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「iPhone 5」ファーストインプレッション

薄型軽量化し、LTEに対応したiPhoneの実力


iPhone 5(ブラック)

 9月21日、iPhone 5が発売された。iPhoneシリーズというと、毎年1機種しか発売されないが、発売のたびに、予約や販売で大行列ができるほど、注目を集めるスマートフォンだ。その最新モデルであるiPhone 5が従来のiPhoneに比べてどう変わったのか。筆者はさっそくau版とソフトバンク版の両方を購入したので、そのファーストインプレッションをお届けする。

液晶はワイド化、本体は薄型軽量化

 従来のiPhoneに比べ、iPhone 5になって最も大きく変わったのが、画面と本体のサイズだ。

左がiPhone 4S、右がiPhone 5

 これまでのiPhone/iPod touchは、いずれも3.5インチ(実測は約90mm=3.54インチ)、横:縦=2:3の比率となる640×960ドットのディスプレイだった。これがiPhone 5では、4インチ(実測は約102mm=約4インチ)、横:縦=9:16の640×1136ドットのフルワイドディスプレイとなった。

 画面は縦に伸びているが、横幅はドット数も長さも一切変わっていない。3.54インチの2:3比率だと縦74.8mm、横49.9mmとなり、4インチの9:16比率だと縦88.5mm、横49.9mmになる。ノギスを画面に当ててみても、横幅はまったく同じに見える。一方の縦の長さは13.7mm、176ドット、約18%伸びている。

 これに伴い、ボディサイズも縦に伸びている。iPhone 4/4Sでは115.2×58.6×9.3mmだったが、iPhone 5は123.8×58.6×7.6mmとなった。こちらも幅はまったく一緒なのに、縦には8.6mm伸びている。

 なお、ディスプレイが13.7mm伸びたのに、本体は8.6mmしか伸びていないこともあり、iPhone 5ではiPhone 4/4Sに比べ、ディスプレイの上下が縮んでいる。そのせいもあり、iPhone 4/4SとiPhone 5を並べてみると、「iPhone 5って横幅も小さくなった?」との錯覚すら覚えてしまう。
左がiPhone 5、右がiPhone 4S

 一方で、厚みがiPhone 4/4Sの9.3mmからiPhone 5では7.6mmに薄型化している。さらに重量はiPhone 4Sの140gからiPhone 5では112gまで軽量化した。画面が大きくなったにも関わらず、軽量化しているのである。この軽量化は、従来からのiPhoneユーザーにとってはワイド画面以上にインパクトがあるかも知れない。とにかく手に取ったとき、「アレ? iPod touch?」と思うくらい軽いのだ。軽量化は、手に取っている全ての瞬間、それどころか持ち歩いているすべての時間に意味のある改善だ。

シンプルかつエレガントなデザイン

左からiPhone 3GS、iPhone 4S、iPhone 5

 デザインは「シンプルかつエレガント」。シンプルながら不思議な魅力を感じさせるものになっている。バランスも良いし、質感も良い。装飾的な要素がないのに、下端のマイク・スピーカーの穴にすら気品を感じる。iPhone 4/4Sのデザインも、シンプルで飽きが来にくい洗練されたものだと思っていたが、iPhone 5も長く戦えそうなデザインだと感じた。

 前面は従来同様、1枚ガラスになっており、4インチのワイドディスプレイと、従来通りのホームボタン、FaceTimeカメラ(インカメラ)、センサー、通話時用のスピーカーがある。

 背面はガラス・金属・ガラスの3ピース構成。上下がガラスになっているのは、その部分にアンテナが収められているからだろう。しかしアンテナがない部分だけとはいえ、携帯電話にこれだけ大胆に金属を使うのは、アップルらしいデザインだ。
上からiPhone 4S、iPhone 5(ホワイト)、iPhone 5(ブラック)

 側面はすべて金属だ。金属が側面を一周するフレームのようになっており、前後から見たときも面取り部分が見えるようになっている。側面も上部と中央、下部の3ピース構成で、中央の金属部分は側面と背面で一体パーツになっている。アップルによると、これらの部品は削りだしだという。3つの金属フレームは間に樹脂が入っており、電気的に絶縁されている。おそらく上下のフレームはiPhone 4/4S同様にアンテナを兼ねているのだろう。

 ちなみに側面は、iPhone 4/4S同様に直角になっているので、垂直に立てることも可能だが、薄型化と面取りの影響で安定性は落ちている。
iPhone 5の背面。ホワイトとブラック

 金属部分は、面取り部分だけ光沢仕様で、側面・背面ともにつや消し処理がされている。ただし、アップルのロゴとiPhoneのロゴだけは光沢がある処理がされている。

 カラーはブラックとホワイトの2種類が用意されている。ホワイトでは前面の液晶以外の面も白いのはiPhone 4/4Sと同じだが、iPhone 5はカラーごとに、側面などの金属部分も色が違っている。側面フレームの継ぎ目も、iPhone 4/4Sでは黒だけだったが、今回はボディカラーにあわせられている。

液晶ワイド化による操作面での影響は?

