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もしものときに安心の備え、iPhone向け補償サービスってどんなもの?

もしものときに安心の備え、iPhone向け補償サービスってどんなもの?

3キャリアのサービスをチェック

 スマートフォンは壊れやすい。常に持ち歩くだけに、落とす、踏む、水に濡らすなど、ちょっとしたミスで壊れてしまう可能性がある。多少のことならば使い続けられるかもしれないが、場合によっては、指先の怪我を招く、あるいは発火のリスクもある。故障したときは速やかに修理するべきだが、修理代金もバカにならない。

 たとえばiPhone 6 Plusの修理代金は、最大で3万5800円(保証対象外の場合)になる。こうした金額を目にすると、「まだ使えるなら次の機種変更までこのままで……」という気持ちになることもわからなくはないが、繰り返しになるが怪我などの危険もある。あるいは、修理しておけば、機種変更後、中古で売却するときの価値も上がる。つまり、修理を避けるのは得策とは言いがたい。

 今回は、最近発売されたiPhoneにフォーカスして、万が一のときの修理代を軽減してくれる、“保険”のような補償サービスをチェックしてみよう。なお、本稿の金額表記は税抜きだ。

標準では1年間のメーカー保証、保証対象外の修理は有償

 iPhoneシリーズは、標準でメーカー保証サービスが利用できる。ユーザーのせいではない故障や初期不良、部品の耐久性不足といった事象に対して、1年間、保証が付いている。保証対象であれば、無償でサポートを受けられる。

 ただし、ユーザーによる過失で故障した場合、あるいは分解した場合、非正規の修理を受けた場合、不正な改造をした場合での破損は、保証対象外(Out Of Warranty、OOW)となり、有償の修理サービスしか利用できない。たとえば「落として割れた」、「水が浸入して壊れた」などは修理サービスの対象だ。その価格は、画面損傷の場合で、iPhone 6が1万1800円、iPhone 6 Plus/5s/5c/5が1万3800円などとなる。

機種画面損傷バッテリー交換その他
iPhone 61万1800円8400円3万1800円
iPhone 6 Plus1万3800円3万5800円
iPhone 5s2万8800円
iPhone 5c
iPhone 5

 その他の修理の場合、たとえば一番高価なiPhone 6 Plusをお尻のポケットに入れたまま、力一杯座って曲げてしまうと、3万5800円と、シビれる修理代になる。よくある画面損傷については、iPhone 6だけ若干安いが、それでも1万円以上、という価格帯だ。そして修理にかかる時間は約1週間だが、交換品を先に送ってもらう有償サービス「エクスプレス交換サービス」(3300円)も用意されている。エクスプレス交換サービスでは、故障品を手元に残したままで、アップルから交換品となる新しいiPhoneが送られてくる。壊れたiPhoneが操作できる状態であれば、使えない期間がほとんどなくせるサービスだ。

 画面割れなどについては、安価に修理を行なうショップもあるが、そういったところの多くは非正規修理プロバイダーだ。非正規修理は電波法に抵触する恐れがあり、さらに非正規修理自体が保証外となる原因になるので注意しよう。

修理代金が安くなるアップル純正の「AppleCare+」

 アップルが提供する保証サービス「AppleCare+」(※関連ページ)に加入すると、保証期間が2年間に延長され、さらに有償修理サービスが一律7800円(税込、最大2回まで)で利用できるようになる。ついでに標準サービスでは90日間までの電話サポートも2年間に延長される。前述のエクスプレス交換サービスも手数料無料で利用できる。

 AppleCare+は、アップルストアもしくは各キャリア経由で加入できる。基本的にはiPhone購入と同時に加入するものだが、購入から30日以内なら、アップルストアで加入できる。ただし加入時にiPhoneが壊れていたりすると利用できない。

 キャリア経由での加入は、iPhone購入と同時に行う必要がある。その利用料は、各キャリアともに分割払い。NTTドコモは392円×24カ月(9408円)、auは初月200円で2~24カ月目が400円(9400円)、ソフトバンクが423円(税込)×24カ月(税込10152円=税抜9400円)と、合計金額はほぼ9400円(税抜)で統一されている。

