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IS03、GALAXY S、GALAPAGOSで再び盛り上がるモバイル市場

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 ここのところ、今ひとつトピックがなく、盛り上がりに欠けた感のあったケータイ市場だが、先週は注目の2製品の記者発表に続き、CEATEC JAPAN 2010も開催され、久しぶりに話題の多い賑やかな一週間だった。それぞれの記者発表や展示会で得られた話題を中心に紹介しよう。

「IS03」で次のステージに進むニッポンのAndroid

 10月4日、KDDIとシャープは都内で記者会見を催し、今年3月の「IS01」の発表のときから予告されていたスマートフォン「IS03」を発表した。詳細な内容については、本誌の発表会レポートをご参照いただきたいが、ここでは少しおさらいをしながら、筆者が発表会で試した印象などといっしょに紹介しよう。

 まず、改めて説明するまでもないが、ここ数年、アップルの「iPhone」をはじめ、国内のケータイ市場ではスマートフォンが注目を集めている。グローバル仕様、もしくはそれに準じた仕様の製品が各社から相次いで登場し、オープンなアプリ市場(マーケット)、GmailやGoogleカレンダー、Twitterなど、数多くのネット上のサービスとの連動などを実現することで、国内市場でも着実にシェアを伸ばしつつある。

 ただ、その一方で、国内の携帯電話はワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信、携帯電話事業者提供のメールサービス、コンテンツ閲覧サービス、通話関連機能など、ハードウェアとソフトウェアの両面で、独自の進化を遂げたため、これらの仕様が実装されていないスマートフォンにはなかなか移行できず、結果的に「1台目はフィーチャーフォン(従来型の携帯電話のこと)、スマートフォンは2台目」というユーザーが多く見受けられたのも事実だ。

 こうした市場背景を踏まえ、今年3月に発表され、6月から販売が開始されたのがau初のAndroid端末である「IS01」ということになる。「IS01」は通常のケータイで標準的に搭載されているワンセグや赤外線通信を搭載したうえ、非通知着信拒否などの通話関連機能もしっかりとサポートするなど、それまでのスマートフォンとは違った「ニッポンのAndroid」として開発されていた。ただ、スマートブックという独特のスタイルを採用していたため、auのスマートフォンに期待を寄せていたユーザーからは辛らつな反応も多く聞かれた。しかし、2台目というコンセプト、ワンセグや赤外線通信など、国内仕様を実装していることなどが評価され、『2台持ち』の料金面をサポートするキャンペーンが実施されたことなどと相まって、予想を上回るヒットを記録した。ちなみに、ほぼ同一仕様のモデルがNTTドコモから「LYNX SH-10B」として発売されたが、こちらはNTTドコモが明確に2台目需要のアピールをすることもなければ、料金プランなどでのサポートも実施しなかったため、販売数は「IS01」に遠く及ばないレベルに留まった。

 そして「IS01」で実装されていた「ニッポンのAndroid」仕様をきちんと進化させながら、『1台目』のコンセプトで開発されたのが今回の「IS03」ということになる。詳細なスペックは発表会レポートに譲るが、他のスマートフォンと比較してもまったく遜色のない構成でまとめられているうえ、おサイフケータイや歩数計など、国内向けケータイで支持されている機能をさらに追加しており、まさに日本のユーザーのためのスマートフォンとして、仕上げられているという印象だ。

