俺のケータイ of the Year

GALAXY Note Edge SCL24

GALAXY Note Edge SCL24

橋本 保 編

 昨年の本欄ではワイモバイル(当時ウィルコム)の「WX12K」を選び、今年も使い続けた私には、スマートフォンについて、強く不満がある。ロック画面を解除すると、すぐにアプリをタッチして操作することを前提としてOSが開発されているため、せっかく大きなディスプレイを備えているにも関わらず、待ち受け画面に設定したお気に入りの画像は、アイコンの背景画に程度にされてしまうことだ。これがフィーチャーホンの頃は、お気に入りの画像は画面いっぱいに表示され、それを見た時にさまざまな心理的効果を与えてくれた。スマートフォンもアイコン越しに画像は見えるのだが、アプリのアイコンが邪魔になることは否めない。

「WX12K」の待ち受け画面。この時期でも房総や伊豆に行くと、花を楽しむことができる。画面を見るたびに春をおもうのだ

 そこで私はスマートフォンを使う場合、あえてロック解除したホーム画面にはアプリを配置せず、右脇などのホーム画面にアプリをおくことにしている。そのときの画面の違いを「WX12K」、iOS、Androidで例示しておこう。見ていただくとわかるが、アプリをすべて右脇のホーム画面に配置すると、iOSはDockの部分にグレーの帯が残ってしまうし、Androidもアプリ一覧画面へのショートカットアイコンが残ってしまう。多少の使い勝手は犠牲にしてでも、潤いのような自分らしさを加えたいという感覚は、フィーチャーホンを使い慣れているからなのか、何か文化的背景があるのか、単に趣味の問題なのか、私には語るだけの材料を持ち合わせていないのでこれくらいにしておくが、とにかくしっくりこない。

iPhone 6の画面。このようにアプリを画面いっぱいに並べて使う人は多いだろう。確かに、こうしておくのが使いやすいのはわかるのだが、何だか机の上がごちゃごちゃしているような印象がする
画面下にあるDockにのみアプリのアイコンを残し、画面の右にあるホーム画面にアプリを移したところ。iPhoneを使うときにはこうしている。Dockにアプリのアイコンがあると使いやすいのはわかるが没入感は足りない
Dockのアプリも他のホーム画面に移したところ。これではDockのグレー部分が邪魔になるだけだ
「GALAXY S5」(au版)のデフォルト画面。ウィジェットはAndroidならではのアプリで便利だが、目的を持ってロック画面を解除したとき、余計な情報が飛び込んできて本来のことに辿りつけないことも起こりうる(裏を返せば、いろいろな情報が無意識に飛び込んで来て、興味のない情報にも触れられるともいえるのだが……)
アプリを他のホーム画面に移したところ。Androidは、iOSのDockのようなグレーの帯がないため、画面を表示する面積が多いのがわかる
アプリをすべて他のホーム画面に移しても、アプリ一覧画面へ移動するためのアイコンだけは残る。この表示のオン/オフの設定ができれば、Androidはいい線を行っているのだが……

 上記のような感覚をずっと持ち続けてきた私に、今年は素敵な選択肢が現れた。それがSAMSUNGの「GALAXY Note Edge」だ。この機種はGALAXY Noteシリーズの第4弾となる「GALAXY Note 4」(日本では未発売)と一緒に発表され、右脇にエッジスクリーンと呼ぶサブ液晶が備わった新機軸としてお目見えした。このエッジスクリーンにアプリのショートカットを7つ常時表示できるうえ、画面下には電話やAndroidのホーム画面に残り続けたアプリ一覧画面へショートカットが配置されている。そのため、結果的に画面いっぱいに画像を表示しながらも、一定程度の使いやすさが確保されるという私の望むようなカスタマイズが可能になった。

