レビュー

「iPad mini 4」ファーストインプレッション

堅実かつ嬉しい進化の小型iPad

iPad mini 4

 9月10日未明(アメリカ西海岸時間9月9日)、新iPhoneとともに「iPad Pro」と「iPad mini 4」も発表された。3D Touch対応の新iPhoneやシリーズ最大のサイズのiPad Proが注目を集め、プレゼンテーションでもiPad mini 4は一瞬触れられただけで、いかにもマイナーチェンジといった紹介だった。

 iPad mini 4の発表時、発売日はとくに明言されなかったが、筆者は、Apple Storeで注文が可能になった最速のタイミングで予約した。最新のiOS 9がプリインストールされる関係からなのか、iOS 9のリリースとほぼ同時、9月17日の午前中には自宅に到着した。ちなみに各キャリア版は今週末に発売される見込みで、NTTドコモは20日に発売するとアナウンスしている。

 iPad mini 4は確かにマイナーチェンジである。しかし、使い勝手に大きく影響する要素がいくつか強化されている。

 今回は「iPad mini 2」「iPad mini 3」から変わったポイントを中心に、ファーストインプレッションをお届けする。筆者が購入したのはiPad mini 4のWi-Fi+Cellularモデル、SIMロックフリー、64GBのスペースグレイである。

薄く、軽くなった!

左のiPad mini 4の方が右のiPad mini 3より若干大きいが、見分けはほとんど付かない

 iPad miniシリーズは、Retinaディスプレイを搭載するiPad mini 2とiPad mini 3では大きさ・重さが変わっていなかったが、iPad mini 4で薄型化・軽量化している。

 大きさは従来の200×134.7×7.5mmから、203.2×134.8×6.1mmになった。面積はやや増えたが、薄さは1.4mmの薄型化と、約2割も減っている。

 重さについては、341gが304gになった(Wi-Fi+Cellularモデルの場合)。こちらも1割以上に相当する37gも減っている。37gというと、Lサイズの鶏卵の半分くらいだが、モバイル機器ではバカにならない重さでもある。

こうしてみると、iPad mini 4(左)の方が明らかに薄いことがわかる

 両方のモデルを左右の手で持ってみると、重さ薄さも違いを実感できるレベルだ。iPad mini 4に慣れてしまうと、iPad mini 2/3が分厚く感じられる。

 iPad miniシリーズのくらいのサイズだと、「左手で持ち、右手でタップ操作」といった利用シーンが多い。幅は135mmで、男性の手なら片手でガシッと掴むこともできる。そうした体勢で長時間、電子書籍を読んだりするとなると、37gの軽量化は影響が大きいはずだ。

iPad mini 4(上)ではスライドスイッチがなくなっている

 薄型化の影響か、側面のボタン・スイッチ回りが変更され、回転ロック兼消音切り替えのスライドスイッチが省かれている。iPad Airシリーズでも、iPad AirからiPad Air 2に進化するタイミングでスライドスイッチがなくなり、iPad Proにも搭載されていない。iPadシリーズにおいては、スライドスイッチは無くなる方向性ということだろう。

Smart Coverは新製品に

 薄型化により、初代iPad miniから3世代にわたって仕様が共通で“使い回し”が可能だった“お風呂のフタ”ことSmart Coverは、iPad mini 4で新しいものになっている。これまでのカバーを付けようとしても、吸着力が弱く、開いたときの自動点灯もない。

 この仕様変更は手元に届くまで気がつかず、Apple Storeに買いに行かなければ、と思った一方で、これを期にSmart Coverをやめるのもアリかな、とも思っている。

 というのも、旧Smart Coverは約70gと、それなりの重さがある。新Smart Coverの重さは分からないが、これを付けると、せっかくの軽量化が無駄になるのは、と思い始めたのだ。

 また、Touch ID非対応機種では、「電源ボタンかホームボタンを押す→パスコード入力」の2手順が「Smart Coverを開く→パスコード入力」になるだけで、手順が増えることはなかったが、Touch ID搭載機種だと、「ホームボタンを押す」だけの1手順が「Smart Coverを開く→パスコード入力」となり、手順が増えてしまうのも気になるところだ。

iOS 9で表面化したA7チップとA8チップの間の超えられない壁

 搭載するプロセッサはA8チップとなっている。iPad mini 2/3ではA7チップだったので、ここも明確に強化されたポイントだ。

 ただ、A8チップは最新世代ではなく、昨年発売のiPhone 6/6 Plusがすでに搭載している、一世代前のものだ。同じく昨年発売のiPad Air 2が搭載するA8Xチップより、性能はやや劣るとされている。

 アップルが公表するスペックによると、A7に比べ、A8の性能はCPUが1.3倍、GPUが1.6倍となる。A8XのCPUは1.4倍、GPUは2.5倍なので、A8Xと比べるとGPU性能でとくに差がついている。

 個人的な印象として、iOSデバイスは、よほど古いモデルに最新のOSやアプリを入れるケースでない限り、処理能力が足らないと感じることは少ない。最新のA9世代でないのは残念だが、A9やA8Xでないと遅くて困る、ということはまずないだろう。

Split View。対応アプリはまだ少ない

 しかしA7チップからA8チップに変更されたことは、iOS 9においては大きな違いをもたらしている。A7チップ搭載のiPadでは対応していない「Split View」という画面分割の新機能に対応しているのだ。