コンビネーション液晶 メモリ液晶は操作部であると同時に、時刻なども表示できる

 ハードウェアで注目すべきは、「コンビネーション液晶」と「CCD 9.6メガピクセルカメラ」だろう。コンビネーション液晶は、通常のバックライトを備えたNewモバイルASV液晶と常時表示のメモリー液晶を1枚の液晶パネル上に構成したもので、端末がスリープ状態に入ってもディスプレイの最下段には、日時やバッテリー残量、通話やメールの着信の有無などが表示される。ちょうど折りたたみデザインの端末のサブディスプレイのような感覚で使えるわけだ。CCD 9.6メガピクセルカメラは、シャープ製端末でおなじみのCCDカメラと画像処理エンジンのProPixを組み合わせたものだが、通常のケータイで実装されている笑顔フォーカスシャッターや振り向きシャッター、シーン自動認識などの撮影機能に加え、HDサイズのビデオカメラ機能も搭載する。会見ではシャープの執行役員 情報通信事業統轄通信システム事業本部長の大畠昌巳氏がシャープの提案で本体側面のシャッターキーを追加したエピソードを明らかにしたが、細かい部分にもこだわりながら、日本のユーザーを意識した商品企画が行なわれていたことがうかがえる。
960万画素のCCDカメラ 顔認識などもサポート

 ボディサイズはフルタッチ対応端末としては、「Xperia」などと同じくらいの少し大ぶりな印象だが、背面側がラウンドしていることもあり、手に持ったときのサイズ感はスペック以上にコンパクトだ。デザインで目を引くのは、やはり、ボディカラーで、他のスマートフォンでも採用されてきたホワイトやブラックに加え、周囲にオレンジをあしらったカラーバリエーションもラインアップされる。かつて、auは非常に特徴的なボディカラーでユーザーの目を引いてきたが、スマートフォンでもそのアプローチを忘れていないようだ。

 ソフトウェアについては、ユーザーインターフェイスに「IS01」同様、スウェーデンのデザインチーム「ocean observations」を起用しているが、今回は「LISMO!」や「au oneナビウォーク」のユーザーインターフェイスにも同チームが手を入れており、全体的に独自の世界観を構築しつつある。起動中のアプリを切り替えられる「タスクマネージャ」、ステータスバーを引き出したときに表示される「お知らせパネル」など、実用面のユーザーインターフェイスもよく考えられている。

 メールについては、バージョンアップされた「IS01」と同じように、EZwebメールに対応し、Cメールや緊急地震速報にも対応する。ブラウザについては、Flash Lite 4.0に対応しているため、Flashを使ったネット上の多彩なコンテンツもそのまま再生できる。

 ところで、気になる実際のレスポンスについてだが、正直なところを書いてしまうと、「IS01」や「Xperia」などに比べ、随分と快適に使えるようになっているのだが、マルチタッチを使ったときの動作などに、まだ少し引っかかるような印象も残った。ただ、auによれば、現在も端末のブラッシュアップを続けており、出荷時にはもっと快適に使えるようにチューニングされる見込みだと言う。

 また、発表会後に、Impress Watch Videoの収録でもIS03を少し試す機会が得られ、そのときにも感じたことだが、これまでのAndroid端末に比べ、省電力機能の開発が進んだのか、1020mAhという電池パックの容量の割には意外にバッテリーの持ちがいいような印象を受けた。ただ、これは開発中のモデルで得た印象であり、出荷される製品版で改めてチェックしてみたいところだ。

 ちなみに、おサイフケータイについては、発売予定の11月下旬の段階で提供されるのは「モバイルWAON」や「ぐるなびタッチ」、ヨドバシカメラやビックカメラのポイントカードのみで、クレジットカードや電子マネー、モバイルSuicaなどは2010年12月以降、順次、対応予定とされている。

 「IS03」では、通常のケータイからスマートフォンへの移行で、もっとも大きな障壁と言われたおサイフケータイが搭載されたことで、いよいよ本格的に移行しやすい環境が整うわけだが、現実的にはおサイフケータイで利用するサービスの対応状況によって、移行するタイミングが変わることになりそうだ。できることなら、各サービス提供事業者にはもう少しハッキリしたサービス提供スケジュールを提示して欲しいところだ。

 ところで、共同記者発表の席で、KDDIの代表取締役執行役員専務の田中孝司氏が「18日の秋冬モデルの発表会では『禁断のアプリ』をお見せしたい」と発言したが、おそらく、これは10月6日に海外で公開されたAndroid版Skypeの導入を示唆しているのではないかと推察される。

