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ドコモの新プラン「カケホーダイ&パケあえる」はおトク?

ドコモの新プラン「カケホーダイ&パケあえる」はおトク?

6月開始の新料金プランをチェック

 4月10日に発表された、NTTドコモの新しい料金プランは、基本プランであり通話定額サービスを組み込んだ「カケホーダイ」と家族内でのパケット通信用でデータシェアが可能な「パケットパック」、そしてデータ専用プランや割引サービスだ。5月15日に申込受付を開始し、6月1日より提供される。

 新しい「カケホーダイ&パケあえる」は、通話定額とデータシェアという特徴を備えている。一方で、これまでにない概念が採り入れられたことで、その使い勝手や利便性が従来とは一変される可能性を秘めている。新プランは、どのような人にとって、どの程度、おトクなのだろうか。公表されている情報を元に考えてみよう。なお、本稿の価格表記は税抜きとなっている。

制限が少なく汎用性の高い「カケホーダイ」

 まず今回導入される基本料金プラン「カケホーダイ」ではその名の通り、音声通話が「かけ放題」となっている。国際電話や国際ローミング、情報ダイヤルなどの例外はあるものの、相手が固定電話だろうとケータイだろうと、何回・何分かけても基本料金だけでOKだ。

 「カケホーダイ」は端末によって2種類のプランがあり、そのほかにも音声通話なしのデータ専用の料金プランも用意されている。FOMA(3G)もXi(LTE)も同じ料金プランを利用する。

「カケホーダイ&パケあえる」【基本プラン(月額)】
区分プラン名(端末種類)料金(2年契約の場合)通話料
カケホーダイプラン
(音声有り)
カケホーダイプラン(スマホ/タブ)2700円国内通話カケホーダイ
カケホーダイプラン(ケータイ)2200円
データプラン
(音声無し)
データプラン(スマホ/タブ)1700円設定なし
データプラン(ルーター)1200円
デバイスプラス
(フォトパネルやゲーム機などのデバイス)
デバイスプラス500500円
デバイスプラス300300円
(2年契約なし)

 これまで、ケータイ向けの通話定額、かけ放題と言えば、ウィルコムの「だれとでも定額」などがある。まだ提供されていないが、ソフトバンクモバイルの「スマ放題」も従来型の通話定額だ。これらのサービスは、「通話1回あたり10分」などの制限があり、それを超えると従量課金される仕組み。通話するたびに、制限を気にしながら利用しなければいけない。

 しかしドコモの「カケホーダイ」の場合、基本的に通話時間や通話回数の制限がなく、追加で課金されることがない。通話料を気にせず(バッテリーは気にしつつ)、好きなだけ長電話できるわけだ。この部分での使いやすさは、他社よりも「カケホーダイ」が数歩リードしていると言えるだろう。

 ちなみにFOMAの既存料金プランでは、無料通信分が用意されている。もし家族間でFOMAの従来のプランと、「カケホーダイ&パケあえる」が混在している場合、既存のFOMAの無料通信分を充当することはできない。

 通話定額の対象は、国内の電話であれば、固定電話や他社の携帯電話を問わず、どこでも良い。仕事の連絡~レストランの予約と、プライベートと仕事を気にせず、あらゆる場面で使えるという汎用性の高さもポイント。最近話題となったサービス「LINE電話」の場合、固定電話や携帯電話宛に割安な価格で通話できることで注目を集めた。またLINEではユーザー同士の無料通話もあるが、これも帯域が保障されていない形でのIP電話であり、“無料通話”という視点で比べるとキャリア回線の品質である「カケホーダイ」のほうが優れている。

複数回線でのシェアがお得なデータ料金

 もう1つの特徴が「パケあえる」として提供されるパケットパック定額だ。「カケホーダイ」は、これまでのパケット定額ではなく、今回発表されたパケットパックと組み合わせることになる。逆に、従来の「タイプXi」と新プランである「パケあえる」を組み合わせることはできない。

 パケットパックは利用人数や利用量に応じて以下の7種類が用意されている。

「カケホーダイ&パケあえる」【パケットパック定額料(月額、1グループ毎)】
プラン名利用可能データ量シェア料金
一人向けデータSパック2GB1人でシェア可3500円
データMパック5GB5000円
家族向けシェアパック1010GB家族で10回線まで可9500円
(代表回線のみ)
シェアパック1515GB12500円
(代表回線のみ)
シェアパック2020GB16000円
(代表回線のみ)
シェアパック3030GB22500円
(代表回線のみ)
らくらくスマートフォン向けらくらくパック200MB不可2000円

 「データSパック」と「データMパック」は、スマートフォンやタブレットなど複数回線を1人で契約するユーザー向け。家族で利用するときは「シェアパック」シリーズとなる。

