レビュー

「iOS 7」ファーストインプレッション

見た目が一新されたiOS史上最大のアップデート

 今年も新iPhone発売を目前に控え、iOSの最新バージョンである「iOS 7」の配信が開始された。iOS 7は、アップル自身が「iPhone登場以来の最大の変化」と呼ぶほど、大きな変化をもたらすアップデートになっている。今回はiPhone 5をアップデートし、iOS 7で何が変わったか、レビューしよう。

iOS 7のインストール概要

 iOS 7をインストールできる機器は、iPhone 4以降、第5世代のiPod touch、iPad 2以降となっている。iOS 6に比べると、iPhone 3Gsと第4世代iPod touchが対応機種から抜け落ちてしまった。余談だが、アップルのWebサイトでは、iPhoneの機種名につく“s”が、これまでの大文字表記から小文字へ変更されている。

 さて、対象機種から外れたiPhone 3Gsは2009年に発売されたもの。さすがに対応機種から落ちるのは仕方ないところだろう。

iPhone 5でのアップデート画面

 iOS 7へのアップデートは、iTunesからでも行えるが、iOS 6からならば、端末単体でアップデートできる。単体アップデートの場合、差分をダウンロードすることになるが、筆者のiPhone 5でダウンロードしたファイルは752MBもあった。実行する際には、それなりの時間がかかることは覚悟しよう。正常にアップデートできれば、各種データは消えないが、念のため、事前にiCloudやiTunesでバックアップを取っておくことをおすすめしたい。

 iOS 7では、マルチタスク処理が変わっているなど、システムレベルの変更も多く、iOS 6とはアプリの互換性に問題が生じる可能性もある。アプリ開発者向けには数カ月前からβ版が配布され、iOS 7対応アプリを開発できるようになっているが、間に合わないアプリもあるだろう。業務で利用する場合など、もし利用できなくなると致命的、という環境にある人は、各種アプリの対応状況も事前に確認の上で、iOS 7へアップデートしよう。

 ちなみにパソコン側のiTunesも最新版の提供が開始されている。iOS 7を扱うには最新バージョンが必要で、こちらのアップデートも忘れずに。

見た目が一気に変わったユーザーインターフェイス

iOS 7のホーム画面
iOS 6のホーム画面

 iOS 7とiOS 6を比較すると、まず目に付くのは、見た目の変化だ。アイコンやボタン、背景などのデザインテイストが刷新された。一見すると、「まったく別のOSか」と思ってしまうほどだ。

 しかし実際に操作してみると、これまでのiOSと共通する部分がかなり保たれていることもわかる。

iOS 7の設定アプリ
iOS 6の設定アプリ

 たとえば「設定」アプリを見てみよう。デザインは大幅に変更され、一部の項目についても追加や変更があるが、基本となる「縦に項目が並ぶ」「タップすると右にスクロールするように階層が進む」「階層を戻るボタンは左上」「さらに深い階層がある項目には『>』が付く」など、基本は共通している。

 標準アプリの「メール」や「Safari」についても同様で、見た目は大幅に変わったように思えるが、ボタンの位置や大まかな使い方に変更はない。ほとんどの標準アプリは、iOS 6以前と同じ感覚で利用できる。

iOS 7のSafari
iOS 6のSafari

 見た目以外にも、新しい要素が取り入れられているポイントもある。注目したいのは、「画面の端(画面の外)からのフリック操作」だ。

 従来から上方からのフリックには「通知センターの引き出し」という機能が割り当てられていたが、今回、下方からのフリックで、新機能の「コントロールセンター」を呼び出せるようになった。さらに左右からのフリックにも、機能が割り当てられている。

画面左からのフリック操作

 たとえば画面左からのフリックは、「戻る」に近い働きをするようで、「設定」アプリならば上の階層のメニューへ移動し、「Safari」では閲覧中のWebページから、前のページへ戻る。一方、画面右からのフリックは「進む」だ。サードパーティ製アプリでもこの操作を取り入れているものがあり、この新しい操作スタイルをマスターすると、これからさらに便利になりそうだ。ちなみに画面の端からフリックするというより、画面の外からフリックするイメージだと操作しやすい。

 着信音・通知音にも新しいものが加わり、たとえば充電開始音なども変更されている。初期設定の着信音を使い続けていると、他の人のiPhoneと混乱する、というケースは、ユーザーが多いiPhoneなら遭遇しやすい場面かもしれない。これを機に、着信音のカスタマイズをしてみるのもいいだろう。

