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第264回:MIMOとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


複数経路でデータ通信を高速化

 MIMOとは、複数での入出力を意味する、Multi Input Multi Outputの略で、複数のアンテナでデータの送受信を行なう無線通信技術です。

 無線LAN規格では、現在一部の携帯電話に搭載されているIEEE802.11bの9倍、100Mbps以上の転送速度が可能となるIEEE802.11nでも採用されるほか、ドコモの第4世代移動通信(携帯電話)システム実験、上下ともに20Mbps以上を目指すウィルコムが開発中の次世代PHSでも、現在のPHSにも用いられているアダプティブアレイやSDMAに加えて、このMIMOが導入されます。

 どんどんと高速化する次世代の無線LANや携帯電話に必須のテクノロジーの1つが、このMIMOであると言えるでしょう。


同一周波数を使い、行列演算で合成・分離を行なう

 MIMOは、技術的にはスマートアンテナ技術の1つです。送信側、受信側双方が複数のアンテナを持っており、送信側は複数のデータを、複数のアンテナ使って同じタイミング、同じ周波数で一度に送信します。

 同時に送受信できるチャネルが増えれば、その分、単位時間あたりの通信量を増やすことができる、つまり見かけ上の通信速度を向上することができることが、この方式のメリットです。

 単純に考えれば、仮に1チャネルで10Mbpsの通信が可能な通信方式があり、MIMOによって3チャネルの同時通信が可能になれば30Mbpsの通信が、6チャネル同時通信が可能になれば60Mbpsの通信が、論理上はできることになります。

 同じ周波数で電波を送信すると混信するのではないかと思われるかもしれませんが、実は電波をはじめとする波は、合成しても分離することが可能です。

 MIMOの場合、合成分離を行列演算を使って行ないます。つまり、送信時に同時に送信信号を送りますが、このとき、同時に送るチャネル数nによってn次のチャネル行列がわかることになります。これに対しての行列演算ですから、このチャネル行列の逆行列を利用すれば、同時に送られた信号から受信すべき信号を求めることができるわけです。

 このような行列演算を一度に行なうベクタ型の演算装置は製造する際にトランジスタ数も増えるためスペースや電力に制約のある組込機器に利用することは考えにくかったのですが、かつては大型からせいぜいパーソナルコンピュータまでにしか使えなかった高性能のマイクロコンピュータが、技術の進歩により携帯電話や組込機器でも利用できるようになり、こうした技術を利用することが可能になってきました。


イメージ
 NTTドコモが行なっている4Gシステムの伝送実験での、VSF-Spread OFDM方式およびMIMO多重方式での通信イメージ

 この方式には、通信速度が向上するのに、使用しなければならない周波数帯域が増えないというメリットもあります。これまでの増速方式、たとえば複数の搬送波を使うマルチキャリア方式では通信速度を2倍、3倍にするには、使用する周波数帯域が2倍、3倍必要になりました。MIMOでは、電波は複数のデータが同じ周波数で送られますので、データ通信速度が2倍、3倍になっても使用する周波数帯域は変わらず、送受信するアンテナを2本、3本と増やせば、通信速度を増やすことができることになります。

 ただし、同時に送受信できるチャネルが増えるほど通信速度は向上しますが、その分、たとえば、受信機が受け取った電波から1つ1つのデータを分離するための計算が複雑になってしまう、それもチャネルが増えるほど加速度的に複雑になる、という問題がMIMOにはあります。

 たとえば、3チャネルなら3×3で9回のかけ算で逆行列をかけることができますが、4チャネルなら4×4=16、6チャネルなら6×6=36回のかけ算が必要になってしまいます。

 また、同時に送信するためのアンテナ、アンプなどを複数用意することになりますから、使用チャネル数が増えるほど、送信機、受信機に必要な電力量も増えてしまいます。

 これらの制約は、特に電力に限りのある携帯電話などのシステムには厳しい制約条件となります。

 MIMOを利用した高速通信対応携帯電話や次世代携帯電話が実際に世に出るまでには、通信実験によって実際の通信に最適な条件を見つけるのに加えて、携帯電話端末用に、さらに高速にベクタ演算が可能で省電力なマイクロプロセッサなどのデバイスの開発が不可欠となるでしょう。


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(大和 哲)
2006/02/28 11:38

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