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ソフトバンク決算、“言い訳抜き”で増収増益

株主還元を重視する新たな財務戦略を打ち出す


ソフトバンクの孫正義氏

 ソフトバンクは、2011年度連結業績および2012年度の事業方針説明を行った。

孫氏、au版iPhoneへの顧客流出懸念に「99%死守」

 会見の冒頭、ソフトバンクの孫正義社長は「昨年末にKDDIがiPhoneの販売を開始したこともあり、2011年度は当社がモバイル事業を開始して最大の山場を迎えた年だった。しかし、言い訳抜きで増収増益を達成することができた」と語たった。

 また、「当社の契約ユーザーのうち、数10%がiPhoneであり、ソフトバンクの電波がつながらないというお叱りをいただいており、最低でも100万人が解約するのではないか、あるいは、200万人の解約をするのではないかということも想定した。iPhoneの顧客を守るための対策について議論を行い、第3四半期には300億円、第4四半期100億円の販売促進費を投資した。また、つながりやすいようにするための対策も行い、顧客死守に取り組んできた。蓋を開けてみると、iPhoneユーザーがMNPで移動したのは数万人レベル。最低でも100万人が移行すると想定したなかでは、最高にいい結果に終わった。99%の顧客はそのまま死守できた。新規顧客でも当社を選択していただくケースが圧倒的であった」などと振り返った。

2011年度の連結業績は増収増益

 ソフトバンクが発表した2011年度(2011年4月〜2012年3月)連結業績は、売上高が前年比6.6%増の3兆2024億円、営業利益は7.3%増の6752億円、経常利益は10.2%増の5736億円、当期純利益は65.4%増の3137億円となった。

 孫社長は、「売上高は2期連続で過去最高を更新。EBITDAでは初の1兆円を突破し、KDDIを逆転した。これによりEBITDAランキングでは国内第4位になる。また、営業利益は7期連続で最高益を更新し、営業利益率では21.1%となりNTTドコモ、KDDIを上回った。契約数が半分であるのにもかかわらず高い営業利益率であり、経営として誇れるものである。経常利益では3期連続で最高益となり、当期純利益では2期連続で最高益を達成。ここでもKDDIを逆転した。瞬間的なものや見せかけのものではなく、持続可能な収益体質ができた」などとした。

 営業キャッシュフローは7402億円、フリーキャッシュフローは3645億円。「リーマンショックが起こった3年前には、ソフトバンクは負債の絶対額が大きい背景もあり、倒産間近とも指摘されていた。だが、財務体質の改善を最優先し、着実に収益を積み重ね、フリーキャッシュフローでは3年間で1兆円を創出するという目標を大幅に上回り、3年間累計で1兆3000億円を創出。純有利子負債は、2008年度末の1兆9000億円の半減を目指したが、これも2011年度末には5000億円と目標を大幅に超過した。すベてのリースを加えても1兆1000億円となっている。結果として、支払利息についても約半減という成果があがっている。これにより、ソフトバンクの格付けは、創業以来最高水準に達している」などと語った。

新財務戦略、株主還元重視へ

 孫社長は、「どの角度からみても、財務体質の改善という目標は達成された。もはやソフトバンクが倒産するという人はいない。そこで新たな財務戦略に挑む」などとし、成長戦略や株主還元を犠牲にしても純有利子負債ゼロを目標とする従来の方針を転換。これを適正水準にする方針とともに、株主還元を重視する方針を掲げ、2014年度に予定していた増配を、2011年度に前倒しで実施。前年実績の年間5円の8倍となる年間40円の配当とした。

 純有利子負債の適正水準については、「具体的な数値で述べる段階にはない」と語った。

移動体事業は3期連続の最高益

 2011年度業績のうち、移動通信事業の売上高は前年比10.3%増の2兆1448億円、営業利益は6.7%増の4292億円となった。

 「移動体の営業利益は3期連続で最高益を達成した。営業利益増加率は全世界のキャリアのなかで世界ナンバーワンになる」(孫社長)という。

契約数、通信収入

 また孫社長は、2011年度の純増数が354万契約となり、圧倒的ナンバーワンを獲得。さらに、傘下のウィルコムの累計契約件数が468万と、創業以来最高になったほか、ウィルコムが黒字化していることを強調。これにより、ウィルコムをあわせた累計契約数は3351万件となり、ボーダフォンを買収した2006年4月時点の1522万契約から、2倍を超える契約数に増加したという。

 移動体の通信料売上高は前年比13%増の1兆4334億円。「もっとも重要な売り上げ指標が移動体通信料。この売上高増加率では世界ナンバーワンになっている」と強調した。