新機能「コントロールセンター」で基本的な使い勝手も改善

コントロールセンター

 iOS 7の新機能として、「コントロールセンター」というものがある。画面下から引っ張り出す「コントロールセンター」で、Wi-Fiや画面回転ロックなどの切り替え、画面の明るさ調整、音量、音楽プレーヤーコントロール、懐中電灯機能(フラッシュLED点灯)、時計アプリ、電卓アプリ、カメラアプリの起動といった操作が行える。ホーム画面だけでなく、アプリ起動中も利用可能だ。

 Androidでは通知パネル内にWi-Fi切り替えなどのボタンが用意されている機種が多いが、「コントロールセンター」はそういったボタン部分だけを切り取ったようなイメージだ。これまでも提供されていた「通知センター」が情報を確認するための機能となる一方、「コントロールセンター」は簡易操作するための機能と言え、別々になっているのはわかりやすい。

 フリックで日本語を入力する際、「ん」を入力しようとすると、コントロールセンターを呼び出す操作と誤認されるかも……と思われるかもしれないが、文字入力中はコントロールセンターが呼び出せないようになっているようだ。アプリ起動中に呼び出せないよう設定することもできる。

通知センター

 「通知センター」も「今日」と「すべて」と「未確認」の3つのタブに分割されるなど、iOS 6以前に比べると、表示の仕方や表示内容が変わっている。表示内容は「設定」アプリから変更が可能だ。

 ロック解除画面も刷新。画面上のどこをフリックしてもロック解除できるようになった。「通知センター」と「コントロールセンター」はロック解除画面から利用できるが、「通知センター」には今日の予定も表示されるので、けっこう実用的だ。セキュリティのために、ロック解除画面から「通知センター」の一部や「コントロールセンター」を使えなくすることもできる。20日発売予定の「iPhone 5s」で指紋認証機能を利用すると、ロック解除画面を利用せずにセキュリティロックも一気に解除できるとされている。iOS 7におけるロック解除画面の変更は、指紋認証を利用しない、iPhone 5cや従来のiPhoneでの活用が多くなりそうだ。

タスク切り替えの画面

 このほか、タスク切り替えの画面も変更された。iOS 6までだと、アイコンが並ぶだけだったが、iOS 7からは各アプリの縮小プレビューが並ぶようになっている。同時に表示されるのは3つのアプリ(うち2つは半分だけ)で、一覧性に優れるわけではないが、左右へのスクロールは早く、実用性は向上した印象だ。アプリをバックグラウンドで動作させず、終了する操作は、縮小プレビューを上にフリックするだけという形だ。

 端末内のデータを検索する「Spotlight」は、ホーム画面を下方向へフリックして呼び出す。iOS 6まではホーム画面の一番左のページという扱いで、ホーム画面のスクロール中に間違って表示させやすかったが、iOS 7で取り入れられた“下フリック”であれば、どのページからも呼び出せるようになり、ホーム画面との違いもわかりやすくなった。ただし、Web検索には利用できなくなっている点には注意が必要だ。

標準アプリの「カメラ」「写真」「カレンダー」は大幅刷新

 いくつかのアプリは、見た目だけでなく基本的な機能、使い方が一新された。

カメラアプリ

 まず「カメラ」アプリ。従来は「普通に撮る」だけだったが、iOS 7では連写機能やエフェクトフィルタ機能、正方形の写真の撮影機能などが追加されている。ちなみに連写機能は、iPhone 5sの新機能として紹介されているが、そこまで高速でないにしろ、iPhone 5以前でも連写はできる。ちなみに連写の操作方法は、シャッターボタンを長押しするという形。一度知ると、次からはわかるだろうが、最初は気付きにくい操作かもしれない。そのほかの撮影モードは、左右のフリック操作で切り替える。こちらは画面上にモード名が左右に並んでいるのでわかりやすい。

写真アプリ

 写真閲覧の「写真」アプリも、大きく変更され、新たに「コレクション」という分類方法が加わった。これは撮った写真やフォトストリームで同期した写真が、撮影日時と場所情報を元に、自動分類されるという機能だ。「年別」「コレクション」「モーメント」という3つの階層があり、「コレクション」はおおむね月別の分類になるようだが、「モーメント」は1日だけで分類されることもあれば、複数の日が1つのモーメントに分類されることもある。アップデートから数時間、アルゴリズムがいまいち把握しきれないが、感覚的には過去の写真は見やすくなっているという印象だ。

