iPhone 3GS 石川 温編

 2007年に「携帯電話を再定義する」と鳴り物入りで登場したiPhone。翌年、日本に上陸し、ソフトバンクモバイルの懸命なキャンペーンの成果もあって、足かけ2年で200万台に迫る台数が売れているようだ。

 特に今年夏に発売された「iPhone 3GS」によって、ユーザー層が一気に拡大したようにも見える。実際、街中で見渡しても、本当に多くのiPhoneユーザーを目にするようになった(都心部だけかも知れないが)。デジモノ好きの男性だけでなく、若い女性にもユーザーを拡大しているように思う。

 2007年にアメリカで発売された初代から3G、3GSと所有し続けているが、いまだに飽きずに毎日持ち歩いているケータイも自分としては本当に珍しい。メールやネット、アプリでゲームなど本当に使用頻度が高い。ここ最近は大手出版社の雑誌や民放ラジオ局のインターネットラジオも聴けるようになった。今後、大手メディアが真剣にiPhone向けにコンテンツを投入するようになると、さらに利便性が増しそうだ。

 iPhoneの強さは、やはりアップルという会社がデバイスを投入するだけでなく、アップルストアという直営店やネットストアを持っている点が大きいと思う。デザイン性が優れ、革新的なUI(ユーザーインターフェイス)を持つデバイスが作れるだけでなく、しっかりと直販でユーザーの声を吸い上げられることが脅威なのだ。

 さらに「iTunes Store」というコンテンツ販売システムを持っている。同サービスにクレジットカード情報を登録しているユーザーは世界で1億アカウントにもなる。欲しいコンテンツやアプリを一瞬で購入できる仕組みを持っている強みがあるのだ。

 日本メーカーもようやくタッチパネル対応機種が増えつつあるが、まだまだiPhone 3GSの快適な操作性にはかなわないと思う。各メーカーの開発担当者に話を聞くと「既存の機能や操作性を捨ることはできない」とぼやく。iモード開始から10年が経過したが、その間に蓄積された機能を生かしつつ、新しい操作性を開発するというのは相当、苦労を伴うようなのだ。

 端末、販売ルート、顧客接点、コンテンツ流通の仕組み、代金回収など、あらゆるポイントを押さえているアップル。来年以降、グーグルのAndroidやマイクロソフトのWindows Mobileといったスマートフォン向けOSのデバイスも登場するが、アップルのように垂直統合ですべてを仕切れるプレイヤーは1社もない。唯一、勝ち目があると言えるのが、キャリアがプロデュースする日本のサービスも使えるようなスマートフォンだろう。

 2009年、ケータイが売れないなか、唯一の勝ち組とも言えるiPhone。2010年、日本メーカーが手がける「サムライスマートフォン」が続々と登場するなか、どこまでいまのポジションをキープし続けられるのか。いまから対決が楽しみだったりもする。

 


2009/12/25/ 11:53