ブラザーの電子ペーパーを使ってみた!!

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


ブラザーの電子ペーパーを使ってみた!!

 ブラザーから電子ペーパー・デバイスを使ったドキュメントビューワSV-100Bが発表された瞬間、くわッ!! ソレ!! ソレかも!! ソレだッ!! てな期待を抱いてきた俺。

ブラザーのドキュメントビューワSV-100B。9.7型の電子ペーパー(E Ink)を搭載した薄型デバイスで、PC上の様々なドキュメントを本体に転送可能/モバイルして閲覧できる

 ちょうど1年前くらいから、こーゆーふーに使えるビューワってないんだろうか? と妄想してきた。そんな拙者の前に、その妄想にかなり近いモノが登場してきた。ので、早速、試作機をお借りし、好き勝手に使ってみた。

 で、イキナリ俺的結論から言えば、個人使用において物足りないところは少々あるが、実用性および汎用性は非常に高いと感じた。てか、コレがあれば、PFUのScanSnap S1500を中心とした紙書類の電子化をさらにスマートに進められるとも感じ、マジで欲しい!!

PC上にあるプリントアウト可能なドキュメントを入れられる。ドキュメントはフォルダに分類して管理できるわりあい軽量なので、このように片手で持ってブラウズできる表示もキレイ。元ドキュメントにもよるが、PC上で作成した(スキャン画像でない)ドキュメントなら高い表示品位が得られる。表示のレスポンスも良好で、ストレスはほぼ感じられない

 のだが、しか~し、ブラザーダイレクトクラブでの直販価格が13万9800円というコトで、ん~む、個人使用にはハードル高過ぎのお値段。現状、手を出せないってのが正直なところだ。

 ともあれ、モノとしてはシンプルで使いやすい製品。ぶっちゃけ、この製品からドキュメントハンドリングの近未来形が見えたりするので、以下、SV-100Bの機能・使用感についてレポートしてみたい。

 なお、SV-100Bの詳細についてはブラザーの製品紹介ページをご覧いただきたい。

ドキュメントビューワSV-100Bってナニ?

 SV-100Bは電子ペーパーを使ったドキュメントビューワ。表示部に9.7型/電気泳動方式反射型/グレーズケール4階調表示の電子ペーパー(E Ink)を採用し、1200×825ドット(約150dpi)の解像度を持つ。A4サイズ前後のドキュメントを表示できるサイズ/解像度ですな。

採用された9.7型の電子ペーパーは1200×825ドット(約150dpi)の解像度を持つ。4階調のグレーズケール表示が可能。視認性はかなりイイっす145%の拡大表示も行える。拡大時は画面を90度回転させて閲覧することになる電源スイッチを含む6つのボタンと13個の選択キーを使って操作する。インターフェースはソフトウェア部も含めて非常にシンプルだ

 基本的な使い方は、PC上の各種ドキュメントをSV-100B(に入れたmicroSDカード)に転送して電子ペーパー上で表示するというもの。ドキュメントの保存先は容量2GBまでのmicroSDカード(付属)で、このなかに約1万ページのドキュメントを保存できる。なお、microSDHCカードには対応しない。

 もちろん、SV-100Bに対してmicroSDカードを挿抜できるので、ドキュメントを入れたmicroSDカードを複数枚持ち歩けば、1万枚以上のドキュメントを持ち歩いて利用できる

PCとUSB接続してPC上のドキュメントをSV-100Bに転送する。転送先は本体に挿したmicroSDカードで、元ドキュメントは転送時に独自形式に変換される。microSDカードスロットは電池室のなかにあるPC側のドキュメントはSV-Managerソフトウェア経由でSV-100Bに転送する。転送作業は、SV-Managerに対してドキュメントをドラッグ&ドロップする程度だSV-100Bドライバソフトウェアもインストールされ、プリントの出力先にSV-100Bが現れる。これに対してプリントすれば、SV-100B内にそのドキュメントを転送できる

