KDDI決算、スマートフォン販売数66万台に「満足のいく内容」


KDDIの田中氏

 KDDIは、2011年度第1四半期(2011年4~6月)連結決算を発表した。

 2011年度第1四半期の営業収益は、前年同期比0.1%減の8650億円、営業利益は8.4%増の1401億円、経常利益は8.1%増の1324億円、当期純利益は前年並みの719億円の減収増益となった。

 KDDIの田中孝司社長は、「順調に推移しており、今年度の目標である『基盤事業の立て直し』に向けては、着実に進捗。第1四半期業績は非常に満足している内容」とした、その理由として、「営業利益では29.5%の進捗状況。移動通信事業は減収減益だが、シンプルプランへの移行途中であり、ARPUが減っていくことは折り込み済み。社内の計画に対しては、いい結果であったと考えている。全体の売上高、利益を見ているのではなく、4つのKPI(key performance indicator、重要業績評価指標)を重視している。データARPUは計画よりも低いが、スマートフォンが増加すれば回復する。第1四半期には全販売量の40%をスマートフォンが占めており、第2四半期以降は期待できる」などとした。

 田中社長が掲げている移動体通信事業における4つのKPIとは、「解約率」、「MNP」、「純増シェア」、「データARPU」。これにより、auモメンタム(勢い、はずみ)の回復につなげるという。

 第1四半期の結果では、解約率は0.99%となり、前年同期比で0.09ポイント改善。「スマートフォンの販売増加が解約率の低減につながっている」と語った。また、MNPではまだ転出が多く6万7000件の転出となったが、第4四半期に比べて2万8000件の改善。純増シェアは、auとUQ WiMAXをあわせて29.8%と、第4四半期に比較して2.5ポイント上昇した。データARPUは、前年同期比100円増の2400円となった。田中氏は、「4つのKPIは着実に改善しており、データARPUの上昇が顕在化してきた」とした。


業績ハイライト連結業績

移動通信事業

移動通信事業の業績

 移動通信事業の営業収益は、前年同期比0.2%減の6621億円、営業利益は8.7%減の1217億円、経常利益は9.1%減の1197億円、当期純利益は11.7%減の662億円となった。なお、被災者に対する復興特別支援措置として無料機種変更を中心に約15万台を提供。これにより、36億円の特別損失を計上している。

 auの6月末時点での契約数は3335万2000件と、3月からは35万3000件増加した。また、UQ WiMAXの契約数は103万件となり、「2009年7月の有料サービス開始以来、約2年で100万契約を突破した」(田中社長)と振り返った。これにより、UQ WiMAXを含めた純増数は57万7000件となり、総契約数は3438万2000件となった。

 総合ARPUは、前年同期比520円減の4640円。そのうち音声ARPUは620円減の2240円、データARPUは100円増の2400円。「音声ARPUでは620円減のうち230円減がシンプルコースへの移行に伴うもの、データARPUでは100円増のうち70円増がスマートフォンによるもの」という。

 また、販売手数料平均単価は2万4000円(前年同期は2万7000円)、販売手数料総額は780億円(前年同期は760億円)となった。

2010年12月時点でのシンプルコースの加入者は2313万件となり、契約率は73%。非トライバンド端末は323万台となっており、前期からは128万台減少。そのうち117万台が非対応端末から対応端末へ移行したものだという。「非トライバンド対応端末は着実に減少しており、今年度末には60万台にまで引き下げる。今年度も700億円の投資を予定しており、第1四半期の移行は進捗通りである」と語った。



スマートフォン戦略

スマートフォンシフトを本格化

 田中社長は、スマートフォンの拡大戦略についても言及した。

 「auモメンタムの回復には、スマートフォンの拡大が重要なポイントとなる。au独自モデルを含む夏モデルを6月下旬から順次発売したこと、4月半ばにはWiMAX搭載モデルであるHTC EVO WiMAXを投入したことに加え、Facebookとの協力関係構築、定額制の音楽配信サービスであるLISMO unlimitedの開始、アプリケーション開発者に対する支援体制としてKDDI ∞ Laboを整備した。これによってスマートフォンシフトを本格化する」と述べた。

 また、「第1四半期には66万台のスマートフォンを販売した。震災の影響で一部機種の発売が後ろ倒しになったが、それでも春商戦を含む第4四半期を超える販売台数を確保したことは大きな成果といえる。端末台数に占める構成比は20%であるが、直近では4割程度にまで増加している。第2四半期以降もラインアップの拡充を機にスマートフォンの販売を加速していく考えである。年間400万台、構成比33%という計画は、十分に達成可能な数字であると見ているが、第1四半期の現段階では上方修正までは言及できない。気持ちとしては上振れさせたい」と意欲をみせた。



「HTC EVO WiMAX」や「INFOBAR A01」について

 HTC EVO WiMAXに関しては、525円でWiMAXを利用可能であることやデザリング機能を搭載していることなどが高い評価を受けていることを示し、54%が新規購入であること、80%がWiMAXを利用していること、78%が非常に満足および満足と回答している状況を紹介した。

 また、INFOBAR A01については、洗練されたインターフェースなどに人気が集まり、女性の購入比率が55%を占めていることに触れながら、「スマートフォンは男性が利用するものというイメージが強かったが、INFOBARは女性に対する訴求力が高い製品になった」とした。



固定通信事業

固定通信事業の業績

 一方、2011年度第1四半期の固定通信事業の営業収益は、前年同期比2.8%増の2202億円、営業利益は前年同期の54億円の赤字から165億円の黒字に転換。経常利益は83億円の赤字から120億円の黒字に、当期純利益21億円の赤字から57億円の黒字に転換した。

 6月末時点での固定系アクセス回線は655万5000件。そのうち、FTTHは8万7000件増加の198万7000件となった。固定事業においては、今年度の目標である「基盤事業の立て直し」のためのKPIとして「FTTH純増数」をあげており、「FTTHの純増は回復途上ではあるものの、増収増益基調を堅持している」と自己評価した。このほか、FTTHの顧客基盤拡大として「auひかりホーム」の提供エリア拡大、ネットワークコストの削減として第1四半期に37億円を削減した成果などをあげた。

LTEは2012年末

 LTEサービスについては、2012年末に提供する計画には変更がないとしながらも、人口が多いところ、トラフィックの多い都市部に展開していくことになるとした。また、6月30日からサービスを開始したau Wi-Fi SPOTは、マルチネットワークの実現に向けてWi-Fi展開を本格化するものと位置づけ、2012年3月末にはau Wi-Fi SPOTを10万スポットに拡大する計画を示した。

 なお、東日本大震災からの復旧状況については、「4月時点ではすべてのエリアで復旧し、6月にはエリア・品質面での復旧も完了した。当初は9月ぐらいまでかかると考えていたが、前倒しで復旧している。7月からは仮設住宅や避難所の移動にあわせて充実を図っていく考えである」と報告した。



 




(大河原 克行)

2011/7/25 18:30