 音声収入などは前年並の6220億円、データ収入は24%増の8114億円となった。「データARPU比率は65%となり、これも世界ナンバーワンである。ソフトバンクは携帯電話をやるためにボーダフォンを買収したのではなく、モバイルインターネットをやるために買収したと当初から語っていたが、それがいま実現できている。データのソフトバンクである」などと語った。

900MHz帯、電波など

 一方、孫社長は、「唯一の弱点が電波が届きにくいという点。これを克服する」とし、基地局は19万局となり、ボーダフォン買収後に比べて10倍に増加させ、Wi-Fiスポットのアクセスポイントは、25万局と圧倒的な数に増やし、「これまで、一所懸命につながることに取り組んできた」などと語りながら、さらに、首都圏におけるiPhone 4Sの接続速度調査でauを大幅に上回っていること、2012年7月25日から900MHz帯サービス「プラチナ電波」を開始することなどを示し、「900MHz帯の獲得によって、電波を強化することができる。現在発売しているiPhone 4S、iPad、PANTONEシリーズに加えて、2012年夏に発売する全機種を900MHz帯対応端末にする」との方針を示した。

 ソフトバンクがプラチナ電波を開始した場合、約3割のユーザーがソフトバンクに移行したいというデータや、ソフトバンクから解約する人が半分に減るというデータも披露。「プラチナ電波のサービス開始は、経営の面でも収益に貢献することになる」とした。

 また、「iPhone 4Sへの移行を促進したのは、今後、プラチナバンドを利用していただき、つながらないという問題を解決することにもつなげたいという狙いがあったため」などとも語った。

FDD-LTEサービスを今秋開始

 また、下り最大110Mbpsを実現するTD-LTE/AXGPであるSoftbank 4Gの提供を開始したことに触れるとともに、さらにFDD-LTEによるスマートフォン向けパケット定額サービスを月額5985円で今年秋に開始するとした。

 さらに、「900MHz帯およびLTE対応への設備投資を加速するため、2012年度が設備投資のピークを迎える時期となる。前倒しして設備投資をしていくことになる」なども語った。

モバイル事業以外の業績

 なお、2011年度連結業績における移動体通信事業以外のセグメント別業績は、ブロードバンド・インフラ事業の売上高は前年比9.6%減の1719億円、営業利益は20.5%増の343億円。固定通信事業は、売上高が前年比3.1%増の3676億円、営業利益は52.5%増の579億円。インターネット・カルチャー事業の売上高は前年比3.5%増の2936億円、営業利益は4.3%増の156億円となった。

 また、自然エネルギー事業への取り組みについては、出資規模は総資産の1%未満であり、連結業績への影響は軽微であると語った。

孫氏、「2016年度には、ドコモの営業利益を上回る」

 一方、孫社長は、2012年度(2012年4月〜2013年3月)連結業績見通しとして、「連結営業利益で7000億円を確実に上回ることを目指し、増収増益を継続する。増収増益には自信がある」とし、2016年度の連結営業利益1兆円の中期目標に挑む姿勢を改めて強調した。「2016年度には、NTTドコモの営業利益を上回るところまで確実に持って行く。私は、中長期の目標を公言して、それを下回ったことはない」などと、公約達成に自信をみせた。

新三種の神器はスマートフォン、スマートパッド、クラウド・SNS

 孫社長は、説明会のなかで、スマートフォンやタブレットへの取り組みについて、改めて言及した。

 かつて、「洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビ」が、家電の三種の神器と呼ばれていたことに対し、現在の新三種の神器を、「スマートフォン、スマートパッド、クラウド・SNS」と位置づけ、「スマートフォン時代が本格的に到来している。ここに向けて経営資源を投資し、一気にスマホシフトを行ったのがソフトバンクである」と説明。また、ソフトバンクは、家電量販店での新規契約でのスマートフォンの累計販売台数が圧倒的であることや、ドコモ利用者を対象にした調査ではiPhone 4Sの購入先希望でソフトバンクが半数以上であるといったデータを示したほか、スマートパッドについても、国内市場全体での販売台数が2013年度には602万台に達し、普及期に入っていると定義。スマートフォン同様に家電量販店での累計販売台数において「先駆者」としての役割を果たしていることなどを示した。

「売る中身が違う、武器が違う」ソフトバンクの“IT武装”

 さらに、クラウド市場の成長に関しては、ソフトバンクが企業向けにGoogle Appsの提案を行っていることを示しながら、「この1年間に販売を加速させ、ソフトバンクは、Google Appsの獲得IDで世界ナンバーワンのパートナーとなった。ソフトバンクの底力をみたと、Googleから言われた」とし、Google Appsで累計19万のIDを販売し、損保ジャパンでは3万IDの導入をはじめとする事例を紹介。「ソフトバンクも全社員が使っている。業務の効率を著しく向上し、成果があがっている。ソフトバンクは、単に端末を販売するだけでなく、売る中身が違う、武器が違う」などとした。

