レビュー

ドコモ・au両対応のmineoで「arrows M02」を試す

ドコモ・au両対応のmineoで「arrows M02」を試す

防水・耐衝撃、おサイフケータイ対応のダークホース

 富士通からSIMロックフリーのAndroidスマホ「arrows M02」が登場した。家電量販店や各MVNOから販売される。

 最大の特長は、VoLTEに対応し、ドコモだけでなくauのネットワークでも使えるというところだ。もちろんMVNOでも利用可能。こういった仕様のスマホは珍しく、ほかにはiPhoneくらいしかない。

「arrows M02」。Pinkはmineoのオリジナルカラーとなる

 価格はiPhoneよりもかなり安く、たとえばmineoで購入すると3万2400円となる。この時点で家電量販店などより安かったりするのだが、さらにmineoでは2015年11月18日(発売日前日)までに予約し、2016年1月20日までに購入した場合はAmazonギフト券1万円分、予約なしで2016年1月20日までに購入した場合はAmazonギフト券3000円分がプレゼントされるキャンペーンも実施している。元が安いだけに、けっこう大きなキャンペーンだ。

 今回はこのarrows M02について、mineoのドコモ網サービスとau網サービスを組み合わせてレビューをお届けする。

スペック控えめながら防水・耐衝撃、おサイフケータイ対応

 arrows M02は、スペック面を見ると、ハイエンド機種に比べるとやや抑えめのミドルレンジのスマホとなる。

 プロセッサーはSnapdragon 410(MSM8916)で、1.2GHzのクアッドコア。ベンチマークアプリで確認すると、クロック数は「200.0~1209.6MHz」となっていたので、上限はクロックダウンされていないようだ(高速プロセッサーだと消費電力や発熱のためにクロックダウンされることがある)。

 プロセッサーもOS(Android 5.1)も64bit仕様。システムメモリー(RAM)は2GBで、内蔵ストレージは16GB。よほど重たいゲームアプリを使うなどしない限り、2GHzクラスのモデルとの差は体感できないだろう。

ディスプレイサイズは5インチ
タスク切り替えの隣のボタンで画面表示が下にスライドする

 ディスプレイは5.0インチの有機ELで、解像度は1280×720ドット。フルHDではないが、こちらもよほど目が肥えていない限り、フルHDとの明確な差は感じられないはずだ。

 本体の幅は約69mm、重さ約149gと、5インチクラスのスマホとしては標準的なサイズだ。個人的には5インチくらいだと「片手で操作しにくいかな」と感じるが、arrows M02には画面表示を下にスライドさせるボタンがあるので、画面の上の方を片手でタップするのに困ることはない。

「おサイフケータイ」アプリ

 arrows M02はSIMフリースマホとしては珍しく、FeliCaにも対応している。おサイフケータイアプリがプリインストールされていて、各サービスのアプリを利用でき、楽天EdyやQUICPayなどの電子マネーに対応している。モバイルSuicaにはまだ対応していないが、JR側で確認が取れれば将来的に対応してくれる可能性もある。

 防水・耐衝撃仕様に対応しているのも、SIMフリースマホとしては珍しいポイントだ。落下や浸水で絶対に壊れないわけというではないが、壊れるリスクが小さくなるというだけでもありがたいところ。非防水のスマホだと利用を躊躇するような、小雨の中や料理中といった場面でも心強い。ちなみに、USB端子はキャップ付きだが、付属の卓上ホルダで充電できるので不便は感じないだろう。

標準の卓上ホルダ。乗せれば充電されるので地味に使いやすい

 このほかにも「伝言メモ」(端末内に音声を保存する留守番電話機能)や歩数計機能、日本語入力システムの「Super ATOK ULTIAS」など、富士通製ならではの細かい便利機能・アプリも多数搭載されている。

 残念ながら指紋認証センサーは搭載されていないが、プライバシーモードとパスワードマネージャーは搭載されている。とくにプライバシーモードは予測変換の切り替えや発着信履歴の非表示など、長年この機能に取り組んできた富士通ならではの細かい作り込みがポイントだ。

ドコモ・au両方のネットワークに対応

mineoのSIMカードを挿すと自動でアクセスポイント(APN)が設定される

 arrows M02はVoLTEにも対応し、ドコモ網・au網どちらのMVNOでも利用できる。SIMフリースマホでも、こうした仕様のモデルは非常に少ない。

 ちなみに今回レビューのためにお借りしたmineo販売のarrows M02の場合、mineoのドコモプラン・auプラン、いずれのSIMカードも挿すだけでアクセスポイントが自動設定された。頻繁にSIMカードを挿し替えてネットワークを切り替えたい人にも便利な仕様だ。