 なお、AppleCare+では紛失や盗難に対する補償はない。ただし、これから紹介する各キャリアのサービスで、紛失や盗難に対する補償も提供されている。

補償の幅広さと先出し交換が嬉しいドコモの「ケータイ補償サービス」

 ドコモはiPhoneとiPad向けに独自の補償サービス「ケータイ補償サービス for iPhone & iPad」(※サービス案内)を提供している。こちらは月額600円(iPhone 5cのみ月額500円)で、初回申込時は31日間、無料だ。2年間という利用期間が設けられている「AppleCare+」と異なり、期間の限定はなく、加入し続ける限り補償を受けられる。

 補償内容はAppleCare+に似ている。対象は水濡れ、全損、紛失、盗難、破損、故障、購入から1年を超えた自然故障(1年以内は標準保証内)で、1回7500円で最大2回まで、修理や交換などのサービスを受けられる。AppleCare+に比べると、1回のサービス料金が若干安いほか、紛失や盗難にも適用されることが大きなポイントだ。

 ケータイ補償サービスでは、アップルのエクスプレス交換サービスと同様の、交換品先出し型サービスが利用できるのも特徴となっている。申し込むと1~2日以内に指定した住所に交換品が送られてくる。その後、手元の故障品を送付すれば良い。iPhoneが使えない期間を最小限で済ませられる。

 ドコモのケータイ補償サービスに加入できるのは、当然のことながらドコモで購入したiPhoneで、なおかつドコモプレミアクラブ会員(無料)だ。ドコモショップもしくはドコモインフォメーションセンターで加入でき、購入後も14日以内なら加入できる。

 ドコモのサービスは、AppleCare+と同時に使うものではなく、AppleCare+の代わりに加入するものとなっていて、両方同時に加入することはできない。

「紛失補償オプション」と「auスマートパス」の2種類を用意するau

 auの場合、iPhoneの故障時は、基本的にAppleCare+の利用が想定されている。「auスマートパス」に加入していると、iPhoneの故障時の修理代金が最大7800円(税込、購入から2年間で2回まで)、補償される。auスマートパス会員であれば、普段はコンテンツやクーポンなどを利用し、万が一の際には、Apple Care+で修理をして、その代金をまかなう、という形だ。なお、Apple Care+の加入は必須ではなく、たとえばAppleCare+なしだと、iPhone 6の画面破損時の修理代金は1万2744円(税込)なので、この場合の自己負担は4944円(税込)で済む。

 そして「AppleCare+」だけではサポートできない紛失・盗難を補償するサービスとして、「紛失補償オプション」(※サービス案内)を提供している。これはAppleCare+とセットで利用するサービス。料金はAppleCare+込みで初回323円、以降552円(23回)の合計1万3019円。iPhone購入と同時にしか加入できない。また、補償は24カ月で終了する。

 紛失補償オプションでは紛失や盗難が発生してiPhoneを再購入するとき、「再購入補償金」として2万3148円の補償金を得られる。3年以上auで契約しているユーザーだと補償金は2万7778円に増額される。補償金は振り込みで受け取れる。

 交換対応ではないことがドコモのサービスとの大きな違いだろう。再購入時には、それまで使っていたiPhone(損失機)の毎月割が適用されなくなり、その端末の「実質負担額」が当初の予定より高くつくので注意が必要だ。たとえばiPhone 6の64GBモデルを購入(機種変更)から1年で紛失して再購入した場合、毎月割2410円×12カ月分、28920円分の割引が消えてしまう。紛失・盗難のタイミングによっては、自己負担の金額はかなり増減するというわけだ。また、当然のことながら、再購入時に新機種が発売されていても、在庫不足などでない限り、それまで使っていた同一機種を購入する必要がある。

