30年間近く使い続けているカバンがある。米国のDOMKE(ドンケ)というメーカーのショルダーバッグ(F-802 サンド)だ。もともとは新聞記者のために通勤圏取材用バッグとして開発されたものだという。なにしろ丈夫だし、デニム製なので汚れても容赦なく洗濯機に突っ込んで洗ってしまえる。

 それでも、毎日の取材に使っていれば、数年も経つとボロボロになってしまう。でも、このカバンは定番だから確実に同じものが手に入る。ここが重要だ。これからもそうなのかどうかはわからないが、少なくともこれまではそうだった。いま、手元にあるのはいったい何代目だろうか。国内でもカンタンに入手できるが、米国出張の際にアマゾンで購入して宿泊中のホテルに配達させるといったことを繰り返しながらキープしてきた。仮に5年ごとに買い替えていたとしても5~6代目になるはずだ。

 どのポケットに何を入れるかはほぼ決まっている。たとえ新調してもまるで同じものだから迷いがない。実用品はかくあるべきと思う。ずっと同じ。これが大事だ。最近は、毎日携行するものが軽薄短小化し、サイズ的にも持て余すようになってきていることから、出番が少なくなってしまっているが、複数件の記者会見やミーティングをハシゴし、配付資料などがかさばることが予想される1日の外出には、必ずこのカバンを持ち出す。いつ出番がきてもいいように、いつものポケットにいつものアイテムが入れっぱなしだ。

30年近く使い続けているDOMKEのカバン

いまどきのワイヤレスは、じつはスゴい!

 カバンに比べれば、スマートフォンは悲しいほどに刹那的だ。前機種と同じものを購入するということはまずない。

 でも、サムスンのGalaxyシリーズは、このドンケのカバンと同じように、新しく買い替えてもほとんど違和感を覚えないことに、スマートフォンとはどうあるべきかというサムスンの思想を感じる。ハードウェアスペックは向上し、OSもバージョンが上がり、中味は別物になっているし、デザインだって斬新にリフレッシュされている。なのに、これまで何台かのGalaxyを使ってきたが、SシリーズにしてもNoteシリーズにしても、まるで、ずっと以前から使っていたものであるかのように、ほぼ一瞬で手に馴染んでしまう。

日本モデルのGalaxy S6とS6 edge 当初はNoteシリーズを待つつもりだったが……

 そのGalaxyの系譜にちょっとした変化をもたらしたのが昨秋にデビューしたEdgeのバリエーションだった。だが、長い間Galaxy Note派だったぼくは、Edgeという提案に違和感を持ってしまい、本当は期待していたスタンダードなNote 4が日本で発売されなかったことから代替えをパスしてしまった。今回のSシリーズ刷新にあたっても、S6とS6 edgeを手にして、きっと秋に刷新されるであろうNoteシリーズを待とうかと思っていた。

 でも、この企画のために、S6とS6 edgeをしばらく使わせてもらって、ちょっと迷い始めた自分がいる。3月頭にバルセロナで開催されたMWC2015開幕前日にGalaxy UNPACKED 2015イベントでお披露目され、タッチ&トライでいち早く触れることができたときに、もし選ぶとしても間違いなくスタンダードなS6だろうけれど、やっぱり秋を待つんだろうなとタカをくくっていた。でも、実際に、使い始めてみると違和感を覚えていたはずのS6 edgeに魅力を感じるようになってしまった。

 誤解を怖れずにいえば、S6 edgeは究極にストイックなスマートフォンだとぼくは思う。外観からは信じられないほどでしゃばらない。実際に手に取ってみると、そのフォルムから想像されるような主張をしないのだ。体感的な軽さ、薄さは、まさに手のひらの延長であるかのように振る舞う。edgeの部分が絞り込まれていることから、本体の厚み感がスポイルされ実寸以上に薄く感じ、さらに軽く感じる。手のひらの中で、まるでずっと前からそこにいたように佇む。

エッジ部分が絞り込まれている   とても薄い印象を受ける

ワイヤレスヘッドホンが主役に!