日本市場を強く意識したグローバル市場の人気モデル「GALAXY S」

 「IS03」の発表に続き、10月5日にはNTTドコモとサムスンが共同で会見を開き、「GALAXY S」と「GALAXY Tab」の発表を行なった。「GALAXY」はサムスンがグローバル市場で展開するAndroid採用端末のブランドネームで、「GALAXY S」は現在、グローバル市場でもっとも好調な売れ行きを記録しているスマートフォンのひとつだ。先に発売された米国では、発売から45日間で100万台を記録し、全世界の販売台数はすでに500万台を突破しているという。

 今回、発表された「GALAXY S」は、このグローバル市場向けに販売されているモデルをベースに、日本市場に合わせた仕様変更を加えたモデルとなっている。

 本体を手に取って、まず最初に驚くのは、その軽さだ。現在、市場で販売されているスマートフォンは、150g前後のものが多いが、「GALAXY S」は118gしかない。私たちが普段、使っている折りたたみデザインのケータイと変わらないか、それよりも軽いくらいだ。触り始めたの段階では樹脂パーツで固められた外装がちょっと気になるのだが、すぐになじむことができ、逆にこの軽さこそが他製品にない魅力と捉えられるようになってくる。おそらくユーザーが実際に使っていくうえで、この軽さは幅広い層に喜ばれる要素になるかもしれない。

有機ELディスプレイの「Super AMOLED」が目をひく「GALAXY S」

 次に、目を引くのが「GALAXY S」最大のセールスポイントのひとつである有機ELディスプレイ「Super AMOLED」だ。サムスンが有機ELディスプレイを手掛けていることは良く知られており、国内でもソフトバンク向けの941SCなどに搭載されてきた実績がある。有機ELディスプレイはバックライトを必要とする液晶ディスプレイと違い、自己発光するため、発色の良さと広い視野角が確保できるなどの特徴を持つ。今回のSuper AMOLEDは既存の有機ELディスプレイでディスプレイのガラス面とディスプレイ面の間にあった空気層をなくし、ガラス面にディスプレイを密着させることで、10000:1の高コントラストに加え、よりダイレクトなタッチ操作感を実現している。従来の有機ELディスプレイというと、屋外での視認性に課題があったが、Super AMOLEDについてはこうした問題もクリアしているという。まったくの同一製品ではないが、グローバル版の「GALAXY S」を海外で利用したときには、しっかりとコントラストが確保されており、屋外でも十分に視認性が確保されていたので、それほど心配をする必要はないだろう。

薄さは9.9mm

 話がボディに戻るが、ボディそのもののサイズは、ソニー・エリクソン製Xperiaなどに近いサイズだが、厚さが9.9mm(Xperiaは13.1mm)とかなり薄く、背面もラウンドしているため、かなり薄さを実感できるサイズにまとめられている。デザインはムダな装飾のないミニマルな印象で、ロゴなどは前面上部に「NTT docomo」(グローバル版は「SAMSUNG」)、背面中央に「GALAXY S」(グローバル版は「with Google」)、背面下に「SAMSUNG SC-02B」が配置されている。ちなみに、韓国では背面パネルをホワイトにしたモデルが投入されているそうだが、ホワイトは日本でも女性ユーザーを中心に人気が高いので、ぜひとも国内市場投入か、背面の交換パネルの提供だけでも期待したい。

 ハードウェアの詳細なスペックについては発表会レポートに譲るが、少し興味深いのはベースバンドチップセットとアプリケーションプロセッサの構成だ。現在、国内外で販売されているAndroidベースのスマートフォンでは、最大1GHzのクロック周波数で動作する米クアルコム製Snapdragon(QSD8250)を採用するモデルが多い。「GALAXY S」も「1GHzの高性能CPU」と表記されているが、正確にはベースバンドチップセットに米クアルコム製「MSM6290」、アプリケーションプロセッサにサムスン製「S5PC110」という構成を採用している。ちなみに、グローバル版「GALAXY S」はアプリケーションプロセッサが同じサムスン製「S5PC110」を採用しているが、ベースバンドチップセットは独infineon製「YYN1N7438A8」を採用している。関係者によれば、韓国向けの「GALAXY S」にも米クアルコム製「MSM6290」を採用しており、ネットワークとの接続性などを考慮して、日本向けもこの構成に決めたという。