幅広い保証に対応する「あんしん保証パック(i)」

 ソフトバンクは「あんしん保証パック(i)」(サービス案内)というサービスを提供している。料金は月額500円で、iPhone購入時に同時加入すれば1カ月無料だ。電話によるサポートサービス「ケータイなんでもサポート」がセットになった「あんしん保証パック(i)プラス」(月額600円)もあるが、ここではあんしん保証パックi)について解説する。

 あんしん保証パック(i)では、故障時(破損、水濡れ、電池消耗など)に対し、アップルの正規修理、あるいは全損、盗難、紛失時の再購入を利用すると、一定の補償を受けられるという形。ドコモのサービスと同じく、AppleCare+との違いとしては、24カ月をすぎても加入していれば補償を受けられるという点だ。

 補償の割合は機種ごとに異なる。故障、破損、水漏れ、電池消耗の場合は、iPhone 6は87%、iPhone 6 Plusは90%、iPhone 5s/5cは85%、iPhone 5/4s/4は90%が補償される。全損、盗難、紛失時の再購入では、店舗ごとに設定された会員価格で購入できる。たとえばAppleCare+に加入していない状態で、iPhone 6の画面が割れてしまった場合、アップルの修理代金は1万1800円なので、その87%にあたる1万266円が補償され、実質的な自己負担は1534円となる。

 補償額は、毎月の利用料への割引という形で還元され、現金で付与されるわけではない。また全損・紛失・故障時の補償は、再購入時の値引きという形式になる。それまで使っていた端末(損失機)に対する月月割はそのまま継続される。

 なお、AppleCare+に加入していると、どんな修理も一律7800円になるので、補償額は6786円、実質的な自己負担は1014円になる。金銭面ではAppleCare+と同時加入するメリットはあまり多くはないだろう。

 なお、AppleCare+なしだと「エクスプレス交換サービス」が有償になり、その代金は補償範囲外だ。ソフトバンクショップで代替機を借りることも可能だが、ショップによっては機種の在庫がなかったり、古い機種しか用意されてなかったりする可能性があるだろう。

【お詫びと訂正 2014/9/29 18:48】
 記事初出時、全損などでの端末再購入で、それまで使っていた端末への月月割は「消える」としておりましたが、誤りでした。正しくはそれまでの月月割、割賦の残債はそのまま引き継がれ、新たに会員価格で端末を購入するというものです。お詫びして訂正いたします。

転ばぬ先の補償サービス

 スマホは壊れやすい。しかし故障したまま使うのは危険なので、故障したらすぐに修理に出すべきだ。そしてすぐに修理に出すにあたって、補償サービスに入っていると、かなり楽になることがおわかりいただけたのではないだろうか。金銭的な補償ももちろんだが、AppleCare+やドコモのような交換品先出し型サービスならば、iPhoneが使えなくなる期間を最小限にできるし、代替機と違ってデータの移し替えが1回で済むのもありがたい。

 どの補償サービスに入るかは、どのキャリアのiPhoneを使うかによるが、買い換えと同時にMNPも検討しているならば、料金やネットワークだけでなく、補償サービスも見てMNP先を選ぶのも良いかも知れない。

 各社のサービスで最も大きな違いは、交換用の端末を先に届ける“先出し交換”と、盗難・紛失への対応だ。特に盗難・紛失については、auやソフトバンクは補償を受けて新たな端末を購入する形となる一方、ドコモは交換という形になる。またauの「auスマートパス」による補償はユニークな取り組みと言える。

 注意するべきポイントは、いずれの補償サービスも加入できるタイミングが限られていることだ。iPhone購入と同時にしか加入できない補償サービスも多いし、AppleCare+でも購入から30日以内に限定されている。iPhone購入を検討している人は、まずそのことにも気をつけよう。

 何にしても、補償サービスは「転ばぬ先の杖」である。補償サービスを活用するような状況になるより、そうならない方がベターだ。補償サービスに入ってもいなくても、まずはスマートフォンを壊さないように使うことを心がけよう。

白根 雅彦