GALAXY S SC-02B  石野 純也編

GALAXY S SC-02B

 振り返ってみると、今年は本当に“スマートフォン一色”の1年だった。中でも、その勢力を急速に拡大したのが、Androidだ。1月に発表された「Xperia」の発売に、ソフトバンクが「HTC Desire」をぶつけてくるなど、リリース合戦が激化。スマートフォンに出遅れていたと言われるauも、着々とスマートフォン時代に向けた準備を進め、おサイフケータイや赤外線、ワンセグなど、ケータイの機能を盛り込んだ「IS03」をいち早く発売した。冬春モデルでは各社が多数のAndroid端末をラインナップし、バリエーションも諸外国と肩を並べるほど豊富になったのではないだろうか? もちろん、スマートフォンを語る上では「iPhone 4」の存在も欠かすことができない。ただ、1年前と比べると、確実にスマートフォンの選択肢は広がっている。2010年は、本当の意味で“スマートフォン市場”が誕生した年と呼んでも過言ではないだろう。

 そのような状況の中で、筆者が「俺のケータイ of the Year」に選んだのが、ドコモから発売されたサムスン製のAndroidスマートフォン「GALAXY S」だ。選んだ理由は単純明快。サクサクと動き、必要な操作を最もストレスなくこなせたからである。確かに、一見した動作のスムーズさはiPhone 4に軍配が上がるように感じる。指への追随の仕方が滑らかで、タッチパネルを非常に細かく調整し、自然さを演出していることは間違いない。それと比べると、GALAXY Sの動きはどこかぎこちないようにも感じる。ただし、比較的容量の大きなファイルを開いたり、画像が大量に貼られているWebサイトを見たりすると、評価は逆転する。例えば、1MBを超えるPDFを開いた時の操作性は、固まらずにそこそこのスムーズさで動くGALAXY Sの方が上だ。メールなどの処理速度も同様な印象を受ける。

 ドコモの高いネットワーク品質のお陰で、データの送受信が速いのも、間接的に操作性への評価に貢献している。と言うのも、Androidは基本的にネットワークへの接続が大前提だからである。ギャラリーでは当たり前のようにPicasaの画像を読みにいくし、初期設定でアカウントを登録するだけでGmailをプッシュで受信する。後述するウィジェットもバックグラウンドで通信を行えるため、ネットワークが安定していればしているだけ快適になるのがAndroidと言えるだろう。ある意味、Androidは他のスマートフォン以上にクラウド的なOSなのだ。

 また、個人的にはAndroidアプリの自由度の高さにも魅力を感じている。先日、みんなのケータイでも言及したように、ウィジェットを工夫するだけで操作性をガラッと変えられるのは、Androidならではだ。Windows Mobileやフィーチャーフォンでもウィジェットは利用できるが、自由度や設置の手順のシンプルさ、アプリの豊富さではAndroidが先頭を走っているように思う。すでにAndroidアプリは15万を超えており、ウィジェット以外にも利便性の高いアプリが多数見つかる。数ではiPhoneのApp Storeに劣るものの、必要十分なアプリは一通り揃うのではないだろうか。同じプラットフォーム上で多彩な端末が展開されており、対応が難しいという理由で楽器やゲームが少ないという欠点はあるものの、逆に実用系のアプリの充実ぶりには目を見張るものがある。特にGALAXY Sは、当時最新のAndroid 2.2を搭載し、グローバルでの販売も好調なため、対応アプリが非常に多い。

 こうした評価があった上で、実際に使い込んでみて驚いたのは、GALAXY Sの“電池のもち”だ。メインの端末として電話やiモードメールを使いつつ、Gmailを1日に数十通プッシュで受信したり、サイトを見たり、Twitterでつぶやいたり、写真を撮ったりしても、ほぼ丸1日使えた。いくら便利なケータイでも、電池が切れてしまえば何もできない。その点、GALAXY Sはメインの端末にするにも十分な性能を備えているのではないだろうか。少なくとも、自分が生活する上では電池切れで困ったことが全くなかった。

 ただ一点、筆者は日ごろからおサイフケータイを愛用しており、それに非対応なのが残念なところだ。それでもこの端末をプッシュしたのは、まだAndroidのおサイフケータイアプリがそれほど充実していないからである。特にiDやモバイルSuicaなど、筆者の利用頻度が高いアプリは軒並み来年のリリースとなっている。そこで、現時点ではおサイフケータイを含む評価は保留とした。ちなみに、Androidもバージョン2.3ではNFCを正式にサポートしているため、海外端末のおサイフケータイ対応を期待している。特に、フィーチャーフォンでおサイフケータイの実績があるサムスンには、ぜひグローバル端末の良さを失わないような形で、日本ならではの機能を加えていくことにもチャレンジしてほしい。GALAXY Sを国や地域の実情に合わせて細かくカスタマイズし、ブラジルや韓国ではテレビ機能を搭載したサムスンにはそれができると信じている。

 また、キャリアによるマーケットの完成度を見ると、現時点ではauの「au one Market」が一段他社のものをリードしている。ドコモの「ドコモマーケット」も、iモードの良さを取り入れればもっと使い勝手が上がり、コンテンツも増えるはずだ。ドコモの山田隆持社長によると「(iモードからスマートフォンへ)開発の軸足を移すのは2011年後半から2012年」とのことだが、スマートフォン市場の成長の早さを見るとややスローペースなようにも思える。特にマーケットの完成度はスマートフォンを使う上での満足度に直結するだけに、早急に整備をしてほしいと感じている。

 


2010/12/27/ 13:05