 あとですね、ある意味イチバン良い方法かも!! とか思ったのが、SV-100Bへのドキュメント転送方法だ。付属のSV-Managerソフトウェアを経由して転送するが、転送方法のひとつとして“ドキュメントをSV-100Bに対してプリントする”ってのがある。

 つまり、印刷に対応するアプリケーションで開けるドキュメントなら、何でもSV-100Bに転送できるというわけだ。Microsoft Officeドキュメント、PDF、ウェブページ、写真などなど、何でもイケる。

 まあ4階調のグレーズケールになり、かつ、解像度が約150dpi程度となるので、画像などの鑑賞には全然向かないが、テキスト+参考画像程度の様々なコンテンツをSV-100Bに入れて持ち歩けるってのがイカス。

PCの表示キャプチャ画像をSV-100Bに対してプリントすると、こんなふうに転送&表示が可能こちらはIEからSV-100Bに対してウェブページをプリントアウトしたもの。地図ページなんかを転送して使うと便利そうですな写真もプリントしてみた。4階調表示だが、ナニが写っているのかくらいは十分確認できる

 あと、ポータビリティも上々。外形寸法は横幅237×奥行き247×高さ15.5mmで、小型のペンタブレット的なサイズ。質量は電池などを含んで約600g。ビジネスバッグに入るサイズで、携帯感は雑誌1.5冊分くらいって感じ。モバイル利用も現実的だ。

片手で保持し続けて閲覧するのもわりと余裕。写真での印象よりもずっと軽いのだ専用のソフトケースケースが付属する。ソフトケースと言っても、ケース周囲にSV-100B本体を保護するパネルがあり、ケースを閉じればSV-100Bを傷めることはなさそうだケースを閉じた状態。フタ部分にあるマグネットにより、シッカリと閉じる。フタを開けば本体を使用できる。ケースに入れた状態でUSBポートなどにもアクセスできる

 この携帯性が良さそ~なデバイスのなかに、1万枚くらいのドキュメントが入って、持ち歩けちゃう。PCレスで多量のドキュメントを見られるとなると……イロイロな妄想が現実に近づきますな!!

視認性バッチリ、速度も良好

 SV-100Bに対する強い印象は、視認性の良さ。PC上のドキュメントをプリント(転送)したものの多くが、非常に読みやすい。

 でも、もう一方の結果から言えば、元ドキュメントがあまり精細でないもの──例えばScanSnapなどのドキュメントスキャナで、細かな文字の書類をスキャンした結果のPDFなんかだと、ソレナリの見栄にはなる。が、階調が4段階に圧縮され、ややコントラストが高い見え方になったりするので、テキストなんかは十分快適に読めるレベルで表示される。

電源装置の(紙の)説明書をスキャンし、PDF化したドキュメント。十分内容を読める表示となったExcelデータを転送したもの。テキストデータなどから生成したファイルは細かい字でもけっこー精細に表示されるそれを拡大したところ
貴和製作所が販売しているアクセサリ作りのテキスト。紙のドキュメントをスキャンしたものをSV-100Bに転送した文字がやや細かめのテキストなので、拡大しないと読みづらい拡大するとこのような表示に。十分読めますな
NECが発行しているICのデータシート。元ドキュメントはスキャン画像などではないPDFだ拡大したところ。ピン番号などの細かい部分もクッキリ表示されたこういった表組みもバッチリ読めるレベルだ

 表示の鮮明さ見やすさに加え、反応速度が思ったより速くて快適であった。電子ペーパーと言うと、省電力だが表示がイチイチ遅い、というイメージがあったが、SV-100Bは「これならまあいいか」的なレスポンス。例えばページめくりは、ボタンを押して1秒かからない感じで、紙の資料のページをめくって新たに開いたページに視線をやるのと似た感覚の“待ち時間”だと思う。

 パラパラパラッと高速にめくれない(ページ早送り的な機能はある)ので、速くブラウズするという点では紙のほーがずっと快適だ。が、「あの資料はここに入れている」とか「会議で必要な資料を入れておいた」という意識のもとでSV-100Bをブラウズすることになるので、「いくら探しても見つからない!! ……し、ページめくりが遅くてウゼぇ!!」という印象は出てこない。

