俺のケータイ of the Year

Optimus G L-01E

Optimus G L-01E

橋本 保編

 今年はソフトバンクとKDDIがLTEをスタートさせ、携帯電話網の世代交代期を迎えた。これと、ここ数年のスマートフォンの台頭を重ねて考えると、3Gが本格普及し始めた2003~2004年ころの記憶が蘇ってくる。

 当時ドコモのFOMAは、エリアがmovaと差があったことに加え、電池の持ちが悪かったことから評判は芳しくなかった。2003年に発売された900iシリーズでiモードに対応し、100万画素のカメラが搭載されるようになってから3Gへの乗り換えが本格化した。

 2002年4月にCDMA 2000 1XをスタートしたKDDI(2000年10月にDDI、KDD、IDOの3社が合併。2001年10月には、前年にエーユーと商号を変えたDDIセルラーを合併)は、2003年からは着うたをはじめたり、初代INFOBARを発売するなど話題を集めていたが、iモードの爆発的なヒット、写メールや通話品質などで契約数を増やしたJ-PHONE(現ソフトバンクモバイル)に攻勢をかけられて、2002年3月には新規契約数で3位になるなど、苦戦を強いられる局面もあった。そのJ-PHONEは03年10月にはボーダフォンになるが、3Gへの移行が遅れなどから低迷傾向が続いた。

 こうして見ると、iPhoneに象徴されるスマートフォンへの移行は、“話すケータイから、使うケータイへ”をキャッチフレーズにしたiモードなどのインターネットサービスが登場した状況に似ており、LTEのサービス開始は、データ通信速度が飛躍的に向上した2Gから3Gへの移行期と類比的といえるだろう。

 変革期には、プレーヤーも変わってくる。アップルやサムスンはその典型だが、グローバル市場で存在感を示しつつも、従来の日本メーカーのようなローカライズに力を入れているメーカーも存在感を増している。その代表例が、HTCやLGエレクトロニクス(以下、LG)だろう。HTCについては、KDDIの『HTC J』を評価する声は少なくないと思われるので、私はLGのほうにスポットを当ててみたい。そこで2012年のケータイ of the Yearは、同社の『Optimus G』を選ぶことにした。

 この機種は、クアルコムのクアッドコアチップ(APQ8064。いわゆるSnapdragon S4 Pro)を世界で初めて搭載し、それを活かした“ながら機能”を実現した。たとえば動画を表示しながら、別のアプリを同時に操作を可能にする「Qスライド」だ。このとき動画は透過表示にすることができるので、“ながら使い”ができる。こうした目立った機能のほか、基本的な動作がスムーズなのも特徴で、LGらしい使い勝手を実現している。この“LGらしい使い勝手”というのは、そのメーカーの使い勝手の仕上げ感のようなもので、iPhone、GALAXY、Xperiaなど、人気の機種は、それぞれに個性ががある(と私は感じている)。こうした個性が出せることからも、LGのエンジニアリングの高さを知ることができる。

 地味な機能だが、今年1月に発売されたPRADA phone以降の機種(当然『Optimus G』も含む)は、アプリのアイコンを写真などの画像にカスタマイズができる。またアイコンのサイズを変える機能もあり、自分好みのデスクトップにすることができる。こうしたカスタマイズは、フィーチャーフォンのころのカスタマイズを彷彿させて楽しい。今後はカスタマイズ用の画像を提供するなど、ブラッシュアップされていくことを期待したい。

 このほかキャップレス防水になっていることにも触れておきたい。充電口となるミニUSB端子には水の侵入を防ぐためにキャップが付いているのが一般的だが、『Optimus G』は、キャップがなくても防水性能を維持できる仕様になっている。防水仕様は日本メーカーが得意とする分野であるはずだが、キャップ構造になっているため、防水性能が損なわれることが少なくない。ドコモではすべての機種に充電台を同梱することで一応の解決策を提示しているが、キャップレスになっているほうが安心なのは明確だ。こうした姿勢からもLGの開発陣が、日本市場向けのローカライズに腐心していることが想像される。

 ただし、いくつかの課題も浮き彫りになっている。いちばんの課題は、LGに対する信頼感だ。ドコモショップなどの販売店を取材すると、過去に不具合を出した記憶が残っているとの声が少なくない。上述のほかにも、さまざまな特徴を備えた機種を作れるポテンシャルがあるのだから、消費者から注目されるような機能や特徴を持ったものを、品質を損なわずに提供していけば、ネガティブな印象は変わっていくだろう。

 また製品の魅力や特徴を、ていねいに伝えていく努力も必要だろう。そのためには計画的なプランを練り、実行していくことが肝要だ。このあたりが同じ韓国メーカーのサムスンと明暗を分けている要因のひとつのように思われる。来年は改善されていくことを期待したい。

橋本 保