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au版iPhone 4S速報レビュー

サービスは一部未対応も、CDMA回線の低遅延性能に注目


iPhone 4S

 10月14日、アップルの「iPhone 4S」が発売された。今回はソフトバンクモバイル版とau版が用意され、同時発売となった。今回はこのうち、au版iPhone 4Sについて、機種変更の手順や料金のほか、auで使えるサービス、そして簡易的な通信回線に関するテストを交えた速報レビューをお届けする。

 なお、今回はiOS 5、およびiCloudが新たに登場した。iPhone 4Sの外観は、先代モデルのiPhone 4とほぼ同等となり、iPhone 4S単体よりも、iOS 5やiCloudの新機能に注目したい。本誌では、既にiOS 5のレビュー記事を掲載しているので、そちらもあわせてご覧いただきたい。

 

知っておきたい「au ICカード」の違い

 iPhone 4Sは、いわゆるSIMカード(auでは『au ICカード』と呼ばれる)が、これまで一般的だったカードと比べ、一回り小さいmicroSIMカードとなっている。au ICカードの形状が異なる、ということは、手元にこれまで使っていたauの携帯電話があっても戻るのが大変難しい、ということになる。これまでのau携帯電話で使っていた各種コンテンツ契約やおサイフケータイの中身は、機種変更前に解約したり、移行させたりする必要がある。これはauでのiPhone 4S契約時には、注意したいポイントだ。

microサイズと通常サイズのSIMカード

 ちなみに国内では、microSIMカードに装着して、通常のSIMカードと同じ大きさにするアダプタを販売する店舗もある。そうしたアダプタの利用を考えるかもしれないが、こうした使い方は、通信事業者が認めたものではない。万が一、端末からau ICカードが抜けなくなっても保証はされない。

 ただ、他の携帯電話では、機種変更後にコンテンツの移行などを気に掛けることはない。通常のコンテンツならば、iPhone向けにも似たようなコンテンツはあるかもしれないが、おサイフケータイはそうもいかない。また、利用シーンに応じて携帯電話を取り換えたいこともあるだろう。たとえばauでは、これまでタフネス仕様の携帯電話を提供しており、アウトドアスポーツを楽しむ際、iPhoneではなく別の携帯電話にau ICカードを装着しなおして利用できれば、より便利だ。もちろん今後、auのラインナップに、microSIM対応の新機種が加わる可能性はある。そうした点も含め、au ICカードの違いをカバーする施策に今後期待したいところだ。

 

アドレス帳移行も“事前“にチェック

 auのiPhone 4Sに機種変更する場合、アドレス帳移行やキャリアメールの設定は注意したいポイントだ。どちらも基本的に、ユーザー自身の手で行うよう案内されているのだ。

 まずアドレス帳については、先述したように、au ICカードの形状が変わるため、これまで使っていた機種に戻って作業する、といったことが難しい。

店頭で渡された「移行設定ガイド」

 今回、機種変更手続きに当たって手渡された移行ガイド(全17ページのモノクロコピー)には、「au oneアドレス帳」を使う移行手順が紹介されていた。それによればau one-IDを取得し、パソコンとの連動設定を行い、旧機種のアドレス帳をau oneサーバーにアップロードし、それをiPhoneにダウンロードするという。その際には「アドレス移行」というアプリを使う。ガイドには「必ず機種変更前に設定頂けますようお願いします」と注意書きがある。

 ただ、他社の携帯電話から乗り換えでは、パソコン経由でアドレス帳を移行することになる。パソコン上のOutlook(Macなら標準のアドレス帳)にいったんアドレス帳データを取り込み、iTunesで同期をかけるという手順で、実はauの携帯電話からの機種変更でも利用できる。こうした案内は、できれは発売前に余裕を持って周知が図られていれば、より安心できるところだ。

 Androidからの移行は簡単だ。Googleアカウントに連絡先を同期しておけば、それをiTunesに取り込むだけで、連絡先の移行は完了する。クラウドサービスに感謝、といった気持ちになるかもしれない。

