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「iPad mini」ファーストインプレッション

片手サイズにiPadの機能が詰め込まれた魅力的なタブレット


 11月2日、iPad miniが発売された。7.9インチのディスプレイを搭載するiOSの新デバイスだ。筆者も発売日に購入できたので、速報レビューをお届けしたい。

 ちなみにiPad miniの発売と同時に、iOS 6.0.1が公開されている。iPad miniは6.0で出荷されているが、不具合修正も入っていたので、今回はiOS 6.0.1にアップデートしてレビューを行っている。

これまでのiOS機器にはない新しいサイズ感

iPad mini。ブラック&スレート。ほかにホワイト&シルバーというカラーもある

 iPad miniの最大の特徴は、これまでのiOSになかった新しいサイズのディスプレイを採用していることにある。しかしUIやアプリは従来のiPadをベースにしているので、iPad miniは「小さくなったiPad」と言える。この「小さくなった」ところが最大のポイントだ。

 画面サイズは7.9インチ(約120×160mm)で大きさは200×134.7×7.2mm、重さは308g(Wi-Fiモデル)である。手に持った瞬間に「軽い!」と思ったが、これは筆者が普段重たいタブレットに慣れているせいかもしれない。

 重さを日常的なもので比較すると、一般的な小説文庫が200gくらい、たとえば540ページの小説が300gくらいなので、コンパクトなわけではないが、持ち運ぶに悩むほどの重さではないといった印象だ。

 第4世代のiPadは、ディスプレイサイズが9.7インチ(約15×20cm)、大きさは241.2×185.7×9.4mm、重さは652g(Wi-Fiモデル)なので、そちらと比較すると、iPad miniは大幅に小型化したと言える。

 面積で言うと約2/3、重さでは半分以下になっているわけだが、これにより、「片手で持ちやすい」という大きな壁を越えることに成功している。7インチクラスのタブレットは、「操作するには両手が必要だけど、持つだけなら片手で無理がない」というサイズ感が重要になっているが、iPad miniもそのサイズ感におさまっていると言えるだろう。

 ちなみに7インチクラスのタブレットは、今秋、一気に製品が増えている。詳しくはケータイ Watchの仕様比較記事も参照していただきたい。大ざっぱに言うと、iPad miniは国産モデルより重たいが、ほかの海外モデルよりは軽い位置にある。

 iPad miniのディスプレイ(1:1.3比率の7.9インチ)は、面積的には7インチクラスで最大となっている。1:1.6の細長いディスプレイを採用するAndroidタブレットに比べると、本体の幅が広くなっていて、片手で掴むことを考えると、ちょっと不利なところである。しかし一方で、厚さ7.2mmは7インチクラスとしては最薄なので、その分、持ちやすさが向上し、軽さを余計に感じさせる。個人的な印象だが、たとえばグーグルのNexus 7と比較すると、iPad miniの方が片手で持ちやすいと感じた。


下から第3世代iPad(第4世代とほぼ同じ大きさ)、iPad mini、iPhone 5 iPad miniの側面。厚さ7.2mmだ

解像度とピクセル密度の意味

iPad mini(163ppi)

 iPad miniのディスプレイ解像度は768×1024ドット、ピクセル数は約78.6万ピクセルで密度は163ppi(1インチあたりのピクセル数)となる。Androidの7インチタブレットでは、一般的なもので800×1280ドットの約103.4万ピクセル、216ppiとなる。それに比べると、2割ほど画素数が低くピクセル密度が薄い。

 解像度についてはネットでも話題になっていたが、よくよく数字を比較すると、この解像度には理由があることがわかってくる。

 iOS機器内のピクセル密度を比較してみると、iPad 初代/2は132ppi、その倍の密度となるRetinaディスプレイ搭載の第3/4世代iPadは264ppi、iPhone 初代/3G/3GSは163ppi、その倍密度となるRetinaディスプレイ搭載のiPhone 4/4S/5は326ppi。iPad miniのピクセル密度(163ppi)は、Retinaディスプレイを搭載しないiPhoneとほぼ同じだ。

 iOSのUI要素、たとえば設定メニューの各項目の高さやSafariの戻るボタンなどは、そのほとんどがピクセル単位で同じ大きさだ。同じピクセル数のボタンであれば、ピクセル密度が低い(ピクセル間が長い)iPadでは、実寸的に大きく表示され、ピクセル密度が同じiPhoneとiPad miniでは、同じ実寸で表示される。

 試しに、ほぼ同一距離から撮影した各iOSデバイスのディスプレイの写真をご覧いただきたい(無線LANアクセスポイント名は消している)。

第3世代iPad(264ppi) iPad 2(132ppi)
iPhone 5(326ppi) iPhone 3GS(163ppi)

 少しわかりにくいが、iPadは各ユーザーインターフェイス(UI)要素が大きく表示されているが、iPad miniとiPhoneはほぼ同じ大きさで表示されている。あくまで推察だが、iPad miniのディスプレイのサイズと解像度は、ほかのiOSデバイスとの互換性を重視した結果なのだろう。iPad miniはスマートフォンよりは顔から離して使うので、Retina化する意味はiPhoneほど高くない、と考えることもできる。

