INFOBAR A01 津田 啓夢編

 2011年の“俺の”No.1ケータイは「INFOBAR A01」としたい。個人的に、今年もっとも発表に興奮し、もっとも発売が待ち遠しかった。ネットスラングで言えば、「ktkr!」で、「wktk!」しちゃったのが「INFOBAR A01」だった。

 「INFOBAR A01」の最大の特徴であるユーザーインターフェイス(UI)「iida UI」は、6月の発売から半年を経過した今なお、他の追随を許さない独自性のあるものだ。UIを手がけたWebデザイナーの中村勇吾氏は、インタビューの中で特別なことはせず、必然的なものだったと語っていたが、その功績は非常に大きい。

 iPhoneインパクト以降、スマートフォンのUIは早くもある特定の方向で考え方がかたまりつつあったように思う。中村氏は「Androidの世界を整理し直す」という言葉を使い、スマートフォンのフロントであるUIの構造分解、再構築を試みた。手法はアートの分解方法に近く、余計なものをふるいにかけて通り道をきれいしてやることで、ユーザーに世界を顕在化させるというものだった。

 iPhoneのようにそもそも1つの世界に縛られないAndroidは、裏を返せばいまだ混沌の中にある。その中で「INFOBAR A01」の周りは自由に遊べる公園のように整備された。公園の中でかけ回るのも、昼寝も読書も自由なように、筋道をつけて世界を顕在化させると人は活動しやすくなる。

 これをさらに、カスタマイズ自体が楽しくなるような見せる収納としてコンテンツ化したのも面白い工夫だ。端末の中に広がる世界に筋道をつけ、かつ気の利いた味付けができているUIは、現時点ではiida UIだけだろう。ほかにも工夫をこらしたUIが登場しているが、机の引き出しを増やしたようなものが多いと感じる。増えた引き出しに何かきれいに並べたくなるような、また機能的なまとまりにしたくなるような、利用者側が自発的に動きたくなる、そんな要素が足りないと思う。

 バッテリー容量が気になるとか、ワンセグのアンテナは中にあった方がいいとか、イヤホンもかっこよく装着できたらとか、「INFOBAR A01」への不満はもちろんある。ただ来年以降、スマートフォンはさらに拡大し、よりボリュームゾーンに響く価値付けが必要になってくるだろう。コミュニケーションを加速させるスマートフォンにおいて、UIは顔とも言える重要なパートだ。2011年のNo.1は、早い段階で構造分解に着手し、スマートフォンの主役がソフトウェアであることを意識させた、iida UI搭載「INFOBAR A01」に贈りたい。

 

2011/12/27/ 17:30