「GALAPAGOS EB-A71GJ-B」レビュー

WiMAXが使える初めてのAndroidタブレット


ロック時の画面

 2009年のサービスイン以降、理論値で最大40Mbpsという高速通信をウリに、首都圏を中心に着実にユーザーを増やしてきたのが、UQ WiMAXだ。そのUQ WiMAXから、初のタブレット端末「GALAPAGOS EB-A71GJ-B」(以下、EB-A71GJ-B)が11月16日に発表された。12月9日の発売に先駆けて、一足先に試用する機会を得られたので、インプレッションをお届けしたい。

 このEB-A71GJ-Bだが、Android 3.2、1024×600ピクセル、7インチディスプレイ、1GHzのデュアルコアCPU、500万画素の背面カメラ――と、基本的な仕様や外観は、イー・モバイルから夏に発売された同じGALAPAGOSブランドの「A01SH」と同じ。両者で決定的に違うのはA01SHがWi-Fiのみ対応で、WiMAXや3Gをサポートしていないのに対して、EB-A71GJ-BはWiMAXとWi-Fiの両方が使えることだ。あくまで、家庭のWi-FiやモバイルWi-Fiルーターに接続する前提のA01SHとは異なり、EB-A71GJ-Bはテザリングに対応し、パソコンやゲーム機、ほかのスマートフォンなどを接続して、高速なWiMAX回線でインターネットができる。形は同じでも、まったくコンセプトが異なる商品なのだ。


ホーム画面。右上にテザリングやWi-FiをON/OFFするランチャーがある縦位置のホーム画面

バッテリの持ちは4時間ほど

右下をタップすると無線関係を一箇所でコントロールできるパネルが表示される
Webブラウザ

 まずは目玉とも言える、WiMAX回線を使ったテザリングを試してみよう。

 Wi-Fiを使ったインターネット共有機能、いわゆるテザリングを使うまでの操作は、なにも難しくない。EB-A71GJ-Bには、WiMAX回線、テザリング、Wi-Fiをそれぞれオン/オフするランチャーが初期状態でホーム画面にプリセットされているからだ。

 WiMAXとWi-Fiをそれぞれオンにしていれば、登録したWi-Fiスポットがあれば優先的に接続、なければWiMAXという、いわゆるスマートフォンによくある待受状態になるし、WiMAXのみオンならば、Wi-Fiスポットの検索はしない。テザリングのボタンをタップすると、自らがモバイルWi-Fiルーターとして動き始める。実にシンプルな操作体系だ。この操作はシャープ謹製によるランチャーが実現しているが、機能設定の中に、Wi-Fiやテザリングの項目があるiOSデバイスとは一味違う点である(もっとも、ソフトバンクやauが販売するiPhoneはそもそも、テザリングに対応していないのだが)。

 さっそくテザリングを使ってみると、わかってはいたがやはり快適だ。電波がきちんと届く場所であれば、下り3Mbps、上り1Mbpsは安定して出ている。テザリングをしている途中でも、EB-A71GJ-B自身でインターネット接続も可能だ。アプリを立ち上げすぎるとさすがに重くなる傾向はあるものの、ブラウザを使う程度なら問題はない。

 気になるバッテリーのもちだが、スペック値では6時間となっている。満充電の状態から液晶をオフにしてテザリングモードに移行し、パソコンやスマートフォンを接続して、Web閲覧やメールの送受信、YouTubeの閲覧といった一般的な操作を行ったところ、4時間を過ぎたあたりで電池切れになった。モバイルWi-Fiルーターの専用機でもスペック値で5~8時間、実働でおおむね3~6時間強、であることを考えると、合格点といっていいだろう。

 そもそも、筐体体積の多くをバッテリーが占めるタブレットにとって、テザリングは相性がよい。「液晶のついたモバイルWi-Fiルーター代わり」にする力は十分あるといっていいだろう。


縦位置でブラウザを起動したところダブルタップで拡大できる

上面にはボリュームキーとロックキー底面にはmicroSDカードスロットやHDMI、microUSBポートがある裏面。メインカメラがある
カメラにはLEDフラッシュが付いているインカメラも装備iPad 2とサイズ比較
iPad 2と厚さ比較ACアダプタ

電子書籍閲覧

電子書籍アプリを立ち上げたところ

 GALAPAGOSのタブレット端末ということになれば、電子書籍関連の機能もチェックしなくてはならないだろう。シャープが運営する電子書籍ストア「GALAPAGOS STORE」は蔵書点数3万点以上、国内ではソニーの「Reeder Store」、楽天の「Raboo」と並んで、最大規模の電子書籍販売サイトだ。

 EB-A71GJ-Bではホーム画面に電子書籍アプリが置かれており、これをタップするとすでに購入した蔵書の一覧が表示されるほか、GALAPAGOS STOREに接続し、オンラインから新たに電子書籍を購入することもできる。この手のサービスには必須の、書籍の一部が読める立ち読み機能も付いている。

 タブレット型の電子書籍端末というと、競合になるのがSony Reader、iPad、Amazon Kindleといったあたりになるのだろうが、Sony Readerはともかくとして、Amazon Kindleには日本語の書籍を取り扱うストアが未だなく、iPadもアップルの電子書籍ストアが標準で用意されているわけではない。

 普段、iPadを愛用している筆者も、アップルのApp Storeからときたま電子書籍「アプリ」を買うが、やはりこれはスマートではない。ゲームやら他のアプリがごちゃまぜになっているApp Storeから書籍アプリを買うのと、本をメインに据えた電子書籍ストアで買うのとでは、行為としてまるで違う。ランキングか検索でしか出会えないApp Storeより、本屋をぶらつくような楽しさがあり数段楽しい。購入から読み始めるまでの操作もスムーズで、ストレスを感じない。