 将来的にはiPhone同様、iPad miniもRetinaディスプレイ版が登場する可能性は高い。iPadはMacBook Proのようにサイズと解像度がそれぞれ2種類、合計4種類の製品ラインナップになりそうだ。ただiPad 2から第3世代iPadになったときのように、重量増やコストアップも予想されるので、ここは技術の進化など適切なタイミングでRetinaディスプレイ版が投入されることを期待したい。

画面サイズ・解像度の実用度

 iPad miniの解像度は、実際の利用シーンではどのような影響があるのだろうか。ここでは7インチのAndroidタブレットとして典型的な800×1280ドットの7インチディスプレイを搭載するNexus 7と比較してみる。

 まずは一般的な印刷物と同じ縦横比(1:1.41)のマンガを縦画面に1ページ表示させることを考えてみる。iPad miniに表示するときは、左右に余白が付いて726×1024ドット(約74.3万ピクセル)となり、Nexus 7だと、上下に余白が付いて800×1128ドット(約90.2万ピクセル)となる。

 解像度ではけっこうな差があるが、しかし実際にマンガを表示してみると、解像度の差だけでなく、表示実寸の差もある。表示サイズは、iPad miniが約113×160mm、Nexus 7は94×132mm。個人的には、絵が大きく表示されるiPad miniの方が、読みやすいと感じた。ディテールのつぶれ方も、このくらいだと大きな差にはならない。

Kindleでの比較。左がiPad mini、右がNexus 7。Nexus 7ではステータスバーとメニューバーの表示が消えないのも残念

 小説などテキスト主体の電子書籍においても、ディスプレイの大きさの影響が多いかも知れない。以下は、iPad miniとNexus 7でKindleアプリを使い、「銀河鉄道の夜」を同じような文字の大きさに調整して表示したところだ。iPad miniの方が横幅もあるので、たとえ1行の文字数を同じにしても、1ページに表示できる文字量はiPad miniの方が多い。やはり、iPad miniの方が読みやすく感じられた。

 地図やパソコン向けのWebページなどは、縦横比率が正方形に近いが見やすい。細長くないコンテンツはiPad miniの方が有利だ。

 動画に関しては、より細長い縦横比率で解像度の高いNexus 7の方が、ディスプレイの解像度も活かせて有利だ。しかしディスプレイの長辺の長さは、iPad miniが160mm、Nexus 7は150mmなので、フルワイドの動画を表示するときも、大きさ自体はiPad miniの方が勝っている。

 iPad miniはディスプレイサイズ自体が7.9インチと大きいため、いろいろなコンテンツで、7インチタブレットよりも表示が大きくなる。これは解像度と同じくらいの評価ポイントとなるだろう。

 この解像度と大きさの違いをどう感じるかは、ユーザー一人一人の感覚次第だろう。個人的には、iPad miniのディスプレイサイズ・解像度は、現段階では悪くないバランスを保っていると感じられた。

iPad miniとiPad 2

 大きさは違うものの、ディスプレイ解像度や採用されているプロセッサなどのスペックも、公表範囲ではiPad miniはiPad 2と似ている。利用できるアプリなどはまったく同じで、発売日当日にストアから落としたiPadアプリ、おそらく開発者がiPad mini発表前に作ったであろうアプリも、問題なくiPad miniで使えている。

 サードパーティによるアプリのうち、9.7インチ向けに作られている一部のUIは、ボタンや文字が小さいかな、と感じるところもあるが、iOSが用意している標準のAPIを採用しているとみられるUIは、ほどよい大きさだと感じる。

Googleリーダーアプリの「Reeder」。iPad miniでも2ペイン表示になる

 それより、「9.7インチのiPadで培われたタブレット最適化済みのアプリがそのまま使える」、この点がiPad miniにとって非常に重要なポイントになっている。

 Androidタブレットでは、多くの非標準アプリがスマートフォンと同じ画面レイアウトのままで、TwitterやFacebookの公式クライアントですら、タブレットに最適化されていない。しかし、iPad向けに最適化されたアプリは現時点で無数に存在しており、この差は決して小さくない。

 また、iOSはFlashには対応しないが、専用アプリや非FlashのWebページが発達しているので、使いやすくなっているオンラインサービスも多い。たとえば、iPadはFlash非対応だがニコニコ動画の公式アプリがある。

 Androidタブレット向けのアプリももっと盛り上がって欲しいと思うが、現時点ではiPadとは大きな差ができてしまっている。スペックだけを見るなら、iPad miniは決して最新で最高ではないものの、タブレットとしての実利用を考えると、アプリの充実度合いを考慮するべきだろう。

