レビュー

「GALAXY Tab S」8.4インチモデル、ファーストインプレッション

色彩豊かな高解像度有機EL搭載のAndroidタブレット

 サムスン電子「GALAXY Tab S」の国内発売がアナウンスされた。GALAXY Tab Sは6月にグローバルで発表されたばかりの最新タブレットだ。国内ではWi-Fiモデルが、キャリアを通さず、サムスン自身の製品として販売される。

 今回は日本版のGALAXY Tab Sの8.4インチモデルをお借りすることができたので、実際の使用感を含めたレビューをお届けする。なお、お借りしたのは開発中のモデルなので、搭載ソフトウェアや対応サービスなどは発売時には変更されている可能性もあることをご了承いただきたい。

GALAXY Tab Sってどんなタブレット?

GALAXY Tab S 8.4インチモデル

 GALAXY Tab Sはブランド名に「S」を冠するサムスン電子製タブレットのフラッグシップモデルである。フラッグシップモデルだけに、格安Androidタブレットに比べると価格も高めだが、スペックはそれ以上に妥協のないものとなっている。

 サムスン電子のフラッグシップ・タブレットとしては今年1月、GALAXY Tab PROシリーズが発表されたばかりだが、「S」は有機ELを採用するなど「PRO」よりもディスプレイの表現力やエンターテイメント要素が強化されている。一方で「PRO」でラインナップされていた「Sペン」対応版はGALAXY Tab Sには用意されていない。

 日本において今回のGALAXY Tab Sは、キャリアを通さず、サムスン電子自身の製品として販売されることにも注目したい。サムスン電子は国内ではGALAXY Tabシリーズを数機種、発売しているが、キャリアを通さずに販売されるサムスン製タブレットは今回が初めてだ。そういった意味で画期的な製品とも言える。

 8.4インチモデルと10.5インチモデルの2種類が用意されるが、日本ではいずれもWi-Fi版のみ。グローバルで発表されたLTE版は用意されないが、今後、国内キャリアに採用されてキャリアから販売される可能性もありそうだ。

チップセットはオクタコアの「Exynos」を採用!

 グローバルでは採用チップセットとして、クアルコム製の2.3GHz駆動のクアッドコア「Snapdragon 800」と、サムスン製の1.9GHz+1.3GHz駆動のオクタコア「Exynos 5 Octa」の2種類のモデルが発表されているが、今回の日本版は、合計8コアとなるオクタコアのExynosを採用している。

 「Exynos 5 Octa」はサムスン製のARM互換チップセットだ。高速駆動用クアッドコアと低速駆動用クアッドコアが組み込まれていて、負荷状況に応じて切り替わる仕組みになっている。動作するのは高速クアッドコアと低速クアッドコアのどちらかで、すべてのコア、つまり8個のコアが同時に動作することはなく、実質的にはクアッドコアとも言える。

 モバイル向けでもパソコン向けでも、最近のプロセッサは負荷に応じてクロックスピードを可変させる機能を持っているが、高速性能を重視して設計されたプロセッサは、電力消費の面で低速稼働時の“燃費”は必ずしもよくない。だから高速性能を重視したV型12気筒エンジンと低速での燃費を重視したスーパーカブを場面ごとに使い分けしよう、というわけだ。

 実際のところ、スマホやタブレットのプロセッサが最大クロックスピードで稼働する瞬間はそれほど多くない。一般的に、最大クロックスピードで稼働し続けると、たいてい背面とかがヤバイくらい発熱するが、それもシーンとしては高負荷な3Dゲームをプレイしているときくらいだ。スマホとタブレットの主な用途であるWebブラウジングやメール、SNSアプリなどはけっこう低負荷なので、低負荷時の燃費性能向上は非常に重要というわけである。

薄くて軽いボディ

 GALAXY Tab Sの最大の特徴は6.6mmという薄さだ。8.4インチ、10.5インチの両モデルともに6.6mmである。

GALAXY Tab Sの右側面(長辺側)

 今回借りている8.4インチモデルの大きさは212.7×125.4×6.6mm、重さは294gとなっている。たとえばiPad mini RetinaディスプレイモデルのWi-Fi版が331gなので、それよりも1割くらい軽い。手に持って比べてみれば、「軽い!」と確実に体感できるくらいの差だ。デザインとしては短辺側にホームボタンがあり、縦長画面が基本となっている。

