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【WIRELESS JAPAN 2010】
ドコモが見据える未来〜山田社長が今後の施策を紹介


ドコモ山田氏

 「WIRELESS JAPAN 2010」初日となった7月14日、NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏が「世界のモバイル動向とドコモの取り組み〜スマート イノベーションへの挑戦〜」と題し、基調講演に登壇した。

 現在のトレンドを踏まえ、今後ドコモが数々の取り組む施策が紹介された。将来的な実現を目指す先端技術のほか、今年12月にサービスインするLTE、スマートフォンやiモード端末への取り組み、携帯向けマルチメディア放送などについて語られた。なお、SIMロック解除に向けた取り組みについても紹介されたが、こちらは別記事をご覧いただきたい。

 

「100万台販売を目指す」「冬モデルでは7機種」

スマートフォンでの取り組み
スマートフォンにもiモードで好評なサービスを取り入れる

 徐々に日本でも利用が進みつつあるとされるスマートフォンについて山田氏は、今年度100万台の販売を目指すと語る。4月に発売された「Xperia」は、今秋OSがバージョンアップされることが明らかにされていたが、10月を目処にすると時期が明確にされたほか、13日に発表された「spモード」については「スマートフォンでiモードメールが利用できるようになる。周囲でもiモードメールが使えたらスマートフォンを買ってやろうという人が多くいた。(spモードで)使い勝手が一気に良くなるのではないか」と述べた。

 また、夏モデル発表会でサムスン製「GALAXY S」の投入(10月〜11月目処)を明らかにしていたが、山田氏は冬モデルの発表時には「当初、5機種くらい(の投入)と言っていたが、ニーズの増加を受け、7機種くらいにしようと考えている。スペック、デザインなど多彩なラインナップにして、個々人にあったスマートフォンを提供したい」と述べ、当初予定よりもラインナップの増強を図る姿勢を示した。

 これらの冬モデルでは、FeliCa(おサイフケータイ機能)やワンセグを搭載するスマートフォンも一部存在することを明らかにする一方、2011年度以降、「iコンシェル」「iチャネル」といったiモード端末で導入済の機能もスマートフォン向けに展開する方針を明らかにした。

ドコモマーケットでスマートフォン向けコンテンツに注力 spモードについて

 

iモード端末の取り組みも強化

iモードにも「ドコモマーケット」を

 山田氏は「(話題は)スマートフォンばかりですが、iモード端末をブラッシュアップさせたい」と述べる。

 その取り組みの施策として紹介されたのが「ドコモマーケットのiモード版」(山田氏)だ。ドコモマーケットは、Android端末向けに提供されているコンテンツ配信サイトで、数あるAndroid向けアプリのうち、ドコモが推奨するアプリやドコモ独自の動画コンテンツなどを配信している。iモード向けにも公式メニュー(iメニュー)でのコンテンツ提供や、いわゆる一般(勝手)サイト/一般アプリの提供が可能となっているが、山田氏は「オープンなアプリケーションの環境は、残念ながらiモード端末には載っていない。公式コンテンツは2万サイト存在するが、個人のクリエイターが提供するのは難しい」と述べ、従来よりも自由度の高いアプリ配信環境の構築を示唆する。

 山田氏は「概念的には、“ドコモマーケット”は百貨店を作り、その中に棚を作ってコンテンツを載せてね、と展開している。(ドコモマーケットのiモード版では)ドコモ側のサーバーでコンテンツを管理して、iモードですぐ検索できる。コンテンツクリエイターは、iモードにもゲームを出し、スマートフォンにも出せる。2010年11月を目処にサービスを開始したい」と今秋にも実施する方針とした。ただ、アプリの開発環境など、詳細な情報については触れられなかった。

 

LTEへの投資は前倒し

LTEへの設備投資は前倒し

 2010年12月からサービス提供を行う予定の「LTE」は、従来よりも高速かつ、遅延を押さえた通信技術だ。ドコモのFOMAで利用されている通信方式「W-CDMA」の発展版として開発され、国内各社が導入する予定となっている。

 山田氏は、2010年におけるLTEの設備投資額は350億円になるとし、当初3年間の設備投資は3000億円になるとする。同氏によれば、当初は5年間で3400億円程度の設備投資を見込んでいたものの、データトラフィックの動向をふまえ、設備投資を前倒しすることになった。ポイントとなるのは「(現行の)HSPA設備を増設するか、LTEで増設するかの兼ね合い。基本的にネットワークの拡張はHSPAではなくLTEでやっていきたい」と山田氏は語る。現行設備の展開を考えていた部分をLTEに置き換えるとのことで、3Gエリアにかぶせるような形で東名阪からLTEのサービスエリアを構築していく。