 ソフトウェアとしては、インストールベースで国内向け初となるAndroid 2.2を採用し、NTTドコモのspモードも出荷時から対応する一号機という位置付けになる。プリインストールされる個々のアプリケーションについては、製品版が発売された時点で、改めて紹介したいが、個人的に興味を持ったのは「All Share」と呼ばれるDLNA対応アプリケーションだ。DLNA対応のテレビなどから「GALAXY S」に保存されている写真や動画を参照できるだけでなく、「GALAXY S」から無線LAN経由で家庭内のパソコンやNASに保存されている写真や動画、音楽などを再生したり、NASやパソコンからDRMが設定されていないファイルをダウンロードできる。

 全体的な操作のフィーリングについては、アプリケーションプロセッサの採用、Super AMOLEDのダイレクトなタッチ操作感、最新のAndroid 2.2の搭載の効果もあり、非常にレスポンスが良く、かなり快適に使うことができる。これまでに国内に登場したAndroid採用端末の中でも最速レベルの快適な操作感が得られる仕上がりと言って、差し支えないだろう。

 

GALAXY Tab

 さて、この「GALAXY S」がグローバル市場において、すでに高い人気を得ているのに対し、タブレット端末の「GALAXY Tab」は今年9月、ドイツで開催されたIFA 2010で発表されたばかりのモデルで、早くも日本市場向けに投入されることになった。

 タブレット端末としては、米アップルの「iPad」が市場で一定の支持を得ているが、今秋以降、Androidベースのモデルが国内向けにも続々、登場すると言われ、「GALAXY Tab」はその先陣を切ることになる。詳細なスペックは発表会レポートを参照していただきたいが、ソフトウェアについては基本的に「GALAXY S」同様、Android 2.2を採用し、アプリケーションも前述のAllShareを含め、共通のものが多い。音声通話機能も一応、サポートされているが、スピーカーホンによるハンズフリー通話を使うため、実質的にはBluetoothヘッドセットを利用することになる。ちなみに、ディスプレイについては、「GALAXY S」のSuper AMOLEDに対し、「GALAXY Tab」は600×1024ドット表示が可能なTFTカラー液晶を採用する。

 「GALAXY Tab」で注目すべき点は、そのサイズ感だろう。前述のように、タブレット端末としては「iPad」が人気を得ているが、やはり、700g前後という重量は重く、最初は持ち歩いていたのに、徐々に持ち歩くことが減ってしまったという声も耳にする。その結果、家庭内やオフィス内のインドアモバイル端末として活用されるケースが多いようだ。これに対し、「GALAXY Tab」は7インチのディスプレイを搭載したボディで、サイズは191×121×12.1mm、重要は382gに仕上げられている。若干の差はあるが、ディスプレイ部の面積も重量もちょうど「iPad」の半分くらいということになる。手に持った感覚としては、B6判(182×128mm)や新書判(182×103mm)に近いサイズで、片手で軽く持つことができ、カバンの中に入れておいてもそれほどかさばらないという印象だ。

 バッテリーは内蔵固定式ではあるものの、4000mAhという大容量のものと搭載しているため、静止時の連続待受時間で1450時間(約60日間相当)、3Gでの連続通話時間が880分(約14.6時間)というロングライフを実現している。もちろん、実際の利用環境で、この通りになるわけではないが、かなり長時間の利用が可能になるという印象だ。

 操作のレスポンスについては、開発中ということもあり、「GALAXY S」と同等とは言えないものの、サムスン製アプリケーションプロセッサ「S5PC110」に、独infineon製「XMM6160」という2チップ構成を採用しているためか、比較的、良好なレスポンスで使えたという印象だ。