 筆者は4年前に発売されたiPhone 3Gから、ずっとiPhoneをメイン端末として持ち歩いている。信号待ちのほんの一瞬でも、すぐにiPhoneを取り出してTwitterやらGoogleニュースやらをチェックしたりしている。

 そこまで“これまでのiPhone”に慣れていると、iPhoneがワイド化することには、心配が大きかった。4年間、ずっと同じ画面サイズとなると、タッチするべき場所を親指が覚えている。しかし画面サイズが変わってしまうと、指がついていけなくなってしまうのではないか、心配だった。

 ワイド化したiPhone 5を使ってみて、その心配は半分は当たっていたことがわかった。

手に持った感じは、従来のiPhoneと差はないが、指でタッチする範囲が広がっている

 たしかに指がついていかないところもある。iOSアプリのUIには、画面上部を使うものが結構ある。前の画面に戻るボタンは左上、新規追加のボタンは右上にあることが多い。筆者はケータイは左手で使うのだが(手に持ちながら写真撮影する機会が多いからだ)、そうなると、握った状態で右上に指を伸ばすのがちょっと億劫だ。指を伸ばしたとき、慣れるまでは落としそうで怖い。

 しかし、ディスプレイの横幅もドットピッチも変わっていないので、画面上のアイコンやボタンのサイズは一切変更されていない。だから、画面上部に指が届きにくいだけで、操作の感覚はほとんど変わらず、親指が覚えている操作感はほぼ維持されていた。画面下半分に操作が集中する文字入力などに至っては、今までとまったく同じで、4年間も積み重ねた慣れのおかげで、ほぼ画面を見ずにフリック入力できる。

 また、本体の横幅も変わっていないので、ほぼ同じ感覚で握ることができる。幅は60mmを切る58.6mmで、薄さも相当なものなので、手の小さい人でも握りやすい。ワイド化しても、片手での使いやすさは、Androidを含むスマートフォンの中でトップクラスと言えるだろう。

 ちなみにホームボタンのサイズも、ノギスをあててざっと測ったところ、直径で約1mm(11.5mm→10.5mm)ほど小さくなっている。さらにホームボタンと画面との間隔も約1mmほど短くなっている。画面サイズ伸長による本体サイズ伸長を抑えるための措置だと思うが、こちらはそれほど違和感を感じなかった。

液晶ワイド化によるソフト面での影響は?

 液晶がワイド化したため、従来のiPhone向けに2:3の画面比率で作られているアプリは、画面一杯に表示できず、上下に黒いレターボックス的な枠が表示される。

ワイド非対応アプリの表示例(食べログのアプリ)。左からiPhone 4S、iPhone 5(ホワイト)、iPhone 5(ブラック)

 このレターボックス枠だが、ブラックのiPhone 5だとびっくりするくらい目立たない。ブラックのモデルだと、2:3アプリをしばらく使ってみても、レターボックス枠があることに気がつかなかったりする。一方のホワイトモデルだと、白地に黒なので、違いが目立つ。元々ホワイトモデルは、液晶の縁取り黒もあるので、レターボックスをホワイトにしたところで意味が無いが、こうした面から言えば、ブラックのモデルの方が違和感がない。

 しかし、2:3のみをサポートしたアプリは急激に減っているのも事実。iOS 6のリリース以降、アプリ配信のApp Storeはアプリのアップデートラッシュで、さまざまなアプリがワイド対応してきている。まだそれほど多くのアプリを試したわけではないが、なかなか頼もしい対応速度だ。
ワイド対応アプリでは表示される情報量に違いがある

 たとえば筆者が愛用しているGoogleリーダークライアントの「Reeder」は、iOS 6リリース直後にバージョンアップが行われたが、そのバージョンでワイド表示に対応していた。このタイミングだと、開発者はiPhone 5を手に入れる前で、実機で開発していないと思われるが、それでもワイド表示できるようだ。