キャリアメールについて

 auの「iPhone 4S」では、Cメールに相当するSMS(i)と「@ezweb.ne.jp」というドメインのEメールサービスも利用できる。

Cメール相当のSMS(i)はすぐに使える。

 SMS(i)は、「メッセージ」アプリから利用する。特に設定をせずとも、送信先の電話番号を指定すると、短文メッセージをすぐ送信できる。

 一方、「@ezweb.ne.jp」のいわゆるキャリアメールは、「メール」アプリを使う。ただ、フィーチャーフォンでの使い勝手と異なり、プッシュ配信には対応せずパソコン用のメールなどと同じような形となる。最短15分間隔で、メールの新着チェックが行われる。

 「@ezweb.ne.jp」のメールを使うには、手動で設定することになり、設定方法も店頭で配布された移行ガイドで案内されている。「ある番号にSMSを送る」「送られてきたSMSに書かれたユーザー名とパスワードをメモしておき、同じく送られてきたURLにアクセスする(3G回線経由)」「サーバーやユーザー名、パスワードを設定する」という手順になる。手順と入力する内容を間違わなければ、すんなりとキャリアメールを受信できるようになるが、一定のITリテラシーは必要だろう。

 メールサービスはIMAP方式になっていて、iPhoneからサーバー上にフォルダを作ったり、そのフォルダにメールを移動させることも可能だ。ただしサーバー上には元から「受信」のフォルダしかない。

 ちなみにソフトバンクモバイルのiPhoneの場合、「@softbank.ne.jp」というメールアドレスを使うMMSは、特に設定せずに「メッセージ」アプリで送受信できる。iPhone専用の「@i.softbank.jp」のアドレスには設定が必要だが、ソフトバンクモバイルの公衆無線LANサービスと一緒に自動設定するファイルも配布されている。これに比べると、auのiPhone 4Sのサポートにもう一工夫欲しい。

 本誌読者であれば、キャリアメールを使わず、今回導入されたiCloudやGmailの活用も考えられるだろう。iCloudではIMAP方式のメールサービスが用意され、標準でプッシュ配信に対応するので、周囲の友人とのやり取りなどに問題がなければ、キャリアメールより便利に使えるかもしれない。ただ、今回、auのiPhone 4Sが最初から「@ezweb.ne.jp」でメールを利用できるのは、便利に感じるユーザーも少なくないはずで、評価したいポイントだ。

料金について

 これからiPhone 4Sを使っていく上で、料金はきちんと理解しておきたい部分だ。

店頭で配られた料金表。こういった情報も、もっと事前に欲しかった

 auの「iPhone 4S」では、通常と同じ料金プランを利用できる。月額780円で無料通話分なし(家族割では家族間無料)の「プランF(IS)シンプル」、au同士の通話が時間帯限定で無料になる「プランZシンプル」、そして無料通話分がつく「SSシンプル」〜「LLシンプル」から選べるというわけだ。パケット定額サービスの「ISフラット」については、通常5460円だが、2012年1月31日までに申し込むと、最大24カ月、通常料金から500円引きの4980円となる。そしてインターネット接続サービスとなるISNET(月額315円)が必要だ。

 こうした料金を組み合わせて、「誰でも割」などの割引サービスを契約していくと、「プランF(IS)シンプル」だと6075円、「プランZシンプル」と「SSシンプル」だと6275円になる。

 ちなみに「プランF(IS)シンプル」から他の料金プランへ、あるいは他のプランから「プランF(IS)シンプル」に切り替えると、「ISフラット」のキャンペーン価格適用が終了する。ちょっと面倒だが、ここは気をつける必要がある。

 とにかく安く済ませたいなら「プランF(IS)シンプル」となるが、通話を多く利用する場合などは、他のプランから選んだほうがいいだろう。au同士での通話が多いなら「プランZシンプル」、少しだけでも無料通話が欲しいなら「SSシンプル」を選ぶ、といったことが考えられる。ちなみに無料通話分はSMS送信にも適用されるので、筆者は「SSシンプル」を選択した。

 端末代金は、一括でも分割でも購入できる。一括の価格は16GBが5万1360円、32GBが6万1680円、64GBが7万2000円だ。端末購入割引としては、月々の料金から割り引かれる「毎月割」が24カ月適用されるが、これは新規契約と機種変更で異なり、新規だと毎月2140円(24回で合計5万1360円)、機種変更だと毎月1750円(24回で4万2000円)、その差額は9360円となる。

