法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

選べる楽しさ、使う楽しさで世界を拡げる「iPhone 5s」「iPhone 5c」

 9月10日、米国で発表された新型「iPhone」。これまでと違い、正統進化の高機能モデル「iPhone 5s」、カラフルな普及モデル「iPhone 5c」をラインアップし、今までよりも幅広い層を狙う構えだ。国内でも9月21日から販売が開始されたが、2機種のiPhoneが発売された国と地域において、発売から3日間で900万台を超える出荷が記録されるほどの好調なすべり出しを見せている。

 本誌ではiPhone関連の記事でおなじみの白根雅彦氏によるファーストインプレッションとiOS 7の解説記事が掲載されているので、そちらも合わせて、ご覧いただきたいが、ここでは新たに登場したiPhone 5sとiPhone 5cの位置付けに加え、国内の3事業者が扱うことになった市場性なども踏まえながら、実機のインプレッションをレポートしよう。

新しい時代へ向かうiPhone

 2007年の初代モデルの発売以来、着実に進化を遂げ、世界中に浸透してきたアップルのiPhone。世界中のメーカーが各国の市場において、さまざまなライバル製品を投入するが、その牙城はなかなか崩せずにいる。どんな商品においても同じブランドのシリーズが続いていると、どうしても製品としての進化は膠着してしまうものだが、iPhoneについてはスペックの進化だけでなく、デザインやユーザービリティにおいても着実に進化を遂げ、常に新しい驚きと体験をユーザーに与え続けている。だからこそ、これだけの短い期間で世界中の多くの人から支持される製品になってきたとも言える。

 ただ、そんなiPhoneもひとつの転換期を迎えているという指摘もある。すでに昨年あたりから見えている傾向だが、世界的に見ると、スマートフォンのプラットフォームはiPhone(iOS)とAndroidがほぼ二分する形になっており、これにWindows Phoneが続いている。今後、Firefox OSやTizenといった新しいプラットフォームが期待されているが、いずれにせよ、他のプラットフォームはさまざまなメーカーが採用しているのに対し、iPhoneはアップルのみが製造し、販売しているため、どうしても『多勢に無勢』になってしまっている。昨年のiPhone 5の記事でも触れたが、プラットフォーム別のシェアやメーカー別のシェアでもiPhoneはトップの座を追われつつあるのが実状だ。

 また、それと同時に、初代モデル以来、すでに6年間に渡り、世界中の国と地域にiPhoneを販売し、モデルチェンジを重ねてきたこともあり、ある程度のところまで、iPhoneが行き渡ったという分析もある。つまり、iPhoneが欲しい人はすでに購入済みで、破損や故障などがなければ、それほど積極的には買い替えないというわけだ。特に、iPhoneの場合、基本的にプラットフォームとハードウェアで統一されたユーザー体験を提供しているため、CPUやメモリーなどのハードウェアスペックによる多少のパフォーマンスの差が残るものの、最高のパフォーマンスを求めなければ、数年前のモデルでもあまり不満を感じることなく、使えてしまう傾向にある。もう少し具体的に言えば、従来のiOS 6の環境であれば、現在でもiPhone 4やiPhone 4Sで十分に快適に利用することができている。おそらく、本誌読者のみなさんの中にもiPhone 4Sなどの従来機種を利用し続けている人も数多くいるはずだ。

 こうした状況に対し、今回、アップルははじめて「iPhone 5s」と「iPhone 5c」という2機種をラインアップしてきた。しかもカラーバリエーションでは、iPhone 5sが3種類、iPhone 5cは5種類を揃え、ユーザーの選択肢を大きく拡げてきた印象だ。今回の発表では2モデルがラインアップされたことばかりが強調されているが、個人的にはカラーバリエーションが増えていることの方が重要な意味合いを持つと見ている。iPhoneがこれだけ普及してきた中、街中で周囲を見ると、「ボクもiPhone、あなたもiPhone」という状況になり、結果的にカバーなどで個性を主張するしかなくなっている。その意味から考えても今回の3種類と5種類というカラーバリエーション、それぞれのモデルに対して提供されるクオリティの高いオプション品のカバー類などは、ユーザーとしての個性を打ち出しやすく、選択の幅を拡げやすいと言えそうだ。

iPhone 5s
iPhone 5c

 それぞれの機種の内容については、後述するが、全体的なポジションとしてはiPhone 5sが従来のiPhoneの流れを継承した正統進化モデルであるのに対し、iPhone 5cは従来のiPhone 5のスペックをそのまま受け継ぎながら、よりカジュアルに持つことができるモデルとして、生まれ変わった印象だ。

