「MOTOROLA RAZR IS12M」レビュー

充実のスペックに独自機能を盛り込んだ意欲的なモデル


 auから発売された「MOTOROLA RAZR IS12M」は、海外で人気を博した携帯電話のブランド「RAZR」を引き継ぎ、7.1mmという薄さの筐体を採用したモトローラのAndroidスマートフォン。スペック面でも1.2GHzのデュアルコアCPUを搭載したハイスペックモデルであるほか、モトローラならではの独自機能も盛り込んだ意欲的な製品だ。


「MOTOROLA RAZR IS12M」

 

「Quadrant」によるベンチマーク測定結果

 CPUはクロック数1.2GHzでデュアルコアのTI製「OMAP 4430」を搭載。CPUのクロック数値だけを見れば1.5GHzのデュアルコアには見劣りするものの、アプリ「Quadrant」による測定結果では、同じく1.2GHzのデュアルコアを搭載したGALAXY NEXUSよりもわずかながら上の数値を計測。実際の動作も非常に快適で、アプリの起動やアプリの一覧表示、ウィジェットの選択などは待たされる感がほとんどなく、キビキビした操作が可能だ。

 接続インターフェイスは本体上部にmicroUSBとmicroHDMI、イヤフォンジャックを搭載し、充電はmicroUSB経由で行なう。本体右側面は電源および音量ボタンを、左側面は(バッテリー一体型のため)microSIMカードスロットとmicroSDカードスロットを配し、バッテリーは薄型モデルながら1780mAhと大容量バッテリーを搭載している。

 本体ボタンは左から「メニュー」「ホーム」「戻る」「検索」の4ボタン構成で、物理ボタンではなくタッチ式センサー式のボタンを搭載。日本メーカー製のAndroidは「検索」を省いた3ボタン構成が多いが、アプリに合わせて最適な検索インターフェイスを表示できる検索ボタンは、Androidを活用するには非常に便利な機能だ。

 7.1mmと本体自体は薄いが、液晶は4.3インチのQHD(540×960)解像度のため幅はかなり広い。大人の男性の手でもやや手に余る大きさで、片手で操作する時はバランス面がやや不安になる。一方で、薄さはかなりの魅力で胸ポケットにも目立たず収納できるのはうれしいところだ。

 ホーム画面はAndroidのランチャーに近いシンプルなインターフェイスだが、Android 4.0対応を明言していることもあってか、ホーム画面のアプリアイコンの移動時にグリッド線が表示されるといった操作感は4.0に近い。また、4.0のようにロック画面からカメラを起動する機能を搭載するが、4.0を搭載するGALAXY NEXUSはパターンやパスワードなどのセキュリティ設定を行なうとロック画面からカメラが起動できなかったのに対し、RAZRはロック解除前にカメラ起動が選べるなど、4.0に近いインターフェイスながらも、使いやすくカスタマイズされている。


ホーム画面ドラッグ時にグリッド線が表示されるインターフェイスはAndroid 4.0に近いロック画面からカメラの起動が可能

 

搭載アプリ

 標準搭載しているアプリはauが提供するアプリに加え、ソーシャル対応も充実。「ソーシャルネットワーキング」アプリではTwitterやFacebookなどのアカウントを設定することで新着情報を一覧表示できるほか、「ギャラリー」は本体内蔵の写真だけでなくソーシャルサービスでつながっているユーザーの写真データを見ることもできる。


ソーシャルメディアでつながっている知人の写真を「ギャラリー」から表示可能「ソーシャルネットワーキング」アプリでTwitterやFacebookの新着を一覧で表示できる

 

カメラ

 内部ストレージ容量は初期状態で8GB、アプリのストレージ空き容量は2.87GB。外部メディアとしてmicroSDに対応していることを考えるとストレージ容量は十分だ。

 カメラはアウトカメラが800万画素、インカメラが130万画素。カメラ機能は非常にシンプルで、画像は16:9で6メガピクセル(3264×1840)のワイドスクリーンか、4:3で8メガピクセル(3264×2448)通常画像かの2種類から選ぶのみ。一方、動画の解像度はフルHD(1080p)、720p、D1(720×480)、VGA、QVGAから選択が可能だ。撮影機能は露出やシーン選択、通常含めて8種類のエフェクト、パノラマ撮影、連射モード、タイマーなど一通りの機能をそろえている。


カメラインターフェイス

 

 静止画は若干青味がかかっており、屋外などはきれいに撮れるが、室内などはかなり写真の青味が強くかかる。また、iPhone 4に見られる、中心が青色になる現象もあり、白い被写体ではかなり青かぶりが強く出てしまう点が気になった。


作例(リンク先はオリジナルサイズ)

 

独自機能「スマートアクション」

 薄型ながらも高性能なRAZRだが、その特徴はハードウェアのスペックだけではない。Webサービスや外部機器と連携した独自のアプリもモトローラブランドを含めたRAZRの特徴だ。

 「スマートアクション」は、RAZRのさまざまな状況をトリガーとし、設定を自動で変更する機能。バッテリーの残量や時間帯、接続している無線LAN、ヘッドホンの装着状況などをトリガーとして指定することで、液晶の輝度を落とす、データ通信をオフにする、着信音を変更するといったカスタマイズが自動で行なわれるようになっている。