 たとえば64GBモデルの割引適用後の価格は、新規契約だと2万640円、機種変更だと3万円となる。

 ちなみにソフトバンクモバイルでは、新規・機種変更とも値段が同じだ。またキャンペーンでiPhone 3G/3GSからの機種変更では、分割の残債割引や残債がなくても6000円キャッシュバックという施策も行われており、端末価格ではソフトバンクモバイルのほうが安い印象を受けるかもしれない。

 

au版iPhoneで使える機能、使えない機能

ソフトバンク版iPhone 4/4Sではこの並びに「FaceTime」の項目がある

 アップルが提供するインスタントメッセージングサービス「iMessage」とテレビ電話サービス「FaceTime」は、現時点ではauのiPhone 4Sからは利用できない。しかし「近日中に対応」とアナウンスされているので、今後に期待したい。

 テザリングは、パソコンなどで通信する際、iPhoneをモデムとして使う機能だが、auでは利用できない。どうしてもテザリングをiPhoneで使いたい、という方は、海外のSIMフリー版iPhoneを購入する、といったことになる。

緊急地震速報にも対応

 緊急地震速報については、「対応」とアナウンスされている。しかもバッテリーの消費を抑える特別な仕組みが入っているという。標準ではオフになっているが、iPhone 4Sを入手したら「設定」の「通知」の一番下にある「緊急地震速報」をオンにできる。

 留守番電話は、au標準の音声ガイダンス型の「お留守番サービス」が無料で利用できる。ただしメッセージを聞く際には通話料がかかる。ソフトバンクモバイルではセンターで録音したメッセージをiPhoneに配信する、「留守番電話プラス」(ビジュアルボイスメール)というサービスをオプション(月額315円)で提供しているが、類似サービスのau版について、現時点で案内されていない。

 このほかでは、ソフトバンク版iPhone 4との違いは確認できなかった。たとえば着信音の設定画面から「着信音を追加購入」をタップしても、iTunes Storeにアクセスする形となり、auの楽曲配信サービスである「LISMO」を使うといったことはない。

 細かな点としては、VPNが利用できないこともあるようだ。筆者がPPTPを試したところ、接続できなかった。auでは8月から一部のスマートフォン向けにプライベートIPを使うようになっているので、その影響かもしれない。

英語のみだが音声認識してくれるコンシェルジュ「Siri」

 公衆無線LANサービスでは、年内にau Wi-Fi SPOT対応予定となっているが、そのほかにも2012年3月末まで、ワイヤ&ワイヤレス(W2)の公衆無線LANサービスが「お試しキャンペーン」として提供される。

 なお、iPhone 4Sの目玉の1つである音声認識コンシェルジュ機能「Siri」は、日本国内から利用はできるが、日本語には対応していない。英語は得意ではないが、実際使ってみたところ、かなり面白そうな機能だ。日本語化は難しいかしれないが、今後の対応を強く望みたい。

 カメラ機能については、僚誌AV Watchに掲載されたレビューをご覧いただきたい。

 

通信速度は大差なし、au版は低遅延

 同じ製品が同じタイミングで、異なるキャリアから発売されたこともあり、インターネット上では通信速度を測定して、ソーシャルサービスに投稿するユーザーも少なくないようだ。本稿では、au版の「iPhone 4S」と、ソフトバンク版iPhone 4、SIMロックフリー版iPhone 4(回線は日本通信のb-mobile)を比較することにした。ただ、正確性を担保するものではなく、あくまでも参考程度にご覧いただきたい。

BNRスピードテストの結果例

 測定は10月14日の15時頃、渋谷駅徒歩10分の屋内で行った。この際、Webサービスの「BNRスピードテスト」が提供するサービスを利用した。測定は3回行い、その平均値を示す。また、通信遅延については、App Storeで配信している「Network Ping Lite」を利用し、国内のサーバーに対してPingコマンドを実行した。

 速度の測定結果(平均値)は、au版iPhone 4Sが1085.2kbps、ソフトバンク版iPhone 4が1088.2kbps、SIMフリー版iPhone 4は718.9kbpsとなった。