 ワイド化によって、表示できる情報量はかなり増えている。たいていのアプリは、最初から上下であわせて200ドット分くらい、各種操作ボタンが配置されたUIバーがある。コンテンツを表示するのは、iPhone 4/4Sだと残りの縦760ドット、iPhone 5だと残りの縦936ドットの領域だ。画面サイズは18%しか増えていないが、コンテンツ表示領域は23%増えている計算だ。これが結構大きい。前述の通り、ワイド化には指が届きにくいというデメリットもあるが、実際にワイド化によって情報量が増えたのを見ると、ワイド化して良かったな、とも感じられる。

LTEはつながれば速いが……

 今回のiPhone 5は、その発売に合わせ、ソフトバンクとauのネットワークも同時にLTEに対応している。どちらも対応端末は他にないので、現状では事実上iPhone 5専用のネットワークサービスだ。

 LTEのスペックは、両社ともに同じで、下りは最大75Mbps。ただし、これは道路の道幅にあたる周波数の帯域幅が5MHz×2本を使ったときの話。両社のiPhone 5のLTEが対応する2.1GHz帯は、現行の3Gでも使っているため、iPhone 5しか使えないLTEに帯域幅を多く割り当てるわけにもいかず、半分の37.5Mbpsのエリアも多いようだ。

 au、ソフトバンクともに、唯一のLTE対応端末が発売したばかりで、ユーザーも少なく、一方でエリアも整っていない状況だ。まだまだちゃんとした通信環境のレビューを行うには時期尚早だと思われるが、それでもせっかくauとソフトバンク両社のiPhone 5を購入したので、購入した池袋から仕事場のある渋谷までの間、iPhone 5の通信機能を軽く試してみた。

 実際に試してみたところ、auとソフトバンク、両方のLTE基地局をつかめる場所が少なく、測定はなかなか苦労した。以下が、唯一、同じ場所で両社のLTEをつかむことができた、池袋東口の南側、西武の入り口あたりでの測定結果だ。
au版 ソフトバンク版

 LTEの電波を掴むことができれば、そのパフォーマンスは絶大で、アプリのダウンロードのような転送速度が必要な場面も、Twitterの更新などデータ量が少なくレイテンシが重要な場面も、どちらでも自宅の無線LAN並みに速い。こんなに快適なのは、ユーザーが少ない今だけかも知れないが、この快適さはなるべく維持されて欲しいところだ。

 ただ、やはりLTEの電波をつかめる場所はまだ少ない。たとえば上記以外でauでLTEをつかめた場所は、池袋駅東口北側、新宿駅埼京線ホーム北寄り。埼京線走行中の新大久保駅付近および新宿駅から原宿駅過ぎまでの区間、といったところである。一方のソフトバンクがLTEをつかめた場所は、渋谷駅および青山通り沿いの筆者の仕事場だけだった。池袋駅構内や山手線のほかの区間では3Gだ。サンプルが少ないので、どちらのエリアが広いという判断はできないが、少なくとも、常時LTE接続という段階には両社ともに達していない印象を受ける。

 また、LTE対応と言うことで、電池の持ちも気になるところだが、残念ながら本日購入したばかりなので、ここは正確に評価はできない。LTEネットワークと同様、しばらく使ってみた上で真価を問うことになるだろう。

 ちなみに、NTTドコモのXi端末とは異なり、iPhone 5ではLTE通信機能をオフにすることが可能だ。LTEオンの状態であまりに電池の減りが早いようでは、これがユーザーフレンドリーな機能になってしまうかもしれない。

 LTE対応だけでなく、3Gも強化されている。全モデルともにW-CDMA(UMTS)はHSPA+やDC-HSDPA、CDMAモデルはEV-DO Rev.Bにも対応した。なおiPhone 4Sでは1モデルで展開していたが、今回は北米限定UMTSモデル(A1428)とグローバルCDMAモデル(A1429)、グローバルUMTSモデル(A1429)の3モデル構成となっている。

 簡易なキッチン用計量器を使って重さを実測したところ、筆者が手に入れたau版(CDMAモデル)は114g、ソフトバンク版(UMTSモデル)は112gだった。無線関連の部品が違う可能性もあるが、よく見ると液晶の発色が違う気もするので、異なるメーカー製の部品だから重量が違っているという可能性もある。

テザリングの設定画面。テザリング中はステータスバーに追加表示がでるのも従来どおりの仕様

 au版はテザリングにも対応しており、iPhone 5の携帯電話ネットワーク経由でパソコンやポータブルゲーム機、タブレット端末などをインターネットに接続できる。ソフトバンク版も来年1月15日からテザリングに対応する予定だ。テザリングはWi-Fi、Bluetooth、USBの3種類で行える。LTE圏外の場合、3Gでのテザリングも可能だ。