 Split Viewは、画面を分割し、2つのアプリを同時に表示する機能だ。似た機能に「Side Over」という機能があり、そちらはA7チップ搭載モデルでも対応するが、Side Overでは、メイン画面のアプリは一時的に操作できなくなる。それに対してSplit Viewは、2つのアプリを同時に表示し、どちらも操作できる。

 Split Viewは対応アプリでしか利用できないため、対応アプリが少ない現時点ではその真価は発揮されていない。しかし今後、対応アプリが増えていけば、Webや動画を見ながらさまざまなメッセージアプリを使う、といったことが可能になる。今までのiPadではできない使い方が可能になるので、この差は大きいと言えるだろう。

CellularモデルはTD-LTE対応

 従来通り、iPad mini 4にはWi-FiモデルとWi-Fi+Cellularモデルが用意されている。iPad mini 4のCellularモデルは通信方式にも変更があり、iPad mini 2/3が対応していないTD-LTE(日本ではWiMAX 2+とAXGPが相当)に対応した。ついでにバンド28(700MHz帯)のLTEにも対応している。

 国内でTD-LTEを使っているのは、auとソフトバンクのネットワークだが、iPad mini 4が使うネットワークの性能としては、ドコモとauでは大差はないようだ。たとえば8月17日13時ごろの渋谷近辺では、ドコモ回線で下り40Mbps/上り12Mbps前後、au(mineoのSIMカード)で上下ともに33Mbps前後と、いずれも十分すぎる速度が出ていた。

 ドコモのネットワークは1つの帯域の幅が広い傾向にあり、キャリアアグリゲーションやTD-LTE無しでも速度が出やすく、結果としてiPad mini 2/3と速度はあまり変わらなかった。

 一方、au(mineo)回線を使う場合、TD-LTEの影響が大きいようで、TD-LTE非対応のiPad mini 2/3では、上記と同じ環境でも上り11Mbps/下り5Mbps程度しかでなかった。iPad mini 4の恩恵は、auネットワークではかなり大きいようだ(ソフトバンクは未検証)。

SIMフリー版をMVNOで運用するなら

auのLTEデータプリペイドの手続き画面

 安価にSIMフリー版を運用するならば、MVNOを利用するのが手っ取り早い。一方、キャリア版はSIMカードを挿すだけで自動的にネットワークの設定が完了し、MVNOで度々みられた、OSアップデートでいきなり接続できなくなる可能性が低いといったメリットがある。auが提供するLTEデータプリペイドは、月間1GBで1500円(税別)と、MVNOに比べて高めだが、iOSの「設定」からチャージ手続きができるなど、使い勝手の良さも魅力だ。

 なお、iOS 9では接続設定の仕様が変更されたようで、古い形式のプロファイルでモバイルネットワークに接続できないという報告が国内のMVNO各社のWebサイトなどにあがっている。これに対し、一部のMVNOではiOS 9で利用できるプロファイルの配布を開始している。SIMフリー版をMVNOのSIMカードで運用したいときは、MVNOの対応状況を必ず確認しておこう。

 ちなみに、auのネットワークも使うmineoは、iOS 9が公開された9月17日午前2時より検証を開始し、その結果をリアルタイムでブログに掲載するという熱い対応をみせた。iOS 9が動作するiPad Air/Air 2/mini 2/mini 3については、mineoの回線の動作検証結果を公表している。本稿執筆時点でiPad mini 4の検証はまだのようだが、少なくとも筆者の環境では動作している。

 前述の通り、auネットワークにおいてiPad mini 4はかなり高速化しているので、mineoがau回線でiPad mini 4を正式にサポートすれば、iPad mini 4のユーザーにとって強力な選択肢になりそうだ。

目立った変化はなくても価値のある進化を遂げた

背面から見てもほぼ同じ。ちなみにiPad mini 4は左

 iPad mini 3から比べると、iPad mini 4は薄型化と軽量化、CPUの強化、TD-LTE対応による通信速度向上が主な変更点だ。

 目立つ新機能がなく、「あまり変わらないね?」と言われそうだが、iPad miniシリーズを愛用している筆者としては、「とんでもない! これこそ求めていたものです!」と反論したいところだ。よくわからない新機能より、軽量化やSplit View対応、通信速度向上などの手堅い強化の方が、よほどありがたいと感じている。

 ただ、iPad mini 2/3からの買い換えが必要かというと、iPad mini 2/3も十分な性能を持っているので、無理をして買い換える必要はないかな、とも感じられる。iPadシリーズは、スマートフォンよりパソコンに近く、使い道によっては2年3年と長く使い続けられるデバイスだからだ。一方で、下取りを考えるなら、iPadシリーズは中古買取価格も高い傾向があるので、短い頻度での買い換えもそれほど悪くないと思える。

 iPad miniシリーズで継承される8インチというサイズ感は、片手で持つスタイルでは、10インチクラスよりも断然使い勝手が良い。電子書籍であれば、マンガを見開きで見るというケースでない限り、8インチサイズで十分だ。逆に卓上で使う、両手で持つという利用スタイルがほとんどならば、iPad Airシリーズなどの10インチクラスのタブレットの方が適している面がある。

 スマートフォンも大型化している中、8インチのタブレットは中途半端とも言われがちだ。しかしこのサイズだからこそ最適な使い方もある。この大きさに価値がある人にとって、手堅く進化したiPad mini 4は有力な選択肢となるだろう。

(白根 雅彦)