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「EMOBILE LTE」レビュー

モバイルブロードバンドのパイオニアが展開する新サービス


 イー・モバイルは3月15日、新たな高速データ通信サービス「EMOBILE LTE」を開始した。サービス開始と同時に発売された「EMOBILE LTE」対応のモバイルWi-Fiルーターを利用し、その使用感や料金体系などサービス全般をレポートする。

EMOBILE LTE対応のモバイルWi-Fiルーター「GL01P」(右)と「GL02P」(左)

 

下り最大37.5Mbps、一部エリアでは下り最大75Mbpsの通信が可能

 「EMOBILE LTE」は、第3世代の携帯電話、いわゆる「3G」のデータ通信を高速化した「LTE(Long Term Evolution)」技術による高速データ通信サービス。国内ではNTTドコモが「Xi」(クロッシィ)という名称で既にサービスを開始し、ソフトバンクモバイルやauもLTEの採用を表明。また、ソフトバンクモバイルは、TD-LTE(時分割型のLTE、他社は周波数分割型のLTE)と互換性を持つというAXGPを採用した「SoftBank 4G」を提供しているが、LTEを採用したサービスとしては、イー・モバイルが国内で2番目の事業者となる。

 LTEの特徴はデータ通信の高速性だ。「EMOBILE LTE」の場合、エリア内では下り最大37.5Mbps/上り最大12.5Mbpsでの通信が可能なほか、一部エリアでは下り最大75Mbps/上り最大25Mbpsとさらに2倍での通信が可能。LTEエリア外ではイー・モバイルが以前から提供している「EMOBILE G4」が利用できるので安心だ。

 

モバイルWi-Fiルーターは大容量モデル2機種をラインアップ

 EMOBILE LTEのサービス開始と同時に提供されたのは、Huawei製のモバイルWi-Fiルーター「GL01P」、AnyDATA製のモバイルWi-Fiルーター「GL02P」の2機種と、Huawei製のUSBスティック型端末「GL03P」の3機種。モバイルWi-Fiルーターの2機種はともに「Pocket WiFi LTE」ブランドとして発売される。

 GL01P、GL02PのモバイルWi-Fiルーター2機種は、基本的なスペックはほとんど変わらない。どちらも3000mAhのバッテリーを内蔵し、公称で最大9時間の連続通信が可能。無線LANはIEEE 802.11b/g/nに準拠し、最大10台まで端末を接続できるのも共通だ。

 2機種のわかりやすい違いはmicroSDカード対応とバッテリー部分。GL01PはmicroSDカードスロットを搭載し、装着したmicroSDカードへUSB経由でアクセスできるが、バッテリーは一体型となっており取り外しができない。一方、GL02PはmicroSD非対応だがバッテリーの取り外しが可能で、今後は予備バッテリーも別途販売予定という。

厚みはGL02Pのほうが上だが、全体的にはGL02Pのほうがコンパクト GL02P。本体前面にWi-Fiオンオフを兼ねた電源ボタン
底面にmicroUSBポート、側面にWPSボタン 本体上部にストラップホール
バッテリーを取り外しできる 液晶画面

 本体サイズはGL01Pが約62×113×13.5mm、GL02Pが約56×97×18.0mmで、重量はGL01Pが約140g、GL02Pが約123g。GL01Pのほうが一回りほど大きく重いが、厚みはGL02Pのほうが上。とはいえ、さほど気になるほどの厚みの差ではなく、コンパクトに持ち歩くならGL02Pがいいだろう。細かな点では連続待機時間はGL01Pが約200時間に対してGL02Pが約350時間と長いほか、充電時間もGL01PがACアダプターで約3.5時間、USB接続で約7時間に対し、GL02PはACアダプターが約4時間、USB接続が約8時間と若干長くなっている。

 2機種とも設定はブラウザ経由で「192.168.1.1」にアクセスして行なう仕組みで本体での設定変更は行なえない。設定画面ではSSIDや暗号化キーの設定などが可能なほか、LTEを使うか3Gを使うか回線種別を選択することも可能だ。画面のインターフェイスはイー・モバイル用に共通化されており、異なるメーカーでもさほど違いを感じず利用できた。

 どちらも公称9時間とのことだが、それぞれにAndroidスマートフォンを接続した状態で維持したところ、2機種とも10時間を経過してまだバッテリーが残っていた。LTEエリアか3Gエリアかで消費電力も変わるため一概にこの結果が共通とは言えないが、少なくとも公称9時間という数字は実際に期待できそうだ。

GL01P 本体右側面にSIMカードスロット、Wi-Fiオンオフを兼ねた電源ボタン、WPSボタン
左側面にmicroUSB、リセットボタン、microSDカードスロット 液晶画面
GL01Pの設定画面 GL02Pの設定画面

 