 一方、試用したモデルではないが、10.5インチモデルの大きさは247.3×177.25×6.6mm、重さは465g。iPad AirのWi-Fi版は469gなので、こちらはほとんど同等。10.1インチのXperia Z2 Tabletが266×172×6.4mmの426gなので、そちらと比べるとGALAXY Tab Sは長辺側が短く、重さはちょっと重い。こちらは長辺側にホームボタンがあり、横長画面が基本となっている。

 スピーカーは両モデルともに短辺側、つまり横長画面にしたときの左右側面に搭載されている。動画を見るときのステレオ音声を重視した配置だ。背面カバーは「GALAXY S5」などのように取り外しはできない構造で、カードスロットなどは側面にある。

左側面
下端

 背面はつや消し仕様で、ドットパターンがあるGALAXY S5と同じデザインになっている。これは、今年のサムスン電子のスマホ・タブレットにおける共通のデザインテーマのようだ。

 新しい点として、背面には純正カバーを取り付けるための穴が付いている。カバー側には衣類のボタンのようなものが付いていて、それをGALAXY Tab S側の凹型の穴に「ポチッ」とハメ込むことで、カバーを固定する構造だ。ちなみに今回は試せていないが、純正カバーを付けると、カバーの開閉に合わせてスリープする仕様にもなっている。

背面
背面に予め設けられた純正カバー用の取付穴

Super AMOLEDディスプレイ

「Super AMOLED」を搭載

 GALAXY Tab Sの最大の特徴は、サムスン電子が誇る有機ELディスプレイ「Super AMOLED」を搭載していることにある。明るさや発色に優れるため、動画や写真はもちろん、屋外で地図を見るといった用途にも向いているという。

 発色の良さは、好みなどもあり、個人の感性に左右される微妙な部分でもあるが、例えばiPad mini RetinaディスプレイモデルとGALAXY Tab S(8.4インチモデル)を並べ、同じ画像を表示させると、明らかにGALAXY Tab Sの方が鮮やかだと感じられる。これまで筆者はiPad miniを使っていて、色彩表現に不満を感じたことはなかったが、GALAXY Tab Sと比べたとき、ここまで差があることに驚かされた。

 GALAXY Tab SはSuper AMOLEDのデバイスとしての発色の良さに加え、色調補正機能がOS自体に組み込まれている。モードは「標準」と「AMOLEDシネマ」と「AMOLEDフォト」の3つで、ギャラリーやビデオ、ブラウザといった特定のアプリ実行時に自動的に切り替わるモードも用意されている。

 この補正機能、けっこう効果が強く、「フォト」や「シネマ」に慣れてしまうと、「標準」に戻したときに色褪せて感じてしまうくらいだ。しかし「標準」の状態でも液晶より色鮮やかに感じられるのだから、Super AMOLEDの実力はたいしたものである。

iPad mini Retinaディスプレイモデル(左)とフォトモードのGALAXY Tab S(右)で同じ写真を表示したところ

 ディスプレイの解像度は2560×1600ドット。アスペクト比は16:10となる。動画配信サービスでも最近のタイトルなら16:9が多いので、その場合は若干上下が余ることになる。一方、電子書籍を縦向きで読む時はスマートフォンなどより少しだけ画面の細長さが緩和されて読みやすい。コンパクトデジタルカメラで撮影した4:3の写真を表示すると画面の一部は余るが、レンズ交換カメラなどの3:2の写真はキレイにおさまる。

 解像度的には2560×1600ドットと、フルHDよりも大きくなっているが、正直に言って筆者の肉眼ではフルHDとの差はわからない。また、解像度が増えているからといってアプリの互換性に問題が生じたり、処理が重たいと感じることもなかった。

アプリは基本アプリ+サムスンアプリ

 サムスンのホームアプリや通知パネルはオーソドックスな作りなので使いやすい。設定画面はタブレットらしく2ペイン表示だが、タブでさらに4つに分類されているので、1ページの項目数が多すぎて困るという場面も少ない。ただし目的の項目がどこに分類されているか迷うことはある。

 ホーム画面は「キッズモード」という子ども向けモードにも切り替えられる。マルチユーザーにも対応しているので、家族で共有するとき、子どもにも使わせやすい。

ホーム画面
タブで整理された設定画面
ホーム画面の左側にFlipboardベースのニュース画面が表示される

 ホーム画面を左にスクロールさせていくと、ニュースや新着情報などを表示させる専用画面が表示される。この画面のニュースはプリインストールされている「Flipboard」と連携しているようで、タップすると「Flipboard」が起動する。

