俺のケータイ of the Year

AQUOS ZETA SH-01G

AQUOS ZETA SH-01G

法林岳之 編

 2014年のモバイル業界は、大きな転換期を迎えた年だったと言えそうだ。業界全体の動きで言えば、MVNO市場に各社が参入し、「格安SIM」「格安スマホ」といった言葉が語られるようになる一方、各携帯電話事業者はNTTドコモの「カケホーダイ&パケあえる」を皮切りに、auの「カケホとデジラ」、ソフトバンクの「スマ放題」が発表され、国内の音声通話で定額が実現し、パケット通信料はデータ通信量を選ぶパック料金へと移行した。この他にも春商戦でのキャッシュバック合戦、iPhone 6/6 Plus発売時の行列騒動、NTTドコモのセット割論争など、さまざまな競争や論争が注目を集めた一年だった。

 端末に目を移すと、スマートフォンは着実に普及が進む一方、ハードウェアとしての完成度が高まったこともあり、デザインや機能、メカニズムなどにおいて、大きな変革が見られたという印象は少ない。ただ、MVNO市場に参入する企業が増えたこともあり、これまで国内市場ではバリエーションが少なかったSIMロックフリー端末が今年の夏頃から一気に増えた。SIMロックフリー端末は音声通話に対応したスマートフォンだけでなく、タブレットもバリエーションがかなり増えてきており、プラットフォームの部分も含めると、ユーザーの選択肢はグッと拡がった印象だ。

 さて、そんな状況を踏まえ、2014年の端末を振り返り、個人的に印象に残ったモデルをピックアップしてみよう。まず、ハードウェアのスペックを中心に考えると、NTTドコモ向けとau向けに供給された「GALAXY Note Edge SC-01G」「GALAXY Note Edge SCL25」のエッジスクリーン、au向けの「isai FL LGL24」「isai VL LGV31」とGALAXY Note Edge 2機種のWQHD対応ディスプレイ、ソフトバンク向けの「AQUOS CRYSTAL」「AQUOS CRYSTAL X」のフレームレスデザインが目を引いた。

 また、少し切り口は違うが、昨年、国内のスマートフォン市場から撤退したパナソニックがデジタルカメラのLUMIXの一製品としてリリースした「LUMIX DMC-CM1」も印象に残るモデルのひとつだ。残念ながら、国内での発売は何もアナウンスされていないが、デジタルカメラにスマートフォンの機能を融合した製品として、今後の展開が期待される。

 MVNO各社の参入で大きく賑わったオープンマーケット向けのSIMロックフリー端末については、価格ばかりが強調される製品が多く、正直なところ、あまり好印象のモデルはなかった。そんな中、ASUSの「ZenFone 5」はバランスのいいスペックと美しいボディデザインに加え、便利な機能とユーザーインターフェイスにより、SIMロックフリー端末の定番的な存在になりつつある。

 定番という意味においては、SIMロックフリーにも各携帯電話事業者向けにも供給されている「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」も見逃せない存在だ。ボディサイズの大きさに拒否反応を示す人もいるが、従来モデルの流れに縛られることなく、思い切ったデザイン変更を決め、2つのディスプレイサイズを用意したことは、より幅広いユーザー層にアプローチできるという意味においても評価できる。

 そして、最終的に筆者が「俺のケータイ of the Year」として選んだのは、NTTドコモのシャープ製端末「AQUOS ZETA SH-01G」だ。約5.5インチの大画面ディスプレイ、リコー GR Certifiedのカメラ、EDGESTデザインなど、ハードウェアの仕様も他社をリードしているが、それ以上に個人的に高く評価したいのは「エモパー」の存在だ。昨年、筆者は本コーナーで「2013年のスマートフォンは既定路線の製品が多く、ワクワク感がない」という話を書いたが、AQUOS ZETA SH-01Gは「エモパー」がユーザーに語りかけるという新しいアプローチを実現することで、これまでのユーザーとスマートフォンの関係性に新しいエッセンスを加えようとしている。

NTTドコモの「AQUOS ZETA SH-01G」

 確かに、スマートフォンにとって、スペックはある程度、重要なものだが、そもそもの話として、ユーザーがスマートフォンを手に取らなければ、どんなスペックも役には立たない。そこで、シャープはユーザーに対し、「エモパー」でタイミング良く話しかけることで、ユーザーがスマートフォンを手に取り、触り、楽しもうとするきっかけを与えている。ハードウェアのスペックの追求ばかりでなく、ユーザーがどうすれば使うのかという問いにもしっかりと答えてくれた「AQUOS ZETA SH-01G」に、2014年「俺のケータイ of the Year」を贈りたい。

法林岳之