通信速度はエリアによってばらつき。応答速度は良好

 気になる通信速度は「GP01」へ無線LAN経由でアクセスし、渋谷、池袋、秋葉原の駅前で計測を実施。通信速度はLTE接続を確認した上で、「speed.rbbtoday.com」を利用してそれぞれ5回ずつ計測して平均値を求めたほか、pingによる応答速度も測定。同様のテストをNTTドコモのXi対応スマートフォン「GALAXY Note」のテザリング機能を使っても行なって比較した。なお、通信速度の計測とpingの計測は別々に行なっている。

 「EMOBILE LTE」はルーターを利用しているのに対して、「Xi」はAndroidのテザリング機能のため一概に比較はできないが、秋葉原では「EMOBILE LTE」、渋谷では「Xi」のほうが高速な結果になるなど、ばらつきがあり、実際の速度はユーザーが利用するエリアによって変わりそうだ。一方、pingによる応答速度は100msを下回っており、LTEの魅力の1つである応答速度の速さが結果に表れている。

 

【EMOBILE LTE 測定結果】 ※赤字はその場所での最高値
    1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均値
秋葉原 下り 7.73Mbps 7.73Mbps 5.87Mbps 12.85Mbps 12.06Mbps 9.25Mbps
上り 5.91Mbps 5.35Mbps 7.05Mbps 1.97Mbps 5.38Mbps 5.13Mbps
応答速度 50 49 70 60 66 59
渋谷 下り 2.49Mbps 2.12Mbps 3.36Mbps 1.03Mbps 4.27Mbps 2.65Mbps
上り 0.84Mbps 1.14Mbps 1.37Mbps 1.27Mbps 1.16Mbps 1.16Mbps
応答速度 48 57 51 58 53 53.4
六本木 下り 6.50Mbps 5.15Mbps 6.63Mbps 6.41Mbps 6.70Mbps 6.28Mbps
上り 0.87Mbps 1.47Mbps 0.74Mbps 0.42Mbps 0.37Mbps 0.77Mbps
応答速度 46 54 44 78 49 54.2

 

【Xi 測定結果】 ※赤字はその場所での最高値
    1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均値
秋葉原 下り 3.01Mbps 3.01Mbps 6.71Mbps 4.57Mbps 7.55Mbps 4.97Mbps
上り 0.96Mbps 1.09Mbps 0.97Mbps 1.06Mbps 1.14Mbps 1.04Mbps
応答速度 63 55 51 84 65 63.6
渋谷 下り 2.74Mbps 9.12Mbps 4.69Mbps 7.94Mbps 3.81Mbps 5.66Mbps
上り 1.13Mbps 1.01Mbps 1.11Mbps 0.70Mbps 1.07Mbps 1.00Mbps
応答速度 64 62 77 62 59 64.8
六本木 下り 4.81Mbps 2.76Mbps 3.44Mbps 5.21Mbps 4.04Mbps 4.05Mbps
上り 0.42Mbps 0.64Mbps 0.43Mbps 0.70Mbps 0.57Mbps 0.55Mbps
応答速度 58 80 129 74 66 81.4

 なお、「EMOBILE LTE」の通信速度は下り最大37.5Mbps、上り最大12.5Mbpsが基本だが、一部エリアでは下り最大75Mbps、上り最大25Mbpsでの通信が可能。イー・アクセスによれば、サービス開始時点では北海道6地点、東北1地点、関東3地点、信越4地点、北陸4地点、中国4地点、四国4地点、九州2地点であり、関東エリアの場合お台場周辺、二宮駅周辺、箱根湯本駅周辺などごく一部とのこと。基本的には下り最大37.5Mbps、上り最大12.5Mbpsのサービスと理解したほうがよさそうだ。

 エリアについてはサービス開始当初のうちは東名阪主要部が中心で、2012年6月までには東京23区、千葉市、さいたま市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市における人口カバー率を99%にする予定。一方、都市部ではすでに「EMOBILE G4」が展開されており、これをLTEに置き換えていく必要があるため、まだ「EMOBILE G4」が展開されていない地方都市でも「EMOBILE LTE」を展開していく予定という。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、Xi対応スマートフォンの機種名に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

 

低廉な料金プランが魅力のEMOBILE LTE

 料金プランは、期間拘束がない「LTEプラン ベーシック」が5060円、2年契約が必要になる「LTEプラン にねん」が3880円。端末購入時に端末の代金を毎月の料金として分割する「アシスト1600」を併用した場合、毎月の料金は「LTEプラン にねん」の3880円にプラス1600円が必要になるが、指定条件によって月額料金を割り引く「月額割」で1600円が割り引かれるため、月額料金は3880円で変わらない。分割金額を上げて購入時の費用を安くする「アシスト2900」の場合、月額割は1300円となり、月額料金は5480円となる。

