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スマホ料金節約術

スマホ料金節約術

スマホIP電話の元祖、「050 plus」は2年で進化したか?

 安価に通話できる手段として注目を浴びつつあるIP電話。キャリアの料金プランから無料通話分がほぼなくなって、30秒あたり21円という通話料金が基本となってしまったことも追い風になっている。お得感をアピールした、いくつかのスマートフォン向けIP電話サービスが登場してきているが、なかでもいち早く提供を開始したこの分野の草分けとも言えるのは、NTTコミュニケーションズの「050 plus」だ。

IP電話アプリ「050 plus」をチェック!

 2011年7月に初めてiPhoneから利用できるようになり、その後、Androidにも対応した「050 plus」は、格安で電話できるサービスとして話題を集めた。しかし、当時は3Gによる通信が主流で高い通話品質を維持しにくかったこと、キャリアの料金プランにも割安で通話できるメニューや無料通話分が含まれたメニューがまだ存在していたことなどから、はっきりとしたメリットをIP電話に見いだすことが難しかったかもしれない。

 ところが、冒頭で述べたようにLTEスマートフォンで無料通話分がなくなった現在、状況は当時から大きく変わった。そして高速に通信できるLTEネットワークで、通話品質も少なからず改善されているはずだ。かつての遅いネットワークのために期待していたほどの品質が得られず、結局使わなくなってしまったユーザーがいるのではないかと考えると、「050 plus」にとっては、他社より早いサービスインがかえって仇となってしまった可能性がなきにしもあらず。そこで、リリースから2年半ほどたった今、「050 plus」のサービス内容や使い勝手はどうか、改めて確かめてみたい。

通話頻度がさほど高くなくても料金面の恩恵は受けられる

キャリアの料金プランと比べてどれくらいお得になったのか、通話終了時に確認できる

 まずスマートフォン向けIP電話アプリの意義とは何だろうか。何度も言及されていることだが、IP電話の最大のメリットは、やはり通話料金の安さにある。キャリアの標準的な通話料金が30秒あたり21円であるのはすでに述べた通りだが、それに対して「050 plus」の場合は、ユーザー同士や無料提携プロバイダーのIP電話であれば通話料金は互いに一切かからず、有料のIP電話やひかり電話宛て、固定電話宛てなら3分8.4円。PHS宛ては1分10.5円、携帯電話宛ては若干割高になるものの1分16.8円で、それでも単純計算で2.5倍~15倍は通常より安価になる。

 特に携帯電話宛ての料金は、他社が提供しているスマートフォン向けIP電話サービスの中では最安値に近い。これらは国内の通話料金だが、国際電話でもたとえば米国宛ては1分9円と、かなり安価な部類に入る。海外とやりとりすることの多いビジネスユーザーにはうれしいところだろう。「050 plus」の場合、一番のネックになりそうなのが、月額基本料金として315円がかかってしまうところだが、下記のグラフをご覧いただくとわかるように、固定電話宛ては9分以上、携帯電話宛てでも13分以上通話すれば元はあっさり取れる。

固定電話宛ての場合は9分以上、携帯電話宛ての場合は13分以上通話すると確実に得になる

 プライベートの端末にしろ仕事用の端末にしろ、通話時間が1カ月に9分、もしくは13分を下回るようなケースは、普通に使っていればほとんどないのではないか。しかも無料通話できる050番号などの相手がいれば、通話料金はますます安く上がる。多くの企業はちょうどこれから年度末に向けて来期の予算編成を行う時期と思われるので、2014年の消費税の増税や経費削減を考慮し、従来通り会社支給のスマートフォンでキャリアの料金プランのまま使い続けるのが妥当なのか、それとも「050 plus」を利用するのが得になるのか、このタイミングで検討してみるのもいいかもしれない。