 筆者の仕事場の周辺はauのLTEが圏外だったため、LTE使用時のテザリング速度は測定できなかったが、3Gでも下りで1Mbps以上出ているし、レイテンシも120ms前後と、十分実用になっている。ちなみにテザリングをオンにすると、Wi-Fiテザリングにするか、BluetoothとUSBにするかを選ぶことができる。とくにUSB接続のテザリングは、挿すだけでネットにつながるし、速度の損失が少なく、iPhone 5を充電しながら利用できるのでなかなか便利だ。

 iPhone 5の無線LANは、2.4GHz帯だけでなく、5GHz帯にも対応している。対応規格はIEEE802.11a/b/g/n。5GHz帯の方が速度も出やすく、嬉しい改善点だ。BluetoothはLow Energy対応の4.0だが、標準機能のみの通知デバイス(カシオのG-SHOCK「GB-6900」)は接続できなかった。iPhone 4S同様、GPSだけでなくGLONASS(ロシアのGPS類似システム)にも対応している。

 緊急地震速報と災害・避難情報については、従来モデル同様に対応している(※ソフトバンクのiPhone 5では、システム整備の関係上、10月末までLTE接続時に緊急地震速報を受信できない。たった1カ月ではあるが、利用時には注意が必要だ)。ちなみにiOS 6になってから、au版だけ「設定をオンにするとバッテリーのもち時間が短くなることがあります。」の表示がなくなっている。au版は待機電力を余分に消費しない仕組みだからだ。あえて緊急地震速報をオフにするユーザーがいるのかと考えると、結構大きな違いだと思う。

小さいコネクター「Lightning」

 これまで10年に渡ってiPod時代から使われ続けてきたDockコネクターは廃止され、iPhone 5では充電やデータ通信、周辺機器接続に新型デザインの「Lightning」コネクターが採用された。

Lightningコネクター

 このコネクター、筆者も事前に写真などを見ていたが、実物を見ての感想は、とにかく小さい、であった。大きさはmicroUSBとほぼ同じだ。先端をよく見ると、側面には引っかかりになると思われるくぼみがあり、電極はむき出しになっている。配線したまま鞄に放り込むには、ショートしないか、ちょっと怖い感じだ。

 さらに先端部分をよく見てみると、金属部分に継ぎ目が確認できない。この部品も削りだしだろうか。機械科出身の筆者としては、作り方が非常に気になる。電極まわりの樹脂部分と金属部分の接合もぴったりしているので、配線方法も謎だ。強度や耐久性は抜群に良さそうだが、謎の製造方法を導入してでも、欲しいもの実現するあたりは、なんともアップル的だと感じられる。

 面白いことに、Lightningコネクターには裏表という概念がなく、両面に電極がある。パソコンの背面端子でもないので、目隠し状態で端子を挿すことはほとんどないと思われるが、それでも挿そうと思って端子を手に取ったら方向が違ったので裏返す、というような作業が発生しないのは非常に嬉しいところ。
裏表という概念が無い

 ただし、端子が変わったことで、今までのDockの周辺機器はまったく使えない。とくにアナログの音声出力機能がなくなったので、スピーカー付きDock機器などを使うには、アップルが純正品として販売するアナログ変換付きのアダプターを使うしかない。ビデオの有線出力も、今のところ不可能(Apple TVへの出力に対応)。また、コネクターが小さくなったせいか、従来は純正品で用意されていたスタンドタイプの充電台も用意されない。これはサードパーティに期待したい。

 iPod/iPhone向けにどれだけのサードパーティ製品が販売されてきたかを考えると、Lightningの周辺製品も多数登場すると思われるが、充実するまでは少々時間がかかるだろう。

 また、iPhone 5では、これまでのiPhoneでは上端にあったイヤホンマイク端子が、Lightningなどと一緒に下端へと移動している。イヤホン端子とLightningコネクターを一緒にしたアダプターなども作れるだろうから、アナログ変換が面倒な機器メーカーは、そういった手段も取るのかも知れない。

 小さくなったというと、SIMカードも、Micro-SIMからNano-SIMへと小型化した。2年前のiPhone 4で他社に先駆けてMicro-SIMを採用したアップルが、もうNano-SIMに移行していることになる。しかし、以前の機種にSIMカードを挿し替えて戻せないのはちょっと不便だ。

変化はあまりないが、悪いことではない

 ディスプレイと本体デザイン、通信関連、コネクター以外で言うと、カメラに関して、高速撮影やノイズ除去性能の向上などがアナウンスされているが、画素数は変わっていない。パノラマ撮影はiOS 6搭載のiPhone 4Sでも可能だ。

