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損しないためのケータイ料金再入門

第14回:ドコモのツートップは本当にお得?

 鳴り物入りで始まったNTTドコモの「ツートップ」。これは、「Xperia A SO-04E」と「GALAXY S4 SC-04E」の2機種を重点的に販売する施策で、プロモーションに比重をかけた上で、価格も抑えている。

 確かに、2機種の“実質価格”を見てみると、Xperia Aが新規で5040円、GALAXY S4が新規で1万5120円と、比較的安価だ。機種変更はXperia Aが2万5200円、GALAXY S4が3万5280円だが、ドコモとの契約が10年以上のユーザーには、24カ月間、420円の「月々サポート」が増額される「ありがとう10年スマホ割」が適用される。さらに、初めてスマートフォンに乗り換えるユーザーには、同額の「はじめてスマホ割」も用意されている。この2つのキャンペーンが適用された場合、機種変更時の実質価格もXperia Aが5040円、GALAXY S4が1万5120円と、新規契約と同じ価格になる。

Xperia AとGALAXY S4は、ドコモの「ツートップ」としてプロモーションの量だけでなく、価格面でも優遇されている

 ただし、これはあくまで各種条件を満たしたうえできっちり2年間使ったときの“実質価格”であることは覚えておきたい。というのも、Xperia AとGALAXY S4のどちらも、本体価格は他の機種より高めに設定されているからだ。参考までに、夏モデルの他の機種と本体価格を比べてみたのが、以下の表になる。なお、価格については本誌7月4日の調査に基づいている。筆者が独自に調べた限りでも、都内の家電量販店はおおむねこの価格で販売されていた。

端末名 本体価格
Xperia A SO-04E 7万8120円
GALAXY S4 SC-04E 8万3160円
AQUOS PHONE ZETA SH-06E 7万4760円
ARROWS NX F-06E 7万4760円
ELUGA P P-03E 7万2240円
MEDIAS X N-06E 6万7200円
AQUOS PHONE si SH-07E 6万7200円
Optimus it L-05E 6万7200円

 この表を見れば分かるように、Xperia Aの7万8120円とGALAXY S4の8万3160円は、むしろ他の機種より割高だ。それでも2年間使った際の実質価格が安いのは、月々サポートの額が大きいからにほかならない。各機種の月々サポートは以下のとおりだ。

端末名 月々サポート(新規) 月々サポート(機種変更)
Xperia A SO-04E 3045円 2205円
GALAXY S4 SC-04E 2835円 1995円
AQUOS PHONE ZETA SH-06E 1365円 1365円
ARROWS NX F-06E 1365円 1365円
ELUGA P P-03E 1365円 1365円
MEDIAS X N-06E 1260円 1260円
AQUOS PHONE si SH-07E 1260円 1260円
Optimus it L-05E 1260円 1260円

 ご覧のように、Xperia AとGALAXY S4は本体価格の高さに比例して、月々サポートの額が大きいことが分かる。この場合、確かに24カ月間きっちり使えば、額面どおりの実質価格になるため、非常に安い。

 一方で、以前、この連載でも指摘したとおり、本体価格の高い端末と、多額の割引の組み合わせは、2年以内の機種変更や解約がしづらくなるというデメリットにつながる。以前よりペースが落ちているとはいえ、スマートフォンは進化のスピードが速い。ちょうど2年前、ドコモで人気だった端末が「GALAXY SII SC-02C」や「Xperia acro SO-02C」であることを考えると、性能向上の速さが分かるはずだ。当時はまだCPUもシングルコアが主流で、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線といったいわゆる日本仕様も、ようやくスマートフォンに普及してきたところだった。LTE対応のスマートフォンも、まだ登場していない。

「Xperia acro」と「GALAXY SII」は、2年前に大ヒットした。特に今夏モデルのような施策は取られていなかったが、事実上のツートップだった。「Xperia A」や「GALAXY S4」には、ここからの買い替え需要もありそうだ

 こうした事情をふまえると、2年間使い切ったときの実質価格だけを見て購入するのは、あまりオススメできない。そこで夏モデルを6カ月、12カ月、18カ月、24カ月使ったと想定し、4つのパターンで実質価格を算出してみた。なお、「Xperia A」や「GALAXY S4」は新規と機種変更で月々サポートの額が異なるため、ここでは2つのパターンで金額を掲載している。ツートップに2つのキャンペーンが適用された際の価格は、新規の方を見てほしい。

端末名 6カ月 12カ月 18カ月 24カ月
ツートップ Xperia A SO-04E(新規) 5万9850円 4万1580円 2万3310円 5040円
Xperia A SO-04E(機種変更) 6万4890円 5万1660円 3万8430円 2万5200円
GALAXY S4 SC-04E(新規) 6万6150円 4万9140円 3万2130円 1万5120円
GALAXY S4 SC-04E(機種変更) 7万1190円 5万9220円 4万7250円 3万5280円
非ツートップ AQUOS PHONE ZETA SH-06E 6万6570円 5万8380円 5万190円 4万2000円
ARROWS NX F-06E 6万6570円 5万8380円 5万190円 4万2000円
ELUGA P P-03E 6万4050円 5万5860円 4万7670円 3万9480円
MEDIAS X N-06E 5万9640円 5万2080円 4万4520円 3万6960円
AQUOS PHONE si SH-07E 5万9640円 5万2080円 4万4520円 3万6960円
Optimus it L-05E 5万9640円 5万2080円 4万4520円 3万6960円

