橋本保: NTTドコモ Cyber-shotケータイ SO905iCS
筆者が今年最も熱心に使ったのが「Cyber-shotケータイ SO905iCS」だった。よってケータイ of the Year 2008は、素直に「Cyber-shotケータイ SO905iCS」を選ぶことにした。「あんなにでかくて重いのになぜ?」「痺れるもっさり感なのに」といった声が聞こえてくることは十分承知しているが、それを相殺しても余る楽しさ、そして時代性を感じさせてくれるケータイだったからだ。
とくに気に入っていたのが、通常のマクロ撮影(接写撮影)のほかに最短で約3cmまで近寄れるスーパーマクロ撮影が出来たこと。本機能は本家「Cyber-shot」の一部にも備わっているもので、「Cyber-shotケータイ SO905iCS」にも継承された。私自身がモノゴトを凝視したい性格なのか、デジカメはマクロ撮影の性能を重視する傾向にある。そういう意味でもストライクゾーンに入ったわけで、写真サンプルのようなボケ味のある写真が撮れるのは「Cyber-shotケータイ SO905iCS」ならではと言えるだろう。
鎌倉の牡丹園で撮ったバッタの幼虫 | 居酒屋で撮ったタコの酢の物 |
少し話は逸れるが、なぜ本機がマクロ撮影を重視したのか? 企画担当者は、その背景について「ユーザーは、きれいに仕上がったネイルアートや美味しかったスウィーツなど身の回りの出来事を撮影してブログに投稿したいはず」と分析した結果と言っている。それを2月発売の機種で実現していたのだから大した慧眼だ。何が言いたいのかというと、最初からケータイのカメラ機能は何に使われるのか、何に使って欲しいのかが明確で、ケータイ+カメラ=最強のブログマシンとゴールを意識して開発されていたのだ。そこが筆者に使っていて楽しいと感じさせたことにつながったようなのだ。実は「身の回りのものを撮りたいはずだからマクロ撮影を強化しよう」との視点で作られたケータイは年末になった12月現在でも(「Cyber-shotケータイ SO905iCS」のau版「W61S」を除くと)見あたらない。興味のある方は、最新機種を紹介する携帯電話会社やメーカーのWebサイトで、各機種がどんなサンプルを挙げているか見ていただきたい。人物撮影や風景、暗がりでの撮影(手ぶれもその範疇)は訴求されているが、マクロ撮影はほぼノーマークであることがわかる。
話を元に戻そう。「Cyber-shotケータイ SO905iCS」が最強のブログマシンを目指したことは、写真を撮った後のブログ投稿機能にも現れている。写真を撮って機能ボタンを押すと、そのままブログ投稿画面に遷移。オリジナルサイズもしくはVGAにリサイズするかが選べる。さらには加速度センサーによって撮影時のカメラ位置を検知し、ブログ掲載時には撮ったままの状態、つまりタテ位置かヨコ位置かを自動判別してくれる。
このように写真を撮ってからブログに投稿するまでの一連の操作がスムーズで楽しい。さらに付け加えるなら、パケット通信料がかさむことは留意する必要はあるが、GSM/3Gローミング対応なので海外でも上述したことは可能。旅の様子を徒然なるがままに綴るといった具合に浸れる。
冒頭で述べた時代性は、「Cyber-shotケータイ SO905iCS」には、いま店頭に並んでいるケータイに対するアンチテーゼがあると言い換えても良い。読者の方々は、昨年あたりから高機能や高性能を追求してはいるのだが、何か目新しさを感じない機種が増えていないと感じていないだろうか。その原因は、ケータイはネットワークにつながって価値が高まるものなのに、そこを疎かにした商品開発をしているからではないかと筆者は見ている。その点「Cyber-shotケータイ SO905iCS」は、カメラとインターネット接続機能を融合させてブログマシンへ昇華させるなどの取り組みをしている。また詳しく紹介はしなかったが、撮った写真へ自動的にGPS情報を記録し、Googleマップへマッピングできる機能なども秀逸だ。インターネットがどんどん身近になっていく過渡期にいるのだから、インターネットへ簡単につながるケータイがどう使えるかの提案はもっともっと出てきて欲しいもの。そうしたチャレンジが「Cyber-shotケータイ SO905iCS」には感じられた。
ソニー・エリクソンがビジネスで苦戦をしているのは事実だろうが、新しいチャレンジをせず、横並びのスペック競争で勝つことや、ユーザー調査の結果ばかりを優先していれば市場が閉塞感に覆われていくのも当然の成り行きだ。上述した企画担当者の話のようなプロならではの視点や読み、そして提案で勝負するようになると、我々ユーザーのもの選びはもっと楽しくなるはず。「Cyber-shotケータイ SO905iCS」をケータイ of the Year 2008に選んだ理由には、そうした願いも込められている。
最後に本題からは逸れるが、今後のソニー・エリクソンについても簡単に触れておきたい。現在ソニー・エリクソンは日本向けの製品戦略全体を見直し、海外向けにも力を入れ始めている。これは何を意味するのか? よく考えればソニー・エリクソン「日本の国内市場で培った技術やノウハウを海外市場で展開し、存在感を高める」ことを設立当初から狙っていた。プラットフォームのオープン化やLTEなどの導入を目の前にして、こうした戦略に立ち返ったと筆者は見ている。この戦略に立ち返ったことは遠くない将来、再び元気を取り戻すきっかけになるだろう。つまりソニー・エリクソンファンは、ドコモ向けモデルの登場も含めて大いに期待していいと思っている。
■ 関連記事
・ 511万画素カメラ搭載のサイバーショットケータイ「SO905iCS」
・ 「SO905iCS」開発者インタビュー 国内初“Cyber-shotケータイ”がもたらす新たな体験とは
・ ケータイ新製品SHOW CASE NTTドコモ Cyber-shotケータイ
法林岳之 ソフトバンク 922SH |
スタパ齋藤 ソフトバンク iPhone 3G |
白根雅彦 au W62CA |
すずまり NTTドコモ N706ie |
石野純也 NTTドコモ N705i |
石川温 NTTドコモ SH706iw |
村元正剛 NTTドコモ PRADA Phone |
橋本保 NTTドコモ SO905iCS |