 LTEで先行するNTTドコモの「Xi」については、2年契約が不要の「Xiデータプラン フラット」で7455円、2年契約が必要な「Xiデータプラン にねん」で5985円。ただし現在はスタートキャンペーンが展開されており、5月〜9月は「Xiデータプラン フラット」が5880円、「Xiデータプラン にねん」が4410円となっている。

 「Xi」の場合、サービス開始当初からキャンペーンが続いているため、実際の価格は現時点ではまだあってないようなものだが、それでも5月からのキャンペーン価格と比べても「EMOBILE LTE」のほうが安価。キャンペーンを適用しない価格では2000円近い差が開く。価格面だけで見れば圧倒的にコストパフォーマンスが高いのは「EMOBILE LTE」と言えるだろう。

 データ通信料の制限も違いがある。「Xi」では、2012年10月から、月の上限が7GBとなり、7GBを超えると通信速度が128kbpsに制限される。一方、「EMOBILE LTE」は、2014年5月から、上限が10GBとなり、10GBを超えた段階で通信速度の制限を行なう。イー・モバイルでは制限した際の通信速度を明らかにしておらず、「これまでのサービスと同等の制御」としているが、約2年先の話とはいえ、もし適用されれば少なくともLTEの高速な通信は利用できないと考えていいだろう。それでもNTTドコモより3GBも容量が大きいのは1つのメリットだ。

 とはいえ、「Xi」の通信料の制限も今のところキャンペーンによって無制限になっているため、今のところ一度も適用されたことのない制限になっている。また、以前はこの制限が5GBだったのが、ユーザーの要望を受けて7GBに増強された経緯もあるため、制限が適用される10月までに、ドコモ側が料金も含め、なにか対抗策を行う可能性もあるだろう。

 なお、通信速度の制限が適用された場合、「EMOBILE LTE」はその月内は制限速度のままだが、Xiは2GBごと2625円で速度を追加することができる。EMOBILE LTEの通信速度制限が明らかにされていないため、実際の利用感はわからないが、料金よりも常に高速なサービスを利用したい、ということであれば「Xi」にもメリットはある。

 また、速度制限は上限だけでなく、「EMOBILE LTE」では、ファイル交換やVPN通信など一部利用できない通信があるほか、24時間ごとのデータ通信量が366MB(300万パケット)以上になった場合、21時〜翌2時までの通信速度が制限される。NTTドコモも同様に「当社が定めるソフトウェアまたは通信プロトコルを利用して行う通信を制限する措置を取る場合がある」と定めているほか、当日を含む直近3日間の利用量が1GBを超えた場合は制限がかかるとしている。1日あたりで割るとさほど違いはないが、ある1日だけ大容量の通信を行ないたい、という時には「Xi」のほうが使いやすい。


 

通信速度、料金、エリアなど総合的に充実したEMOBILE LTE

 LTEでのサービス開始そのものはNTTドコモが先行したものの、「高速データ通信の定額プラン」は、イー・モバイルが他キャリアに先駆けて投入したサービス。今でこそ定額プランは当たり前のようになっているが、こうした定額データ通信というジャンルが広がってきたのは、イー・モバイルの存在が大きいと言って間違いない。そのイー・モバイルが満を持して提供した「EMOBILE LTE」は料金やエリア、端末など、さまざまな面で充実が感じられるプランに仕上がっている。

 料金の低廉さはもちろん、モバイルWi-Fiルーターの長時間運用はこうした高速データ通信を利用するユーザーのニーズを見事につかんでいると感じた。先行するNTTドコモのXiもルータは2機種を用意しているが、「L-09C」は3Gでも最大8時間、「BF-01D」は3Gで最大5時間と、バッテリーの持続時間はイー・モバイルよりも短い。外出が多いヘビーユーザーにはこの待ち時間も大きな魅力だろう。

 モバイル通信サービスの課題はサービス提供エリアで、どれほど高速なサービスであってもエリア圏外ではまったく意味がない。その点もEMOBILE LTEの場合はエリア外でも既存のデータ通信サービスが利用できるため、そうしたエリア外の心配も少なくて済む点も安心だ。

 今後はKDDIやソフトバンクモバイルもLTEを導入することを考えると、LTEの時代はこれから一層、盛り上がりそうだ。

 また、「EMOBILE LTE」のネットワークを利用したMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスも続々と登場している。家電量販店やISPなどが提供するもので、料金体系の幅広さに今後期待できそうだ。

 “公称9時間の連続利用”というモバイルWi-Fiルーターと低廉な料金、今後拡大を期待できるエリアを考えると、データ通信サービスとして「EMOBILE LTE」は非常に魅力的な選択肢と言えそうだ。

 

 




(甲斐祐樹)

2012/4/27 06:00