2年前から格段に向上した通話品質

 さて、いくら通話料金が安くなったとしても、通話品質が満足できないレベルだと結局“使えない”サービスになってしまう。その点最近の「050 plus」は、2年前のサービス開始当初から比べるとずいぶん改善が図られている印象を受ける。当時の音質は通話が困難になるほどではなかったにしろ、声がやや小さく聞こえたり、互いが同時に話すと聞き取りにくくなることも多く、通常の電話の音質に慣れた耳にはやはり違和感があったものだ。もちろん、かつては3G通信のために安定したデータ送受信がしにくかったことも、音質が劣化しやすい理由の1つとしてあったのかもしれない。

「アプリ設定」の「高度な設定」の中に音質に関わる設定項目が用意されている。この機能も音質改善に貢献しているだろう

 一方、最新の「050 plus」では、声の聞こえ方が明瞭になり、聞き取りやすさが大きく向上したように感じる。以前からもともとノイズは少なかったが、声以外の音が耳障りになることはほぼなく、遅延についても1秒以内の感覚。くっきり聞こえるよう音圧が適正化されたのに合わせ、かすかに声の中にざらつきを感じるようになった気がしなくもないが、通常の電話と比べた時に違和感を覚えるほどではない。「050 plus」からの電話を固定電話で受けた相手と話した限りでは、相手(固定電話)側は通常の携帯電話と区別がつかないくらい自然な音声で聞こえていると言っていた。実際に自分の固定電話にかけて聞き比べても、たしかによく注意して聞かない限り違いには気付けないと思えたほどだ。

 このような音質の改善は、これまで2年間にわたるアプリのアルゴリズムの最適化や中継サーバーの品質向上、ノウハウの蓄積もあるのだろう。設定画面には「エコーキャンセラ設定」や「送話・受話音声データ制御」という設定項目が追加され、音が跳ね返って聞こえるような現象を軽減したり、ネットワーク状況に応じて自動で音声データをコントロールして遅延を抑える仕組みを利用でき、少なくとも個人的には2年ほど前とは明らかに通話品質が異なっていることを実感している。サービス開始直後に試したものの満足できなかったユーザーは、ぜひもう一度トライしてみてほしい。

電話番号下4桁を自由に設定できるメリットも

 無料で通話したいなら「LINE」や「Skype」などのメッセンジャーアプリを使えばいい、と考える人もいるかもしれない。でも、それらのメッセンジャーアプリはユーザー同士でしか通話できず、固定電話や携帯電話の番号にはダイヤルできなかったり、電話として使い始めるまでに複雑な手順が必要になったりするという点で、“本来の電話の気軽さと汎用性の高さ”からはほど遠いところにある。「050 plus」を他のIP電話アプリと比較した場合は、月額料金が少しかさむとはいえ、固定電話や携帯電話宛てにかける頻度が“普通”程度にあれば、さほど気にしなくてもいいレベルだろう。

申し込み時の画面。覚えやすい数字はもうほとんど残っていないようだが、電話番号の下4桁を好きな数字にできるのはうれしい

 通話料金よりもパケット料金が気になるという人は、SIMロックフリー端末や、機種変更時の使い古しのスマートフォンを流用し、格安のデータSIMカードと「050 plus」を組み合わせて使うという手もある。最近では月額980円から使える「OCN モバイル ONE」のように、LTEにも対応する格安データSIMのサービスもあり、「050 plus」の月額315円と合わせるとたった1カ月1295円で、スマートフォンとしても、電話としても使える環境が整うことになるのだ。

 もちろん「050 plus」に限らず、IP電話を使い始めるまでには、クレジットカード情報と個人情報を記入し申し込まなければならず、通常の電話とは異なる050からの番号に変わってしまう、といったハードルがあることはたしか。ただ「050 plus」の場合は電話番号の下4桁を自由に設定できるという大きなメリットもあって、ある意味、早く使い始める人ほど得をする面もある。今からゾロ目狙いはさすがに無理だろうが、現在使っている電話番号と同じ下4桁にして覚えやすくしたいなら、とりあえず早めに登録は済ませておいた方がよさそうだ。

日沼諭史