050 plus」は、8月10日時点ではiPhoneにのみ対応している。iPhone 3G/3GS/4があれば、このサービスのために新たに端末や回線を契約する必要はなく、アプリをインストールし、NTTコムと直接契約すればすぐに利用を開始できる。今後は、PCやiPhone以外のスマートフォンにも展開していく予定だという。

 基本使用料は月額315円。「050」で始まる番号が付与され、「050 plus」同士や、提携先の050番号を持つIP電話との通話が無料になる。そのほかの050番号IP電話との通話は3分8.4円。固定電話や、ひかり電話との通話も3分8.4円だ。ケータイへの発信は少々高くなり、1分16.8円となる。ウィルコムのPHSの場合は、1分10.5円だ。月額315円という固定費はかかるものの、多くの050番号との通話が無料になるのはうれしい。ケータイ、PHSへの通話も、比較的割安だ。


基本使用料 月額315円
ケータイへの発信 1分16.8円
PHSへの発信 1分10.5円
050 plusへの発信 0円
一部IP電話への発信 0円
固定電話や無料対象外のIP電話 3分8.4円

 違いが顕著に出るのが他社ケータイやホワイトプランの無料対象外時間に発信した場合。ソフトバンクのホワイトプランが30秒21円なのに対し、「050 plus」は1分16.8円だ。課金単位単位が違うため1分間に換算すると、ホワイトプランが1分42円なのに対し、「050 plus」は1分16.8円で、後者の料金の安さが際立つ。ソフトバンクは「Wホワイト」に加入すれば30秒あたりの通話料が半額になるが、1分間という単位で見ると、それでもまだ「050 plus」の方がおトクだ。

 1分換算した際のホワイトプランとの通話料の差は25.2円のため、12分30秒話せば基本使用料315円の“元が取れる”ことになる。逆に30秒以下で終わる通話が多いと、30秒10.5円のWホワイトに優位性が出る。30秒および1分ごとの通話料をグラフにすると、以下のとおり。


1分換算 30秒換算

 1分16.8円という通話料は、ドコモやauと比べても安い。ドコモの「タイプSS(バリュー)」「タイプS(バリュー)」や、auの「プランSS(シンプル)」「プランS(シンプル)」の場合、30秒以下の通話でも「050 plus」より料金は高くなる。ちなみに、「タイプSS」「プランSS」は30秒21円、「タイプS」「プランS」は前者が30秒18.9円、後者が30秒16.8円で、以下のグラフのようになる。


30秒通話時の利用料

 「タイプM(バリュー)」「タイプL(バリュー)」や「プランM(シンプル)」「プランL(シンプル)」は、通話時間次第。課金単位が30秒と細かいため、短い通話なら「050 plus」より安くなることもある。また、ケータイ同士の通話に関しては、ドコモの「タイプLL(バリュー)」が30秒7.875円、auの「プランLL(シンプル)」が1分15.75円なので、「050 plus」より常に通話料は低い。


30秒/1分間通話した際のプラン別通話料 30秒/1分間通話した際のプラン別通話料と「050 plus」の比較

 これらのプランを契約しているヘビーユーザーで、かつケータイへの発信が多いのであれば、通常の音声通話を利用した方がよさそうだ。ただし、上述のように「050 plus」は相手によって通話料無料が無料になるうえ、固定電話やPHSへの発信が割安。通話の相手次第では、トータルのコストを抑えることも可能だ。

「Skype」からケータイへ発信したケースはどうか?

 「050 plus」のように、端末や回線と完全に分離したIP電話サービスの先駆け的存在といえば、やはり「Skype」だ。現在では、iPhoneのほか、Androidなどのスマートフォンにも対応している。Skype同士の通話はもちろん無料。「050 plus」のように、月額基本使用料もかからない。

 このSkypeにも、固定電話やケータイに発信する機能があり、料金は比較的安価に抑えられている。「プリペイド料金」の場合、ケータイへの発信は1分20.125円。課金単位は1分となっている。1分に換算して考えると、ドコモのタイプLやauのプランL、ソフトバンクのWホワイトよりやや低い料金設定といえる。ただし、課金は1分単位のため、30秒以下の短い通話では、Skypeが割高になる可能性もある。この辺りの事情は、「050 plus」と同じだ。また、1分20.125円という料金設定は、通話料の低いケータイのプランと比べると分が悪い。3社のタイプL/LL、プランL/LL、Wホワイトとの横並びにしたグラフが、これだ。


30秒/1分間通話した際のプラン別通話料とSkypeの比較

 基本使用料の高いプランに加入している人は、無料になるSkype同士の通話や、固定電話への発信、国際電話など、ある程度用途を絞った方がおトクに使えるだろう。ただし、これはあくまで「プリペイドプラン」で利用した時の話。月額プランを「Skypeクレジット」で購入すれば、ケータイへの1分あたりの通話料はさらに下がる。月1035円分のSkypeクレジットをあらかじめ払うと通話料は1分17.25円、1840円分だと1分15.33円だ。前者は約60分、後者は約120分の通話が可能。Skypeクレジットは新たに追加することもできる。条件は限定されるが、1035円のSkypeクレジットを購入して60分通話すれば、基本使用料がかからないぶん、Skypeの方が「050 plus」よりやや安い。1840円ぶんを購入し、120分発信するケースも同様だ。

