俺のケータイ of the Year

L-06D JOJO

L-06D JOJO

関口 聖編

 「L-06D JOJO」は、覚悟している人が作ったスマホ――半年前に掲載したインタビューでは、数多くの反響をいただき、開発サイドの熱い想いを伝えられたと思う。これまでの記者人生で多くの担当者を取材し、いろんなケータイを見てきた。しかし、ここまで担当者が愛情こめて作り、突き詰めた機種はあまり見たことがない。特にリアカバーのデザインが空条徐倫になった経緯については、ファンならずとも納得できるエピソードだった。

 使っていくと、ただマニアックなこだわりが詰め込まれただけではないことがわかる。つまり使い勝手もきちんと考えられているのだ。たとえば、バッテリー残量を示すウィジェットは、“レッド・ホット・チリ・ペッパー”というスタンド(劇中における特殊能力のこと)で表現されているのだが、このレッド・ホット・チリ・ペッパーには、電気を操る能力があり、逆に電力がない場所では活動できない。バッテリー残量のウィジェットとしてはピッタリなキャスティングだが、「電力=レッド・ホット・チリ・ペッパー」というアイデアだけではない。「L-06D JOJO」を使っていき、バッテリーが減っていくと、だんだんとウィジェットの中のレッド・ホット・チリ・ペッパーの様子が変化し、苦しそうな表情を見せ始める。それと同時に、レッド・ホット・チリ・ペッパーの頭の方が徐々にモノクロへ変化していく。つまりエネルギーを失っているさまを色の変化で表現しているのだが、そもそも原作漫画は基本的にモノクロで描かれており、劇中に“色が変わる”という設定はない。つまり電力が減っていく様子を視覚的にわかりやすく示すため、原作にはない設定を盛り込んだウィジェットになっているのだ。しかも、この“原作にはない設定変更”は、実は荒木飛呂彦先生の指摘で実現したものだ。

 コラボモデルは、ベースモデルの上に、コラボ先のパートナーによる独特のデザイン、世界観をプリセットコンテンツや外装に反映させていくことになる。単にお仕着せなコラボに留まらず、そして開発者の熱意の押しつけではなく、使い勝手を含めた、高い品質のユーザー体験を楽しめる。それが2012年に登場した「L-06D JOJO」だった。これからも日本のスマートフォンには、今回のような極め方を期待したい。

関口 聖