 事前に流れていた情報などでは、iPhone 5sが上位モデルで、iPhone 5cは廉価版のような評価をされていたが、実際に触ってみると、どちらのモデルも美しく仕上げられており、iPhone 5cも非常に高い質感を持つという印象だ。5つのカラーバリエーションと6色のオプションカバーの組み合わせが楽しめることを考えれば、iPhone 5cは廉価版というより、「カジュアル版」や「カラフル版」といった表現の方が正当な評価と言えるかもしれない。いずれにせよ、どちらのモデルもユーザーが製品を手にして、「うれしい」と実感できるクオリティであることは間違いない。

正統進化で世界を拡げるiPhone 5s

 続いて、それぞれの機種の内容について、見ていこう。ちなみに、冒頭でも触れたように、本誌にはすでにiPhone関連の記事でおなじみの白根雅彦氏によるファーストインプレッションとiOS 7の解説記事が掲載されているので、それぞれのより詳細な内容はそちらをご参照いただきたい。

iPhone 5sのデザインは、ほぼiPhone 5と同じ

 まず、iPhone 5sのボディだが、デザインは基本的にiPhone 5と同じものであり、カバー類などもほぼそのまま使うことができる。敢えて『ほぼ』と表記したのは関係者から「厳密にはわずかに差がある」と指摘されたためだが、少なくとも筆者が持っているいくつかの背面ケースなどはそのまま使うことができている。液晶保護シートなどについても基本的には変わりないが、指紋センサーを内蔵したホームボタン周囲には少し注意をした方が良さそうだ。ボディの外装で、唯一、異なるのは指紋センサーが内蔵されたホームボタンだ。ボタン中央に描かれていた『□』のプリントもなくなり、ホームボタン周囲には指紋センサーを起動するためのリングが付けられている。このリングについては、各ボディカラーに合わせたものが装着されており、スペースグレイのモデルはリングが黒く目立たなくなっている。

 ディスプレイは従来同様、1136×640ドット表示が可能な4インチのTFTカラー液晶を搭載する。今回はiOS 7が搭載されているため、その部分の違いもあるが、最近、国内では4.5〜5インチクラスのディスプレイを搭載したスマートフォンが主流になり、解像度も今年の春モデルからはフルHDに移行している現状を鑑みると、ややスペック不足になってきた印象も残る。特に、文字についてはiOS 7が全体的に細いフォントを採用していることもあって、年齢によっては多少見えにくく感じてしまうかもしれない。

 従来モデルと比較して、あまり差を感じない外見に対し、かなり大きく変わっているのがスペックだ。たとえば、CPU(SoC)は64ビットアーキテクチャのA7チップを採用し、モーションプロセッサのM7も搭載する。CPUの64ビット化についてはパソコンの例などを見てもわかるように、メモリアドレスの拡張が大きなメリットとして挙げられるが、iPhone 5sについては従来モデルと搭載メモリは変わらないようだ。A7チップを搭載した背景については、僚誌PC Watchの後藤弘茂氏のコラム「AppleがiPhone 5sの「A7」でモバイルARM 64-bit一番乗り」で解説されているので、詳細はそちらを参照していただきたいが、iPhone 5sでの搭載は単なるパフォーマンス向上だけを狙ったものではなく、今後、タブレットのハイスペック化が進み、iPadでメモリアドレスの拡張が必須になることを踏まえ、iOSデバイスの主力モデルであるiPhone 5sでいち早く搭載することで、開発者に対しても「今後の主流は64bitですよ」と明確にアピールしているのが実状と言えそうだ。

