俺のケータイ of the Year

HTC J One HTL22

HTC J One HTL22

村元 正剛編

「HTC J One HTL22」

 日本でスマートフォンが普及するきっかけになった端末は、2008年7月に発売されたiPhone 3Gだったと記憶している。それから4年以上が過ぎ、すでに2回、3回と、スマホを機種変更しているユーザーも少なくないと思う。

 日本の携帯電話市場で、今年最も注目を集めたトピックは、NTTドコモがiPhoneの取り扱いを始めたことだろう。売れ行きは好調のようで、発売以来、販売ランキングの上位を3キャリアのiPhoneが独占する状態が続いている。Android勢は、個人的にも気に入っているXperia Zや、大ヒットしたXperia Aなどを含むソニーモバイルコミュニケーションズのXperiaシリーズを除くと、苦戦を強いられていると言っていいだろう。

 iPhone 3Gが発売された当初は、iPhoneを使っていると、友人から「いいな」「俺も買おうかな」と羨ましがられたが、いまや、iPhoneは誰もが持っているスタンダードなツールとなった。逆に他メーカー製のスマホを使っていると、「どうしてiPhoneにしないの?」と聞かれたり……。iPhoneの“一人勝ち”状態はしばらく続くと思うが、他の人とは違うスマホを持ちたいと考える人にとっては、iPhoneの訴求力は薄らいできているのではないかと思う。とくに、今年の秋に発売されたiPhone 5s/5cは、前モデル・iPhone 5のマイナーチェンジといった位置づけだったので、物足りなく感じた人も少なくないだろう。

 筆者は、iPhoneに関する記事を書くことも多く、毎年iPhoneの新モデルを購入している。今年も5s/5cのどちらも購入した。それらの使用感には満足しているが、ワクワクする要素は乏しかったように思う。むしろ、今年は、アップルの牙城を崩すべく、唯一無二の個性をアピールしたAndroid端末に物欲を刺激された。例えば、2画面を折り畳めるMEDIAS W、ペンの操作性を極めたGALAXY Note 3、3辺狭額縁のAQUOS PHONE Xxなどだ。

 メーカーが独自色を打ち出す傾向が強まったAndroidスマホの中で、筆者が実際に使って、最もワクワクした端末は、HTC J One HTL22だ。アルミを用いたフルメタルボディにひと目惚れして、発売されて即購入したのだが、しばらくは友達に見せまくり、「これ、いいでしょ!」と自慢しまくった。持っているだけでハッピーな気分に浸れる端末は、久しぶりだったように思う。

 機能面で最も気に入ったのは、デュアルフロントスピーカー。以前から、スマホの内蔵スピーカーのレイアウトや音質には不満を持っていたので、画面を見ているときに、音が前方に響くことは、単純にうれしかった。イヤフォンを付けずに「YouTube」などを楽しむには、最適な仕様だと思う。

 画素を大きくした「UltraPixcel」というセンサーを搭載したカメラは、多機能ゆえに、すべての機能は使いこなせていないが、画質には十分満足している。「HTC Zoe」モードで撮っておけば、一定時間内に撮った写真や動画が自動的にビデオが編集される機能も大いに楽しめた。筆者は、スマホは暇つぶしに最適なツールだと思っているのだが、この「ビデオハイライト」機能は、暇つぶしにとても重宝した。ホーム画面に追加された、SNS&ニュースリーダー「HTC BlinkFeed」も、暇つぶしに最適なアプリケーションだと思う。

 このHTC J Oneに限らず、HTC製のスマホには、ユーザーを楽しませるための工夫がふんだんに盛り込まれている。他のスマホにはない独自機能をストレスなく使え、使用感に飽きが来ず、暇つぶしの時間さえも有効に使える、といった印象だ。これからも、ワクワクさせてくれる端末をリリースしてほしいのだが、今年のHTCは、経営不振やらお家騒動やら、先行きが不安になるニュースが多く、来年以降の展開にはあまり期待が持てない状況にある。「加油!(頑張れ!)」という気持ちも込めて、今年のベストワンに選出させていただいた。

村元正剛