 また、孫社長は、ソフトバンク自らが、iPhone、iPad、Twitter、Facebook、Google Appsを活用したIT武装に取り組んでいることを紹介。「企業にとって、中長期でもっとも大切な戦略は、企業カルチャーをどこにもっていくのかという点。ソフトバンクは、モバイルインターネットで世界一進んだ会社にしたい」と語り、これらの機器を活用することで生産性を向上していると語り、ソフトバンクテレコムがGoogle Appsの販売で契約件数が1.8倍に、獲得回線数が2.2倍に向上し、1人あたりの営業利益は2973万円と、KDDIやNTTドコモを上回っているという。

紙を使うのは人間ではない

 さらに、孫社長は、この4月に約2万人の全グループ社員に対して、「社内業務ペーパーゼロ宣言」を行ったことを紹介。「4月一杯で、今後はコピーをしてはいけないという業務命令を出した。紙を使うのは人間ではない、社員ではない。やめてもらってもいいといった。これによって、生産性があがり、スピードがあがり、社員がハッピーになる。役員会での資料や稟議は、半年以上前から紙がゼロになっている。役所では紙でしか受け付けてくれない場合もあり、また、店舗ではパンフレットが必要である。それ以外のものはすべて禁止する」と語った。

 加えて、次回の決算発表会からは、報道関係者、アナリスト向けには紙の資料を配布しないことを表明。「iPadか、PCを持ち込んでいただかないと、数字がみられないことになる」と、会見出席者に呼びかけた。

ヤフー経営陣の若返りで“スマホファースト”へ

 そのほか、孫社長は、収益源の多様化にも取り組んでいることを示し、「M2M市場が今後10年間で10倍に成長するとみている。すでにホンダの自動車向けには、通信回線チップを16万回線分を出荷している。他の自動車メーカーからも引き合いがある」、「利益に貢献しはじめているのが、デジタルフォトフレームやアクセサリーを販売するソフトバンクセレクションであり、世界のキャリアのなかでこうしたビジネスをしているのはソフトバンクだけ。利益貢献が高いビジネスが倍々で伸びている」などと述べた。

 また、経営陣の若返りを図ったヤフーについても言及。「経営陣は平均9歳若返ったほか、これまではPCファーストだったが、スマホファーストに取り組む。今後もヤフーの売り上げを伸ばし、さらにグループとしてのシナジー効果をさらに高めていく」という。

 ヤフー経営陣の若返りについては、「旧経営陣は、ヤフーをもっとも株主価値を増やした企業にしたという点で、高く評価している。インターネット業界は若い業界。若い人たちが、チャレンジ精神を持つことが、世界の競合と互して戦えることになる。ヤフーの経営陣の交代については、遅すぎたとは思ってない。ちょうどいいタイミングである」と語った。

製品から情報へゲームチェンジ、『モノづくり日本』はノスタルジー

 さらに説明会の最後には、「ソフトバンクは、日本で第3位の携帯電話会社ではなく、世界1位のインターネットユーザーを抱える会社である」とし、「ソフトバンクは、インターネットの経済圏に、900社のグループ会社を持つインターネットカンパニーである。本業はインターネットであることを、もう一度、みなさんにリマインドしたい」とし、ソフトバンクグループは、14億人のユーザー数を誇り、中国の人口を超えているという冗談を交えながら、「これまでは、アリババとアリペイのユーザーが重複するという指摘があったため、今回はアリペイのユーザー数を除いた。重複は全体の2割程度だろう。世界でもっとも多くのインターネットユーザーを有しているのがソフトバンク」などとした。

 さらに、「ソフトバンクは2兆5000億円の時価総額があるが、そのうち1兆7000億円はネット企業としての株式価値。通信事業は8000億円にすぎない。また、ソフトバンクの6年間にわたる営業利益平均成長率は49%となっており、アップルには及ばないが、GoogleやAmazon以上に成長している。ソフトバンクは、インターネット業界におけるウォーレン・バフェット(米投資家)であり、成長事業であるインターネット事業と、安定した収入基盤が通信事業の両方を持っているのが強み」などと語った。

 そのほか、孫社長は、世界的にゲームチェンジが起こっていることを指摘。日本における家計支出において、情報通信が自動車を逆転していること、時価総額では「情報通信」が、「工業」の2倍となっていることを示しながら、「主役は、製品から情報へと変わっている。『モノづくり日本』といっている経営者や政治家は、今後、方向を誤るだろう。ノスタルジーをもちながら、モノづくりにこだわると日本のメーカーは部品屋になり、下請け、孫請けの立場になる。ハードウェアにソフトウェアを加え、さらにクラウドを組み合わせたトータルシステムとしての提案が必要であり、これはまさに情報通信である」などと語った。

 




(大河原 克行)

2012/4/26 20:37