 モーションセンサーのM7については、CPUのA7と対になって動作するコプロセッサで、加速度センサーやジャイロスコープ、コンパスなどから送られるデータを処理するためのものだ。一般的に、こうしたモーションセンサーは本体の動きなどを検知し、画面の自動回転やマップでのコンパス表示などのために存在すると考えられがちだが、iPhone 5sの場合、本体を持つユーザーが歩いているのか、クルマで移動しているのかといった動きを検知し、それに合わせて、通信を制御することで、ムダな電力消費を抑えるといったことにも活かされている。ちなみに、iOS 7のAPIも公開されており、今後、さまざまなソフトウェアベンダーからモーションセンサーM7を活かしたアプリが登場してくることが期待される。

 次に、カメラについては、従来モデル同様、裏面照射型CMOSセンサーによる800万画素カメラが搭載されている。ただし、同じなのは「800万画素」という画素数だけであって、センサーサイズを15%大型化した新設計のものとなっている。画素ピッチは1.5ミクロンで、画素あたりの感度も33%向上したとしているが、簡単に言えば、光を受けるセンサーの面積を大きくすることで、ダイナミックレンジ(明るいところから暗いところまでの範囲)をを広げ、撮影する写真のクオリティを高めようというわけだ。こうした画素数を向上させるよりもセンサーサイズを大きくする手法は、近年、コンパクトデジタルカメラでも増えてきており、スマートフォンでもいくつかの機種で採用例が増えている。これにF値2.2の明るいレンズを組み合わせることで、暗いところでもしっかりと撮影ができるように仕上げられている。

 また、カメラ周りでもうひとつユニークなのは、背面に備えられた「True Toneフラッシュ」だ。カメラ横に備えられたフラッシュは、白色LEDとアンバー色のLEDを組み合わせたもので、それぞれを撮影環境や被写体に合わせ、動的にコントロールすることで、肌色なども美しく再現できる写真を撮れるようにしている。

 さらに、撮影時の機能としては、自動手ぶれ補正、1秒間に10枚の写真が撮影できるバーストモード、SNSへの投稿に適したスクウェアモード、従来から引き続きサポートされているパノラマモード、さまざまなエフェクトが楽しめる写真フィルタなどがあるが、なかなか面白そうなのがスローモーションビデオだ。720pで毎秒120フレーム(120fps)のビデオを撮ることができ、1/4の速度で再生することで、スローモーションビデオを楽しむことができる。どれだけ楽しいものが撮れるのかはシチュエーション次第だが、スローになることで普段よりも楽しく見えるものも多いので、スローモーションビデオで撮る機会はかなり増えることになりそうだ。

 iPhone 5sでもうひとつ注目すべきは、やはり、ホームボタンに備えられた指紋センサー「Touch ID」だ。指紋センサーについては、国内でも富士通製端末などに搭載されてきたことでなじみ深いが、iPhone 5sではホームボタンに内蔵する形で搭載することで、シンプルにロック解除の操作をできるようにしている。

 これまでのiPhoneではロックを解除するとき、パスコードを入力するスタイルが一般的だったが、実状を見ると、毎回、パスコードを入力するのが面倒で、何も設定せずに使っている人も多い。iPhoneに限ったことではないが、やはり、スマートフォンには数多くの情報が保存されているうえ、さまざまなインターネット上のサービスと紐付けられていることを考慮すると、何もセキュリティ対策をしないというのは、かなりリスクが大きい。そこで、iPhoneでユーザーがもっとも多く触れるホームボタンにタッチセンサーを内蔵することで、誰でもより簡単に指紋センサーでロック状態からロックを解除できるようにしようというわけだ。