 ところで、この「GALAXY Tab」はタブレット端末という位置付けだが、今後の市場の受け入れられ方次第では、スマートフォン市場の一部をカバーしてしまうほど、伸びる可能性があるかもしれない。冒頭で触れた「IS01」や「IS03」が登場してきた背景とも関連するが、たとえば、月々のランニングコストは別として、通常のケータイを使いながら、Webページの閲覧やネット上のサービスとの連動、アプリなどを活用する端末が欲しいと考えたとしよう。従来は通常のケータイの多機能化が進められ、ここ1〜2年はスマートフォンがそのポジションを奪いつつある。しかし、画面の大きさやバッテリーライフのことを考えると、むしろ、「GALAXY Tab」のようなコンパクトなタブレット端末を持ち歩いた方が『スマート』というか、利便性が高いのではないだろうか。もし、筆者が通常のケータイとは別に、何か1台を持ち歩けと言われれば、現時点ではGALAXY Tabがもっとも有力な1台と考えるだろう。今秋以降、「GALAXY Tab」以外にもAndroidを搭載したコンパクトなタブレット端末が続々と登場すると言われており、今後、どのような市場を形成していくのか、その中で「GALAXY Tab」がどのようなポジションを占めていくのかが非常に注目される。

スマートフォンの台頭で他製品との連動が活性化したCEATEC JAPAN 2010

 さて、最後にCEATEC JAPANについて、補足しておこう。CEATEC JAPANの詳しい内容については、本誌のレポート記事が掲載されているので、そちらを参照していただきたい。

 今回のCEATEC JAPANは10月5日から幕張メッセで開催されたが、前述の通り、初日の午前中、六本木でNTTドコモとサムスンの発表が行なわれたため、筆者も含め、メディア関係者は発表会終了後、40km近く離れた幕張メッセに移動することになり、初日は十分な取材時間を取ることができなかった。

 しかし、会場の方は前日、当日と連続してスマートフォンが発表されたこともあり、KDDIブースでは「IS03」、NTTドコモブースでは「GALAXY S」と「GALAXY Tab」、シャープブースでは「IS03」と「GALAPAGOS」のタッチ&トライがいずれも行列ができるほどの盛況ぶりで、時間帯によっては試用時間の制限も行なわれていた。

シャープのGALAPAGOS(9/27発表会時)

 そんなにぎわいの中、まず最初にシャープのGALAPAGOSについて、触れておきたい。GALAPAGOSは、電子書籍フォーマット「次世代XMDF」を採用した電子書籍事業を立ち上げることが今年7月に発表され、9月27日にはタブレット端末の発表と同時に、「GALAPAGOS」というブランドネームが公開された。今回、展示されていた5.5インチと10.8インチのタブレット端末は、いずれも通信環境はWi-Fiを利用するもので、Androidをベースにしながら、専用機のような仕様で作られている。

 このGALAPAGOSについては、一般メディアなどと見ていると、「GALAXY Tab」や「iPad」などのタブレット端末、あるいは「IS03」や「GALAXY S」、「Xperia」などと、ハードウェアとしての比較が取り沙汰されているが、どちらかと言えば、GALAPAGOSは米Amazonの電子ブックサービス「Kindle」のような『サービス』であって、ハードウェアはその派生として捉えるべきなのかもしれない。

 特に、ここに至るまでのシャープの動きを見ていると、記者会見では「キャリアと組んだ3Gモデルはないのか?」という質問に対し、「まだ検討中」と答えたり、「NTTドコモと大日本印刷が組む電子出版ビジネスとは、どう対抗していくのか」という問いに、「キャリアが取り組むビジネスとは別のものと考えている」と答えるなど、やや歯切れの悪いとも受け取れる回答をしている。こうした答えが出てくる背景には、シャープが現在進行形で各キャリアやコンテンツプロバイダ、ソフトウェアベンダーなどと話し合いながら、事業展開の計画を進めていて、決まった内容から順次、アナウンスしているということが関係しているようだ。現に、CEATEC JAPAN 2010の開催初日には、シャープとTSUTAYAなどを運営するCCC(カルチャ・コンビニエンス・クラブ)がGALAPAGOS向けのコンテンツストアをオープンすることがアナウンスされている。端末とブランドネームの発表から一週間しか経っておらず、この発表にも「現在進行形」である様子がうかがえる(筆者の勝手な想像の域を出ないが……)。