 グローバル版ではここに新しい雑誌配信サービス「PAPERGARDEN」や動画配信とテレビを融合した「Samsung WatchON」などが表示されていたが、日本版には存在しない。PAPERGARDENは、いまのところ日本では提供されないようだ。

マルチウィンドウ利用時

 ほかのGALAXYシリーズ同様に、画面を2分割し、2つのアプリを同時に表示するマルチウィンドウ機能も搭載する。どのアプリでも使えるというわけではないようだが、Facebookアプリなどもマルチウィンドウで起動できた。実用性はかなり高そうだ。

 対応するGALAXYシリーズのスマートフォンの画面をミニウィンドウとして表示させて遠隔操作する「SideSync 3.0」にも対応する。スマートフォン側の対応機種は限られるが、ファイルの受け渡しや音声通話なども行えるのが面白い。

音声コマンド機能のSボイス

 キャリアモデルではないので、キャリアのサービスアプリは搭載されていない。一方で独自アプリとしては、「Sボイス」「Samsung Apps」「SideSync 3.0」「Remote PC」「Smart Remote」「Sプランナー」「マイファイル」などが搭載されている。意外と数が少なく、アプリケーション画面は2ページのみ。どちらかというとシンプルだ。

 今回日本で発売されるGALAXY Tab Sは、ハードウェアはグローバル版と共通するようだが、ソフトウェアは日本独自仕様のようだ。ニューヨークで開催された発表会で展示されていたグローバル版では、さまざまな言語設定が用意されていたものの日本語は搭載されていなかった。逆に今回試用した日本版は、日本語と英語、韓国語しか搭載されていない。

 ソフトウェアが日本独自だと、グローバル版と同時にOSアップデートが提供されるかどうか心配になるが、今回はキャリアを通さないモデルなので、キャリアによる検証工程がなく、サムスン側としてもアップデートは提供しやすい環境にあると推測できる。現時点ですでに最新のAndroid 4.4を搭載しているが、今後もアップデートの提供を期待したい。

指紋認証とマルチユーザー機能

 GALAXY Tab Sは指紋認証機能に対応している。GALAXY S5同様にホームキーにセンサーが内蔵されており、ホームキー上で指をスライドさせることで指紋を読み取る。パターン入力やパスワード入力の代わりとしてロック解除に使え、慣れると画面を見ずに操作できて便利だ。

 精度や認識速度も悪くない。GALAXY S5の場合、指紋センサーの位置の都合から片手だけではちょっと使いにくかったが、GALAXY Tab Sはほぼ両手で持って使うので、センサーに諮問を読み取らせる際にも問題を感じることは少ない。

指紋認証センサ内蔵のホームキー
ロック画面の右上にユーザー選択アイコンが表示される

 GALAXY Tab Sはマルチユーザー機能にも対応している。ロック解除時にユーザー名を選択する形式で、利用中はそのユーザーに割り当てられたデータエリアにしかアクセスできない。たとえばどのユーザーもGmailアプリを利用可能だが、利用できるのは各ユーザーが登録したGoogleアカウントに限定される。また、ホーム画面などもユーザーごとに異なり、アプリのインストールもユーザーごとに行う必要がある。

 ただしmicroSDは全ユーザーが参照できるなど、完全にプライバシーが守られるわけではない。家族に見られたくないお宝画像の管理には引き続き注意が必要だ。

 指紋認証とマルチユーザーの両方を設定していても、ロック解除時には手動でユーザーを選択し、それから指紋を読み取る。ここは指紋を読み取るだけでユーザー識別もして欲しかったところだ。

魅力十分なタブレット。サムスンの今後の展開にも期待

 Androidタブレットもさまざまな製品が登場しているが、その中にあってもGALAXY Tab Sはディスプレイの美しさや指紋認証など、GALAXY Tab Sならでは、という特徴を備えている。価格帯的にはiPadやWindowsタブレットと並ぶが、それらと比べたときにも十分に魅力的な特徴だ。

 製品自体も魅力的だが、サムスンがこれをキャリアを経由せずに発売することにも注目したい。サムスンのタブレットの提供方法としては日本では初の試みとなるわけだが、今後もこの流れが継続して欲しいと思うところだ。

 最近はGoogleのNexus、アップルのiPhone、ファーウェイのAscendなど、大手メーカーがSIMロックフリーの端末を投入するケースが増えている。今回のGALAXY Tab SはWi-Fi版のみだが、今後はLTE版の投入にも期待したいところ。もちろんサムスンにはGALAXY Cameraや低価格スマホなど幅広いラインナップがあるので、そうした製品投入も期待したい。

(白根 雅彦)