 指紋の登録も非常に簡単で、設定画面の[一般]-[パスコードと指紋認証]を選び、[指紋を追加]を選べば、あとは画面の指示に従って、何度か指紋を読み取るだけだ。こうして読み取られた指紋データはアップルのサーバーなどに保存されたり、画像データとして保存されることはなく、暗号化されたデジタルデータとして端末に保存され、初期化されれば、内容はすべて消去されるしくみだという。また、そのデータは登録時のもののみが使われるわけでなく、ユーザーが指紋センサーでロック解除をするたびに更新され、さらに精度を高めていくそうだ。実際に筆者も指紋を登録し、使いはじめたが、ロック解除のストレスがまったくなくなり、非常に快適に使うことができている。ちなみに、この指紋センサーによる機能は端末のロック解除に加え、AppStoreやiTunesStoreでのコンテンツ購入に必要なApple IDと紐付けることもできる。もちろん、ロック解除のみを有効にして、コンテンツ購入には有効にしなかったり、逆の組み合わせで使うこともできる。

カラフルに、カジュアルに楽しめるiPhone 5c

 次に、iPhone 5cについてだが、前述のように、基本的にはiPhone 5の仕様を受け継いでいる。しかし、デザイン的には「ホワイト」「ピンク」「イエロー」「ブルー」「グリーン」の5色がラインアップされており、壁紙もそれぞれのカラーに合わせたものが出荷時に設定されるなど、かなりカラフルなイメージに仕上げられている。

カラフルなiPhone 5c、ボディの質感は高い

 このボディカラーが採用されているのは背面側のケースで、前面側はどのボディカラーもブラックで仕上げられている。「前面がホワイトの方が色が映えるのではないか」という意見もあるだろうが、映像などのコンテンツを見ることを考慮すれば、ブラックの方が見やすいだろうし、もうひとつは後述する製品の生産性との兼ね合いも絡んでいるように推察される。

 メタルパーツで構成されているiPhone 5sに対し、樹脂製の一体成形ボディで構成されたiPhone 5cだが、いわゆる「プラスチック」的なボディという印象はなく、ハードコートで美しく仕上げられており、手に持ったときの質感も非常に良い。ただ、これだけ光沢のある背面パネルということになると、キズが付いたときの物理的かつ精神的なダメージも大きいため、できれば、カバーを付ける形で利用することをおすすめしたい。個人的にはボディカラーを活かすため、透明、もしくは半透明のパーツを購入したが、アップルが純正オプションとして販売するカバーも6色が用意されている。このオプションカバーは本体の光沢のあるボディとは対照的な触感を演出している。

 ボディを手にしたとき、ひとつ気になったのは、本体の重量だろう。従来のiPhone 5はその前モデルのiPhone 4Sの140gに比べ、112gまで軽量化し、持ちやすくなった印象で、今回のiPhone 5sも同じ重量に仕上げられている。これに対し、iPhone 5cは132gとiPhone 4Sとの中間程度の重量になっている。カジュアルなデザインのiPhone 5cの方がメタリックなデザインのiPhone 5sよりも重いこともあって、ちょっと不思議な印象だが、これはiPhone 5cのボディ内にマルチバンドアンテナを兼ねたメタルフレームが付けられているためだ。もっともカバーなどを装着して利用することを考えれば、あまり気にする必要はないという味方もできる。

 CPUやカメラなどのハードウェアのスペックは、基本的にiPhone 5と共通となっており、違いがあるとすれば、ストレージの容量で64GBがなく、16GBと32GBの2モデル構成となっていることだろう。価格面については、各携帯電話事業者の販売施策などがあるため、一概に比較できないが、おおよそ1万円程度はiPhone 5cの方が割安に設定されている。

国内3社で出揃ったiPhone

 さて、今回のiPhone 5sとiPhone 5cは、ご存知の通り、NTTドコモが取り扱うことになったため、国内の主要3事業者が揃って販売することになった。NTTドコモの販売の可能性については、9月3日に掲載した「あらためて考えるドコモ版iPhoneの可能性」で解説したが、市場を拡大したいアップルとMNP流出を抑えたいNTTドコモ思惑が一致し、お互いに条件面で歩み寄ったのではないかと推察される。その双方の相思相愛ぶりは、9月10日に行なわれた新型iPhone発表のプレゼンテーションで、NTTドコモの名前が単独で紹介されたり、共同名義でプレスリリースを出したことなどからもうかがえる。