 UI面は9.7インチのiPadをベースにしているが、よく見ると一部に違っているところもあるようだ。たとえばソフトキーボードは、iPad miniの方がキートップの表示が大きくなっている。画面が小さくなったことによる視認性の低下を防いでいるのだろう。しかし短時間の試用では、これ以外の変化は見つけられなかった。

iPad miniのキーボード iPad 2のキーボード

 9.7インチiPadにもあった「マルチジェスチャ」にも対応している。4本指のピンチでホーム画面、4本指のスワイプでタスク切り替えができるので、ホームボタンを押さなくて良い。iPadは持ち方によってはホームボタンが押しにくいので、ここは非常にありがたい。

 このほか、スペック面でのiPad 2からの変化としては、無線通信がBluetooth 4.0に対応し、今後登場するセルラー版でははLTEをサポートしている。カメラの解像度が裏表ともに第3/4世代iPadと同等に強化され、Siriおよび音声認識の文字入力にも対応しており、コネクタが新しいLightningになった。

持ち方や操作性はどうか?

 7インチクラスタブレットは、スマートフォンや10インチクラスのタブレットとは「持ち方」が変わっている。どの持ち方が正しいというわけでもないが、右利きを例に、いくつかの持ち方を試してみよう。


左手でガシッと掴む。手の小さい人にはツライかもしれない 左手で端を掴む。親指が少しだけ自由に動かせる
両手で掴む。キーボードが打ちやすい Smart Cover装着時。Smart Coverは重さ約69gくらい

 まず左手で握るように掴むスタイル。かなり安定するので、右手で激しくディスプレイをタップしても耐えられる。軽く振り回しても大丈夫だ。ただしディスプレイを見るためには手首を手前にひねる感じになるので、腕を伸ばすと持ちにくい。顔面から30cmくらいの距離が適性だろう。7notesなど手書きアプリとスタイラスを組み合わせるときにも良さそうだ。

 次に、端を左手で掴むスタイル。縦画面なら、後ろに回した指が重心近くまで届くので、意外と安定し、前述の持ち方より疲れない。右手でディスプレイをタップしても安定している。横画面にすると、重心から指が離れるのでちょっと疲れそうだが、それでも無理な持ち方でもない。手首をあまりひねらずに済むので、腕を伸ばしても持ちやすい。ちょっと不安定になるが、親指で画面の端をタップすることもできるので、電子書籍を読むときに最適な持ち方だろう。

 両手では縦画面で両親指が画面の中央まで無理なく届くので、QWERTYキーボードを入力するのに最適な形になる。一方、横画面で両手持ちをすると、キーボードは大きくなるが、親指が画面中央に届きにくくなる。

 机の上に置いて使うときは、横画面も使いやすい。純正アクセサリのSmart Coverがあると、スタンドのように使える。ただし、9.7インチiPadのSmart Coverに比べると、写真のように置いたときの安定性は悪く、ちょっと手前に引っ張ると倒れてしまいそうになる。ゲームをプレイするときや文字入力では気をつけたいところだ。

 iPad miniの大きさは、A5サイズより少し小さい。小さくなっているので持ち運びはしやすいはずなのだが、これまでにないサイズのデバイスなので、中途半端な感じでもある。A4やノートパソコンが入る鞄だと、むしろスカスカになってしまう。スーツの腰ポケットにギリギリ入るサイズだが、300gあるので、入れてしまうと左右のバランスが崩れてしまう。ノートパソコンやタブレットと同じように大きめの鞄で持ち運ぶか、あるいはもっと小さい鞄/ポーチに変えてみるか、どちらかだろう。

初めてのタブレット端末にもおすすめ

 iPad miniは、Wi-Fi版の16GBモデルが2万8800円となる。2万円を切るNexus 7やAmazonのKindleほど安くはないが、それほど割高感があるわけでもない。

 ストレージ容量は16/32/64GBの3種類から選べる。動画をとにかくローカルに保存しておきたいとき、大容量ゲームをありったけインストールしたいとき、OCRしてない自炊電子書籍を読み込みたいときはより大容量のモデルが必要だが、タブレットは使い方によってはスマートフォンほどストレージ容量が必要ない場合もある。結局は財布と相談だが、「迷ったら大容量」というほどストレージは必要ないのかもしれない。

 今月後半には、auとソフトバンクからLTEに対応するWi-Fi+Cellular版のiPad miniが登場する。メールなどプッシュ受信を考えると、セルラー網対応は魅力的だが、しかしメインで持ち歩いている端末がテザリングに対応しているならば、Wi-Fi版でも十分だろう。まだWi-Fi+Cellular版の価格は発表されていないが、固定費が追加でかからずに済むというのはかなり大きい。テザリング対応端末も選択肢が増えているので、スマートフォンユーザーでテザリング対応モデルでない場合、iPad miniのためにテザリング対応端末に買い換えるのもアリだろう。

 タブレットは非常に活用範囲が広く、使い方が人それぞれなので、人にすすめるのが難しい製品だ。しかし豊富なiPadアプリと片手でも持ちやすいサイズ感、これらを併せ持つiPad miniは、タブレットの中でもおすすめの1機種である。iOSとiPadという土台の信頼感が高く、初めてのタブレットとしてもおすすめだ。




(白根 雅彦)

2012/11/2 21:24