 このようにまとめてみると、ツートップが必ずしもすべてのケースで安くはないことが分かる。たとえば、フルHDのディスプレイを備えるハイエンド端末で機種変更を考えている場合、「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」や「ARROWS NX F-06E」「ELUGA P P-03E」でも、12カ月間使ったときの価格はGALAXY S4とほぼ同じ。むしろ、わずかながら「AQUOS PHONE ZETA」や「ARROWS NX」、「ELUGA P」の方が安くなるほどだ。18カ月では「GALAXY S4」とその他3機種の価格が逆転しているが、その差は数百円から数千円といったところ。24カ月では、「AQUOS PHONE ZETA」や「ARROWS NX」と約7000円、「ELUGA P」と約6000円の差がつき、GALAXY S4が安くなる。

AQUOS PHONE ZETA、ARROWS NX、ELUGA Pも、12カ月以内で機種変更する前提なら、GALAXY S4より安い。一括価格も抑え目になっているため、最初に端末代金を全額支払うときの負担感も少ない

 同様に、Xperia Aと同じコンパクト端末というくくりで「MEDIAS X N-06E」「AQUOS PHONE si SH-07E」「Optimus it L-05E」を比較しても、機種変更で12カ月間使うときの価格はほぼ同じになる。機種変更であれば、18カ月でもXperia Aが非ツートップより数千円安い程度だ。逆に、24カ月だと1万円以上の差が出てくる。

MEDIAS XやAQUOS PHONE si、Optimus itといったコンパクト端末も、12カ月の利用が前提ならXperia Aとの差は小さい。これらの機種を検討してみるのもありだ

 つまり、ツートップが有利になるのは18カ月前後使う場合で、利用期間が24カ月に近づけば近づくほど、お得になるということだ。また、キャンペーンの適用対象になっている場合も、ツートップが圧倒的に安い。逆に、1年間で機種変更するようなヘビーユーザーでキャンペーンが適用されないケースでは、どの機種を選んでも価格面で不利になることはない。利用期間が短ければ短いほど、ツートップを選ぶと損をすることもある。

 いわゆる“2年縛り”が導入され、機種変更のサイクルは伸びている。そのため、平均的なユーザーであれば、ドコモが勧めるようにツートップを選べば損はしない仕組みだ。ただ、2年間での機種変更というのは、あくまで目安でしかない。実際には割賦を払い切らなくても機種変更は可能だし、先に一括で支払いを終えてしまったユーザーなら追加の負担なく好きなタイミングで機種変更できる。最初から1年で機種変更すると決めていて、なおかつキャンペーンが適用されないのであれば、少なくとも価格面でツートップにこだわる必要はないだろう。

 ちなみに、ドコモの端末は、以前と比べ本体価格が高騰している。先に挙げた2年前の記事では、最新のハイエンド端末が5万円程度だったのに対し、夏モデルはツートップの2機種が8万円前後、それ以外が6万円台後半から7万円台前半と非常に割高だ。そこまで長く同じスマートフォンを使うつもりはなく、キャンペーンの対象外になるユーザーは、MNPを検討するのも1つの手と言えるだろう。たとえば、同じXperia同士という点では、auの「Xperia UL SOL22」が本体価格6万8040円でXperia Aより安く、しかも機能は高い。MNPであればキャッシュバックがつく店舗も多い。

Xperia ULの本体価格は6万8040円。毎月割は1575円となり、24カ月使った場合の実質価格は3万240円だ。単純比較だとXperia Aよりは高いが、MNPのキャッシュバックを活用すれば価格は逆転する。また、6カ月利用で5万8590円、12カ月利用で4万9140円、18カ月利用で3万9690円と、途中で機種変更した際の負担額はXperia Aよりやや安くなるケースもある

 ミドルレンジ以下の端末であれば、ソフトバンクの安さが目立つ。夏モデルの「AQUOS PHONE ss 205SH」は、新規で本体価格が3万720円。月月割が1280円で、2年使った際の価格は0円だ。本稿のベースにした7月4日の価格調査には反映されていないが、「DIGNO R 202K」も新規の本体価格が2万3520円と安価で、2年間使った際の実質価格は0円になる。エリアやメールアドレスの都合でドコモにこだわりがあるということでなければ、こうした選択肢も視野に入れておいた方がいい。

ソフトバンクはミドルレンジの端末が、戦略的に安価に設定されている。AQUOS PHONE ssやDIGNO Rはどちらも本体価格が安く、24カ月未満で機種変更しても負担感があまりない

 ドコモがMNPで1人負けしている理由を、iPhoneがないことに求める声は多い。ただ、今回取り上げた端末の価格設定を見ていると、必ずしもそれだけが原因ではないように感じられる。たとえば、Xperiaを利用したい場合でも、冷静に価格を比較すればより高性能なモデルがauで安く手に入ってしまう。ミドルレンジの端末では、ソフトバンクの価格設定が戦略的で魅力もある。そしてこれらのAndroid端末は、(容量にもよるが)iPhoneとも価格は大きく変わらないか安くなっている。このように考えると、2機種にだけ重点的に月々サポートやキャンペーンでの割引を手厚くするツートップ戦略は、MNPでの流出を抑止する効果が限定的になるのではないか。

 むしろ、ツートップを選定して他の機種の割引が手薄になったことで、非ツートップの端末を買うなら他社の方が安いというねじれも生まれてしまった。ドコモには10年以上の長期契約をしているユーザーが多く、フィーチャーフォンからの移行需要があるとはいえ、これだと、条件に当てはまらない場合、他社に移るという選択肢が頭をよぎってしまう。スマートフォンへの移行を進めるという点では効果を発揮しているツートップ戦略だが、MNPでの流出は止まるどころか、かえって進んでしまうような気がする。

(石野 純也)