 従来の「パケ・ホーダイ」ではユーザー1人1人が契約する形だった。一方、「パケあえる」のパケットパックは、主回線(親回線)が契約するだけ。そこに含まれるデータ通信量を親回線と子回線でシェアする。ちなみに、子回線は、1回線ごとに「シェアオプション」(500円)がかかる。子回線だけの料金で見ると、カケホーダイと組み合わせて月額3500円程度で利用できる。

 たとえば家族5人、つまり5回線、スマートフォンを利用しているケースではどうなるだろうか。10GB分をシェアするケースで考えてみよう。基本プランの「カケホーダイ」が2700円×5、spモードが300円×5、「シェアパック10」が9500円×1、「シェアオプション」が500円×4で、計26500円という形になる。これで5つの回線であわせて月間10GBまで、スマートフォンやタブレットでデータ通信を行える。

家族で5回線、スマートフォンを利用している場合
プラン料金
カケホーダイ2700×5=1万3500円
spモード契約300×5=1500円
シェアパック109500×1=9500円
シェアオプション500×4=2000円
合計2万6500円

 従来のドコモの料金だと、基本プランの「Xiタイプにねん」が743円、spモードが300円、Xiパケ・ホーダイ ライトが4700円で、合計5743円が1回線あたりの料金だ。スマートフォンが5回線であれば、2万8715円になるので、それに比べると、2000円程度、安く済んでいる。

 5回線で10GBは少ないと感じる人もいるかも知れないが、実際のところ、自宅や職場にWi-Fiがあれば、スマートフォンでも1ヶ月2GB未満で済せられるケースは多い。YouTubeのような動画ストリーミング、あるいはdビデオをモバイル経由でダウンロードする、といった使い方をある程度、Wi-Fi経由にすれば、極端に通信量が足りないということはないだろう。

 家族でシェアできるパケットパックは、10GBで9500円の「シェアパック10」が最も安い。たとえば2人家族で利用量がそれほど多くないときは、家族契約にせず、別々の契約で「データSパック」を使った方が安くなる。ここは利用量に応じて無理のない選択をするべきだろう。

家族2人、データSパックで2回線の場合
プラン1人ずつ契約の場合家族で契約の場合
カケホーダイ2700×2=5400円2700×2=5400円
spモード契約300×2=600円300×2=600円
パケットパック定額データSパック(2GB)
3500×2=7000円
シェアパック10(10GB)
9500円
シェアオプション500×1=500円
合計
※従来プランでは1万1486円で、通話は従量課金
1万3000円1万6000円

 1人でスマホとタブレットなど、複数回線を契約するときは、「シェアパック」より安価な「データSパック」や「データMパック」が使えるので、安く済ませられるケースが多そうだ。たとえばタブレットを追加するには、1回線あたり「データプラン(スマホ/タブ)」(1700円)、spモード(300円)、シェアオプション(500円)の合計2500円なので、従来の料金プランであるプラスXi割適用後の「Xiデータプラン フラット にねん」(2839円、期間限定価格)とspモード(300円)の合計3139円より安い。

 一方、1人で1回線のみを契約する場合は、従来の「タイプXi」に比べると、若干高くなる。

上が従来の料金プラン、下が「カケホーダイ」のプラン

 1人の場合、従来のプランと「カケホーダイ&パケあえる」を比べると、合計金額は上がり、データ制限容量は小さくなっている。しかし「カケホーダイ」はいくら通話してもこれ以上、課金されることはない。

 データ通信量が少ないユーザーは約800円(約20分相当)以上、データ通信量が多いユーザーは約1300円(約32分相当)以上、音声通話をすると、「カケホーダイ」の方が安上がりとなる。逆に言うと、そこまで音声通話をしない人にとっては、従来の「タイプXi」の方が安い。

 ただし、これは何も割引が適用されていない場合の話である。「カケホーダイ&パケあえる」では、新しい割引サービス(後述)が導入されるので、実際にどちらが安いかは、それらの割引サービスも加味しなければ判断できない。

1000円で1GB追加

 なお「カケホーダイ&パケあえる」では、データ通信量の制限量に到達すると、通信速度が最大128kbpsに制限される「リミットモード」、もしくは自動的にデータ通信量の追加オプションを購入する「スピードモード」のどちらかのモードを選ぶことができる。スピードモードは1GB~10GBの間、無制限で、事前に設定しておける。追加データ量のうち、実際に追加したデータ量(1GB1000単位)のみ課金される。

 データ通信量の追加オプション「1GB追加オプション」は、1000円で1GB、速度無制限で通信できる。従来の料金プランでは、「2500円で2GB」だったので、単価は安くなった。いや、それどころか、MVNOなどを含めても、LTEでのGB単価は最安クラスだ。これらを有効活用して、ロスのない効率的な料金プランの組み方がオススメだ。

