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NFC普及はいつになる? 3キャリアのキーパーソンが語る展望


 10日、東京ビッグサイトで開催中の展示会「IC CARD WORLD 2011」会場において、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの非接触IC関連事業担当者によるパネルディスカッションが行われた。

 出席したのは、NTTドコモフロンティアサービス部おサイフケータイ事業推進担当部長の中村典生氏、KDDI新規ビジネス推進本部事業開発部モバイルIC企画グループ担当部長の阪東謙一氏、ソフトバンクモバイル海外事業推進本部モバイルペイメント企画室室長の木下直樹氏で、モデレーターは山本国際コンサルタンツ代表の山本正行氏が務めた。

 今回のディスカッションは、ソフトバンクモバイル、NTTドコモ、KDDIの順で、それぞれが手がける実験などが紹介されつつ、今後のNFCの導入スケジュールに関して、各社から興味深い見解が示された。

 

各社が進める実験

 まずはソフトバンクモバイルの木下氏から、2月にスペインで開催された展示会「Mobile World Congress 2011」(MWC2011)での、NFC(Near Field Communication、次世代非接触IC規格)に関連した展示の報告でスタート。たとえばNXPブースには、NFC対応の自動車が展示され、NFC搭載ケータイをかざしてドアを開けられるようになっていたり、サムスンブースではGALAXY S IIを使ったデモが披露されていたりしたことが紹介された。つづいて木下氏は、ソフトバンクモバイルがマスターカードなどと協力して実施している実験にも触れた。同実験では、横浜や舞浜にリーダーライターを設置して、HTC製Android 2.2搭載端末を使ってNFCのサービスを検証している。

ソフトバンクモバイルが進めるNFC関連のトライアルについて NFCアプリのユーザーインターフェイス

 NTTドコモの中村氏は、MWC2011では、過去3年間のNFC関連展示で最も来場者が多かった印象と述べ、手応えがあったとする。またNFCの導入がもたらす影響については、既にFeliCaによるおサイフケータイによって日本だけ実現している、といった部分が海外と共通化する可能性が高まり、サービスの拡大が期待できると指摘した。

NFC関連の活動の概要 KTとのサービスローミングの検討
日韓の事業者が協力 日韓でのサービスを契機に、アジア、世界へと展開する

 KDDIは、ソフトバンクモバイルとともに、昨年7月、韓国SKテレコムとNFCに関して協力する方針を発表。そして今年に入って韓国内でもフィールドトライアルを開始した。KDDIの阪東氏は、昨年7月の合意が、今年2月にNTTドコモが韓国のKTと発表したものと同等として、既にトライアルに入っていることで、ドコモ側よりも一歩先んじたステージにあることを印象付けた。たとえば韓国内の焼肉店にType AのICタグを貼ったスマートポスターを掲示し、NFC対応ケータイで読み取ると、無料で飲料がもらえるといったクーポンが入手できるという。また韓国内のコンビニ「GS25」(韓国で約3000店舗)での実験なども紹介。ソフトバンクモバイルの木下氏によれば、韓国ではクレジットカードを金融機関が発行し、加盟店獲得(アクワイアリング)は専門会社が担当するとのことで、韓国のアクワイアリング事業者にとってはさまざまなカードブランドを取り入れたほうが加盟店に喜ばれるのではないか、という。

昨年7月にKDDIとソフトバンクモバイルはSKテレコムと覚書締結 今年2月には実証実験を開始
韓国の飲食店での事例 韓国内のコンビニでも
日本国内での実験 DNPによる実験の概要
T-Engineフォーラムによる実験の概要 免許証を使った実験

 このほか日本での実験としては、銀座においてT-EngineフォーラムがICタグを設置して情報を入手できる環境を整えている。このタグ設置箇所には、二次元コードも置かれ、NFC非対応の携帯電話でもコンテンツへアクセスできるようにしており、阪東氏は「NFC導入から普及まで2〜3年かかるだろうから、それまではNFC、FeliCa、二次元コードが用意されているほうがいいだろう」と語った。またIC搭載免許証の実験では、本人確認の仕組みとして、店頭で免許証がコピーされたり、免許証番号が手書きメモで控えられたりしている現状を踏まえ、免許証情報をNFCケータイにコピーして、店頭のリーダーライターにかざす、という使い方も実験しているとのこと。国民IDの議論が最近話題になってきたことから、阪東氏はその方面での進展を期待する一方、海外の動向として、ドイツでは免許証番号のデジタルコピーが導入され、民間での利用が認可され、先進的な利用が進んでいることを紹介した。