スマートアクショントリガーとアクションを組み合わせて設定を自動で変更できる
トリガーの一例

 

 アクションは最初から「車」「会議」「勤務先」「自宅」といったいくつかのサンプルが用意されているため、自分の使いたいシチュエーションに合うサンプルを選んで、細部をカスタマイズすることが可能。また、特にスマートアクションを設定していなくても、バッテリーが残り少なくなったタイミングで「バッテリーセーバー」などのサンプルを提案してくれるので、細かい設定を自分で行なうのが苦手な人にも便利だ。


利用に合わせてスマートアクションを自動で提案

 

 トリガーとアクションの内容は非常に充実しており、自宅の無線LANに接続したらデータ通信をオフにしてパケットを節約しつつマナーモードを解除、不在着信の件数が一定数になるとメッセージを送るなどアイディア次第でいくつもの設定が可能。バッテリー節約だけでなく、ライフスタイルに合わせた設定を自動でカスタマイズしてくれる魅力的な機能だ。

 

パソコン連携機能「MotoCast」

 パソコン連携機能の「MotoCast」は、専用ソフトをインストールしたパソコンのファイルへRAZRからインターネット経由でアクセスできる機能。利用するにはあらかじめMotoCastIDを取得し、RAZRとパソコンそれぞれに設定しておくことで、パソコンで指定したフォルダへインターネット経由でアクセス可能だ。


MotoCastの設定

 

 MotoCastという名称のアプリ自体は存在しないので気がつきにくいが、「ファイル」アプリから、本体に保存したデータのほかにMotoCastを設定したパソコンのフォルダへアクセスできる。インターネット経由のため、3G回線でもアクセスが可能だ。また、同じ無線LANネットワークに接続している他のコンピュータの共有フォルダへアクセスすることも、「ファイル」アプリから可能になっている。


「ファイル」アプリからMotoCastにアクセス
オンラインになっているPCにアクセスできる
同じネットワークに存在する共有フォルダにアクセスする機能も

 

 利用するには接続先のパソコンが起動していなければいけない、という条件はあるものの、外出中にオフィスのパソコンへアクセスしたい、という時には重宝する機能だろう。クライアントはWindowsだけでなくMacにも対応している点はMacユーザーにも嬉しいところだ。

 

「Webtop」

 「Webtop」は、前モデル「MOTOROLA PHOTON ISW11M」にも搭載されていた機能で、専用の「HDステーション」経由でテレビやマウス、キーボードと接続し、RAZRをパソコン感覚で利用できる機能。HDステーションにはmicroHDMI×1ポートとUSB×3ポートを搭載しており、HDMI経由でのディスプレイ出力やUSBマウスやキーボードを接続できる。


HDステーションmicroHDMIとmicroUSBで本体と接続
背面に電源、microHDMI、USB×3ポートを搭載装着イメージ

 

 HDステーションにRAZRを装着し、HDステーションとディスプレイをHDMIで接続すると、画面には自動でWebtopの画面を表示。WebtopはLinuxをベースとした独自のOSとして起動する仕組みになっており、専用に用意されたFirefoxや電話帳アプリ、ファイルアプリなどが利用可能。また、RAZRの画面を同時に表示し、RAZRを操作することも可能だ。


利用イメージ

 

 Webtop内蔵のFirefoxはHDステーション接続時のみ利用できるブラウザだが、動作は快適。Flashなども問題なく表示でき、一般的なWebサイトであれば待たされる感覚もなく読み込める。RAZRとの連動機能も用意されており、Firefoxで閲覧したサイトの履歴やブックマークをRAZRで利用することも可能。どのディスプレイでどのサイトを見たかをいちいち意識せず、本体を持ち歩けば履歴やブックマークも合わせて扱えるのはありがたい。


Flashも再生できる

 

 HDステーション接続時はRAZRの画面がマウス(タッチパッド)の役割を果たし、タッチ操作でカーソルを移動できるほか、右クリックと左クリックボタンも用意されている。画面をソフトキーボードに切り替えることで文字入力も可能だ。ただし、マウスカーソルの操作でドラッグするという操作はRAZRだけでは難しく、キーボードやマウスを接続した方がより効率的に利用できる。


キーボード未接続時はRAZRがマウス代わりになるソフトキーボードによる文字入力も可能

 

 HDステーションに接続すると本体の充電も可能。また、マウスとキーボードはUSBだけでなくBluetoothにも対応しているので、テレビとHDステーションをHDMIで接続しておき、操作はワイヤレスキーボードを利用することでリビングPC感覚でRAZRを使うというのも面白そうだ。

 

まとめ

 7.1mmと薄型ながらも大容量バッテリーやデュアルディスプレイを搭載し、ハードウェアのスペック面は充実。また、ソフトウェア面でもスマートアクションやMotoCast、Webtopといったユニークな機能を搭載しており、他のAndroidスマートフォンとはまた違った魅力をもった1台と言える。カメラ機能については画質というよりも色合いが今一つに感じられるが、このあたりは好みにもよるだろう。おサイフケータイや赤外線通信、ワンセグといった日本ならではの機能に興味がないユーザーであれば、RAZRは非常に魅力的な選択肢となりそうだ。

 




(甲斐祐樹)

2012/3/15 17:19