 それと、バッテリーの保ちも良くて安心感がありますな。仕様上、1分単位でページ切り替えを行なった場合は約83時間のバッテリー持続時間があるSV-100B。

 ご存知のとおり、電子ペーパー自体は表示の切り替え時に電力を消費し、表示継続時は電力を消費しない。ドキュメントをジックリ読んでいるときはSV-100B全体として省電力状態なんですな。

 なので、実質、ほかのどの表示系デジタルハードウェアよりも電池切れを気にせずに済むのが嬉しい、っていうか大きな安堵感がある。

書き込めたら、約256倍、買う気が起きる

 意識してSV-100Bに入れて、持ち出した先で閲覧するような、例えば出先で必要になるビジネス系ドキュメントなら、SV-100B上で十分実用的に扱えると感じだ。

 ただ、紙との違いでイタイのは、書き込めないこと。

 俺の場合、打合せや取材のたび、地図とかリストとか資料をプリントアウトしがちだ。資料などがある程度多かったり、長時間の会議などがある場合はノートPCを持参する。が、頻繁に移動したり、それぞれの打合せが短時間だったりする場合、やっぱり紙が便利。パッと開いて、その場で得た/知った/生まれた事柄をサッとメモれたり、逆に項目を消していったり、みたいな作業をペン1本で済ませられるからだ。

 これに近いことをSV-100Bでデキちゃったりなんかしたら、俺、即、SV-100Bを買うと思う。今すぐ直ちに気絶!! そして気づいたらSV-100Bを持った俺がPCユーザーよりスマートに資料を閲覧し、素早くメモを取り、超効率良く仕事を片付けている予感!! みたいな。

 とは言っても、雑多な資料を全てSV-100Bで持ち歩けるという点はやはり魅力的だ。手間的にはちょっと遠回りにはなると思うが、SV-100Bに加えてメモ帳があればイイって話ですもんね。

 SV-100Bは閲覧だけで書き込みはできないデバイス、てな前提で、拙者的にヤリたいことは……あ、上記に書いたことですな。事前にメールで送られてきたりするPDF資料、訪問先の地図、連絡先、細々したスケジュールなどをSV-100Bに入れて取材系仕事に持ち出したり。

 あるいは、趣味の工作系作業に。最近はネットの情報を参考にしつつ手を動かすことが多い。例えば、電子部品のデータシート(PDF)を見つつ部品を配線したり。釣りの仕掛けを作ったりするときも同様。糸の結び方からフライの巻き方あたりまで先人のウェブサイトを参考にするが、これもSV-100Bすなわちフライ作成手順などを手元に置いて作業できると、イロイロ広がる──PCがない部屋で作業できたり、遠征先でもOKだったり。

 ちなみに、SV-100BはA4サイズの用紙の横幅を少し広げた程度のフットプリント。机上に置いてもそーんなに場所を取らないので、上記のようなワークベンチでの使い方も現実的だと思う。書見台があればもっと快適かも。また、PCのディスプレイと違って、好みの位置/向きで置ける。これが案外快適だ。

 例えば、ICのデータシートや回路図をPCのディスプレイ上に表示するとき、作業の混乱を減らすため、手元の基板とか部品を画面表示に合わせて回転させることがよくある。SV-100Bなら紙のデータシートと同様、本体の向きを変えれば済む話なので、実作業においてはPCのディスプレイよりSV-100Bのほーが便利である。

 ……でも、電子回路図表示に限って言えば、やっぱり書き込みたいですな。配線済み部分を上塗りするとか、調整した定数を回路図上にメモるとか、それがSV-100Bにデキればさらに実用性が高い。