ニースでのNFC導入の概要

 モデレーターの山本氏は、フランス・ニースでの事例を紹介。NFC対応のタグが街中に設置され、トラム(路面電車)のチケット購入などでNFCケータイをかざす、といった使い方が商用化されているものの、設置箇所の数などから「日本と比べると、日本から視察に訪れた人はがっかりする方が多い」と述べ、導入が始まったばかりの段階とする。商用化自体も2007年〜2008年が目途とされていたところがようやく2010年に実現したとのこと。ただしフランスの携帯電話事業者のOrangeの関係者から「今後の新機種にはNFC搭載を義務付けたいと思っている、との発言もあった」とのことで、積極的な姿勢に転換したとする。

飲食店での事例 トラムでの事例
美術館での事例 その他の事例

 

NFC普及のスケジュール

ドコモが狙うNFCへの移行
FeliCaから段階的にNFCへ移行する計画だ

 各社の展開が紹介されるなか、最も興味深い議論だったのは、NFCの展開スケジュールだ。

 3社のうちドコモでは、2012年を目処にNFC対応機種をリリースする予定だが、まずはFeliCaチップが端末内に、TypeAおよびTypeB対応チップがSIMカードに内蔵され、最終的にはFeliCaとTypeA、TypeBの3つがSIMカードに入るという形を目指す。途中のFeliCaが端末内、TypeAとTypeBがSIMカード、という形を実現する際には、NFCチップがその2つを仲介するような位置付けになる。

 NTTドコモの中村氏が、同社のスケジュールを紹介し、段階的にFeliCaのサービスをNFCに統合させていくビジョンを紹介すると、ソフトバンクモバイルの木下氏は「相当、高くつきそうだ。お金持ちは違う」とコメント。中村氏は費用がかかるとの見方を否定しつつ、現在FeliCa上でサービスを展開する事業者にとっては急激なNFCへの移行は、サービス運用などで若干影響がでるとする。

 KDDI阪東氏は、「(移行スケジュールは)KDDIもドコモと同じように考えている。今夏には、世界的にいろいろとNFC搭載端末が出てくるだろうが、FeliCaと同じようにしていくのはちょっと難しいのではないか」と述べる。

 こうした見解が示されつつも、木下氏は「僕はあんまり興味がない」と語る。さらに中村氏に対して「Edyを海外でも使えるようにするの?(中村氏がいろいろ検討していると回答すると)大変そうですね」とも述べ、既存のFeliCa向けサービスとの整合性について、ドコモ側との考えの違いが明確になった。木下氏がそうした見解を示す真意はどこにあるのか、阪東氏は「NFCとUICC(SIMカード)の両方をコントロールするのは、日本向けに新たなチップを開発しなければ実現できない」「FeliCaと一緒に、ということであれば早くともあと1年はかかる。木下氏が『興味がない』というのは、たぶん去年から今年にかけて表われた3つのトレンドが影響しているのでは」と補足する。

左からドコモ中村氏、KDDI阪東氏、ソフトバンクモバイル木下氏

 その3つのトレンドとは、「ソフトバンクモバイルが牽引する形で国内市場のスマートフォンが普及・促進されていること」「海外製の端末が増加し、Androidのおかげで使い勝手でも問題がなくなってきていること」「技術面では今秋以降の携帯電話の多くにNFCが搭載できる環境になると見えてきたこと」という。特にAndroid 2.3により、リーダーライターモードに加えて、ICカードモードの開発もしやすくなったことから、「黙っていてもNFCケータイはすぐ調達できるようになる。標準のTypeA、TypeBならすぐ(にサービスが提供できる)ということだと思う」(阪東氏)と、海外メーカーによるスマートフォンの多くでNFCチップが搭載されることの影響が根底にあるとする。