 その後、9月6日には新聞やテレビなどでも報じられるようになり、その後、一気に市場の話題を独占した格好だ。各社の発売記念イベントについてもNTTドコモのイベントがテレビなどでも大きく取り上げられていた。

20日朝、ドコモショップ丸の内店には多くの報道陣が詰めかけた
ドコモの加藤社長もカジュアルないでたちで、セレモニーに参加した

 実際の販売については、まだ初回入荷分のみが販売されたのみで、今のところ、どの事業者がどれくらいの数を販売したかといった情報はわからない。今週はあるビジネスニュースの販売ランキングで、ソフトバンク版が上位を占めていたことが話題になったが、ドコモショップや大手家電量販店のデータが含まれていないこともあり、実状はなかなか見えてこない。

 ただ、個人的にも興味深く見ているのは、ヨドバシカメラが発売日以降、順次、Webページで公開している各店舗ごとの在庫状況や予約分のお渡し状況だ。iPhone 5sのカラーバリエーションとしては、予想通り、ゴールドとシルバーがなくなり、発売日直後はスペースグレイのみが在庫があるという状況になった。その後、3事業者のスペースグレイの在庫分は、まず最初にNTTドコモがなくなり、auも容量や店舗によって、在庫がなくなってきたが、ソフトバンクは在庫のある店が多く、カラーや容量を選ばなければ、比較的、買いやすい状況になっている。3事業者の入荷台数が同じとは限らず、過去の実績を踏まえて、ソフトバンクがしっかりと在庫を確保したという可能性も十分に考えられるが、もし、入荷数が変わらないとするなら、NTTドコモが一歩リードし、auがそれを追いかけているという図式になる。

 ところで、ユーザーとしては、今後のカラーバリエーションごとの入荷などの状況が気になるところだ。iPhone 4のホワイトのように、何カ月も入荷しないのではないかという不安を表わしているのか、発売日の数日後にはNTTドコモ版iPhone 5sのゴールド/64GBモデルがオークションで20万円を超える高値を付けるようなことも起きている。

 最終的な出荷状況や生産については、各社や各販売店のアナウンスを待つしかないが、今回のラインアップと調達状況は生産する各iPhoneの歩留りが大きく影響しているのではないかと見ている。これまでアップルはiPhoneについて、モデル数を拡大せず、できるだけひとつのモデルを世界中の国と地域の市場に展開しようと取り組んできた。しかし、LTEのバンド対応をはじめ、新興国市場への供給などを考慮したため、今回は一気にモデル数が増えることになった。よく知られているように、アップル自身は直接、工場を持たず、FoxconnなどのEMSに生産を委託する形を取っているが、今回のように、端末のラインアップが増えれば、当然、1社で抱えきれないことも考えられるうえ、リスク分散を考えても新しいEMS(工場)を使うことが検討されるはずだ。新しいEMSと付き合うということになれば、やはり、歩留まりのリスクが少ない仕上りのモデルを依頼することが容易に想像できる。その結果、ボリュームゾーンに展開したいiPhone 5cについては、iPhone 4のホワイトの経験を活かし、問題の起きそうなホワイトの前面パネルではなく、ブラックの前面パネルを採用したのではないだろうか。もちろん、デザイン的な考えもあるだろうが、生産の効率性も考えられていても不思議はない。

 一方のiPhone 5sについては、販売店などの情報を見る限り、スペースグレイの入荷が多く、シルバーとゴールドは入荷が少なかったことがわかっており、なかにはゴールドの入荷がなかった店舗もあったという。これも生産の効率性に当てはめて考えてみると、生産に問題の少なそうなスペースグレイは潤沢に供給でき、シルバーはホワイトの流れを継承しているものの、新しいEMSでも少し手間がかかり、ゴールドはまったくはじめてのカラーなので、iPhone 4のホワイトのときのように、歩留りが良くないという状況になっているのではないだろうか。これらはあくまでも筆者の想像に過ぎないが、過去の状況から鑑みても2〜3カ月程度で生産の歩留りは改善するだろうし、需要もある程度、落ち着いてくることが予想されるため、年内にはどのカラーも普通に店頭で購入できるようになっていそうだ。むしろ、そうなっていなければ、アップルとしても困るくらいだろう。

選ぶ楽しさが拡がるiPhone 5sとiPhone 5cは買い!