 また、NTTドコモと大日本印刷、KDDIとソニー、凸版印刷、朝日新聞の電子書籍端末、もしくは電子出版事業と比較する部分については、少し解釈が違うように見える。というのもシャープはザウルス時代からXMDFによる電子書籍事業を展開してきており、国内で販売されるシャープ製端末をはじめ、PDAや電子辞書端末などでもサポートされてきたという経緯がある。おそらく、これをハードウェアに依存しない形の電子書籍事業に進化させようとしたのが「GALAPAGOS」の本当の姿であり、自らのリファレンス的な存在の端末として開発したものが今回の「GALAPAGOS」発表時のタブレット端末ということになる。まだ明言はされていないが、もしかすると、iTunesやKindleと同じように、ひとつのアカウントで購入したコンテンツを管理して、外出先では5.5インチのタブレット端末を使いながら、移動中にはスマートフォンや携帯電話、自宅に戻れば、液晶テレビのAQUOSやパソコンといった具合いに、ひとつのコンテンツを複数のプラットフォームで扱うことを目指しているのかもしれない。もちろん、これを実現するためには出版社などのコンテンツプロバイダと著作権の面でクリアにしなければならない問題が山積しているわけだが、そこはもっとも古くから電子書籍の事業に携わってきたシャープならではの考えがあるのかもしれない。

 その他の展示についてだが、全体的に見て、明確に方向性が見えてきたのは、スマートフォンが普及してきたことにより、他の製品ジャンルでもスマートフォンで動作するアプリを組み合わせた新しい事業が見えてきたことだ。今まではどちらかと言えば、携帯電話事業者やメーカーが主導する形で、コンシューマー向けを含めた新しい事業が開拓されてきたのだが、スマートフォンで自由にアプリが開発できるようになったことで、他の製品ジャンルのメーカーが実現したいビジネスを自らが主導して、提供する環境が整ってきたということだ。

 たとえば、東芝は同社の薄型テレビやレコーダーと連携する「レグザAppsコネクト」というアプリケーションのデモを行なっていた。詳しくは僚誌AV Watchの記事を参照していただきたいが、録画した番組にタグを付け、クラウドサービスを使うことで、複数のユーザー間で番組の見どころを共有するといった使い方が実現されている。今回はiOSのみでのデモだったが、Androidなど、他のプラットフォームへの展開も検討されており、今後が楽しみなサービスだ。

Androidカーナビアプリ
5日の発表会で握手するパイオニア社長の小谷氏(左)とドコモ副社長の辻村氏(右)

 少し変わったというか、驚いた取り組みと言えるのがパイオニアとNTTドコモの協業による「Androidカーナビアプリ」だ。XperiaをはじめとするAndroid採用端末向けに、スマートフォン用通信カーナビアプリ「ドコモ ドライブネット powered by カロッツェリア」を提供し、パイオニアはスマートフォン専用クレードルを開発し、提供するというサービスだ。スマートフォン専用クレードルには、GPSや加速度センサー、ジャイロセンサーが内蔵されており、パイオニアが既存のカーナビで培ってきた位置アルゴリズムが活かされているという。

 簡単に言ってしまえば、パイオニアがNTTドコモといっしょに、Android採用端末向けのカーナビアプリを提供するという話なのだが、これをカーナビゲーションでは最大手のパイオニアが取り組んでしまうというのには少々、驚かされた。もちろん、カーナビには新車購入時に付けられるメーカー純正、アフターマーケットでのハイエンドナビ、ポータブルで持ち運びに優れたPND(Portable Navigation Device)、さらにはEZ助手席ナビなどでおなじみのケータイナビなど、いくつかの市場が存在するわけで、このアプリひとつで云々することでもないのだが、パイオニアはどちらかと言えば、ハイエンド重視の指向が強かったという印象もあり、ひとつ間違えば、カーナビ市場そのものを大きく変えてしまうわけで、かなり大胆なチャレンジと言えるかもしれない。

 



(法林岳之)

2010/10/14 19:03