個人使用における難点

 SV-100Bは、一部の仕様や実売価格から考えて、恐らくは業務用のハードウェアだと思われる。例えば……一気に仕様変更となった製品のサービスマニュアルをサービスマン全員に配布して持ち歩かせる、って簡単におっしゃいますけどね部長!! それ、いくら費用かかるかご存知です!? 的な現場に、サービスマニュアルの度重なる更新も低コスト、携帯も現実的なSV-100Bをどうぞ~、みたいな。

 でも、一応一般にも市販されているので、個人使用という観点からの難点をいくつか。なお、SV-100Bの機能などについては、ココから製品マニュアルなどをダウンロードできるので一読してみておくんニャさい。

 まず、上記、書き込めないこと。書き込めれば紙に勝てるかもしれないビューワとして、さらに磨きがかかるのでは、てな話ですな。拙者的には、ドキュメントに新たなレイヤーが重なって、そこにユーザーが書き込めて表示されれば、書き込み済み状態と元ドキュメント状態を変えられて、紙じゃデキないことが実現するなぁ、とか思ったりする。

 それから、拡大やスクロール。SV-100Bでは、100%表示と145%の拡大表示のどちらかしか表示モードを選べない。多くのドキュメントではこの拡大倍率で済むことが多いが、もっと拡大して表示させたいというケースも少なくない。ので、もう少し倍率の高い表示モードがあるとより快適だと思う。

 スクロールの件だが、SV-100Bでは拡大表示のときにスクロールが可能だ。が、ドキュメントがある程度荒い段階でズレるようにスクロールするので、ドキュメント中の一部表示のみ(例えば表組み)を中央に表示させるようなことができないケースがある。電子ペーパーなので、細かい段階でのスクロールだと表示速度方面の問題が起きることはわかるが、もーちょっとだけ自由度が欲しかったところ。

 それから、専門職の人が専門的なマニュアルなんかを扱う場合、SV-100Bのシンプルさは実用性につながると思う。例えば、ドキュメントのページ数を入力して閲覧したり、複数のページに“しるし”を付けてそのページ間をジャンプしたりと、ドキュメントの内容を十分把握しているユーザーには「この機能があれば十分」という検索機能がある。

 のだが、何でもSV-100Bに入れちゃってペーパーレスだしモバイルだしPC要らずな感じになろう!! てなシロートにとっては、ドキュメントの各ページのサムネイル表示ができなかったりするのは残念。

 拙者の場合、153ページの雑誌(スキャン/PDF)を入れたが、特定の記事を探すのがタイヘンであった。結局、目次ページに“しるし”を付けておいて、いつも目次ページから読み、目的の記事をページ数入力で検索(あるいは事前に各記事に“しるし”を付けてのジャンプ)、てな操作手順になる。

 ので、ページ数の多いドキュメントは、どーにもSV-100Bに入れる気になれない。でも、表示が読みやすく、ハンドリングも平易なSV-100Bなので多用する気にはなるのだ。ページ数の多いドキュメントの各ページをサムネイル表示でき、そこからダイレクトに目的のページへとジャンプする機能があればなぁ、と思う次第である。

 あとは、やっぱり、価格ですな。ブラザーダイレクトクラブでの直販価格が13万9800円。どー考えても業務用ハードウェア価格。やっぱりまだ電子ペーパーっつー部材は高いんですかねえ。

 でも、電子ペーパーを使ったハードウェアはこれからのモノ。ペラ一枚で超軽量でスゲく省電力なデバイスの上に、新たな情報がどんどん表示される!! こーゆーデバイスでテキストや図版を読んだり見たりして、原料とか印刷とか流通とかいった情報とはけっこー関係ないロスが省かれた世界になって欲しい!!

 ぶっちゃけ、SV-100Bの表示品位や反応速度は「これなら、まず、ビューワとして実用的」とか思えたりする。使用感も平易。こーゆーモノはゼヒ、えー例えば官公庁とか教育機関とかに一気に納入して価格下げて一般にも普及させておくんニャさい>ブラザー、とか思った。でも、拙者が思ってもそーそー簡単に普及しないのが現実なのかな~、とも思った。

2009/6/29 12:45