 まずはデータ通信端末をリリースし、いわゆる音声端末は来年の提供を予定する。端末側ではLTEと3Gのデュアル対応が予定されている。利用する周波数帯は2GHz対(5MHz幅、10MHz幅)で一部屋内施設では下り最大75Mbps、屋外エリアでは下り最大37.5Mbpsになるという。現在、ユーザーから高い評価を受けているというサービスエリアについては、LTEになっても「その評価を維持したい」(山田氏)として、重要な取り組みの1つに位置づけられる。

 LTEになる最大の特徴は「低遅延(通信のレスポンスが従来よりも早くなる)」とする山田氏は、従来は端末側で行ってきたさまざまな処理を、LTEではサーバー側で処理すると予測。スピーディに端末とサーバーがデータをやり取りすることで、高速かつ高度な処理をまるで端末上で実行している、といったサービスが実現できるとして、AR(拡張現実)や自動音声翻訳といったサービスの実現性が高まるとした。

トラフィックの伸びが著しい LTEでは「低遅延」を活かす

 

携帯向けマルチメディア放送は「利用しやすい料金水準に」

携帯向けマルチメディア放送について
マルチメディア放送では、料金水準が肝要と主張

 地上デジタル放送への完全移行により、これまでアナログテレビが利用してきた周波数が2011年7月以降、空くことになる。この“電波の空き予定地”をいかに利用するか、総務省で検討が重ねられてきたが、その用途の1つが「携帯端末向けマルチメディア放送」だ。現在のワンセグのようなリアルタイムの放送に加えて、いつでも端末上で好みのコンテンツを再生できるような「蓄積型放送」、映像以外のコンテンツ配信などが想定されている。

 名乗りを上げているのは、KDDIとクアルコムによる「メディアフロージャパン企画株式会社」と、NTTドコモやフジテレビなどが出資する「mmbi(株式会社マルチメディア放送)」の2社で、このうち1社に免許が与えられる予定となっている。

 山田氏は「mmbiは2012年4月1日サービス開始を予定しており、新たな放送媒体となる。リアルタイム放送(ストリーミング配信)や蓄積型放送のほか好みのコンテンツを推薦するリコメンド機能などを実現する」と紹介。ただ、ユーザーの拡充には「充実したコンテンツ」「利用しやすい料金水準」「対応携帯端末の早期普及」の3つが必須とする。

 このうちコンテンツは放送局との連携により懸念が払拭されるとし、端末についてもNTTドコモとソフトバンクモバイルが導入する予定として、開始後5年で5000万台普及されるとした。

 もっとも説明に時間をかけたのは料金水準の話。同氏は「いくらなら加入してもらえるか。BeeTV(エイベックスと展開する携帯向け動画配信サービス)をやっているが、1年ちょっとで120万会員になった。これはコンテンツが優秀で、300円(税込価格は315円)という料金」と述べ、利用料の設定が大きな鍵になると指摘する。プレミアムコンテンツは付加料金を設定できる可能性はあるものの、基本的に手軽な料金体系が求められるとして、そのためにはインフラを安価にする必要があると主張する。mmbiでは、首都圏をカバーする放送用アンテナを東京スカイツリー(現在建設中)にして、周辺1600万世帯をカバーする。東京近郊だけではなく、栃木や群馬といった東京よりやや距離があるエリアまで1局でカバーするとして、放送用インフラを安価にでき、料金水準の低廉化を実現できるとした。さらに放送出力を現状の地上デジタルテレビよりも10倍程度大きくすることで、宅内の視聴環境を向上させると説明する。講演後の囲み取材で、山田氏は、「地上デジタルテレビは地上10mで電波が届くよう調整しているが、マルチメディア放送では地上1.5mで調整する」として、従来よりも受信しやすい環境を作るとした。

 また既に米国で商用化されているMediaFLOに対して、mmbiが推進するISDB-Tmm方式はまだ実用化されていないことを指摘されると「今回のブースをぜひご覧ください」と述べ、仕上がり具合に自信を見せた。

 マルチメディア関連では、電子書籍事業を手がけたいと簡単に触れたものの、詳細は語られなかった。この件についても囲み取材で問われた山田氏は電子書籍については、新会社を作ることも選択肢の1つとする。電子出版を行うことでユーザーにどういったメリットがあるか重要で、料金がもっともポイントになるとして、マルチメディア放送と同じく、安価な料金設定が必要とする。