GALAXY Note Edgeは、このように画像をすっきりと大写しにできるうえ、エッジスクリーンにアプリのアイコンがあるため、使い勝手が損なわれない。また電話の白いアイコンが小さく表示されているので、通話時の使い勝手も悪くない。欲を言えば、エッジスクリーンの背景色(画面では濃いグレー)の濃淡を調節できるようにしてくれると、もっとすっきりするはず(これはiOSのDockも同様)
日本語入力アプリ「simeji」のカスタマイズ機能を使っているところ。このように同じ世界観の写真でカスタマイズすると、スマートフォンを使っている時間が違った気分になるはずだ
東京・立川にある東京都立図書館の1階でキャプチャーした画面。この図書館は雑誌のバックナンバーが揃っていることで知られていて、インターネットの蔵書検索を使ってタイトルや所蔵号などを調べることができる。ただ、ここは電波状況が悪く、3Gと表示されてしまった。余計なお世話だが、VoLTE対応機ではどういう挙動になるのか、少し興味を持った

 こうしたことは、新製品発表時などで強調されなかったことや、作り込みの甘さから、開発側が意図した結果ではないことは容易に想像できるが、Android陣営では屈指の開発力を持つサムスンの面目躍如といったところだろう。ちなみに日本語入力アプリ「Simeji」でも文字入力時に好みの画像を背景にすることができる(Android版/iOS版ともに)。なお、こうしたことはホーム画面をカスタマイズできるランチャーアプリでもできるのではないか、といった指摘もあるだろう。確かにそうなのだが、ここで紹介するようなカスタマイズを意識してモノ作りをしているのかが大事と私は思っている。GALAXY Note Edgeは結果的にできているとはいえ、そうした萌芽を感じられるので評価をしたい。

「GALAXY Note Edge」

 この一発芸がGALAXY Note Edge(au版)を2014年の俺のケータイ of the Yearに選んだ最大の理由だが、他にも全体的にバランスのとれた面も挙げておきたい。

 まずau向けのモデルに関してはVoLTE非対応、つまり3Gにも対応しているので、利用エリアとしては当たり前だが従来と変わらない。一般論としてネットワークが世代交代したときの最初の機種は電池持ちが悪い。原因はネットワークの整備や無線チップの完成度など、さまざまな要因が挙げられるが、今回のKDDIの場合、すべて4G LTEで提供するという「冒険的」な取り組みも加わっている。本稿執筆時点では、まだ発売間もないこともあり、評価をできるほど使うことができていないが、現在3Gでアイコンが出るような場面(画面は東京都立川市にある都立多摩図書館の1階で使ったのときの様子)では、どんな挙動をするのだろう? さまざまな場所で使えていないので評価は避けるが、不安があることは否定できない。その点GALAXY Note Edgeは、3Gネットワークも利用することができるため、来春商戦も有力な選択肢でありつづけるだろう。

 このほかMetaMoJi社の手書きアプリ「MetaMoJi Note」の使い勝手が向上してきたので、AndroidでPDFいじりをする場面が増えてきた。メールなどに添付されて送られてきたPDFファイルなどを「MetaMoJi Note」で開き、手書きなどのコメントを加えて返信するドキュメント・コミュニケーションが容易になりつつあるのだ。このときGALAXY Note Edgeのペンが有効であることは言うまでもない。ポケットからすぐに取り出し、本体に内蔵されたペンで作業ができるので、いちいちスタイラスペンを用意しなくても良いことから始まり、画面をなぞったときの独特の書き味は、ペンを使って校正作業をしている感覚を彷彿させる。

 これまで同様のことは「iPad」を使って行っていたが、荷物が増えるのが難点だった。「MetaMoji Note」では、クラウド機能を使ってマルチデバイスでPDFファイルが共有できるので、出先ではGALAXY Note Edge、机に着いたら「iPad」やWindows8.1マシンといったことがスムーズにできるようになってきた。未だに紙の文書との付き合いが少なくない私にとっては、とてもありがたく、ちょっとした便利さを感じさせてくれる。

 各社のスマートフォンの違いが以前ほど目立たなくなってきているときだからこそ、今回紹介したカスタマイズや、他のスマートフォンにはない手書きのような特徴が、ユーザーからは求められていると私は思う。そうしたなかでGALAXY Note Edge(au版)は、非常に印象が残った機種だった。

橋本 保