 Quad 2.1GHz +Quad 1.5GHzのOcta Coreの処理性能はいうまでもなく圧倒的だ。使っていて何のストレスもない。高速通信のためにバンドを束ねるLTE CAも、小気味いいほど高速で、これまでとは別次元のネットワーク体験を享受できる。VoLTEの通話は、まるで耳元でささやいているかのようにクリアだ。

左右両方がエッジスクリーンとなったが、持ちやすく自然と手に馴染む

 今までのスマートフォンとは別物といってもいいほどのモンスターでありながら、斬新な外観に反して、ごく自然に手に馴染んでしまう。実際に使ってみると、そこにあるのは、これまでの日常そのものだ。Android Lollipopの世界とGalaxyの世界が融合された、昨日まで慣れ親しんできたのと同じスマートライフなのだ。

 いつもの壁紙を設定し、いつものウィジェットを配置し、いつものアプリをいくつか追加すれば、そこにはいつものスマホがある。そして昨日までと同じスマートライフが始まる。外観も違えば中味も刷新されているのに、そこにあるのは日常そのものだ。Galaxyシリーズはリピーターが多いときくが、その理由はそこが大きいのではないだろうか。

いつもの壁紙やアプリを設定すれば、スマホのあるいつもの日常が始まる   指紋認証の精度も高まっている   Galaxy S6/S6 edgeからQiにも対応

 踊り場を迎えたとも言われるスマホシーン。今やスマホはカバンと同様の実用品といってもいい。特別な存在でもなんでもなく、ポケットに入っていつでも使えることが必然となっている。必要にせまられて機種変更したとしても、新たなパートナーとしてつきあい始めたときに、あまりにも自己主張が強いと、そこに新鮮さを感じることはあっても、うちとけるのに時間がかかる。実用品はそうであってはならないと思う。新しいものを手にした途端に、昨日までと同じくらいに慣れ親しめることは重要だ。

ワイヤレスに対する不満を解消し、すべてが大幅に進化!

 きっと、誰かと会って、持っているところを見られれば「新しいスマホですね」と言われるに違いないだろう。外観は新しさにあふれているからだ。でも自分で手にすると、ずっと前からパートナーとしてつきあっていたような錯覚に陥る。

 こうした印象を持つのは、このS6 edgeという製品のあらゆる面が、必然として考えられているからなのだろう。フォルムやシルエットの見かけをよくするためのデュアルエッジではなく、究極の持ちやすさを追求したからこそエッジが必要になった。

 でも、そのエッジに対して強引に目新しい機能をあてがったり、それをひけらかすわけでもない。実際には任意の連絡先を5つまで登録して、エッジ部分のスライドインで容易にコミュニケーションできるピープルエッジ機能をはじめ、edgeを活用するための機能はいろいろと用意されていたりもする。だが、その存在に気がつかないで端末としてのライフサイクルを終わらせてしまうユーザーもいるのではないかと思うくらいに奥ゆかしい。

よく使う連絡先を5つまで登録できるピープルエッジ機能
いつものポケットにいつものアイテムが入れっぱなしのカバンに、S6 edgeが加わっても何の違和感もない日常がそこにある

 確かに探せばさまざまな便利機能が用意されていて、それらの機能はこのスマートフォンの使い勝手を大きく向上させてくれる。だが、まるで、それは本質ではないといわんばかりだ。そして、それは持ち主の工夫を受け入れる懐の深さにも通じる。

 モダンとクラッシックの共存。サムスンが追求するスマートフォンの境地はそこにあるのではないか。それを具現化したGalaxy S6 edge。まさに温故知新の趣だ。使い続けているカバンと同じように、こいつとなら、すぐに仲良くなれそうだ。

(山田祥平)

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