カレンダーアプリ

 標準アプリの中では、「カレンダー」も大幅に変更されている。まず月表示が上下に無段階スクロールするようになり、複数月をまたいだ表示が可能になった。ただし、月表示ではスケジュールの有無しか確認できず、拡大して週単位の表示にしても、一度に確認できる時間帯が狭く、全体的にやや実用性に乏しい印象を受けた。個人的には、引き続きサードパーティ製のカレンダーアプリを利用することになりそうだ。

Siriとサメの話をしてみる

 音声コマンド機能の「Siri」では、「〜について教えて」と聞けば、すぐにネットの検索結果を教えてくれるようになっている。たとえばWikipediaを検索して、その内容も示してくれる。また英語やフランス語、ドイツ語では、Siriの音声に男性の声が追加された。その他の言語も順次対応するとのこと。

AirDropでファイルが送られると、ポップアップ通知が表示される

 「AirDrop」という独自のファイル共有機能も新たに追加された。これはWi-FiやBluetoothを使い、近くにあるiOS 7機器と各種ファイルを送受信できるという機能だ。撮影した写真、連絡先、メールに添付されているPDFなど、いろいろなファイルのやり取りが可能となっている。しかし「AirDrop」を利用できるのはiPhone 5以降、iPad(第4世代)とiPad mini、iPod touch(第5世代)だけなので、ちょっと汎用性に乏しい印象も受ける。

 ちなみにMac OS Xにも「AirDrop」というファイル共有機能があるが、そちらは「リードオンリーの共有フォルダ」であり、iOS 7の「AirDrop」とは互換性はない。たとえば次期Mac OS Xで、互換性が実現することを期待したい。

App Store画面。iTunes Cardの読み取りは「おすすめ」から

 App Storeもデザインが変更された。iOS 6で横方向に並ぶように変更されたランキングが、また縦方向に並ぶように戻されている。個人的には縦方向の方が見やすいと思うので、この変更は歓迎したい。また店頭販売されるプリペイドカード「iTunes Card」のコードをカメラで自動的に読み取れるようになっている。iTunes Cardは複数枚で割引販売されることもあり、ありがたい機能だ。

 このほか、「iPhoto」「iMovie」「Keynote」「Pages」「Numbers」という5つのアップル純正アプリが無料化される。この対象機種は、「2013年9月1日以降にアクティベーションされたiOS 7対応デバイス」となっている。それ以前から使っているiOS機器は、バージョンアップしても対象機種には含まれない。

 細かいポイントだが、通話設定に着信拒否機能が加わっている。いままではキャリアの提供するサービスを利用する必要があり、設定が面倒だったが、端末側の機能になったことで、使いやすくなった。ただ、番号非通知のコールを拒否するには、引き続きキャリアのサービスを利用する形だ。留守番電話は、端末側の機能としては搭載されず、引き続きキャリアの提供する各種サービスを利用するしかない。

 紛失・盗難対策も強化された。iCloudの「iPhoneを探す」を有効にしていると、Apple IDを入力しない限り、データ消去や再アクティベーションができなくなっている。完璧とは言えないかもしれないが、一定の効果は期待できそうだ。

 パスワードや連絡先情報、クレジットカード情報など、Webで入力する個人情報を暗号化し、iCloudに保存する「iCloudキーチェーン」という機能も加わる予定だが、アップルのWebサイトでは「まもなく登場」と紹介されているものの、現時点では、まだ利用できない。

基本的にアップデート推奨。アプリの互換性には注意

 今回もiOSのアップデートは無料で提供される。フラットデザインが採用されたこともあり、アプリの互換性は注意したいところ。特に業務で利用するユーザーは要注意だ。ただ、一般ユーザーにはiOS 7へのアップデートをオススメできる。

 iOS 7は、見た目は大きく変わっているが、ボタンの位置などの操作体系は、従来を踏襲している。メイン端末としてずっとiPhoneを使い続け、“iOSの操作は指が覚えている”筆者の場合は、ほとんど違和感なく、iOS 7になったiPhone 5を利用できる。「写真」など一新されたアプリであっても、操作面で困惑させられることはほとんどない。

 iOS 7にアップデートする最大のメリットは、見た目の変化などもさることながら、、新機能である「コントロールセンター」の追加、ロック解除画面の変更などといった部分だ。つまり、サードパーティ製アプリでは、カスタマイズできないような、根幹的な要素が改善されたところにある。こうした部分のユーザーエクスペリエンスへの影響はきわめて大きい。

 まったく新しい機能は、最初に機能や操作を知る必要があり、使いこなすには慣れが必要だ。しかし使いこなせるようになれば、確実に利便性が高まる。iOS 7へアップデートできる機器があれば、ぜひともiOS 7へアップデートして、より便利になったiOSを活用して欲しい。

(白根 雅彦)