 書籍を読む行為に関しても、フォントサイズの変更や行間の調整など基本的な機能は網羅しており、特に不自由はない。PDFファイルの表示にも対応しているため、いわゆる書籍を裁断してスキャナで読み込んだファイル、「自炊本」の閲覧もできる。ただし、自炊本を読むには、7インチサイズは書籍を選ぶ。たとえば、文庫本や新書ならばジャストサイズだが、単行本サイズになると、余白を切り詰めるといった処理をしないと文字がかなり小さくなってしまうので注意が必要だ。

名刺読取アプリなど独自アプリも

名刺読取アプリ。枠に合わせてカメラで撮影するだけ

 EB-A71GJ-Bが、イー・モバイルのA01SHと違う点に、内蔵アプリがある。名刺読取アプリや、オンラインとローカルで同期を取るクラウド型ノートアプリ/サービス「Evernote」、Twitterなどソーシャルメディアとの連携ができるカレンダークライアント「SnapCal」といったアプリケーションだ。

 特に目玉となっているのが名刺読取アプリで、背面のカメラを使って名刺を読み込み、本体の電話帳に送り込むことができる。もともとはシャープのフィーチャーフォンで好評だった機能であったこともあり、認識率、操作性ともにこなれた印象を受ける。ディスプレイに現れる枠に合わせて名刺を撮るだけで、自動で取り込み、文字認識をしてくれる。あとは間違いを正すだけでよい。試しに担当編集者の名刺を取り込んでみたところ、メールアドレスで誤認識があっただけで、氏名、電話番号、住所はきちんと認識されていた。

 筆者も普段、iPhoneで「WorldCard Mobile」といった名刺取り込みアプリを日常的に使用しているが、こちらのアプリのほうが控えめに見ても同等、それ以上の認識率だろうと思う。シャープの自社製アプリということで、ハードウェアとの組み合わせが前提になっているのかもしれないが、十分、単体アプリとして販売できるレベルだ。


なかなかの認識率電話帳に登録できる。Googleアカウントの連絡帳にもひもづけられるので便利

 最後にもうひとつ、Evernoteを紹介したい。Evernoteは登録ユーザー1200万人以上を誇るクラウド型ノートサービス。アプリがプリインストールされた携帯電話やスマートフォンも増えており、利用している人も多いだろう。EB-A71GJ-Bにインストールされている(つまりAndroid版)アプリには、iOS版やPC、Mac OS版にはまだない目玉機能が付いている。それは、カメラで撮影した画像にタッチパネルで手書きした文字を組み合わせたノートを作成できる機能だ。この機能はMacで人気の画面キャプチャソフト「Skitch」を買収したことによって実現したものと思われる。

 この機能が最高の出来で、写真を撮って手書きでメモを入れてすぐにEvernoteに同期、というフローはパソコンやスマートフォンでは味わえなかった体験だ。手書きメモだけでなく、キーボードでテキストを入れたり、矢印を入れることもできる。少しでも画像編集ソフトを触ったことがある人ならば、迷うことはないだろう。

 告白すると、Evernoteは3G回線で使っているとアップロードやメモのダウンロードに時間がけっこうかかり、いまいち使い勝手がよくないなあと思っていたのだが、WiMAX、カメラ付きのタブレットとの組み合わせはかなり強力だ。


Evernoteを起動したところ。メモ一覧が表示される電話帳に登録できる。Googleアカウントの連絡帳にもひもづけられるので便利
もちろん手書きだけのメモもできるキーボード入力も可能

テザリング、電子書籍、独自アプリ。使い手のあるセカンドマシン

Officeの書類を編集できる「Documents To Go」。Google Docsにも対応する

 ざっとEB-A71GJ-Bの機能について見てきたわけだが、テザリングから電子書籍、内蔵アプリまで卒なくこなすデバイスだなと感じた。タブレット端末という新しいジャンルの製品の場合、すでにユーザー側も付き合い慣れている携帯電話やパソコンと違い、「本当に自分は使うのか?」といった疑問が常に付いて回る。知人でもiPadを買ってはみたものの、用途が見いだせずに手放す人も何人かいた。その意味では、タブレット云々以前に、電池がある程度もつWiMAXルーターとして使える点が非常に大きい。タブレット自体とうまく付き合えなくても、モバイル回線としてパソコンやスマートフォンと組み合わせて使えばいいだけだからだ。さらに、WiMAXならば、電波状況さえ良ければ自宅のネット回線として使う選択肢も出てくる。

 デバイスとしては、たまに反応が悪くなることがあり(おそらくはAndroid側の問題か。発売までにチューニングされるだろう)、マメに立ち上げているアプリを終了させる必要はあるが、それを除けば、タッチパネルの感度や、手に取った時の重量バランスなど、Android2.x時代のタブレットとは一味違う印象を受けた。

 繰り返すが、WiMAXルーターとしても使えるタブレットとしては唯一となる存在。パソコンやスマートフォンのサブとして、活躍してくれる一台となりそうだ。


スプレッドシートを編集。パフォーマンスも良いソーシャルメディアとの連携ができるカレンダーアプリ「SnapCal」。Twitterで通知ができる
Google Mapは3D表示が可能国語、英和、和英と辞書機能も充実している

 




(北村太郎)

2011/12/5 13:57