GALAXY SII SC-02C 橋本 保編

 今年は、従来のケータイからスマートフォンへのシフトが加速した。今年8月に発表されたある調査では、昨年の約5%から約9.5%と、ほぼ倍増したと言われているが、ガジェット好きの本誌読者であれば、ケータイか? スマートフォンか? という二者択一ではなく、スマートフォンの中から何を選ぶか? が興味の中心だと思われる。そのトレンドを牽引しているモデルのひとつがサムスンのGALAXYシリーズだ。

 今年6月23日に発売された「GALAXY S II SC-02C」は、初日の販売台数が6万2000台を超え、ドコモとしても、サムスンとしても、初日の販売台数として新記録を更新した。サムスンは、2011年第3四半期の携帯電話販売台数でNo.1となり、出荷台数は約3億台を突破する見込みだ。そのサムスンの販売台数の新記録を塗り変えたという意味は大きい。iPhoneがスマートフォンの新しい世界を切り拓いていることは、衆目の一致するところだが、負けず劣らずの勝負をしている点を評価し、私は2011年のケータイ of the Yearに「GALAXY S II」を選ぶことにした。

 「GALAXY S II」は、今年2月のMobile World Congress 2011で発表された。新しい機能や性能を盛り込みつつも、より薄くしたことを、「More with Less」というキャッチコピーで表現していたことが印象的だった。4.3インチのディスプレイ、デュアルコアプロセッサ、1650mAhのバッテリー容量、Wi-Fiテザリング、800万画素のカメラなどのスペックは、冬春モデルが店頭に並んでいる現状でも、十分なスペックといって遜色ない。むしろ2月の時点で今年のスマートフォンの基準が示されたといっても過言ではなく、トレンドセッターとしての役割を果たしていることがわかる。ここ数年は、GALAXYシリーズがAndroidモデルのリーダーになっていくことが、「GALAXY S II」を通じて強く印象づけられた。

 ただ、こういうことを書くと、日本市場へのカスタマイズという点では、ワンセグにしか備えていなかったため、おサイフケータイ、赤外線通信、防水仕様がないではないか、という声も上がってくるだろう。この点は、当初から日本市場向けに作ることを想定して作られるモデルに比べると、明らかにスタンスが異なるからだ。確かに、サムスンが日本市場に根を下ろすことを真剣に考えているのなら、腑に落ちる対応をするべきだろう。そういう意味では、ワンセグ対応したことは、日本仕様を最優先に求める方たちには一歩前進と映るだろう。ただ、こうした日本仕様も、スマートフォンが進化する過程で重要視されるか否かはわからない。たとえばおサイフケータイや赤外線通信は、NFCでおおむね代替ができるので技術的に解決されるように思われる。

 防水仕様は、日本発の仕様として、グローバル市場でも求められる機能になるかもしれない。というのも、日本ではiモードに代表されるサービスで、ケータイからインターネットに接続することが当たり前になった。ゆえに、ケータイが濡れてしまうような場面でも使いたいというニーズが生まれた。だが海外では、いつでも、どこでもインターネットにつながるようになったのは、スマートフォンになってからといのが実情なので、日本のようなニーズは、これから生まれてくるものだ。そこは、ケータイ先進国といわれた日本が先取りしていた部分なので、海外市場が日本市場に追いついていくるだろう。

 こんな仮説を考えさせてくれたのも、「GALAXY S II」が売れたゆえ、今後もこのトレンドが続くのだろうか? とあれこれ考えたゆえのこと。私は、「GALAXY S II」によって、あれこれと勉強させていただいた。「GALAXY S II」の開発陣、そしてサムスンの日本スタッフに感謝したい。

 

2011/12/27/ 17:30