レビュー

「VAIO Phone Biz」ファーストインプレッション

待望のContinuumはどこまで使えるのか

VAIO Phone Biz(VPB0511S)

 VAIOからWindows 10 Mobileを搭載したスマートフォン「VAIO Phone Biz」(VPB0511S)が発表された。発売は4月になる予定だが、開発中の端末をお借りできたので、注目機能の「Continuum」の使い勝手を中心にファーストインプレッションをお届けしたい。

Continuumの利用方法

Continuum

 昨年後半、Windows 10 Mobileを搭載したスマートフォンが何機種か発売されたが、それらではエントリークラスのチップセットが採用されており、どちらかというと低価格帯で、“まずはWindowsスマホのお試し用”という意味合いが強かったように思える。

 これに対し、先月末に出荷が開始されたトリニティの「NuAns NEO」や、今回ご紹介する「VAIO Phone Biz」の場合、ミドルクラスのチップセット「Snapdragon 617」(MSM8952)を搭載。これにより、「Continuum for Phone」という機能が利用できるようになった。

ScreenBeam Mini2 Continuum

 Continuumは、テレビなどの外部ディスプレイにスマートフォンを接続することで、デスクトップ版のWindowsのように利用できる機能だ。VAIO Phone Bizの場合、Actiontec Electronicsのワイヤレスディスプレイアダプター「ScreenBeam Mini2 Continuum」(税別9800円)を使い、HDMI端子があるテレビやPC用ディスプレイに接続して利用することになる。

 このアダプターで面白いのは、キーボードやマウスといった入力デバイスの接続方法。スマートフォン本体とBluetooth接続することも可能だが、映像をワイヤレスで飛ばすとなると電波干渉が気になってくる。同アダプターでは、給電用のmicroUSB端子にY字の分岐ケーブル(同梱)を繋ぎ、そこにUSBキーボードやUSBマウスを接続(USBハブも使用可能)することもできるので、本体との直接接続で遅延が気になる場合は、こちらの方法を試してみると状況が改善するかもしれない。

やっぱりキーボードとマウスが欲しい

Continuumアプリを起動する

 ディスプレイとアダプター、キーボード、マウスの接続が完了したら、Continuumのアプリをタップして起動。画面上のガイダンスに従って操作していくと、周囲のワイヤレスディスプレイの検索が始まるので、ここで利用するディスプレイアダプターを選択。数秒間の接続処理の後、ディスプレイにはデスクトップ版のWindows 10のような画面が表示されるはずだ。

画面の表示に従って操作することで、ディスプレイと接続

 この時、VAIO Phone Biz本体の画面はタッチパッドとして利用でき、マウスのポインターを操作できる。2本指でスクロールや右クリックといった操作が行えるなど、ある程度はこのタッチパッドでも操作できるが、ドラッグでの範囲選択などを行いたいたくなるExcelなどのアプリケーションを本格的に利用する場合は、やはりマウスが欲しくなる。

 キーボードも同様。本体側の画面操作で文字入力を行うことが可能だが、やはり本格的に使いたいならハードウェアとしてのキーボードが必要だろう。気を付けたいのはキーボードの設定で、一般的な日本語キーボードを接続する場合は、キーボードの追加で「日本語QWERTY」をダウンロードし、「日本語キーボード(106/109キー)」を選んでおこう。コピーやペーストといったキーボードショートカットも機能する。

VAIO Phone Biz本体をタッチパッドとして利用することもできる
ソフトウェアキーボードでの文字入力も可能

なんちゃってWindowsの世界観

とりわけExcelのようなアプリケーションは広い画面が生きる

 これで利用する準備が整ったわけだが、前述の通り、Continuumはあくまで「デスクトップ版のWindowsのように利用できる機能」であり、デスクトップ版Windowsと同等ではない。デスクトップと言っても、デスクトップ上にはファイルやフォルダーの類は置けないし、基本的に1つのアプリケーションが全画面を占有するので、マルチウィンドウで効率的に作業を進められるかというと、そうは行かない。やはり過度の期待は禁物なのだ。

 それでもExcelのようなアプリケーションの場合、5.5インチの小さな画面をタッチ操作でちまちま編集するのは本当に骨の折れる作業だ。それに比べると、一覧性が高いフルHDの広い画面をマウスとキーボードで操作するContinuumの方がはるかに効率的なのは間違いない。結局はユーザーが利用したいと思うアプリケーションの幅次第。Windowsストアのアプリケーションのラインナップが増えていけば、それだけ応用の可能性も広がる。

 なお、実際の利用にあたっては、遅延が発生してストレスを感じる場面に遭遇することもあった。Miracastで映像と音声を飛ばし、さらに入力デバイスとの通信もワイヤレス。その上でインターネット接続にWi-Fiを使うとなると、VAIO Phone Biz周辺だけでも2.4GHz帯と5GHz帯で多くの電波が飛び交う。これらの周波数帯を使用する機器が周囲に多ければ、干渉が起こり、遅延が発生する可能性が高くなる。仕組み上、仕方ないとはいえ、さまざまな電波が飛び交う現代のオフィスにおいて、これをみんなが使った場合にどうなるのか、一抹の不安を覚える仕様ではある。

 全くの余談になるが、今どきの国産4KテレビとPC用のディスプレイに接続してYouTube動画を再生するなどしてみたところ、前者の方がきれいに再生できることに気づいた。昨今のテレビの画像補間技術には驚かされるばかりだ。

本誌のトップページを表示。表示やスクロールの追従性は周囲の無線環境次第
YouTubeなどの音声はテレビ側から出力される

VAIOとマイクロソフトはユーザーの期待に応えられるのか

正面
背面

 さて、Continuumの話ばかりで終わってしまっても怒られそうなので、VAIO Phone Bizそのものについても触れておこう。スペックの詳細については、別途掲載のニュース記事を参照いただきたい。

削り出しのアルミボディの質感は高い

 デザインとしては、削り出しのアルミボディの質感は、PCのVAIOのそれを連想させる佇まい。プラスチック感があふれるWindowsスマートフォンのマーケットの中では、特異な存在とも言える。さすがに防水やMILスペックといったところまではサポートできていないが、頑丈(そう)なボディはビジネスシーンでの利用においては安心感につながっている。

 今回お借りできたのがまだ開発途中の端末ということもあり、現時点ではスリープからの復帰に少し時間がかかったり、Wi-Fi接続が不安定だったりするところもある。3GBのメモリー(RAM)を搭載しているというものの、他のWindowsスマートフォンと比べてより快適に操作できるかというと、正直なところ、そういう印象もない。こうした部分は、今後のチューニングで修正されることも想定されるので、最終的な評価は製品が発売されてからということにしたい。

SIMトレイにmicroSIMを乗せたところ。もう一方にはnanoSIMかmicroSDのどちらかを乗せられる

 最後に価格なのだが、本体が5万円台、アダプターが約1万円ということで、Continuumまできっちり使いこなしたいという場合には7万円近い出費が伴うことになる。昨今のミドルレンジのAndroidスマートフォンが3〜4万円で流通していることを考えると、Androidスマホ+スティックPCという組み合わせの方が幸せなのでは……という思いが筆者の頭をよぎった。

 期待感と現実との間のギャップがまだまだ大きいWindows 10 MobileやContinuumというプラットフォームをどう育てていくのか。VAIOにしても、マイクロソフトにしても、そんなユーザーの期待にしっかりと応えていってもらいたい。

(湯野 康隆)