 では、最後にiPhone 5sとiPhone 5cの買いのポイントについて、考えてみよう。これまでiPhoneはユーザーのニーズに応えながら、ユーザーにiPhoneを使う新しい楽しさを次々と提案し、市場に浸透してきた。しかし、その一方で市場では多様なスマートフォンが登場し、なかなか「ひとつのiPhone」では幅広いニーズに十分に応えにくくなってきたのも事実だ。今回発売されたiPhone 5sとiPhone 5cは、まさにそういった市場動向に対するアップルの明解な答えと言えそうだ。これまでのiPhoneの流れを継承しながら、新しい時代へ向けて、着実に進化を遂げた正統派がiPhone 5sであり、完成度の高いiPhone 5の仕様を受け継ぎながら、カジュアルなボディカラーを美しく仕上げたのがiPhone 5cだ。カメラなどの仕様に若干の違いはあるが、どちらのモデルも、使うことが楽しくなる新しいiOS 7が搭載されており、スムーズかつ快適に使うことができる。

 キャリア別に見てみよう。NTTドコモのユーザーについては、これまで他の2社で販売されていたiPhoneをいよいよ自分の手にできるということで、かなり「買い」の要素は強いと言えるだろう。NTTドコモの発売記念イベントで、堀北真希が「仲のいい友だちがiPhoneを持っていて、ずっと気になっていました」と答えていたが、そういった人にこそ、ぜひとも手にして欲しいモデルだ。また、NTTドコモでなかなかiPhoneが発売されず、他事業者にMNPで移ってしまったユーザーもNTTドコモが「おかえり割」などの割引キャンペーンを実施しており、これを利用して戻るのもひとつの手だろう。

 次に、auについてだが、これはネットワークの状況から考えて、もっとも有利な状況にある。auは元々、4G LTEのネットワークを800MHz帯中心に展開し、2.1GHz帯はそれを補完する形で構築してきた。今回のiPhone 5sとiPhone 5cは、800MHz帯のLTEに対応しており、このネットワークをフルに活かせる仕様となっている。昨年、4G LTEの広告での誤表記が問題になったが、その借りを『倍返し』するくらいの勢いで、積極的にプロモーションをかけている。既存のiPhone 5やiPhone 4Sのユーザーもネットワーク的なメリットが大きいので、十分に乗り換える価値はあるだろう。

 そして、最後にソフトバンクだが、iPhoneをいち早く導入し、国内に広めてきた存在であるものの、今回はネットワーク的にアドバンテージを得ることができず、他社と比較して、プラチナバンドでのLTE対応で先行を許す形となっている。ただ、もっとも早くからiPhoneを取り扱ってきた同社ならではのノウハウもあるうえ、イー・モバイル買収によって利用できるようになった1.8GHz(1.7GHz)のネットワークも活かせるため、トラフィックの多い地域では意外にパフォーマンスが落ちないのではないかという見方もある。いずれにせよ、タイミング的にはiPhone 4Sの発売時に購入したユーザーが丸2年を迎える時期であり、そのユーザーは十分に買い換えを検討する価値はあるだろう。

 どの事業者と契約するにしろ、購入するにしろ、まずはぜひとも販売店に手向き、iPhone 5sとiPhone 5cを手に取り、新しい時代へ向けたiPhoneの使う楽しさを体験していただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY S4」「できるポケット au iPhone 5 スマートに使いこなす 基本&活用ワザ 210」「できるポケット SoftBank iPhone 5 スマートに使いこなす 基本&活用ワザ 210」「できるポケット+ Optimus G Pro」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。