 続いて遅延の測定結果は、au版iPhone 4Sが166.2ms、ソフトバンク版iPhone 4が323.0ms、SIMフリー版iPhone 4が480.0msとなった。いずれも平均値で、パケットロスはない。

 参考値として固定のブロードバンドサービス(フレッツ光、ISPはWAKWAK)に繋がるがるWi-Fi経由で測定すると、au版iPhone 4Sは平均15.5Mbps/78.8ms、ソフトバンク版iPhone 4は16.2Mbps/56.5msとなった。筆者はCPUなどの性能差による影響はほぼないと考えている。

 今回の測定環境において、au版iPhone 4Sとソフトバンク版iPhone 4で通信速度を比較しても、その差は誤差の範囲内と言えるだろう。ただし同日午前中は3Mbpsを超えることもあるなど、空いている時間に計測したときは、ソフトバンク版の方が速いこともあった。とはいえ、15時以降の渋谷という状況になると、そうした差はなくなる。

 また、特筆すべきは遅延(レイテンシ)である。遅延とは、サーバーにリクエストを送り、反応が戻ってくるまでのタイムラグだ。国内での通信では、通信経路の処理の影響を受ける。数値が小さいほうが早く、筆者宅の固定網に繋がるパソコンでは平均41.7msといった数値になる。こうした遅延は、たとえばWebブラウジング中、リンクをタップしてから次のページが表示されるまでの時間などに影響することもあると見られる。データのダウンロード速度だけではなく、サーバーからのレスポンスが早いほうが、より快適なブラウジングが可能で、通常そうしたサーバーと端末のやり取りは複数回行われるため、遅延の影響は案外大きい。

 今回の測定は、あくまで局所的に行ったもので、これが全国におけるauとソフトバンクのネットワークの実力とは言えない。ただ、これまで筆者が行ってきた範囲の測定経験からすると、W-CDMA方式で200ms以下になることは稀だった。一方、今回はau版iPhone 4Sでは200msを超えることがほとんどなく、100msを切ることすらあった。その要因が方式の違い、あるいは通信事業者側の調整の違いか、わからない。通信速度については場所や時間帯によって変化しやすいが、遅延はさほど変化するものでもないため、au版iPhone 4Sのアドバンテージと評価したいポイントだ。

 

未熟な部分があるも、低遅延が魅力

 au版iPhone 4は、アドレス帳の移行やezweb.ne.jpのメール設定の手間、あるいはiMessangerとFaceTime、au Wi-Fi SPOTの未対応といった点を踏まえると、まだ整備して欲しいところがある。

 一方、細かな点と思われるかもしれないが、低遅延がもたらしているであろう、使い勝手の向上に繋がっている点は評価したい。たとえば検索ワード入力後の反応は、「Wi-Fi接続中か?」と一瞬思うほどスピーディだった。Googleの検索結果など、容量が少ないデータのやり取りこそ、遅延の低さが良い影響をもたらしているようで、実際にソフトバンクモバイル版のiPhone 4と並べて比較すると、明らかに差がわかる。この部分は、筆者の環境、あるいはレビューした時間帯に基づくもので、他の環境などで異なる可能性はあることはご了承いただきたい。

iPhone 4とiPhone 4Sの差は、この側面のスイッチの位置がわずかに異なるだけだ

 iPhone 4とiPhone 4Sの違いを考えると、iOS 5が登場した今、チップセットの違いなどはあるものの、大きな差はないと感じる。iOS 5とiCloudにより、iPhoneの魅力は大きく増した。プラットフォーム全体のエクスペリエンスを考えると、新しいモデルが続々と登場しているAndroidにも決して負けない、と感じる。新しいガジェットが好きな人の中には、「いまさらiPhoneか」と思っている人もいるかもしれないが、これまでiPhoneは常に進化し続けているので、いつ選んでも魅力的なスマートフォンだ。ただiOS 5の目玉機能の1つである「Siri」は日本語で利用できない。またカメラ機能は改善されたとはいえ、もともとiPhone 4もそれなりに良い写真が撮影できる。iPhone 3GS以前であれば、大きな差はあるだろうが、iPhone 4ユーザーは、次のモデルを待ってもよいかもしれない。




(白根 雅彦)

2011/10/14 22:47