LIGHT POOL 津田 啓夢編

LIGHT POOL

 年間20モデル以上のスマートフォンが登場し、今年は選び悩む楽しさを実感する年だった。スマートフォンは来年、特別な存在ではなくなっているのかもしれない。そんな状況にあって、今年の「俺オブ(俺のケータイ of the Year)」に推すのは、auのiidaブランドから「LIGHT POOL」だ。スマートフォンの躍進は素晴らしいものがあったが、今年もっとも充実し、完成度の高い端末はフィーチャーフォンにあったと思う。

 2010年のフィーチャーフォンは、性能・デザインの両面で非常に安定していた。機能とデザイン、使い勝手、サイズなど、目新しさは薄れつつあるもののそれらの要素が調和し、持ち歩く道具として成熟した製品が多かった。こうした中でLIGHT POOLは、機能的に過不足無いのはもちろんのこと、アプローチがとても新鮮だった。

 三角格子状のフレームには角度の異なるパネルが合わさり、三角窓からLEDの光が漏れる。帰宅し部屋の中に置いておくと、ぼんやりとした光が広がり、ケータイがまるで場の空気を作るかのようだ。携帯電話は、通話やカメラ機能、メールやSNSなどによるたくさんの新しいコミュニケーションの形を作ってきたが、いずれもそのシーンにおいて道具として存在してきた。LIGHT POOLは道具である一方で、観葉植物のような、もっと言えばAIBOのような「ある」ではなく「いる」に近い存在感を放っている。

 デザイナーである坪井氏は29歳(当時)、エポックメイクな端末となったINFOBARと出会ったことでデザイナーを志したという。LIGHT POOLは、若い世代だからこそ、といった携帯電話への価値の見いだし方を感じずにはいられない。

 おそらく、iidaには賛否両論あるはずだ。個人的には、auの通常ラインナップへ貢献するような取り組みがあってもいいのかなと感じている。“デザイン革命”を打ち出すエステー(日用品メーカー)は、佐藤オオキ氏を起用することで消臭芳香剤に新しい風を送り、それが販売にも結びついているようだ。乱暴な言い方だが、「外面」に終わらないデザインを志向するiidaのようなプロジェクトは、エステーの事例のようにユーザーと商品を繋ぎ、起爆剤になる可能性を秘めている。まして、オープンOSが主流になっていく今後、大きな差別化要素になることは難しくない予想だろう。来年以降への期待も込めて、今年の俺オブはLIGHT POOLを推したい。

 


2010/12/27/ 13:04