 この阪東氏のコメントを受け、木下氏は「圧倒的にプレーヤーが増える。フランスのOrangeの関係者ともよく会うが、一生懸命展開しようとしている」と述べる。そのOrangeを含むフランスの3事業者が100万台のNFCケータイを調達する方針を掲げたことに触れた同氏は「今年は格段にスピードが違う。GSMAと国際航空運送協会(IATA)との間でも、旅客便のチェックインや空港ラウンジの利用などで、NFCを使って利便性を向上させるという話が行われている。日本でどうの、韓国でどうのというレベルを遙かに超えた世界になってきている。ここまで加速するとは個人的にも思っていなかった」と語り、海外におけるNFCの急速な導入について考慮する必要性を指摘した。

 中村氏も、NFCの急速な導入は肯定しつつ、「海外はまだまだ。(フランスで100万台という話も)背伸びして100万台。今年から来年にかけて徐々に伸びるのではないか。ただ、方向性は変わらないだろう」とする。これについては木下氏も「(おサイフケータイ導入直前だった)7年前の日本のようだ」と同意すると、中村氏は「日本では、この一年でFeliCa搭載機(おサイフケータイ)は2000万〜3000万台(出荷台数のことか)あるが、海外との差はすぐに変わらない。FeliCaのチップ業界としても無視できない。特殊なチップの開発もチップベンダーの意欲が高い」と述べた。

 ドコモが国内で普及したFeliCa向けサービスを踏まえた展開を目指し、その方針と同等の流れとするKDDIに対し、海外製端末のNFC搭載や海外での普及速度からスピーディな展開を志向するソフトバンクモバイル、という形だが、KDDIの阪東氏は「具体的には近々発表するが、雰囲気としてはドコモが進めるタイミングが日本のNFCが立ち上がる時期だろう。黙っていても、海外端末にはNFC機能だけ入ってくる。リーダーライターモードだけのNFCケータイであれば来月にも、(たとえば)ソフトバンクモバイルから発売されてもおかしくない、と言える状況」としたほか、木下氏は「日本だけではなく、世界的に、今夏以降、NFC搭載端末が登場するだろう。それをどう販売するかはこれからの話。ただ端末だけあっても使えるインフラがなければ意味がない。昨年まではNFC導入はいつか、どうなるのかと言っていたが、時期は近づいてきたのでは」とした。また中村氏は「実際にフェリカネットワークスでチップ開発が進んでいる。FeliCaのサービスが使える形で、2012年を目標に進めていきたい」と語っていた。

 

ソニーブースにNFC対応タブレット

 NFC関連製品が展示される会場の一角にあるソニーのブースでは、NFC対応のタブレットが用意されていた。これは、タブレットにNFC機能を持たせて、カードやおサイフケータイをかざして連携できるようにしたもの。

 タブレットの1つは、NVIDIAのTegra 2を採用したもので、今後端末メーカーがタブレットを開発する際、参考にできるリファレンスモデルという位置付け。Android 3.0搭載タブレットで多く採用されているTegra 2でも、NFC対応がスムーズに行えるよう用意されたものだという。

 このほか同社ブースでは、NFCを使って機器と機器を結びつけるHandover機能によるデモも紹介。テレビとスマートフォンのデモでは、スマートフォンをテレビのリモコンにかざすとペアリングが成立して、スマートフォン内の映像コンテンツなどをテレビで再生する、といった使い方が実現できるとしていた。

 このほか、会場ではビー・ユー・ジーのブースで「ピットタッチ」が、フェリカネットワークスのブースでおサイフケータイ対応のAndroid端末による「Push機能」などが紹介されていた。

ソニーブースで紹介されていたタブレット 画面右にリーダーライターのエリア
かざすとURLが通知され、サイトへ誘導 Tegra 2搭載でNFC対応のリファレンスモデル
テレビとの連携 リモコンにかざしてコンテンツ連携
NTTの光iフレームとの連携も フェリカネットワークスのブースではPUSH送信のデモ
BUGブースのピットタッチ・プロ こちらは音を使ってiPhone向け販促も可能にする技術に対応したピットタッチ・ミニS

 



(関口 聖)

2011/3/10 17:44