 対応バンドはLTEの2.1GHz(バンド1)/1.7GHz(バンド3)/900MHz(バンド8)/800MHz(バンド18/19/26)。ドコモ網ではバンド1/3/19が使え、バンド21(1.5GHz帯)が使えない。au網ではバンド1/18が使えて、バンド11(1.5GHz帯)が使えない。ちなみにソフトバンク+ワイモバイル網だとバンド1/3/8が使えるはずだが、ソフトバンク網のMVNOは現状存在しないので、arrows M02で使うことはあまりないだろう。

 3G通信はW-CDMAのみの対応なので、au網ではLTEのみという、最近のauのVoLTE対応Androidスマホと同じ仕様となる。CDMA2000 1xでの音声通話ができないので、山間部などでごくまれに「VoLTE非対応のau端末なら通話できるのに、VoLTE対応だから通話できない」というシチュエーションに遭遇する可能性があるが、都市部で暮らしている人の普段使いでは問題はないだろう。

 海外利用向けには、GSMにも対応している。SIMフリーなので、海外旅行時、現地のプリペイドSIMカードを使ったり、旅行者向けのローミング用SIMカードを使うこともできる。海外ではLTEどころか3Gすら怪しい場所もあるので(国によっては地下鉄がGSMのみということも)、GSM対応は重要なポイントだ。

SIMはトレイ形式でピンなどなしに抜き差しできる

 ドコモとau、どちらでも使えるのが最大の特長だが、どちらで使った方が良いかは、使う環境などによるので、決めるのは難しい。

 mineoのドコモプランとauプランのSIMカードで通信速度を測定したところ、ドコモプランでは下り22.6Mbps・上り22.4Mbps、auプランでは下り14.1Mbps・上り19.5Mbpsだった。筆者の自宅周辺(渋谷)では、ややドコモ網の方が速度が出る傾向があるようだ。

 本来はau側でももう少しスピードが出てもよさそうだが、arrows M02はTD-LTE(WiMAX 2+)に対応していないので、au網の良さが発揮できていないとも言える。また、キャリアアグリゲーションに対応していないので、1帯域で最大150Mbpsの1.7GHz帯があるドコモが優位になっているのかも知れない。とはいえ、大きな差ではなく、環境によってどちらが速いか、安定するかは変わってくるようなレベルだ。

 実際に使ってみて、通信速度や安定性に不満があれば乗り換える、という使い方ができるのも、arrows M02を使うメリットの一つだろう(乗り換えたからといって改善するとは限らないが)。そういった使い方ならば、2000円(税抜)の手数料だけでドコモプラン・auプランを気軽に乗り換えられるmineoは非常に使いやすい(SIMカードの郵送を待つ必要あり)。

 また、やや特殊な使い方かもしれないが、いくつかのMNO・MVNOを契約している人は、サブ端末としてarrows M02を持っておくと、ドコモ網・au網どちらでも使えるので、余ったSIMカードを挿して運用しやすい。メインとサブの2端末を持ち歩く人で、それぞれの回線をドコモ網・au網で分けるときも、arrows M02ならばメイン・サブどちらでも使えて便利だ。mineoのパケットシェア契約にしておけば、最小限のコストでこうした環境を実現できるので、より確実にモバイルネットワークに接続したい人にはおすすめだ。

いろいろな場面でいろいろな使い方ができる

 arrows M02は「ドコモ網・au網どちらでも使える」「防水・耐衝撃」「おサイフケータイ対応」という、ほかのSIMロックフリーのAndroidスマホにはない特長を持っている。

 Android端末として見ると、ホーム画面はメーカー独自ではあるものの、オーソドックスなデザインなので、Android初心者でも操作に迷うことはないだろう。その一方で日本メーカーならではの細かい機能もしっかり搭載されているのもポイントだ。

arrows M02で初めて搭載された富士通オリジナルの「Leaf UI」はシンプルで使いやすい

 SIMフリースマホとしては、3万円台前半という価格は、決して激安というわけではないが、スペックとのバランスを考えると、かなりコストパフォーマンスが良い端末だと思う。とくにmineoと組み合わせると簡単にドコモ網・au網を切り替えられるというのは、ほかではなかなかマネできない、ユニークかつ便利なポイントだ。

 SIMフリースマホというと、特長に乏しい端末も多く、スペック表で見比べるしかなかったりするが、arrows M02はスペック表には表われない、ユニークな特長を持った端末である。MVNOへの移行を検討していて、新しいスマホが必要という人にとって、arrows M02とmineoは検討する価値のあるユニークな組み合わせだ。

白根 雅彦