適用されれば、かなり嬉しい割引サービス

 「カケホーダイ」では、新しい割引サービスである「U25応援割」と「ずっとドコモ割」が適用される。

 「U25応援割」は25歳以下の利用者に対し、1人あたり月500円の割引と1GBのデータ通信量(ボーナスパケット)が加えられるというもの。たとえば家族に25歳以下のユーザーが2人いれば、計1000円の割引と2GBの追加通信量が得られる。毎月500円の割引で年間6000円、そして、追加オプションでは1000円相当という1GBのボーナスパケットは魅力的だ。

 「ずっとドコモ割」は長期継続契約者に対する割引だ。ドコモを継続して契約してきた年数とパケットパックの種類に応じ、毎月の割引が適用される。家族契約の場合、家族の中で一番長い契約年数が適用される。ちなみに契約年数はドコモのユーザー向けサイト「My docomo」の「ポイント・ステージ情報詳細」で確認できる。

 パケットパックの金額が大きく、契約年数が長いほど、大きく割引がされる。たとえば契約年数16年以上の人が「シェアパック30」(2万2500円)を契約すると、毎月2000円の割引だ。現在、16年を超えるユーザーと言えば、iモードが登場する前から契約している人。相当年季の入ったドコモユーザーと言え、そうしたユーザーであれば、もっとも安い「データSパック」(3500円)でも600円の割引となる。

 契約するパケットパックが小さいと、とくに1人ではなかなか「ずっとドコモ割」の恩恵は受けにくいが、家族向けのパケットパックなら割引を得やすい。家族に長期のドコモ契約者がいるならば、ぜひとも「ずっとドコモ割」を活用したいところだ。

 なお、従来から存在する端末購入時の割引「月々サポート」は、新プランを契約している場合、どうなるのか。子回線で新機種を購入して割引が適用され、もし割引額が子回線の利用料を上回ることがあれば、余った分は家族間で適用される。あまり例はないかもしれないが、月々サポート5000円という機種を購入する場合、その割引額5000円は全額適用される。

「通話の頻度」と「複数回線」が鍵、ユーザー体験への影響も?

 「タイプXi」から「カケホーダイ」に移行すると安くなるかどうかは、「通話の頻度」と「複数回線契約」が鍵となる。

 音声通話を毎月一定額以上、使っているか、あるいは家族などで複数回線を契約しているときは、「カケホーダイ」の方が安く済ませられるケースが多い。どのくらい安くなるかは、ケースバイケースだが、電話がかけ放題になるというメリットは見逃せない。

 一方でデータ通信の容量が少なくなっているので、動画ストリーミングなど大容量の通信を利用し過ぎると厳しくなる。もちろん従来の「Xiパケ・ホーダイ」にも容量制限は存在するので、新プランに限らず、無制限に通信すると通信制限の対象になってしまうことに変わりはない。大容量の通信をする場合は、固定回線にWi-Fiルーターを設置するなど工夫が必要になるだろう。

 現在提供中のXi(LTE)向けの各種料金プランは、8月末で新規受付を終了する予定。現ドコモユーザーは、今の契約を継続して利用し続けることもできる。この終了時期については、本誌インタビューに応じたNTTドコモの加藤薫社長が「反響や要望をよく見ていきたい」とコメントしている。

 1回線のみの契約で、音声通話をそれほど使っていないときは、「カケホーダイ」に移行すると高くなる可能性がある。そういった人には、「カケホーダイ」に移行せず、「タイプXi」を維持し続けるのも選択肢の1つだ。しかし「カケホーダイ」は、先述したように時間制限などがない通話定額サービスだ。現在、あまり通話を利用しないユーザーにとっては割高に感じられるかもしれないが、そもそも無料で制限もないということになれば、コミュニケーションの形が大幅に変わり、コスト分以上に活用する可能性だってある。

 たとえばデータ通信も定額制で一気に用途が広がった。かつてケータイでデータ定額が始まったとき、それ以前から数千円分もデータ通信を利用していた人はいたが「パケ死」という言葉があったように、多くの人が使いすぎを恐れた。しかしパケット定額制が始まると、多くの人が、数千円どころか数万円分ものデータ通信をするようになった。

 これと同様のことが、「カケホーダイ」にも言えるかも知れない。いままでそれほど音声通話をしていなかった人も、「カケホーダイ」に移行すれば、これまで以上の通話をするようになり、そこに新しい価値が生まれる可能性があるのだ。

 ドコモが公開している「カケホーダイ」のWebサイトでは、簡易的な料金シミュレーターも提供されている。コストはもちろん重要な要素で、より安くなることは重要な視点だ。ただ、タブレットなどこれまでにないデバイスを活用する方法や、電話が「かけ放題」になることで生まれる新しい体験、価値を模索するのも興味深いところだ。

白根 雅彦