回線、端末とセットで提供されるMVNOのIP電話

 MVNOの提供するIP電話サービスは、現在のところ、回線や端末とセットになっていることが多い。中でも一般コンシューマーが最も入手しやすいのが、日本通信の「モバイルIPフォン」だろう。月額基本料は490円で、300円ぶんの無料通話が付き、30秒あたりの通話料は10円となるサービスだ。ただし、今のところ単体では利用できず、日本通信が販売するファーウェイ製の「IDEOS」専用となる。端末自体はSIMフリーだが、モバイルIPフォンにはIDEOS用の「b-mobileSIM U300」もしくは「b-mobile Fair」も必要だ。モバイルIPフォン同士の通話無料は設定されていない。

 純粋に通話料で比較すると、ドコモのタイプLや、auのプランL、ソフトバンクのWホワイトの30秒10.5円より、わずかに安い金額に設定されていることが分かる。一方で、ドコモのタイプSS、auのプランSS、ソフトバンクのホワイトプランのような低基本使用料のプランと比べると、通話料は圧倒的に安い。ドコモのタイプSSの無料通話を完全に使い切る25分間話したと仮定した料金は、以下のとおり。


25分間話した際の通話料(基本使用料込み)

 ドコモが980円なのに対し、日本通信が690円と300円ほど割安。auや、ソフトバンクの無料対象外の時と比べても、結果はほぼ同じだ。一方で、ドコモやauの場合、基本使用料が高いプランほど、無料通話も多くなる。通話料がほぼ同額(30秒10.5円)であるドコモのプランLを例に挙げると、割引をすべて適用した際のタイプLは基本使用料が4200円。ここに6300円ぶんの無料通話が含まれる仕組みだ。無料通話をすべて使い切る300分通話した場合、ドコモは4200円だが、日本通信のモバイルIPフォンは6190円となる。


25分間話した際の通話料(基本使用料込み)

 あらかじめ通話が多いことが分かっていて、かつ適切なプランを選択していれば、一般的なケータイの通話料もそれほど高くはつかないというわけだ。2つの事例を考慮すると、モバイルIPフォンはあまり通話が多くない人ほど割安になる料金設定といえるだろう。利用がWi-Fi接続時に限定されてしまうが、モバイルIPフォンは海外での通話料も国内と同額のため、海外出張が多い人の節約手段にもなりうる。また、日本通信は利用量によってはパケット代が安いため、これらの条件をトータルで考えた方がよさそうだ。

 ソフィアモバイルの「エスモビ」も、同様のIP電話サービスだ。購入可能なショップは日本通信より少ないが、ケータイへの発信は1分17円と、比較的安い。

 基本使用料やテザリングまで可能なパケット定額がセットになった料金は、月額4200円(2年契約の場合)。エスモビ同士の通話料は時間帯に関わらず無料だ。端末はファーウェイ製の「IDEOS X5」に限定される。通話料だけの比較をすると、1分換算なら日本通信のモバイルIPフォンよりリーズナブル。ドコモのタイプLや、auのプランLよりも安い。


エスモビへの発信 0円
固定電話や無料対象外のIP電話 1分6円

 次に、通話料が近いプラン同士で比較してみよう。エスモビの基本使用料にはパケット定額プランやテザリングの料金も含まれており、通話料単体で比べると現実的な数値ではなくなるため、ここでは両者のプランをなるべくそろえるようにした。

 たとえば、ドコモのタイプLは割引全適用で基本使用料が4200円。無料通話は6300円で300分相当の通話が可能となっている。これに、スマートフォン向けの「パケ・ホーダイ フラット」の5460円と、spモード利用料の315円を足すと、合計は9975円だ。同じ時間エスモビで話すと、通話料は5100円。基本使用料の考え方が異なるため、一概には比較できないが、単純に4200円を合算すると9300円になる。グラフからは割愛したが、タイプSS、タイプS、タイプMを選択する多くのユーザーにも、おトク感な料金設定だ。

 さらに通話が多く、600分話すケースも想定してみた。ドコモはタイプLLを選択。すると、通話料が無料通話で相殺され、基本使用料のみの6825円となる。対するエスモビの通話料は1万200円だ。パケット定額プランなどまで含めても、トータルでの金額は逆転し、エスモビがドコモを上回ってしまう。


通話分数別の支払額(パケット定額なども含む)

 また、課金の単位は1分が基本。「050 plus」やSkypeの通話料を比較した時のように、30秒単位の通話が多いと、大手キャリアや日本通信のモバイルIPフォンより、料金が高くなるケースもある。

 ここまで見てきたように、IP電話サービスは確かに安価だが、使い方や発信相手次第という側面があることも否定できない。通話無料になる相手の有無や、パケット定額プランの料金、通話料の課金単位なども全て考慮し、自分の利用スタイルに合っているかどうかをトータルで検討する必要があるだろう。


 

(石野 純也)

2011/8/31 11:00