 プロセッサーも新しい「A6」になり、iPhone 4S比でCPUもGPUも2倍とアナウンスされているが、もともとシングルタスク中心のiOSではプロセッサーの性能は重視されていないので、実感できる場面は少ない。

 はっきり言うと、画面のワイド化と薄型・軽量化、LTE対応以外は、あまり進化していないと思う。しかし、これは悪いことではない。iPhone 5という新機種が登場しても、1年前のiPhone 4Sや2年前のiPhone 4が陳腐化せず、機種間の差異が大きくなって“断片化”しないことも、iOSの世界では重要なことだ。

ブラウザの表示も、ワイド画面の恩恵が大きい

 iPhone 5には、NFCやクアッドコアプロセッサーは搭載されなかった。しかしそのおかげで、開発者にとっては、「iPhone 5だけでしか使えないサービスやアプリ」を作るメリットも必要性もほとんどない。iPhone 5のワイド画面のために、表示情報量が多いアプリを作れるが、そういったアプリをiPhone 5専用に作るメリットはなく、2:3比率でも9:16比率でも同じように使えるアプリを作った方が開発者にも利用者にもメリットは大きい。画面のワイド化は大きな変化だが、しかしiOSワールドを大きく断片化させる要素にはならないだろう。

 LTE対応は、必要な進化だった。日本では、iPhoneを販売するauとソフトバンクがちょうどLTEサービスを開始するところだったので、絶妙なタイミングだったとも言える。ユーザーにとってもキャリアにとっても非常にメリットの大きな進化だが、iPhone 5のLTE対応も、単なる通信方式の変更に過ぎず、iOSワールドを断片化させたりはしない。薄型・小型化も同様だ。

 アップルはiOSワールドの断片化を恐れ、iPhoneを大きく進化させられない、という見方もできる。しかし、iPhoneの販売元というだけでなく、iOS全体の管理者でもあるアップルにしてみると、iOSの断片化を防ぐことは、重要な課題であり、断片化しないことも、iOSの大きな魅力と言えるだろう。

iPhone 5は「買い」か?

 果たしてiPhone 5は「買い」なのだろうか。

 まず、iPhoneユーザーは、iPhoneを使い続けた方が楽だ。今まで買ってきたアプリなどがそのまま使えるからだ。iPhone 4やそれ以前のモデルのユーザーならば、月月割が終わっていると思うので、すぐにでも買い換えた方が良い。月月割がない状態は経済的にもデメリットが多い。

 しかし、iPhone 4Sのユーザーは、まだ最大でも1年しか使っていないはずなので、このタイミングでの買い換えは、懐具合と「軽さ」「ワイド画面」「LTE対応」の魅力を天秤にかけるしかない。

好みの問題でもあるが、デザインもiPhoneの特徴だ

 iPhone以外を含めたスマートフォン全体で見ると、iPhone 5はどうだろうか。まずエントリーユーザーにとっては、やはりスマートフォンとしてiPhoneは使いやすい部類だと思うので、選択肢の筆頭に入れておくべきだろう。

 Androidから乗り換える価値があるかというと、使い慣れたアプリを放棄してまで移るべきかは、本人次第としか言えない。防水性能を重視するのであれば、選択肢からは外れる。プロセッサーパワーなどはAndroidのハイエンドモデルに遠く及ばないにしても、重量と画面サイズのバランスなどは良好なので、店頭などで手に取って違和感なく使えるようなら、移行先として検討しても良いだろう。

 では、auとソフトバンク、どちらが良いのだろうか。ここは料金とネットワークの差しかない。端末価格を含めるとソフトバンク版の方が魅力的だが、新規契約とMNPであれば大差は無い。あとはネットワーク的にどちらが優れているかだが、これは現時点では判断しにくい。LTEにつながれば速度に大差は無いので、LTEのエリアの広さ次第。たとえば本日筆者が動いた範囲だと、auの方が若干LTE圏内の場所が多かったが、肝心の仕事場周辺でauのLTEを掴めていない。

 まだまだどこでもLTEにつながるというわけではないので、自分が使いたい場所でLTEにつながるかどうかが問題になるのだが、購入前にそれを調べるのは難しい。また、今つながらなくても、au、ソフトバンクともにネットワーク増強中なので、近いうちに圏内になる可能性もある。どちらのLTEが良いか、という問いについては、現時点では「わからない」としか言えないのだ。

 iPhone 5は、LTEを抜きにしても魅力的な端末だと思うが、それでもLTEがつながれば魅力はずっと増していく。auとソフトバンクには、iPhone 5(と今後登場するLTE端末)の魅力を向上させるためにも、LTEネットワーク整備を頑張ってもらいたいと思う。




(白根 雅彦)

2012/9/21 23:59