 

“スマートイノベーション”

スマートイノベーションに挑戦

 山田氏が今回の講演で、副題に掲げた「スマートイノベーション」とは何か。同氏は“スマート”という言葉を、「世代や地域を越えて豊かな生活ができる社会の実現」と定義する。幅広い人々における豊かな社会を実現するため、ドコモは寄与したいと語る同氏は、具体的な取り組みとして「サービスのパーソナル化」を挙げる。たとえばiコンシェルはその一例とされ、最寄りのスーパーのタイムセール情報などの配信が実現するとし、3月時点で420万会員、今年度末で790万会員を目指す中で、1000万会員を超えれば新たな広告媒体としての価値を持つとする。ただ、そこまでの規模に至るには、都心部だけではなく、いわゆる地方でのニーズを満たす必要がある。電車や自動車の交通情報は都心部では有益でも、移動する人数が都心より少ない地方では、そうしたコンテンツの重要性は下がる。そこで、地域に根ざした店舗がエンドユーザーに情報配信できる仕組みを整えるという。山田氏は「パン屋さんがサーバーを立てて、情報配信するのは難しい。そのあたりをドコモが引き受け、情報はパン屋さんが提供するというのをやっていきたい」と説明した。

サービスのパーソナル化 iモード検索での取り組み
ARでの取り組み 多彩なサービス展開を狙う

 また5月1日からiモードの検索エンジンが、NTTレゾナントのgooに切り替わったことにも触れた山田氏は、「日本ならではのローカルコンテンツに強いgooにパートナーを変えた。“花火”で検索するとgooが保有する花火情報へアクセスできる。携帯電話での検索機能についてニーズを探ってきたが、一番多いのは住んでいる地域の周辺情報を手っ取り早く欲しいということ」と述べ、PCサイトの検索は、インターネット全般に強いグーグルのエンジンを用いて、要所要所にあわせたパートナーとの連携を行うとした。

モバイル空間統計 平日6時の東京
平日10時の東京。オフィス街を中心に人口が密集する 22時の東京。夜間になるとオフィス街から繁華街へ人が移動した様子がわかる

 ユニークな取り組みとして紹介されたのが「モバイル空間統計」と呼ばれるもの。これは、ワンタイム保険など異業種との連携を進めるソーシャルサポートサービスの構築戦略の一環で、携帯電話の位置情報を収集・蓄積して、エンドユーザーの移動履歴を分析し、新たなサービスへの発展を目指すというもの。個人情報は廃棄し、ただ人が移動した情報だけを収集するため、誰がどこへ行ったかということはわからないが、平日昼間は都心部へ人が集まり、夜になると周辺の住宅地へ人が帰っていく様子を示すグラフが披露された。収集できる位置情報の数は「10の15乗」(山田氏)とのことで、1000台のサーバーを用いて、分析する。こうした膨大な情報の検索・分析を同社では「ペタマイニング」と呼んでおり、全てのユーザーの位置情報を把握できれば、大規模災害の発生で帰宅できないユーザーも判明するとのことで、防災用途などでの応用を目指し、実証実験を進めている。

ソーシャルサポートサービスと銘打ち、保険など異業種とのコラボを促進 医療分野でも展開
スマートイノベーションを支える技術の一覧も

 

世界市場への取り組み

 山田氏は、世界のモバイル分野の動向を紹介。無線技術のスピーディな進化により、国内外でデータ通信の需要が高まっているが、日本はデータ通信のARPU(ユーザー1人あたりの月間収入)が他国よりも多く、「サービスレベルで他国へ打って出るチャンスがあるのではないか」と語り、実際にドイツ企業(ネットモバイル社)への出資を通じて、欧州のオペレーターへコンテンツ提供を開始したことも紹介した。こうした取り組みは、欧米だけではなく、インドなどでも展開する。

 そのインドでは、現地企業への出資により、tatadocomoというブランドで携帯電話サービスを展開している。既にユーザー数は7000万人を超えたとのことで、これから3Gサービス用の周波数オークションが行われるインドでさらなる成長を目指すとした。

他国と比べ、データ利用が進む日本 海外ではスマートフォン市場が成長
国内外で多様なデバイスの利用が促進すると予測 グローバル展開について
海外の主要出資先 ドコモではユーザー満足度向上を追求する方針
解約率について 2009年度の取り組み

 



(関口 聖)

2010/7/14/ 13:46